こより監督とホロメンたちの栄冠ナイン 2022年、ホロライブ高校始動 作:きのこ大三元
すみません、話数のコピペミスがあったので上げなおしです。
5月23日(火)晴れ。
ホロライブ高校のグラウンドには、朝から明るい日差しが差していた。
赤いマスで西川が肩を痛めた日。緑色のマスで、選手たちを少し早めに休ませた日。
その二つを経験してから、こより監督は練習予定表を見る時、前よりも少しだけ慎重になっていた。
ただ日数を進めるだけではない。ただ練習を選ぶだけでもない。
どのタイミングで鍛えるのか、どこで休ませるのか、選手たちの状態はどうか。
考えることは、少しずつ増えている。
『今日は投げ込みです! でも、無理はしないように見ていきます』
投げ込みきた
西川さんの肩もあるし慎重に
投手陣育てたい
無理は禁物
夏までに投手力ほしい
この日から3日間、ホロライブ高校野球部は投げ込みを中心に練習することになった。
投手陣はマウンドやブルペンでフォームを確認しながらボールを投げ込み、野手陣もキャッチボールや送球練習で体を動かしていく。
大神ミオは腕を振る前に一度深く息を吸った。
「ミオしゃ、力みすぎないようにね」
「はい。最後まで投げられるように、丁寧にいきます」
スタミナを重点的に鍛えているミオにとって、投げ込みは大事な練習だった。
けれど、ただ数を投げればいいわけではない。
腕の振り、足の踏み込み、投げ終わった後の姿勢。
ひとつずつ確認しながら、ミットへ投げ込んでいく。
猫又おかゆは、いつものように自分のテンポを崩さない。
「おかゆん、今日はどうですか?」
「うん。今のところ、いい感じかも」
少し眠そうな声。それでも、投げる瞬間の目は静かに集中していた。
上級生投手たちも順番に投げ込む。
ただし西川はまだ本格的な投げ込みには入らない。
肩に負担がかかりすぎないよう、キャッチボールも短い距離から確認していた。
「西川さん、違和感があったらすぐに言ってくださいね」
「はい。今日は無理しません」
こより監督はその返事に頷く。
投げ込みは大事だが、投げすぎは危ない。
強くなることと壊さないこと、その両方を考えながら練習は進んでいく。
練習の途中、こより監督はスケジュール帳を見た。
今日の日付に見覚えのある色が重なっている。
緑色のマスだった。
赤いマスのような嫌な重さはない。
むしろ前にこの色で休ませた時、少し良い流れになったことを覚えている。
「杉谷さん、今日も緑色のマスみたいです」
「そうですね。無理に練習を続けるより、一度休憩を挟むのもよさそうです」
こより監督はグラウンドを見る。
投手陣は投げ込みを続け、野手陣も体を動かしている。
晴れているとはいえ5月も終わりに近い。動き続ければ疲労は溜まる。
「一度、休憩を挟みましょう!」
声に応じて選手たちがベンチへ戻る。
水分を取り、汗を拭き、肩や足をほぐす。
投手陣も無理に投げ続けず体を休めた。
「休憩って、前よりちゃんと大事にしてますよね」
「昨日までで、少し学びました……」
こより監督は苦笑する。
練習を止めるのはサボりではなく、次に動くための準備でもある。
何人かの疲れが少し取れた気がした。
こより監督は前より少しだけ、休ませる判断ができるようになっていた。
緑マス助かる
休憩大事
投げ込みで無理しないの大事
こよ監督学んでる
西川さんも休んでくれ
コメント欄にも安心した空気が流れる。
休憩中、杉谷が空を見上げた。
雲は少なく晴れているが、その視線は先の天気まで見ているようだった。
「監督、天気にも気をつけた方がいいかもしれません」
「天気、ですか?」
「はい。雨や雪の日は練習効率が落ちるようです」
雨の日はグラウンドがぬかるみ、ボールは滑り、足元は不安定になる。
雪ならさらに動きづらい。
こより監督は以前の雨の日練習を思い出した。
屋内で筋トレをした日、雨音を聞きながら部室で話を聞いた日。
晴れの日と同じようにはいかないが、雨の日には雨の日の練習がある。
「ただし、対処法もあります」
「対処法?」
「雨にはスポンジ、雪にはスコップです」
「なるほど……!」
天気は変えられないが対策はできる。
それもまた環境を整えることだった。
その日の練習後、倉庫で白土の袋が見つかった。
「これを撒くとグラウンドの質が良くなるかもしれません」
土の状態、水はけ、足元の安定、ボールの跳ね方。
環境が整えば練習も変わる。
「今日は白土を撒いて整えましょう!」
選手たちはすぐに動き出した。
白土を運び、撒き、ならしていく。
「けっこう重いですね」
「足腰も鍛えられそうだね」
「これも練習です!」
笑いながら作業は進む。
こよローは目を輝かせ、メルメルはトンボで整える。
すぐに劇的な変化はない。
それでもグラウンドは少し整ったように見えた。
『なんとなく、グラウンドレベルが上がった気がする!』
白土きた
グラウンド整備だ
環境づくり大事
野球部の日常感ある
少しずつ良くなってる
夕方、白い土が薄く広がるグラウンド。
そこを自分たちで整える時間も、野球部の日常になっていく。
5月26日(金)晴れ。
この日から2日間、再び投げ込み練習。
今度は速球中心だった。
腕を振り、下半身を使い、真っ直ぐを強くする。
ミオは気合の入ったフォームで投げ込む。
「足も使って!」
「はい!」
おかゆも感覚を確かめながら投げる。
西川はまだ様子見で無理をしない。
投手陣が育つには時間がかかる。
焦れば壊れる。
こより監督は少しずつ夏を思い描きながら、一球一球を見つめていた。
投げ込み回
ミオしゃいいぞ
おかゆんも伸ばしたい
速球は基本
西川さん焦らずに
投げ込みの2日間は静かに終わったが、球には少しずつ力が乗ってきた。
5月28日(日)雨。
小雨だがグラウンドは重く、ボールは湿り、足元は滑る。
『雨です。でも、野球部は進みます!』
雨だ
小雨か
練習効率落ちそう
でもやるんだな
雨の日練習だ
こより監督はメニューを確認する。
目に入ったのは「ペッパー」。
「ペッパー……?」
胡椒を思い浮かべて固まる。
「食べる方じゃないですよ」
「ですよね!」
ペッパーw
胡椒じゃないw
こよ監督かわいい
グラウンドに胡椒は草
白土の次に胡椒撒くな
杉谷が説明する。
近距離で打って捕って返す反復練習。
守備力を鍛えるものだった。
「なるほど。じゃあそれで!」
こうして4日間、ペッパー中心の練習が始まる。
雨の中のペッパーは難しい。
打球は読めず、足元は滑る。
「いきます!」
はあちゃまが打ち返すが、打球は低く転がる。
「雨の日、難しいですね!」
「でも声は出てる!」
ぼたんは冷静に対応し、メルは必死に食らいつく。
こよローは軽く打っても正確だった。
ミオとおかゆも守備に参加し、反応を確かめる。
雨の日でも練習はできる。
ただし晴れの日とは違う。
足元、打球、ボールの状態を見る必要がある。
こより監督はそれを学んだ。
雨の日ペッパー
守備練習っぽい
メルメル頑張ってる
ぼたん落ち着いてる
こよロー軽くても上手い
天気で全然違うんだな
小雨の中、声を出しながらペッパーは続く。
打つ、捕る、投げる。
その繰り返しの中に、雨の日ならではの学びがあった。
投げ込み、緑マスでの休憩、天気の理解、白土整備、速球練習、そして雨の日のペッパー。
この数日で、こより監督はまた少し分かった。
野球部を育てるには、選手だけでなく天気やグラウンド、道具を見ることも必要だ。
それも監督の仕事だった。
雨は止まない。
土は重く、ボールは湿っている。
それでもグラウンドには声がある。
「もう一本!」
「足元気をつけて!」
「ナイスキャッチ!」
晴れの日だけが野球部の日々ではない。
雨の日でも、野球部は進む。
こより監督は濡れたグラウンドを見つめながらそう思った。
次は6月1日(木)晴れ。
春は終わり、夏が近づいている。