エーアデント最深部、住民は当然ながら基地の面々も、更に言えば指揮官ですら存在を仄めかされた程度にしか知らされていない区画。
本来であれば何人たりとも立ち入ることも許されない区画へのその道を歩いていく影が一つ、コツンコツンと普段通りの足音を立てながら進むのは我らが副官のベクターさん。
そして最深部へと唯一向かい、入室も許可されているのが彼女である。より正確に言えばそもそもにして、このエリアに来る手段がベクターさん以外ではどうしようもないというのが実情なのだが。
《電脳パターン、クリア。メンタルモデルパターン、クリア。声紋、クリア。パスワード……クリア。ロックを解除します》
厳重とも言えるロックの解除が行われ、扉が開かれた先には中くらいと言えるほどの部屋中に伸びているコードの先、部屋の中央に機械仕掛けの大きめなリクライニングチェアーとそこに眠るように座っている一人の少女。
見た目の年齢はメイリンよりも若く、髪は腰くらいまでの長さの白、肌も同じくらいに白く、呼吸こそしているが目は開かれておらずコレだけを見ればネているのかと思われるが実際は違う。
「縺ゅ?繝吶け繧ソ繝シ縺輔s??」
「おはよう、今日も元気そうね」
部屋に備え付けられたモニターが表示され、少女が映し出されると同時にベクターさんへ挨拶をするのだがその声は無数とも言える少女の声が重なったかのようなもので、常人であるならば誰も聞き取れることすら出来ない。
唯一ベクターさんだけは少女の言葉を理解できるので慣れた感じに挨拶をしてから少女が安置されているチェアーの近くの椅子に座ってから軽い雑談を始める。
「調子はどう? って聞くまでもないか」
「邨カ螂ス隱ソ縺?h?√?縺昴l繧医j繧ゅ?繧ッ繧ソ繝シ縺輔s縺ッ??」
「私? 私も何時も通りだわ。勿論、指揮官達もよ、貴女なら見てるから知ってるでしょうけどね」
「縺医∈縺ク」
いたずらがバレたかのような感じに笑う少女にベクターさんはやれやれと言う感じに肩を竦めてから、また雑談を再開する。さて、そろそろ少女について説明をするべきだろう、先ず誰が見ても分かるように彼女は普通の存在ではない。
彼女の正体はコレまた一言では説明が難しい。単刀直入に言ってしまうとすれば少女がこの世界の中心、彼女を起点に〝世界〟が出来たと言っても過言ではない存在であるということだがそれでは納得も難しいだろう、此処で昔話を挟んでみる。
(……どうして皆が傷つくんだろう)
とある世界に一人の少女が居た。彼女は過酷なこの世界に居ながら誰よりも心優しく、人形であろうと人間であろうと誰かが傷つくという事実に心を痛め、けれど無力な少女であるがゆえに祈るしかできないでいた普通の少女が。
来る日も来る日も、ただ祈るしかできず。時にはボランティアにむかったこともあったがそれでも救えるのはほんの僅かという現実に無力感だけが積み重なっていった。
(どうにかできないのだろうか)
けれど少女は考えるのを、模索するのを諦めなかった。家族からはもう止めろ、現実を見ろ、無理だと言われても少女には止まる理由にはならなかった。
ある日、少女に転機が訪れる。その日も何時ものように考え、噂話レベルで彼女は知った、この世界には特殊な空間に入れる場所があり、そこでならば願いが何でも叶うという噂を。
少女がそれを聞いた瞬間、これだと確信し情報を集めた。子供とは思えない行動力と情報収集力でかもしれないを存在するにまで精度を高め、そして……〝遺跡〟と呼ばれる場所を見つけた。
(ここが……!)
彼女はある意味で幸福であり、そして不運だったのは後にヒガンと呼ばれる空間に入れるだけの存在であったこと、本来ならばそこで〝祝福〟を授けるだけで終わるはずのを少女はその場で祈ってしまったこと。
(世界を平和に変えたい!)
確かにヒガンスペースであれば現実干渉は可能だ、だが少女一人程度の代償で世界規模をどうにかなど出来るはずがない。普通であればここで諦めがつく、けれど……少女は言ってしまえばドが抜けて諦めが悪かった。
この場の私じゃ足りないのならば〝並行世界の私たち〟も利用すれば出来るってことなのではと考え閃いた少女はヒガンスペースを利用して並行世界の自分へ交信した、世界のために私に協力してほしいと。
真っ当な人間であれば突然並行世界の自分を名乗る存在から、こっちの世界をどうにかしたいから存在ごと自分と一体化してほしいなどと言われても巫山戯るなで一蹴する話だ、だが少女は、少女たちは違った。
(分かった!)
それが平和へと繋がるのならばと無数の並行世界の少女たちはたった一人の少女へと全てを捧げた。そう、どの世界でもこの少女は基礎世界と同じだったのだ、だからこそ力を、存在を、その全てを捧げることに何一つ抵抗はない。
人が見れば狂っているとしか思えない自己犠牲精神、だがそれにより無数の並行世界の少女を宿した基礎世界の少女は改めてヒガンスペースを利用して現実干渉、いや、世界改変を行った。
結果として言えば、完全にではないが成功してしまった。歴史の転換点とも言える出来事の発生は少女でもどうしようもなかったが故に彼女は世界を、人を、人形を、生き物を、大地を、空を、ありとあらゆる存在を逞しくした。
汚染されようが何が起ころうがそれを日常とし、祭りとし、何事もなく逞しく生きられる世界へと改変をした。そうして生まれたのがこの〝世界〟幻想のような祭り事で回る甘口な世界、けれどそれだけのことを行えば幾ら無数の並行世界の自分を取り込んだ少女と言えど代償がないわけがない。
彼女は存在を失った、それも無数の並行世界全てから少女が居たという痕跡ごと消え去った。唯一残ったのはエーアデントに安置されている目覚めることのない少女の身体と意識体、名前すらも消え去ったが故にベクターさんでも呼ぶことはできない。
「莉雁コヲ縺ッ菴募?縺ォ陦後%縺?°縺ェ」
「貴女の行きたいところでいいじゃない、でもそうね……海なんかどうかしら?」
「豬キ?√?濶ッ縺?°繧ゅ?縺倥c縺ゆサ雁コヲ縺ッ縺昴%縺ァ??」
けれど彼女が得た物もあった。それがエーアデント、この都市の正体は【移動要塞都市エーアデント】、けれどこの事実を知っているのはコアである少女とベクターさんのみ。
それもそうだろう、そもそもにしてここが存在したという事実そのものを少女の存在によって改変され出現した都市なのだから。此処はいわば彼女にとっての今の身体であり、エーアデント内及びある程度の距離であれば外を少女は自由に見て回ることが出来る。
またこの都市はある日突然、周囲に初めから存在したと改変しながら現れる事が可能。だが決まってこの都市は流刑地と周りから揶揄される、変わり者だけが居着く都市だと、それもまた改変によるものなのだが誰も知らない。
「〝海岸〟沿いの光景なら貴女の身体も〝開眼〟したりしないかしらね、ふふっ」
「縺吶▲縺斐>縺、縺セ繧薙↑縺?」
「あら残念」
ベクターさんは少女とのこの会話はまだ続く、どうせ誰もこの場所には気付かない気付けない、仮に知っても戻る頃には忘れている。この世界のコアたる少女は誰もがある意味で平等な世界をエーアデントから楽しげに眺めるのであった。
うわーん、とんでもない設定が勝手に生えました!!!
【少女】
大体本編参照。こんな姿と状態になったけど特に悲観もせずにエーアデントで楽しんでるので割りと精神力もお化けじみてるのかもしれない。
【移動要塞都市エーアデント】
正式名称ではあるが、そもそもエーアデントが移動してるのを気づけるものは現実改変の影響で誰も居ない。もしかしたらM4A1とM16A1は気付くかもしれないが。
理屈としてはその場所に現れる際に世界の認識をエーアデントは初めから此処に存在したと改変させているだけ。因みにその場所に他の街などがあったらそっくりそのまま入れ替えて改変するので誰も異常に気づかない。なお、流石に連続では不可能らしく、一度移動したら最低でも一ヶ月はそこに居る。
また、エーアデント所属で外回りが多いスチェッキンなどはどうするのかと言えば帰路につくというタイミングで改変され、どこからだろうと真っ直ぐエーアデントに帰れるようになってるとか。