転生闇落ちガチ勢トレーナー(害悪厨)が心を折るまでの話。 作:匿名
―――ガラル地方……チャンピオン防衛戦。
本来ならば白熱するその両者、否、チャレンジャー側の空気感はかつて無いほどに冷め切っていた。
闇落ちとでも言えば良いのか。
三年連続でチャンピオンダンデに挑み続け、二人目のライバルとして定着しつつある四年目の今日、ギルガルドに対して公式戦で初めて見せるサダイジャを送り出していた。
彼が初めて見せるポケモンに会場が僅かに熱を持つ。
そこで、ノータイムで彼が指示した技は―――小さくなる。
何ということはない、回避率を二段階上げるという技。
二段階回避率が上がった今、命中100の技は6割程度の命中率へと下がっていた。
丁度、シャドーボールを回避し、続けて小さくなるを指示する。
これにより40%での命中率に成り下がる。
「砂嵐、ステルスロック」
さらに砂で視界を悪くさせると同時に鋼岩地面以外のポケモンにスリップダメージを入れる砂嵐と交代際に相手ポケモンにダメージを与えるステルスロックを場に撒き散らす。
ダンデはサダイジャの特性に当たりをつける。恐らく特性は―――すながくれ。
天候が砂嵐のとき、相手の技の命中が8割になる特性だ。
「地震」
「くっ、ギルガルド!!キングシールド!」
「地震」
地震の連打によってギルガルドがダメージを受ける。
追加の一発を耐えるも、返しの一撃であるシャドーボールは避けられ、さらなる追撃の地震で先鋒「ギルガルド」が地に沈む。
「頼んだ!バリコオル―――」
「地震連打」
目には目を、バリコオルの特性【千鳥足】は混乱状態の際、相手からの技の命中率が5割になるという特性だった。
「フラフラダンス」
全体を混乱させるというフラフラダンスをダンデは指示する。
確かにこちらが混乱すれば50%でダメージを与えられる―――命中率は通常時必中ではなく100だが、ここも都合よく当ててきたようで混乱している。
だが、そのタイミングで発動するは「キーの実」、自身の混乱を治すきのみである。
返しの地震が叩き込まれ、砂ダメージ一回、抜群ステルスロックのダメージも合わせてバリコオルは倒れ付す。
―――会場は瞬く間に静寂に包まれる。
【無敵のチャンピオン】と呼ばれたダンデの手持ち二体が相手に傷一つつけれず、倒れることになったのだから。
「―――ほら、とっとと次を出せよ?―――無敵のチャンピオンさんよ」
―――酷く冷め切ったそれが、今年度のリーグ中、初めて彼が人に向けて発した言葉でもあった。
「オノノクス!逆鱗!!」
サダイジャの砂隠れは型破りによって無効となる。
ダンデが指示したのは逆鱗だった―――細かい攻撃ではなく、たった一撃で突破する破壊力に希望を託した形だ。
「いったん戻れ。アロキュウ頼んだ、アンコール」
―――ガラル本島では、まず見ない冷気を纏ったキュウコンの姿をお披露目する。
特性のゆきふらしによって天候が霰状態へと書き換わる―――
逆鱗は彼女の持つフェアリータイプによって透かされ、さらにアローラキュウコンの持つアンコールで逆鱗を固定される。
こうなれば引くしか無いが、バリコオルとギルガルドを失っている為、切り札を除けば引き先は二通りしか無い。
水タイプ複合で純粋な氷技を受けれるガマゲロゲ、もしくは―――
「戻れ!頼んだ―――ドサイドン!」
特性ハードロックで実質等倍受けができるドサイドンの二択。
四倍の氷技フリーズドライの可能性を考えれば実質一択であった。
「ドサイドン……か、アロキュウ」
「ストーンエッジで倒し切れ!!」
「―――金縛り」
気合の襷を盾にし、さらに金縛りによる連続での同じ技の発動を禁じる。ダンデは続くアンコールを重ねることによる全技封じを予期してドサイドンを戻す。
だが此処での引き先は氷弱点のポケモンか、或いはステルスロックで体力が半分になってしまう切り札のリザードンしか残っていない。
ダンデが選んだのはオノノクスだった―――
「ま、だろうな。此処で切り札を切るわけもない―――吹雪」
天候の補助を得た必中の吹雪で上からオノノクスを倒し切る。
気づけば6対3、内一匹……相棒のリザードンはステルスロックによって出した瞬間にHPが半分になってしまうという戦況となっていた。
『ダンデ!ダンデ!ダンデ!ダンデ!』
ふと気づけば応援する声がダンデのみに集中していて―――その反面、僅かなブーイングが挑戦者である彼に向けられる。
「―――済まない……頼んだ、ドラパルト!」
クッションとなったオノノクスか、あるいは挑戦者か、観客か、誰に向けたものかすらわからないダンデの謝罪は誰にも届かず、空気に溶ける。
上から火炎放射で倒し切る―――その前にアローラキュウコンを戻してカバルドンを展開する。
砂嵐が吹き荒れる中、等倍の火炎放射を叩き込まれるが、追撃のシャドーボールをしっかりと耐えつつ、即座に欠伸を撃つ。
此処で交代しなければ終わりだろう、そうは思うがステルスロックにより交代に躊躇を生ませる―――残るは相棒のリザードン、もしくはタイプ的に有利を取れないドサイドン。
ソレが故に―――
「―――一か八か!流星群!!!」
「戻れカバルドン。サダイジャ―――避けろ、地震だ」
吹き荒れる砂嵐に呑まれたサダイジャ―――フィールドが大きく揺れると同時に流星群が降り注ぎ、その風圧で砂のベールが引き剥がされる。
そこに居たのは傷だらけだがしっかりと倒れずにいるドラパルト―――逆側には目を回し、倒れているサダイジャであった。
「……レベル45じゃ流石に耐えれねぇか、まぁいい、大健闘だ。カバルドン出ろ―――吹き飛ばし」
「なに……!?」
強制的に後ろのリザードンが出てくる、ステルスロックで四分の一のダメージが入ってゆく。
此処を下げるわけには行かない、だからこそダンデが選ぶのは切り札であるキョダイマックス―――ソレを完封すべく手札を切る。
「仕方がない!此処で解き放つぞ!チャンピオンタイムだ!!―――リザードン!!キョダイマックス!!」
「―――欠伸」「―――ダイジェット!!」
1ターン後に眠りにつく欠伸と素早さを上げるダイジェットの打ち合い。
相手の裏も加味して此処はリザードンの素早さを上げなければ勝てないと判断したのだろう、自身の素早さを高める効果を有している
―――どちらにせよ、欠伸が通らなければ裏で倒しきれば良いだけだと判断した故の欠伸。
二発目は相手の場に居るポケモンにスリップダメージを与えるキョダイゴクエン。
カバルドンの守るを貫通した上で倒し切り、リザードンは眠りにつく。
二ターンの浪費、からの眠りによる運ゲーの始まりである。
「ゲンガー、祟り目」
即座にゲンガーを出し、状態異常時にダメージが上がる祟り目で攻撃する。
「リザードン!!起きろ!」
一度の攻撃とダンデからの声を受けるが、リザードンは目を覚まさない。
ダイマックス状態が解除される。
『リザードン!リザードン!ダンデ!ダンデ!リザードン!!』
「
『ダンデのリザードン、奇跡を見せるか!?いいや、今こそ奇跡を見せてくれ!!』
観客も、実況も、ダンデ本人もリザードンに語りかける。
「おいおい、随分とアウェーだな?―――こりゃ」
「―――リザードンッ!大文字!!」
目覚めた瞬間、不意打ち気味に放たれた大文字がゲンガーに命中、さらにそれが急所に当たったようで体力がかなり残っていたゲンガーが一撃で戦闘不能にまで持っていかれる。
「―――ハハ、ま、キッス頼むわ。ゲンガーもお疲れ、これはしゃあない」
「リザードン、原子の力!」
「おいおい、忘れてねぇか?―――トゲキッス、ダイマックスだ」
原子の力を受けながら、ダイマックス状態のトゲキッスから放たれたダイジェットがリザードンを消し飛ばす―――
通常ならば体力半分以下では耐えきれない程の痛烈な一撃―――
―――ダンデのリザードンは ダンデをかなしませないよう もちこたえた
「リザードン……!まだだ、そうだ、諦めるな!」
「ハッだろうな、
―――吐き捨てるようにそう言い放つ挑戦者。
「もう一度ダイジェットぶち込め、裏のドラパが抜けねぇ」
―――ダンデのリザードンは ダンデをかなしませないよう もちこたえた
「リザードン、原子の力!!」
―――リザードンの げんしのちから
―――ぜんのうりょくが いちだんかい あがった!
「チッ。トゲキッス、ダイウォールだ!これ以上相手に積ませるな!」
リザードンの原子の力をダイウォールで防ぎ、トゲキッスのダイマックスターンが終了する―――。
S二段階上昇トゲキッス対、S2段階上昇C含め他1段階上昇のリザードン―――
「はは、はははははっ!!ざっけんなよ、此処までやって負けそうってマジか?負けてたまるかよ、クソったれ」
こちらには体力半分程度のトゲキッス含めて三匹が健在、相手はエースのリザードンと死にかけのドラパルト、そしてドサイドンの三匹。
「トゲキッス、電磁波!」
「リザードン!原子の力!」
先に動くのは予想通りリザードンだった。
一撃を負い、さらに全能力が上がる―――そのまま壁際まで吹き飛ばされたトゲキッスはなんとか頑張って立ち上がろうとするも、原子の力が急所に当たってしまったようで敢えなく戦闘不能になる。
「……トゲキッス、よく頑張ったな。仇討ち頼んだぞ?ミミッキュ―――呪い、だ」
残り三体を全抜きするという気合でミミッキュは壇上に立つ。
「最大火力で相手しろ!リザードン、大文字!」
ばけのかわを盾にリザードンに向けて呪いを打ち込むミミッキュ。
ゴーストタイプが使う呪いは4分の1のダメージを強制する―――
「耐えろ、リザードン!大文字!!」
―――指示通りに耐え、さらに二度目の大文字でミミッキュが消し炭にされる。
通常ならば耐えれるはずのない呪いでのダメージを耐えながら大文字を打ち込んできたことに驚き、回避する間もなく焼き尽くされ、呪いダメージでダウンするリザードンと一緒に共倒れの形になるミミッキュ。
「ミミッキュ、おつかれ様。よくやったぞ、間違いなくエースの一人だ」
「最後だ。キュウコン、行け―――」
しんしんと霰が降り始める。
残されたのはHP1のキュウコン一匹―――
「まだだ、チャンピオンタイムは終わっちゃいないぜ!ドサイドン、ストーンエッジだ!」
「キュウコン。吹雪だ、なんとしてでも一発で倒し切れ!」
先に打ち込まれるドサイドンは足を踏みしめ何とか耐え抜く、返しのストーンエッジが―――
「―――躱せ!!!」
キュウコンは全神経を集中させ、間一髪でストーンエッジを避ける。そのまま追撃が来る前に、トレーナーからの指示が来るよりも先に吹雪を打ち込んでいく。
「最後、か。まさか最後のポケモンが
ステルスロックのダメージを受けながらも、相手を睨むドラパルト。
「ドラパルト―――キュウコンに向かって火炎放射だ!!」
「分かってんな?キュウコン、氷の礫―――!」
―――キュウコンは先制技の礫によってドラパルトを処理。
―――だが ダンデのドラパルトは
ダンデをかなしませないよう
もちこたえた!
―――結果として霰によるスリップダメージによって共倒れとなったチャンピオン・ダンデと挑戦者・カスガ。
彼はその後に自ら姿を消したとされ、その後の出場は一切無くなった。
加えてスリップダメージでの敗北だったことも相まって、チャンピオンダンデの王座は守られることとなり、砂隠れ小さくなるサダイジャや麻痺るみトゲキッス等―――そういった害悪戦術を跳ね除けたことによりダンデの人気はより高まったと言えるだろう。
その5年後―――
「―――ユウリ!またあのチャンピオン戦見てるのか?」
「……♡―――ふへ、へへへ……んんっ、ししょーの活躍を弟子が目に焼き付けるのは当然のことだよ、ホップ君」
「そ、そうか……それはそうと、アニキとの約束があるからオマエを呼びに来たんだぞ!オレは先に行ってるからな!」
「……わかったよ。すぐ行くから待ってて―――」
アルセウス「異分子如きが、本来あるべき筋書きを変えることなど許されないのです」