ベクターさんの華麗なる日々~甘口~   作:鮪薙

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他の戦術人形も隙あらば中の人ネタ

あ、今日で1週間日刊ですね、やったぜ


〝イメージアップとベクターさん〟

 ザッザッと竹箒が地面を掃く音、楽しげな少女の鼻歌、ここは街唯一存在する神社の境内であり今そこで掃除をしているのは戦術人形の【一〇〇式】。

 

 なお、この街在住の人形という事で彼女もまた他の一〇〇式と違い巫女服がデフォルトであり更にこの神社の巫女として実際に住み込みで働いてもいる。

 

 働いているのだが参拝客は恐ろしいまでに来ない、そしてその原因も彼女自信は理解しているがゆえに掃き終わった境内を眺めてから深い深い溜息を吐き出すことになる。

 

「はぁ、そんなに怖い笑顔をしてるんでしょうか、私」

 

 元々パラデウスの所為で宗教的なものにあまりいい印象が持たれていないというのに巫女である一〇〇式の笑顔が曰く何か企んでそうな物を感じて怖いと勘違いされるほどらしい。

 

 言われた一〇〇式本人からしてみれば、どういうことですかそれとなるのだが笑顔を見たほぼ全員から言われれば不本意でも納得するしかない。

 

(とは言われても、一体どうすれば……せめて私はそういう人形じゃないってことだけでも理解してもらえれば)

 

 他に原因とすれば彼女自身がこの街【エーアデント】に来てから始めてまだ日が浅いというのも手伝っているのかもしれない。だからこそ笑顔による勘違いが加速し閑古鳥が鳴くような事態になっていると彼女は考えていた。

 

 考えていたが肝心の対策が何も浮かばないのが宜しくない、うむむと悩み、悩みに悩んでポンッと電脳に閃きが走った。

 

 何だこんな簡単な方法があるじゃないかと。彼女が弾き出した答えはこうだ、日が浅いという事はつまり人との関わりが少ないということ、だからこそ勘違いされるのならば人と関わることをすればいいじゃないかと。

 

(そしてその手段は唯一つ、ボランティアに参加するということです! あとは……そうだ!)

 

 第一印象を良くするためになんかこう愉快な感じの挨拶をしてみよう! 閃きが走りすぎた一〇〇式の電脳はそんな答えを弾き出し翌日、ベクターさんと指揮官が街中を散策している最中、二人が見たのは。

 

「わっぴ~!」

 

 少しばかり二人は思った、もしかしたら一〇〇式がストレスのあまり壊れたかもしれないと。居たのは清掃ボランティアに参加していると思われる一〇〇式だったのだが何故か道行く人々に笑顔で〝わっぴ~〟と言う謎挨拶をぶちかましていた。

 

 何がどうしてそうなったと指揮官は珍しく脳内が混乱一歩手前まで陥ったとなれば聞く人が聞けば異常事態だと気付けるだろう、それくらいには衝撃的な光景だった。

 

「あ、指揮官に副官、わっぴ~!」

 

「わっぴ~、一〇〇式」

 

「わ、わっぴ~。いや、一〇〇式その、それはなんなんだ?」

 

 二人を見つけ駆け寄ってきてから例の挨拶をしてきた一〇〇式にベクターさんは微笑みながら返すが指揮官は遂に我慢できずに問い掛ける。

 

 もしかしたら自分が知らないだけで街では流行りの挨拶のなのかもしれない、ほら、ベクターさんも特に困惑しないで返してるしと思っていたが本人からの言葉はこれだった。

 

「わっぴ~はわっぴ~ですよ? あ、この挨拶の理由ですか! それは私のイメージ改革のためです!」

 

「なるほどイメージ改革、確かにずっと悩んでたからな」

 

 前々から自身の誤解されているイメージに関しての悩みは聞いていたので納得できなくはない。ないのだがそれがどうして謎挨拶に繋がるのかと指揮官が聞いてみれば、彼女はうーむと悩んでから

 

「閃いたからですね! ですが悪い手応えではないと思ってます」

 

「えぇ、私も好きよそういう挨拶は」

 

 伴侶たるベクターさんがそういうのならば指揮官はこれ以上何も言わないことにした。それに当の本人が笑顔で気に入っていると言ってるものに口出しするというのも彼の性分的にもやりたくないとも言う。

 

 ただ一〇〇式の悩みに一つ付け足すとするならば、彼女は笑顔と人付き合いの短さからのイメージの悪化が原因だと思っているのだがもっと言うと彼女自身の言動などなどが誤解されやすいというのがある。

 

 例えば裏路地から出てきた場面があるのだが、その場所は前々から不良達のたまり場になっていた場所であり、そこから出来たので大丈夫かと住民に聞かれた際に例の笑顔を浮かべてから

 

『問題ありません、彼らにはしっかりとお灸をすえ改心してもらいましたから!』

 

 はっきりとそう告げたらしいのだが巫女服と笑顔とその言動で何か洗脳染みたことでもしたのではないかと疑われた、と言うか指揮官に通報が来ていることもあったりする。

 

 その際は彼女は裏表もないし心優しい人形だから本当に説得しただけだとは説明したのだが、その後も似たような事が続出して今の彼女へのイメージになってしまった。

 

 人形たちの指揮官を努めていると言うのに彼女の印象回復に貢献出来ていない。今にして思えばもう少し出来ることもあっただろうにとつい考え込んでしまえば

 

「ふふっ、どうしたの指揮官、随分と悩んでるみたいだけど」

 

「ん? あぁいや、一〇〇式の印象がこれで少しでも良い方向に変われば良いなと思ってな。それと折角だから俺からもなにか出来ないことはないかと考えてた」

 

「そうねぇ、私たちが言ってもあまり説得力がないでしょうし広報部を使うのはどうかしら?」

 

 広報部、基地の宣伝などを行っている文字通りの部署であり街にも新聞を出しているのでコレならばインタビューと言う形で記事を載せるなり或いは彼女の謎挨拶を紹介するなりで印象回復の手伝いは可能かもしれないとベクターさん。

 

 彼女の案にそれは良いかもしれないなと指揮官も頷き通信で広報部担当の【MDR】に連絡を入れてみる。その間にベクターさんは一〇〇式の手伝いをしつつ今さっきの話を彼女にすれば、目を輝かせてベクターさんの両手を握って

 

「良いのですか!?」

 

「今日まで何も出来なかったもの、せめてもの手伝いをさせてちょうだい」

 

「そんな、この街、そしてあの神社に住まわせてもらってるだけでも感謝しかないのに。はい、一〇〇式、取材を喜んで受けます!」

 

 それから後日、新聞には一〇〇式の事が改めて紹介され例の【わっぴ~】と言う挨拶は何故か流行った、主に子供たちの間にだが。

 

 ともかく彼女のイメージアップは成功したという内容の新聞をベクターさんが食堂で読んでいると。

 

「わっぴーですわ! ってなんでジンジャーエールを?」

 

「神社の応援をしようと思ってね。そう【ジンジャー】【エール】で、ふふっ」

 

「……」

 

 少しの間を置いてから、このタイミングでギャグを挟んできますの貴女とカラビーナの声が場に響くのであった。




舞台紹介
『エーアデント』
 来るもの拒まず去るもの追わずな大都市、元ネタはスパロボYから。

『一〇〇式さん』
 最近流れ着いてきた逸れ人形、エーアデントの気質から指揮官の所属になるが基本は神社で住み込みをしている。

 言うまでもないと思うがこの一〇〇式さんは中の人補正マシマシなので常に誤解をされる悲しき特性持ちなのです。

『MDRさん』(広報)
 基地の広報担当、稀によく炎上するが上手く収めたりするので今のところお咎めは受けてなかったりする。

 わっぴ~ってなんだよと思いながら記事を作ったとか。
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