マブラヴ火葬戦記 作:ポンコツ資源採掘重機駆除業者
アクスマンのお墓を建てるウラ!
西暦1978年。日本帝国で大事件が起きた。
なんと暁グループに属する暁重工で開発中だった次世代試作戦術機三機が、性能試験中に強奪されてしまったのだ。
犯人は帝国軍から派遣され、試作機の開発に携わっていた衛士三人。三人が乗る試作機は試験場を火の海に変え、ウラジオストク方面へと飛び去り姿を消した。後の調査で、三人はいずれもソ連と通じていたスパイであったことが判明する。
帝国政府はソ連に対して厳重に抗議し、即時の機体返却を求めた。しかしソ連は事件への関与を否定。むしろ、強奪された試作機によって基地を破壊された被害者だと主張した。実際、強奪された試作機によって極東ソ連軍基地の一つが急襲され、甚大な被害を被っていたのも事実だった。
その後、帝国はもちろん世界各国が血眼になって試作機の行方を追ったが、結局何の成果も得られなかった。
この事件を受け、威信を傷つけられた帝国では事件の詳細究明と大規模なスパイ狩りが行われた。結果、軍や議会内に潜んでいた東側諸国と通じていたスパイや米国の諜報員らが一斉摘発された。
特に、元枢府の権限縮小法案を通そうとしていた現政権与党内にも複数のスパイが潜んでいたことが判明し、議会は大混乱に陥いった。
このスパイ騒動で議会の権威は大きく失墜し、帝国の政治の主導権は元枢府へと戻されることになる。
☆☆☆
このマブラヴ世界の地球人類は内ゲバが大好きだ。
その証拠に、BETAという異星起源種との戦争が始まっても人類同士の冷戦をやめず、西側東側双方の陣営内でも主導権争いが絶えず、国家という枠内でさえ政治家と武家、秘密警察と国軍などの不毛な争いが続いている。
それでも、俺は思うのだ。
来るべき対話のために。
BETAを地球上から駆逐し、ポンコツ資源採掘重機を送り込んできたシリコニアンに謝罪と賠償を請求しに行くために。人類は団結しなければならない。
というわけで俺は、来るべき対話のために人類を導く計画を立案し、その実現に必要な疑似太陽炉と量子コンピュータ『ヴェーダ』と
この計画の要は、やはり疑似太陽炉だ。
疑似太陽炉とは『機動戦士ガンダム00』に出てくる、電力を使ってGN粒子と呼ばれる特殊な粒子を生成する変換炉である。別名、GNドライブ。
この疑似太陽炉最大の強みは、無法な万能粒子――GN粒子を生成し、制御できる点にある。
GN粒子は圧縮すればビームとなり、慣性緩和効果によって質量そのものを軽減させることもできる。
斥力を発生させる推進剤としても機能するため、大出力スラスターなしで重力下での空中浮遊さえ可能だ。
自在に形成できる特性を活かせば、敵の攻撃や大気圏突入時の熱から本体やパイロットを守るバリアにもなる。
脳量子波通信の触媒となるほか、電波攪乱効果によって目視されるまで感知されないという隠蔽能力も持つ。
高濃度に達すれば電子部品を焼くECM的効果を発揮し、熱変換すれば対象を容易に溶断することもできる。
加えて弾丸やミサイルに込めて発射することすら可能な、まさにほぼ何でもできるチート粒子なのだ。疑似太陽炉を搭載した戦術機は、GN粒子が持つこれらの恩恵をすべて受けることができる。
これまでの戦術機は、あくまで対BETA戦に特化した器用貧乏な兵器だった。人類同士の戦闘に戻れば、戦闘機相手にあっさり敗北する戦力にすぎない。
だが、この疑似太陽炉を搭載した戦術機は違う。
電磁投射砲すら霞む火力を持つビーム兵器。
突撃級BETAの正面装甲さえバターのように斬り裂くビームサーベル。
通常兵器はおろか光線級BETAのレーザーすら防ぐバリア。
既存の戦術機を凌駕する機動力、既存の戦闘機を凌駕する飛行能力、既存の技術では観測すら不可能なステルス能力――これらすべてを兼ね備えた超兵器、それが疑似太陽炉搭載戦術機なのだ。
まさにこの世界の軍事の常識を覆す、革新的な兵器と言える。
その革新的な兵器である試作機が、まさかの強奪されてしまった……というのは冗談だ。今回の強奪事件は、疑似太陽炉搭載機を私設武装組織に横流しするために仕組んだ茶番である。
ソ連と通じていた軍人を、あらかじめ試験機に乗るよう仕組んでおき、性能試験の前日にその売国奴どもを拉致して変装させたメンデル製人造ESP能力者たちと入れ替えておいたのだ。あとは強奪事件を装いつつソ連と売国奴に全責任を押し付け、機体を私設武装組織の秘密拠点に移送するだけでいい。
ついでに足を引っ張りそうな帝国内のスパイもほぼ一掃できて文句なしの結果だ。これで無事、計画を始めることができる。
計画の第一段階として、これから私設武装組織には、疑似太陽炉搭載機を用いた武力介入を行ってもらう。対象は主に東側諸国の首脳部。既に接触して連携を確認している東側諸国の反体制派を支援し、共産党政権を崩壊させて冷戦を早期終結へと導くためである。
原作のソ連上層部は本土を失陥した後もアメリカからアラスカを租借し、BETAと戦いながら冷戦を継続していた筋金入りの連中だ。だが、反体制派と連動するように疑似太陽炉搭載機で要所を襲撃されたら、流石に一溜まりもないだろう。
西側諸国に対しては既に布石を打ってあるため、あまり介入する必要はない。
現在西側諸国では、BETAがもたらす自然環境破壊を強く問題視する環境保護の機運が高まっている。
各国の企業や政治家たちも、己の利益や票を求めてこの流れに乗り始め、その影響で「青き清浄なる世界のために」というスローガンを掲げてBETAやBETAブリッドの排斥を強く主張している
もちろん、この自然環境圧力保護団体も俺の仕込みだ。団体の幹部の一人には俺自身が名を連ねており、残りの八人の幹部も皆、俺の友人たちである。
いずれも軍産複合体や財閥のトップなど世界有数の有力者揃いで、中には米国のBETA由来物質応用兵器開発計画――HI-MAERF計画に深く関わっている人物も混じっている。
最近メンデルで開発された、革新的な若返り薬。あるいは、寿命を倍以上に延ばし体を頑丈にしたうえ、未来予知や読心といった超能力も使える進化した人類になれる手術。そういった餌で釣ったところ、皆快く俺の計画に協力してくれた。
この自然環境圧力保護団体の影響力を上手く使えば、西側諸国への政治介入や世論の誘導も十二分に行えるだろう。
来るべき対話のために。
手段を選んではいられない。
必ずや俺の手で、俺が知る原作の歴史では西暦2043年に発足したらしい人類統合体をより早期に実現させてみせる。
そのためには、やはり彼の力が必要だ。因果に選ばれた主人公補正と、この世界屈指のテロリストになる才能を併せ持つ彼にこそ、この計画の要である疑似太陽炉搭載機は与えられるべきだろう。
「期待しているよ。テオドール・エーベルバッハ」
☆☆☆
ドイツ民主共和国、東西ドイツ国境付近。
「はあ、はあ、はあ……っ!」
白い雪が降り積もる暗闇の中、赤髪の青年――テオドール・エーベルバッハは荒い呼吸を繰り返しながら、義妹リィズの手を引いて雪原を駆けていた。
あと少し。あと少しで、この国を抜けられる。
父は逃走中に道半ばで撃たれた。
母は、倒れた父の傍を離れなかった。テオドールが叫んでも、リィズが泣いて懇願しても、母は微笑んだまま、その場に座り込んだ。
血の繋がりなど関係なく「家族」として扱ってくれた両親。孤児だったテオドールを引き取り、何の見返りも求めずに育ててくれた大切な人たちだった。
その人たちを、テオドールは雪の中に置いてきてしまった。
助けることも、看取ることもできずに。
「いたぞっ! そっちだ!」
遠くから国境警備隊の怒号が響く。今は考える時間さえ、許されていない。
「お兄ちゃん、助け――!」
闇の中から黒い影がリィズへと飛びかかった。
黒い影の正体は国境警備隊が放った軍犬だ。
牙がリィズの脚に食い込む音を、テオドールは確かに聞いた。
「あ……っッ!! ああああああっ……!!」
絶叫が、白い雪原に吸い込まれて消えていく。
「くっ! このおおおっ!」
テオドールは持っていたナイフを、ただ無心で犬の首筋に突き立てた。何度も、何度も。手が血で濡れてもなお。
リィズだけは。
両親が最後に托してくれた、たった一人の家族だけは。
絶対に、守ってみせる。
「大丈夫か……!?」
犬がぐったりと雪に沈むのを確認し、テオドールはリィズの傷に手を当てた。
「う、ん……ちょっと痛いだけ……」
明らかに、ちょっとどころではなかった。裂いた布で押さえても、血はすぐに染み込んでくる。
それでも、立ち止まることは許されない。
「……走れるか?」
「うん、大丈夫だよ……」
顔は少し青白く、声と震えていた。それでも頷くリィズを見て、テオドールは奥歯を噛んだ。
「もう少しだ、我慢してくれ」
国境まで、あとどれくらいか分からない。けれど、もう後ろを見る選択肢はなかった。両親を置いてきた以上、前に進むことだけが、唯一二人の犠牲を意味あるものにする道だった。
「動くな!」
しかし間も無く、眩い光が二人を照らした。
光の向こうから、何人もの足音が雪を踏みしめて近づいてくる。
亡命者狩りを生業としている国境警備隊だ。
「動けば撃つ。逃げられると思うなよ!」
銃口が一斉に、二人へと向けられている。
「惜しかったね。君たちの逃避行は、ここが終点だ」
光を背にして、その中から一人の男が悠然と歩み出る。
軽薄な笑みを浮かべている、如何にも胡散臭い雰囲気の褐色髪の男だった。
「ご両親を捨ててまで頑張ったみたいだけど」
褐色髪の男の視線が、ゆっくりとリィズの方へ移る。
テオドールは反射的に半歩前へ出て、褐色髪の男からリィズを庇おうとした。
「抵抗しても構わないよ。こちらとしては事情聴取の手間が省ける」
褐色髪の男はテオドールの反応を確かめると、心底愉しそうに笑った。
「さて」
褐色髪の男が手を上げ、部下たちに指示を出す。
「付いてきて貰おうか」
国境警備隊に捕えられた亡命者の末路をテオドールは知っている。
待っているのは国家保安省による壮絶な拷問。
自分も、そしてリィズも。
徹底的に尊厳を踏み躙られ、最悪惨たらしく処刑されてしまうだろう。
――そう、テオドールが絶望の底で確信した、その瞬間。
突如、橙色の光が国境警備隊へと降り注いだ。
「……は?」
先ほどまで愉悦に満ちた表情を浮かべていた褐色髪の男が、間抜けな声を漏らした。
「一体何が……」
テオドールも反射的に空を見上げた。
そこにいたのは、東側で見慣れたどの戦術機とも違う、異形の影だった。
背中から迸る橙色の粒子が、まるで翼のように展開されている。
絶望に塗りつぶされていたはずの視界の中で、その機体だけが場違いなほど美しく――まるで熾天使のように、テオドールの目には映った。
「こちらスローネ
有田フラガが設立した私設武装組織に引き渡され、『スローネ』という名を与えられた擬似太陽炉搭載戦術機。
その操縦席の中で、虹彩を金色に輝かせている緑髪の青年が国境警備隊に向けて、何の躊躇いもなく引き金を引いた。
圧縮されたGN粒子が一筋のビームとなって走り、隊員たちの姿を、悲鳴を上げる間さえ与えずに蒸発させていく。
「排除完了……いや、まだ生き残りがいたか」
網膜投影された映像の片隅に、回収目標の近くで足を縺れさせながら逃げる、褐色髪の男の姿が映り込む。
「あまり僕の手を煩わせないでほしいな……人間風情が」
ちっ、と青年が軽く舌打ちをした瞬間、褐色髪の男は何かに気づいたように顔を引き攫らせ、背を向けて雪の中を逃げ出した。
「ふっ、情けない奴」
その無様な姿を眺め、青年は嘲笑うように口の端を上げると、再び引き金を引いた。
こうして褐色髪の男――ハインツ・アクスマンは絶叫すら許されずにこの世界から消滅させられた。
「排除完了。これより、回収任務に移る」
青年の名は、リボンズ・アルマーク。
メンデルという宇宙ステーションで生み出された人造ESP能力者の中でも、特に優れた素質を持って生まれた個体だ。
その性能を見込まれ、私設武装組織の実働部隊に配属された彼にとって、これが初の任務だった。
目的は、自分たちの創造主である有田フラガと『ヴェーダ』が選び抜いた候補者の回収。そして、彼らを自分たちの組織――『ソレスタルビーイング」へと招き入れること。
「見せて貰おうか、テオドール・エーベルバッハ」
雪原に立ち尽くし、橙色の光を纏う機体を畏敬の眼差しで見上げるテオドールへ、リボンズは静かに言葉を零した。
「マスターとヴェーダに選ばれた君の可能性を……」
現在の世界情勢
転生チートオリ主「うおーっ、来るべき対話のために! 青き清浄なる世界のためにぃッー!!(暗躍)」
人類「BETAなんか知らん! それより内ゲバじゃーっ!」
BETA「炭素でできた奴が生命体なわけないので資源として採掘します(ポンコツ)」
……地獄かな?