エーアデント運送という会社が存在する。名前の通りエーアデント内の物流を担い、またエーアデントから外への輸出入も担当しているのも特徴だろう。
スチェッキンさんは主に輸出入の運送を担当しているので実はエーアデントに居る時間のほうが少なかったりする、無論スチェッキンさんは納得してるし寧ろ楽しんでいるのだが。
「ホイじゃ、これが注文の品ね。発注書はこれ」
「……確かに。ふぅ、毎度だけど助かるよ」
「いやいや、商売だから気にしなくていいよ、ちゃんと払ってくれるならね~」
主な相手は各地に点在する集落やキャンプ、或いは街なんかも彼女は物資を届け報酬を貰う。基本的にエーアデントから輸出するのは物資や部品、時には指揮官達が問題ないとしオルフェルーネが許可を出した工房製品なんかもそれに当たる。
「そう言えば聞いたかい? この辺りにあった生骸の巣をエルモ号がふっ飛ばしたんだってさ、あれってそんな大火力なもの積んでた記憶無いんだがね」
「へぇ、この辺来てたんだ。まぁふっ飛ばしたに関してはエーアデントも関与してるんだけど」
「おや、そうだったのかい?」
どうやらエルモ号そのものを見たというわけではないようでスチェッキンの言葉に驚く男性。エーアデントは基本的に何処かと協力してなにかを行うのは稀であり、エルモ号は特にその筆頭だと思われているので彼の反応は普通なのである。
なのでスチェッキンもそれには特に反応を見せずに、まぁ正確にはエーアデントがというよりもいつものバカ二人と愉快な工房がねと前置きをしてから
「エルモ号が偶々うちで修理を依頼してきた時に大改修したってわけ、だから今のエルモ号は陸上戦艦だよあれ」
「陸上戦艦……そりゃ確かに生骸の巣の一つや二つは吹っ飛ばせるわけだ」
男の脳裏に浮かぶ陸上戦艦エルモ号、弩級とも言える主砲で相手を吹き飛ばす光景、これを嫌いになれる男が居るのかいや居ない。
一度でいいから拝んでみたいな、男はそう思う。まさか今の世に戦艦を、しかも陸上戦艦とか言う物語でしか聞かないような存在が実在するというのはロマンでしかない。
「見てみてぇなぁ」
「そんなにかい? 向こうのメカニックが一発撃つ度に経費がヤバいしメンテナンスがもっとヤバいんですけどって嘆くほどだって話だけど」
「ロマンには誰も勝てないんだよ、お宅の工房だってそうだろ?」
まぁうん、そうだねと曖昧な表情で頷くしかないスチェッキン。オルフェルーネに先週あたりに説教されたというのに何も諦めてないという話を本人から聞かされればこうもなろう。
更に言えばベスカーアーマー一式を装備した駆除チームなどは度々目撃され、一部集落や街では彼らにファンが付いてるとかなんとかと言う話に式自が吹っ切れていっそグッズでも売ってみたらどうですかと言い出してたりもある。
(困ったことに売れている)
作った、エーアデント広報部が街のおもちゃ屋さんと共同開発して人形やらソフビやら試しに作って通販で売り出したら割と売れた。そこから口コミで広がって更に売れた、スチェッキンさんとしては財源が新たに生まれたのは以上に喜ばしいことである。
あるが売れるんだという感情がそれとなくあったりもする。因みに今回の運送にもそのグッズが紛れており子供たちが喜んでいる光景が見られたりもしている。
「っとあまりスチェッキンさんを引き止めるのは宜しくないな、次があるんだろ?」」
「盛り沢山ってわけでもないけどまぁまぁあるね~、仕事があるのは良いことだよ」
仕事がありすぎて残業どころの騒ぎじゃないんですけどという一人の少女の声が聴こえたような気がするが幻聴がスチェッキンの電脳を過ったがおそらくは昨日辺りにエルモ号の彼女と会話したせいだろうとスルー。
それに忙しいのは事実なのでと挨拶を済ませてから、次の目的地にトラックを走らせる。今日も今日とて運送は止まらない、この世界でも、いや、この世界だからこそ運送業者は必要とされているのだから。
「こちらスチェッキン、一件終わらせて次に向かうよ~」
《こちら本部、了解。その辺りはヴァリャーグも生骸も鉄血も確認されてないが気をつけろよ、エース》
「ありがとね~、それに襲われてもこっちには優秀な隼が居るから大丈夫さ」
運転しつつ窓から空を見上げれば、彼女が運転するトラックを追いかけるように上空を飛ぶ数機のドローン。エーアデント工房傑作の一つマルチロールドローンのハヤブサである。
これのお陰で運送の安全度が飛躍的に向上した。やはりエーアデント外に出ての運送となると様々な危険が襲い掛かる都合上、どうしても荷物や最悪、運送者込みで死傷者がというのも毎日のように報告が上がってしまっていた。
だがこうして手厚い護衛などが組まれるようになったお陰でその手の被害が殆ど抑えられるようになり、結果としてエーアデントの財源はまた少し潤沢になることに。
(こうして考えると工房とあの二人には頭が上がらないんだよね、ウチらも……)
結果を出してくるからこそ厄介なのよあそこはとは式自とオルフェルーネの言葉だったか。彼ら考えているかは不明だがその成果も周りから着実に積み上げているからこそ過剰な支出に激怒こそすれど開発などを行うなとは言えないに繋がっている。
何だかんだで彼らもロマンを追い求めてはいるが誰かの助けになれればと言う心情がそこにあるし、実際にスチェッキンさん達も助けられている。
「さてと、次は……」
目的地を確認しアクセルを踏み込めば、スチェッキンさんの愛車でありエーアデント運送の主力トラックである【タイタン】のエンジンが名の通りの雄叫びを上げて加速していく。
次にエーアデントに帰れるのは何時になるやら、なんてこと思いつつもスチェッキンさんは荷物を運ぶ、そう言えば最近じゃ、【桜花急送】なる運送会社が台頭してきたという話を思い出す。
(確か元々はエルモ号の指揮官の配下の人形だったな、ウチにいる一〇〇式と同型の)
エルモ号に合流するのではなく運送会社として支援する側に回るとはなんとも逞しいものだ。まぁエルモ号周りになると支援組織はかなりの数に上るのも彼女は知っているが。
「エーアデントもその辺りにコンタクト取ってみるのはどうかなぁ」
あれば便利な繋がりなのは確かだし、なんてことを思いつつトラックは次の目的地【衛星都市CHE-02】の【カフェ・ズッケロ】へと向かうのであった。
サクラちゃんはこの世界でもあのブラック会社からの独立を決めてるとか