こより監督とホロメンたちの栄冠ナイン 2022年、ホロライブ高校始動 作:きのこ大三元
主は野球は中学高校までは軟式野球を…
パワプロは2002年版…PS2でやったのが最後ですが…
そのうち自分でもやってみる予定です!
今も2026年の実況を見たりしながら、少しずつ進めてます。 2年目で超名門おめでとうございます!
2026-2027もシステムも違いがあり、楽しそうですね。
特にキャラクリの自由度が広がっており、よりホロメンも分かりやすくなった気がします。
栄冠の知識など…至らないとこもあるかもしれませんが、よろしくお願いします。
2022年5月22日。まだ夏には少し早い、春と初夏の境目のような日だった。
その日、自分は昼食を取りながら、スマホである実況を見ていた。片手間のつもりだった。食事をしながら、なんとなく画面を眺める。そんな、いつもの休日の過ごし方のひとつになるはずだった。
スマホの小さな画面には、野球ゲームのグラウンドが映っている。春の甲子園。準決勝。東東京代表、文京電工。そして、愛知県代表――ホロライブ高校。
画面の中では、選手たちが走り、投げ、打っていた。画面の向こう側では、博衣こより監督が実況しながら、迷い、叫び、サインを出している。そして画面のこちら側で、自分はそれを見ていた。
最初は、ただの配信を見るつもりだった。
けれど試合は、すでに終盤を越えていた。9回では決着がつかず、延長戦へ。そして迎えた11回裏。スコアは9対3。文京電工が9点、ホロライブ高校は3点。
画面に映る数字だけを見れば、勝敗はほとんど決まっているように思えた。6点差。しかも、延長11回裏。追いつくにはあまりにも遠く、逆転するにはあまりにも厳しい。
けれど、試合はまだ終わっていなかった。
打順は8番から。この時点では、自分もまだその選手のことを深くは知らなかった。ただ、水色の髪が印象に残る1年生だった。静かに打席へ入った彼女は、放たれた球を外野へ弾き返す。
ヒット。
ノーアウト1塁。小さな火種のような出塁だった。画面の向こうで、こより監督の声が少しだけ跳ねた気がした。まだ終わっていない。そう言いたげな声だった。
続く9番は、紫色の髪が印象的な選手。どこか周囲から「様」付けで呼ばれていそうな、不思議な雰囲気がある。だが、打球はセンター方向へ上がり、センターフライ。1アウト。火種は、まだ小さいままだった。
次は上位打線。1番打者が打席へ入る。狐耳がよく似合いそうな雰囲気と、白上という苗字が目を引く選手だった。投じられたボールを捉えた打球は、ライト方向へ鋭く飛ぶ。2ベースヒット。1塁走者は3塁へ進み、1アウト1、3塁。
ほんの少しだけ、画面の向こうの空気が変わった気がした。とはいえ、まだ6点差。大量得点が必要な状況に変わりはない。
続く2番は、真紅の瞳が印象的な、クロヱと呼ばれている選手。初球だった。迷いなく振り抜いた打球は、3塁手の正面へ飛ぶ。
サードライナー。
2アウト。
あと、ひとつ。
文京電工は、あとアウトひとつで勝利に届く。ホロライブ高校は、あとアウトひとつで春を終える。画面の中の空気が、ぎりぎりまで張り詰めていく。
画面の向こうのこより監督も、きっと同じ数字を見ていた。ゲーム画面のスコアと、アウトカウントと、残された打順。そのすべてを見ながら、それでもまだ、諦めていなかった。
ここで3番。金髪で、羊のようにおっとりした雰囲気の選手が打席へ立つ。けれど、そのスイングは柔らかいだけではなかった。初球を捉えた打球が3塁線を襲い、野手の横を抜ける。
フェア。
ボールが外野へ転がっていく。3塁走者が還る。2塁走者も還る。2点タイムリーヒット。9対5。
まだ4点差。それでも、確かに点差は縮まった。終わるはずだった試合が、少しだけ呼吸を取り戻したように見えた。
次は4番。キリッとした目つきと、いかにもパワフルそうな佇まい。どこか、大空を駆けていきそうな選手だった。調子は、決して良いとは言えない。それでも画面の中の彼女から、闘志だけは消えていなかった。
こより監督が、引っ張りを選ぶ。
それはゲームのコマンドであり、監督の采配でもあった。画面の向こうから差し出された、小さな祈りのような指示だった。
相手投手が振りかぶり、投じた一球。バットはやや遅れて出た。ファール。まだ終わらない。
もう一球。
打球が上がる。ライト方向へ、大きく、高く。外野手が追う。けれど、打球はその頭上を越えていき、そのままスタンドへ消えた。
2ランホームラン。
9対7。
6点差だったはずの試合が、いつの間にか2点差になっていた。画面の向こうで歓声が上がる。ゲーム内の観客の熱と、こより監督の実況の熱と、見ている自分の鼓動が、一気に重なっていく。
まだ2アウト。まだ負けている。それでも、もう誰も簡単には諦めていなかった。
5番が打席へ向かう。保健室にいそうな、白衣が似合う雰囲気の選手。周囲からは、先生と呼ばれているらしい。ピッチャーから放たれたボールを打つ。打球は、ボテボテのサードゴロ。
普通なら、これで終わり。そう思ってしまうような打球だった。
けれど、打者は諦めなかった。1塁へ走る。最後はヘッドスライディング。送球が1塁へ届き、ファーストが捕球する。その寸前、指先がベースへ届いた。
セーフ。
2アウト1塁。命が繋がる。
画面のこちら側で、自分の手にも力が入る。昼食の箸は、もうほとんど動いていなかった。
次は6番。ややキッズみを感じる、元気な雰囲気の選手だった。二本の大きな角――ではなく、そう見えてしまいそうな特徴的な髪型がよく似合っている。振り抜いた打球は低く、速く、三遊間へ飛ぶ。野手の間を抜け、ヒット。
2アウト1、2塁。
そして7番。捕手が打席へ入る。鷹のように鋭い目つき。どこか大人びた雰囲気をまとった選手だった。
こより監督は、一抹の望みをかける。打者が振り向き、画面の中で監督のサインを確認する。
お前に任せる。
そんな合図に見えた。
相手投手にも疲れが見えている。投じられたのは、低めのボール球。それでも、バットは出た。打球はまた三遊間へ転がり、抜ける。レフト前。2塁走者は3塁を回れない。だが、それでいい。
満塁。
2アウト満塁。
9対7。一打出れば同点。長打なら逆転。
相手ベンチが動く。投手交代。この試合を終わらせるために、新しい投手がマウンドへ向かう。
そして、打順は最初の8番へ戻った。
打席に立つのは、星や彗星に名を冠したような、水色髪の1年生。さっき、この回の始まりに塁へ出た選手だった。今度は、ただ繋ぐだけではない。勝敗そのものが、その小さな背中に委ねられていた。
こより監督がサインを出す。
センター返し。
画面の向こうで選ばれたその指示が、画面の中の打者へ届く。あとは、見届けるだけだった。
1球目、ストライク。
2球目、空振り。
ノーボール、2ストライク。最も追い込まれた。
あと一球で終わる。あと一球で、文京電工の勝利。あと一球で、ホロライブ高校の春は終わる。
画面を見つめる手に、自然と力が入っていた。昼食のことなど、もう頭から消えていた。自分はもう、ただ配信を流しているだけのリスナーではなかった。
3球目。高めのボール。見送る。
まだ、終わらない。
そして、4球目。
投手が投げる。バットが出る。芯で捉えた音がした。
カキーン、と。
甲高く、澄んだ音だった。
打球は、レフト方向へ高く上がる。誰もが見上げる。画面の中の選手たちも。画面の向こうのこより監督も。画面のこちら側にいる自分も。
レフトが追う。フェンス際へ下がる。けれど、届かない。
白球は、そのままスタンドへ飛び込んだ。
逆転。
サヨナラ。
満塁ホームラン。
9対11。
ホロライブ高校の勝利。
その瞬間、今まで聞いたことがないほどの歓声が、画面の中から、そして画面の向こう側から溢れ出した。
水色髪の1年生が、ガッツポーズをしながら1塁へ向かう。2塁へ。3塁へ。そして、本塁へ。仲間たちが待っている。監督が見ている。
春の甲子園、準決勝。愛知県代表、ホロライブ高校は、土壇場から試合をひっくり返した。
後になって知ったことだが、その瞬間、ある掲示板サイトでは、盛り上がりすぎたせいで落ちた、なんて噂まで流れていたらしい。本当かどうかは分からない。けれど、そう言われても納得してしまうほど、その一打には熱があった。
最後に、両校の選手が整列する。
礼。
甲高いサイレンの音が、球場に響く。
勝った者たちは、次へ進む。敗れた者たちは、グラウンドの土を集めている。
その直後だった。
画面の向こうで、こより監督の声が震えた。
「監督だけが逃げててごめん…!」
それは、勝利の喜びだけではなかった。ここまで積み上げてきた時間と、背負いきれなかった不安と、それでも最後に選手たちが掴み取った勝利。その全部が、声になって溢れたように聞こえた。
「みんな大好きだ〜!」
その言葉を聞いた瞬間、ただのゲームの試合だと思っていたものが、少しだけ違って見えた。
画面の中には、確かにチームがあった。選手がいて、積み重ねた時間があって、その果てに掴んだ勝利があった。そして画面の向こうには、その子たちを信じて、操作し、叫び、見守っていた監督がいた。
その光景を見ながら、自分はようやく気づいた。昼食に、ほとんど手をつけていなかったことに。
それくらい、画面の向こうに夢中になっていた。
ただのゲームの試合。そう言ってしまえば、それまでなのかもしれない。けれど、その試合には確かに、物語があった。
負けるはずだった。終わるはずだった。誰もが諦めてもおかしくない点差だった。
それでも、ひとりが塁に出た。ひとりが繋いだ。ひとりが打った。ひとりが走った。そして最後に、ひとりがすべてをひっくり返した。
やがて、画面の中でホロライブ高校の校歌が流れ始める。
普段なら、少しだけ野暮ったく聞こえてしまうような校歌だった。少し大げさで、少し古めかしくて、どこか笑ってしまいそうになる旋律。
けれど、この時だけは違った。
その校歌が、不思議なくらい綺麗に聞こえた。
勝ったのだ。
この子たちは、本当に勝ったのだ。
画面の向こうで、こより監督はまだ余韻の中にいた。画面の中では、ホロライブ高校の選手たちが勝利を噛み締めていた。そして画面のこちら側で、自分はその校歌を聞きながら、少しだけ落ち着こうとした。
この試合に至るまで、いったいどんな時間があったのだろう。
あの選手たちは、どんな練習を積み、どんな夏を越え、どんな春へ辿り着いたのだろう。
あの監督は、どんな思いでサインを出し、どんな思いで彼女たちを見守っていたのだろう。
そして、これから先も――。
まだ知らない物語が、きっとある。
これは、2022年。
画面の向こうで始まった、博衣こより監督とホロメンたちの栄冠ナイン。
愛知県に生まれた、ホロライブ高校の物語。
長い長い高校野球が始まる。
そんな予感がした。