ベクターさんの華麗なる日々~甘口~   作:鮪薙

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ちょっとこの作品にあるまじき真面目なお話になるかも?


〝辛口と甘口〟

 ニコリと笑みを浮かべ自分たちの名前を言い当ててきたベクターさんに警戒度が上がる二人。確かにこの〝世界〟でもAR小隊が居ることは知っている、そして自分たちも存在する、だが……

 

「いやいや、M4A1もM16A1もこんな姿じゃないし、AR小隊は今別の地域で普通に活動してるだろ? 人違いさ」

 

 今の姿とは違うはずでありこの街、エーアデントには先ず近寄れない距離の場所で活動しているのは知っている。だからこそこの場に居るのは違う人形だと反論するがベクターさんは微笑みを崩さずにこう返す。

 

「そうね、でもエーアデントに居る限りは私の目からは貴女達があの二人であるという事実は誤魔化せないし、何より別の世界からの迷い人ならば此処に居ても不思議じゃないわ」

 

「っ!? それってやっぱり」

 

「マジかよ、何でもありだろあの空間」

 

 驚愕する2人を見つめるベクターさんに驚きはない。そもそも初めから知っていたのだから驚きも何もありはしない。

 

 だってエーアデント、ひいてはこの〝世界〟でならばあり得てしまう事象なのだから。対して2人、特にM16はまさかの事に驚くしかない、自身の最後の記憶から考えれば納得は行くのだが流石に現実離れ過ぎたのだろう。

 

 しかし、M4は違った。確かに驚きこそしたがすぐに思案を始めそれから、ベクターさんに問いかける。

 

「つまりここは〝ヒガンスペース〟だと?」

 

「いいえ、ここは確かに現実よ。平行世界の一つ、この認識で構わないわ」

 

 ヒガンスペース、これを説明するのは正直に言って無理である。まぁなんか色々と凄いスペースであり、過去未来果ては平行世界も観測できるし代償さえ払えば現実改変も出来ちゃうヤバい奴だと思ってもらえればいいだろう*1

 

 ともかくM4はそこなのではと推測したらしいがベクターさんの反論が全てでありここは現実なのは間違いない。同時にこの〝世界〟が平行世界、つまりは自分たちが居た世界とは別だということも知らされることに。

 

「あ~、ちょっと待ってくれ、情報を頭の中で整理していいか?」

 

「えぇごゆっくりどうぞ」

 

 ここでM16から待ったが掛かる。任務中は優秀な彼女と言えど流石に話のスケールが一気にデカくなったが故に情報の整理が追いつかなかったのだろう。

 

 ベクターさんも気持ちは分かるわと彼女が落ち着くのを待つことに、どうやらM4も気持ちは同じだったようでふぅと息を吐き出し空を見上げる。

 

(……青空)

 

 果たしてあっちではどの程度、この空を見てなかっただろうか。そしてこんなにも平穏な日を感じてなかっただろうか、それだけを考えれば此処で平行世界だと言うのに説得力しか感じない。

 

 同時に此処は私が居るべき世界ではないとも思ってしまったが、あの世界に私は戻れるのだろうかという不安も巣食っているのもまた事実でもあった。

 

(私は、どうしたら)

 

「っよし、とりあえずだ、とりあえず整理は出来た、と思う」

 

「焦らなくても平気よ。時間はあるのだから」

 

 などとベクターさんは言うが内心では何処からどう話すべきかしらねと悩んでいたりもする。と云うのも先程の話で大体全てなのだ、それ以上のことは彼女と言えど分からないとしか言いようがない。

 

 けれどもし他にも説明が欲しいというのならば、二人が何故エーアデントに居たかはベクターさんにも話すことが出来る。

 

「貴方達がエーアデントに居たのは此処が〝世界〟の中心だからよ」

 

「〝世界〟の中心? 此処ってあれか、首都とかって意味じゃなさそうだな」

 

「えぇ、文字通りエーアデントはこの並行世界の中心部分なの」

 

「……ヒガン、まさかエーアデントそのものが?」

 

 質問にベクターさんはYESともNOとも言えない感じの表情を浮かべるに留める。なるほど、どうやら最高機密に近い話らしいと察した二人はそれ以上は踏み込まないことに、この辺りは流石はAR小隊の二人というべきかもしれない。

 

 話が途切れたその時、人数分のカレーが配膳されてくる。いつの間にか注文したのかというは当然ながらM16としては妙に力の入ったカレーライスを見てなんとも微妙な表情を浮かべてから

 

「なんでカフェでカレーライス?」

 

「あら、ここの名物はこのカレーライスなのよ? あぁ、あと安心してちょうだい、これは私からの奢りだから」

 

「……はぁ」

 

 これにはM4もそんな返事をするしかない。周りの客も特に反応をしてないし、寧ろ同じカレーライスを食べてるのをみるにベクターさんが嘘を言ってる様子もないので本当のことなんだろうとスプーンを手にとって一口……食べたと同時にブワッと二人の顔に汗が吹き出た。

 

「っ!?!?」

 

「はい、ラッシー」

 

「かっら!? いや、だが美味い、美味いんだが辛いなおい!」

 

 少なくても前情報無しで食べさせて良いもんじゃないだろとはM16の言葉だし周りの客もそれはベクターさんが悪いなという雰囲気になる。けれど彼女が言うようにスパイスの効いた辛さでありながら旨味というものもこれでもかと感じることが出来るので決して辛いだけのカレーライスではないと頷くしか無い。

 

 またM4はM4でこの強烈な辛さと確かな美味しさのカレーライスに、彼女なりになにか感じたものがあったようで味わうように噛み締めながら

 

「本当に辛い、ですね」

 

「えぇ、でも美味しいでしょ?」

 

「はい……」

 

 見ればベクターさんもカレーライスを食べているが慣れているとばかりに食べ進めていくさまに凄いと思っていると視線に気付いた彼女は一口分をスプーンに乗せ、M4に差し出しながら

 

「こっちは甘口よ。辛いのも嫌いじゃないけど、私は甘口が好きなの、どうかしら?」

 

 差し出された甘口のカレーライスを見つめ、それから自身のまだ残っている辛口のカレーライスに視線を戻してからふっと笑いそれから

 

「いいえ、私は辛口を食べ切ってからにします。勿体無いですし」

 

「あらそう? M16は?」

 

「私も同じだよ、それに辛口の方が好みだ」

 

 あらあらと断られたそれを口に運ぶベクターさんだがこの返事は彼女的には好みだった。二人は差し出された甘口を跳ね除け、辛口に挑むと宣言したのだから。

 

 何時かは二人は元の〝世界〟に帰るだろう、されどそれまではエーアデントで羽休めでもしてほしいと彼女は思いながら残りのカレーライスを食べ進めるのであったが直後、ファストフード店で揚げたてのフライドポテトを購入した時に店員にカフェでこの二人見たなと知らされたカラビーナが現れ、そして

 

「あぁ!!!! 本当に居ましたわ!!!」

 

「っとと!? な、なんだ!?」

 

「あれはカラビーナ、ですかね?」

 

「えぇ、ウチの精鋭狙撃手ちゃんよ」

 

 その後、カラビーナには事情を説明しペルシカにはそっくりさんだったわよと報告したとかなんとか。

*1
私(作者)にも分からん、公式詳細くれ




M4A1とM16A1
原作世界のお二人、行方不明になってから少ししての時間軸。多分、いつの間にか本編世界に帰ると思われる。
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