転生闇落ちガチ勢トレーナー(害悪厨)が心を折るまでの話。 作:匿名
過大評価じゃんね…?(不安)
"卑怯者"、"ダンデに負けて当然の男"、"自分のポケモンに害悪の汚名を着せることに抵抗のない最低のトレーナー"。
当時の一般人から見た彼―――トレーナー・カスガの評価としてはそんなところだった。
その汚名が浸透した最たる理由はやはりジムチャレンジ決勝戦という目立つ舞台で飛び抜けて人気のあるチャンピオン・ダンデ相手にその戦術を披露し、挙句の果てに僅差まで追い詰めてしまったことだろう。
興行スポーツとしてのポケモンバトルが発展してきたガラルでは絡め手自体の人気が低くそういった使い手が殆ど居ないこともあり、より受け入れられない者が多くなったと言える。
それに加え、評判に拍車をかけたのがガラルに根を張る一大企業『マクロコスモス』社のローズ委員長のインタビュー中に出てきた言葉だった。
「わたくしは彼の戦術についてとやかく言うつもりはないよ。……ああ、でも途中、吹き飛ばしで背後のリザードンを引き出したのはいただけないかな」
「確かに勝利を求めるポケモンバトルとしては良い選択だったのかもしれない。だけれど、観客が求めていたのは最終局面でのダイマックス同士のド派手な殴り合い。それを無理やり引き出さざるを得ないように誘導して一方的に使い切らせるのはパフォーマンスとして微妙だよね」
ローズ委員長もダンデには及ばずとも、固定のファンを持つ内の一人。
そんな委員長が直接的ではないとは言え苦言を呈している―――つまりは大義名分を作ってしまったようなものであり、それに乗っかる人も少なくはなかった。
その反面、カスガの戦いぶりに対して好印象を持った者も居た。
例えばジムリーダー『キバナ』。
砂嵐や霰といった、天候の書き換えによるアドバンテージを生み出す彼のその戦術を評価していた。
同時に氷のエキスパート『メロン』や岩タイプのエキスパート『マクワ』などもそのクレバーな戦術、そして何より否が応でも注目が集まる決勝の舞台で批判覚悟の戦術を見せてくる、その度胸を高く評価していた。
それは、当時9歳であり、自分のポケモンも持っていなかった少女ユウリも例外ではなかった。当時の彼女は本放送をテレビで見ていた。
さらに言えば彼女は幼い子供ながらに天才の片鱗を見せていたのである。
「―――なんでこれでこの人が負けるの?おかしくない?」
───その結果がコレだった。
幼い頃に脳を灼かれた人間は簡単には元に戻らない。
加えて、彼……カスガは自身のSNSにて、最後のチャンピオン戦含む全試合についての所感や意図(俗に言う育成論、構築記事の類い)を一般に公開しているのも良くなかった。
ポケモンを持たず実践知識が及ばないユウリでもその記事を見れば、どういう考えでその指示を送り、どういう意図で育てたのかというのが理解できてしまう。
だからこそ、ただ不条理なまでに強いと言われ、持ち上げられているだけのチャンピオンには納得できないし、実際、バトルの立ち回りや読みも師匠が上回っている…そう、ユウリは本心から思っている。
―――そんな彼が姿を消してから五年が経った。
「―――オマエたちがポケモントレーナーかどうか、俺が見届けよう。ふたりで勝負するといい!」
「よっし、ユウリ!オレと真剣勝負だぞ!」
ホップはサルノリを、
どうやらこの子は女の子のようで、同性なだけあって仲が良くなるのも早かった。
昨晩、ヒバニーに師匠の事を語った時もまだ見ぬ強者に目を輝かせていたこともあり、つい夢中になって話し込んでしまったくらいだ。
「アニキの試合は全部みてる!アニキが部屋に置いていった本や雑誌はすべて読んだ!どうすれば 勝てるかわかってる!」
―――初めてのポケモンバトル。
それは私も例外じゃない。
けど―――残念、負ける気は全くと言っていいほどしない。
「―――ししょーの試合を全部見てるのは同じだし、本や雑誌……私の場合は育成論や構築記事だけど……汚名以外で唯一残されたそれを読み込んでるのは一緒。じゃあ、私のししょーは世界一なんだから、勝つのは私だよ」
むしろこんなところで負けるようなら、弟子を名乗れない。
小手調べとして指示をしたヒバニーのたいあたりによって同じく体当たりでぶつかったウールーが大きく吹き飛ばされる。
動き出しはほんの僅かにウールーのほうが早かった。
ただ……不一致の体当たりにしては技の威力が高い―――?
ユウリは首を傾げながらも、二発目の体当たりを指示してみる。
―――やはり威力が高い。ヒバニーは物理攻撃面が強い、それを加味しても……。
一瞬、急所に当たったかとも思った、けど二回連続なことも考えると違いそう?
そのまま体当たりの連続でウールーを倒し切る。
攻撃を下げるなきごえを指示するのもありだけど、その分攻撃を食らうのはマイナスが大きいと判断した故の攻撃連打。
「まだだ、オレには頼れる仲間がもう一匹増えたんだぞ!」
―――なんとなくの直感に従って、昨晩は覚えてなかったひのこを指示。
と、その寸前、辺りに緑色の霧のようなものが広がる―――グラスメイカー……?
ししょー曰く、グラスフィールドはHP回復、地震や地鳴らし等の威力減衰、あと草技の威力増加があったはず。
まぁ今は考えなくてもいいか。
ヒバニーはやや動揺しつつも私が声をかければ気を取り直して小さい火の玉のようなものでサルノリを攻撃する。
ホップはまだ初めて見るフィールドの変化に動揺しているようで指示も出せずにそのまま当たる。
今度は弱点含めて目算通りの威力に収まった。だが、違和感だけが募る―――。
まるで―――
いや、確か師匠がどっかの記事でエースバーンについて触れてた気がする……確か特性は……
「くっ、サルノリ!ひっかく!」
……しぶといな。いいや、後で考えよ。
「……ひのこ連打で距離を保って、近づいてきたら体当たりで距離を開けてひのこで攻撃」
―――結果として、私の初めてのポケモンバトルは私の勝利で終わった。
―――チャンピオンは当然として、ホップも、私のママも知らない。
私の旅の、一番の目的は師匠に出逢うこと。
師匠は五年前のあの決勝戦で姿を消した。
彼を大舞台に連れ戻すとまでは言わない―――でも、師匠に聞く必要がある。
―――私の、本当の師匠になってくれますか?と。
貴方の歴史は五年前のあの時で終わって良いものじゃない、なら、たとえ彼と比べ私が力不足だとしても―――私が弟子として引き継ぐべきだと。
それが、彼を、彼の存在をこのガラルの歴史に残す、唯一の方法だから。
それが、彼がこの長い歴史の陰に消えてしまわないよう、護ってあげられる―――
―――最善の方法だから。
ユウリ「私が護らなきゃ……(ハイライトオフ)」