マブラヴ火葬戦記 作:ポンコツ資源採掘重機駆除業者
西暦1990年。日本帝国が世界に誇る巨大複合企業体――暁グループが保有している民間宇宙ステーション『メンデル』。
小惑星を改造して造られた全長十五キロメートルにも及ぶ傘のような巨大構造物の中にある総裁室で、俺はここ数年の出来事がまとめられているレポートに目を通していた。
海王星作戦後の経過報告(1984~1989)。
西暦1984年。
・ユーラシア全土でBETAの侵攻が一斉停止(超重光線級生産の影響と推定)。
・帝国大学の霧山教授が歴代オルタネイティヴ計画の研究データを精査し、「人間よりもコンピューターに強い反応を示すBETAに対し、炭素生命体によるコミュニケーションは不可能」という仮説を導き出す。教授はその成果をもとに非炭素構造擬似生命に関する論文を発表。
・日本、将来の疑似太陽炉増産を見据えた世界規模の継続的な設備投資を開始。
西暦1985年。
・ソ連、国家基幹機能のアラスカ移転を完了。さらにロシア系市民のみをアラスカへと疎開させる。
・非ロシア系軍人、抑圧されてきた各共和国政府、生まれたばかりの赤子を党に強制徴兵されていたロシア系市民の一部が政府の政策に反発し、反体制派を組織。共産党政府と反体制派の対立が激化。
・共産党政府による反体制派弾圧に対して、ソレスタルビーイングが武力介入を宣言。
・国連、国内の統制が完全に失われたソ連主導のオルタネイティヴ3を見限り、次期計画選定へ着手。
・日本、霧山教授が対BETA諜報ユニット開発を目指す極秘計画に参加。
西暦1986年。
・ソ連崩壊。ソ連は複数の独立国へ分裂し、アメリカから租借したアラスカに暫定ロシア共和国を樹立。
・内戦で疲弊したソ連軍治安維持部隊の目の前で一般市民たちが頭にかぼちゃを被り、人類に反省を促すダンスから派生した「(ソビエト)連邦に反省を促すダンス」を踊って抵抗の意思を示す様子が世界中で報道される。
・中国・台湾、対BETA共闘条約締結(統一中華戦線結成)。
・日本、抗重力機関搭載試作兵器『凄乃皇』開発に成功。この『凄乃皇』の技術情報の一部は(意図的に)米国に漏洩しており、米国のHI-MAERF計画(戦略航空機動要塞開発)を大きく進展させることに繋がった。
・オリジナルハイヴの規模が推定フェイズ七に到達。他の現存するハイヴもフェイズ六相当まで成長していることが判明。
西暦1987年。
・同年七月。米国、ニューメキシコ州ホワイトサンズで「モーフィアス実験」を実施しG弾(五次元効果爆弾)の制御起爆に成功。G弾開発、量産を目指すサンタフェ計画始動。
・同年十一月。HI-MAERF計画の成果である試作戦略航空機動要塞が、軍のトライアルで圧倒的性能を発揮。ラザフォート場の完全制御、ラザフォート場展開時に発生する余剰エネルギーの増加により荷電粒子砲に加えて試作複列位相エネルギー砲や試作熱プラズマ複合砲等の搭載を実現させたこの規格外の新兵器に軍上層部は驚嘆。試作戦略航空機動要塞に『デストロイ』の名を与え、正式採用を決定した。以降、G弾量産を目指すサンタフェ計画派と戦略航空機動要塞の量産を目指すHI-MAERF計画派の間でG元素をめぐる政治闘争が本格化。
・ 国連、常任理事国に日本・オーストラリアを加える案を承認(計7カ国体制、ただし拒否権は2007年まで凍結)。
・BETA侵攻再開、喀什由来の群れがインド亜大陸へ侵入。
西暦 1988年。
・日米両国が次期オルタネイティヴ計画案を国連に提示。
・米国、サンタフェ計画派の悲願である大量のG弾による飽和攻撃でハイヴを一掃する案。
・日本、非炭素構造擬似生命を用いた情報奪取と降伏勧告を行い、降伏に応じない場合は量産した戦略航空機動要塞と疑似太陽炉搭載機による全ハイヴ同時制圧案。
・日本側は国産戦略航空機動要塞『凄乃皇』の詳細性能の開示、国連軍への疑似太陽炉提供と秘匿技術の限定公開、G弾を集中運用した場合に生じうる重力偏差による地球規模の災害リスクの指摘などを行った。G弾を危険視するユーラシア各国は日本案を支持。さらに米国内でHI-MAERF計画派によって行われたG弾へのネガティブキャンペーンが功を奏し、日本案がオルタネイティヴ4計画として採用される。
・イラク領アンバールに新たなハイヴの建設が開始される。
西暦1989年。
・米国、G弾連鎖起爆実験を実施。実験の結果からG弾集中運用による地球規模の重力偏差リスクが判明。米国防省はG弾ドクトリンを抑止力用途に限定し、開発計画を縮小。戦略航空機動要塞量産を優先する方針を打ち出す。
・国防省の方針転換に不満を持つサンタフェ計画派の一部過激派がNORAD(北米航空宇宙防衛司令部)と軌道港を占拠しクーデターを画策。米国内戦勃発。
・クーデター鎮圧の大義名分を掲げたHI-MAERF計画派、軍に対して試作量産型デストロイの実戦投入を強要。後にクーデターは無事鎮圧されたが、複数のデストロイによる過剰火力投射とクーデター軍によって発射されたBETA着陸ユニット迎撃用核弾頭により多数の犠牲者が……。
「もっとハリウッド映画みたいに団結してくれよ……」
読み終えて真っ先に出た感想がこれだった。
この世界に本来なかった擬似太陽炉を開発し、世界屈指のテロリストになるはずだったテオドールを救済し、1980年代にハイヴ攻略を実現させた結果がこれだ。
何故かソ連が崩壊して、アメリカが内戦を始めた。
思い出すだけで頭が痛くなる。
当時、ヴェーダが「G弾推進派によるクーデターをきっかけにアメリカで内戦が起きる可能性大」という予測演算結果を弾き出した時には、思わず目を疑ったものだ。
クーデターを起こした連中はG弾に魅入られて頭がおかしくなったのか、と心の底から戦慄しかけたが、そういえば一方的に他国にG弾投下したり、クーデターを引き起こして他国の国家全権代理人の暗殺を目論むような連中だった。ネットでマブラヴ星人と揶揄されていただけのことはある。振り返ってみれば一周回って別に驚くことでもなかったのかもしれない。
「とはいえ、これで地球を滅ぼしかねないG弾推進派を潰すことができた」
クーデター鎮圧後、米国政府と軍の中枢はHI-MAERF計画派によって固められた。俺と一緒にブルコスの幹部をやっているお友達もその中にいるから、米国とは当分仲良くやっていけそうだ。
ソ連も崩壊し、中国は因縁ある台湾と協力せざるを得ないほど追い詰められている。欧州は確保してあるシュタージファイルの情報でいくらでも強請れるから、他国にこちらの足を引っ張られる可能性もほぼ潰えた。
駒も揃いつつある。
『凄乃皇』の量産も順調に進んでいる。来年には十号機まで完成予定だ。
将来の月、火星への惑星間侵攻を前提に設計されたこの機体は、全長およそ三百四十メートルと原作の凄乃皇四型よりも遥かに大型化している。
主機関として米国が開発した抗重力機関――ML機関を大幅改良したGリアクターを搭載し、ラザフォート場の完全制御を実現したこの機体表面はヤタノカガミと名付けたレーザー反射コーティングに覆われ、黄金色に輝いている。
このレーザー反射コーティングは、宇宙世紀の臨界半透膜技術を応用した特殊コーティングだ。
さらにラザフォート場展開時に発生する余剰エネルギーを用いて、搭載している擬似太陽炉三基を直列に繋げた直列型太陽炉二基を含む計二十一基の擬似太陽炉を稼動させることで、莫大な量の粒子生成を実現。主砲のGNブラスターや計百五十四基のGNファングを運用してもなお粒子が有り余るほどだ。
その性能は凄乃皇四型の後継機であり、火星のハイヴを焼き尽くしたとされるハーキュリーズ級航宙砲撃要塞に匹敵、あるいは一部では凌駕していると言っていい。
あとはこの機体を動かせる衛士適正と、BETAからの情報奪取能力を兼ね備えた非炭素擬似生命体の完成を待つだけだ。そちらは霧山教授と、最近加わった今年十六歳になったばかりの天才少女に任せてある。
「人類の存亡を賭けた対話の時まで、あと少し……」
レポートから目を離し、秘書が入れてくれたコーヒーを口に含んだ。
カフェインが体に染み渡る。
窓の外には無限に広がる星海が広がっていた。
「少し時間があるし、試作機の様子でも見に行くか」
俺は席を立ち、総裁室を後にした。
「暁の調子は?」
「ばっちりです。木星から届いた新型炉の取り付けも完了しました」
整備主任のおっさんが満面の笑みでそう報告した。
このメンデルの戦術機格納庫には現在、俺の趣味と実益を兼ねて開発された黄金色に輝く試作機が佇んでいる。勿論コスト度外視の機体だ。
GNXF-01『暁』。
この機体には凄乃皇に搭載されているGリアクターを小型化したGジェネレーターと次世代太陽炉二基を搭載している。
木星環境下でのみ製造可能なこの次世代太陽炉は、GN粒子を電力なしで半永久的に生成することが可能だ。
GN粒子の生成にエネルギーを割く必要がなくなったことで、その余剰エネルギーを頭部に搭載した試作段階の収束重核子ビーム砲へと供給することができるようになった。
機体表面は凄乃皇と同じくヤタノカガミで覆われ、内骨格には地球生命の集合無意識と意思の力をエネルギーに転換する特殊構造材を採用した。さらに単独での星間航行を可能にする巡航形態へと変形する機構も備えている。
そしてこの機体は、GN粒子を媒体に量子テレポートを行うことができる。
超重光線級への対策はずっと考えていた。レーザーは粒子ビームと違い、文字通り光速で放たれる。回避が不可能ではないが、困難であることに変わりはない。ならばレーザーを反射できる機体でテレポート光線級吶喊を行えばいいのだ。その答えが、この暁である。
「この機体、量産できたら最強なんだがな」
「流石に無理でしょうな。こいつ一機作るのに、擬似太陽炉搭載機三十機分以上のコストかかるので……」
整備主任が苦笑いを浮かべた。全くもってその通りだ。コストパフォーマンスの観点から量産は端から無理な話だが、この一機だけはどうにか実戦投入まで持っていけた。
最も超重光線級の数が多いであろうオリジナルハイヴは、この暁で攻略してやる。
西暦1991年。
対BETA諜報活動用非炭素擬似生命体完成。
国連軍総司令部によって全ハイヴ同時制圧作戦が発令された。
次回
転生チートオリ主「人間が知的生命である証拠にキラキラ見せてやるよ。テレポートでそっち行くから待ってろ」
あ号くん「くぁwせdrftgyふじこlp」
アンリミテッド火葬戦記編最終回。実質本編のオルタネイティブ火葬戦記編へと続きます。