マブラヴ火葬戦記   作:ポンコツ資源採掘重機駆除業者

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第五話

 

 

 

 西暦1982年。原作世界では1978年に起きていた東ドイツ国家人民軍の高級将校たちを中心とした反体制派によるクーデターが、この世界でも四年遅れで発生した。

 

 このクーデターに対し、東ドイツを統制している国家保安省は直属の軍事組織である武装警察軍を総動員。クーデターの即時鎮圧に乗り出した。

 

 だが両軍が集結し、睨み合った戦場に、

 

「こちらスローネ01(アイン)。これより武力介入を開始する」

 

 突如所属不明の三機の戦術機が乱入した。

 

『スローネ02(ツヴァイ)了解!』

 

『スローネ03(ドライ)了解! 頑張ろうね、お兄ちゃん!』

 

 三機はいずれも極東で強奪された擬似太陽炉搭載試作機――私設武装組織ソレスタルビーイングの機体だった。

 

 内二機の機体操縦席の中には、四年前にソレスタルビーイングによって救い出された兄妹の姿が。

 

「GNステルスフィールド展開」

 

 スローネ03。そう呼ばれていた金髪ツインテールの少女――テオドールの義妹リィズ・ホーエンシュタインの声と共に、彼女の機体背部から大量のGN粒子が解き放たれる。

 

 兄と一緒に救い出されてから四年。彼女はもう、兄に守られるだけの存在ではなくなっていた。ソレスタルビーイングで戦うことを選んだ兄と一緒にいられるように、兄と離れずに済む道を選び、自ら志願して擬似太陽炉搭載機の衛士(マイスター)になったのだ。

 

 リィズは自分の決断を後悔していない。兄と一緒に戦えるし、産休、育休もしっかり取れるらしいから組織に対しての不満もあまりない。

 

 放出された橙色の粒子が雲のごとく戦場全域を覆い尽くし、敵味方問わず通信と索敵を一斉にジャミングする。三機はクーデター軍を一顧だにせず、ただ一直線に広域ジャミングによって混乱している武装警察軍へと牙を剥いた。

 

「お父さんとお母さんの仇……」

 

 機体に装備されているGNハンドガンの照準を武装警察軍の戦術機へと合わせる。リィズが乗っている機体は本来、戦闘支援に長けた機体だ。それでも擬似太陽炉を持たない旧式の戦術機が相手では、その差は埋めようがない。

 

「死んじゃえ……死んじゃえ死んじゃえ死んじゃえッ!!」

 

 絶叫と共に放たれるGNハンドガンの斉射が、橙色の光となって戦場に降り注ぐ。降り注いだ光に貫かれた武装警察軍のMiG-23チボラシュカの装甲が紙のように引き裂かれた。逃げる暇すら与えない、文字通りの蹂躙が始まった。

 

「行け、ファング!」

 

 スローネ02――テオドールの叫びと同時に、彼の乗る機体の背後から牙の形をした無線式オールレンジ攻撃兵器――GNファングが一斉に射出される。

 

 四年前。ソレスタルビーイングによって救われた彼は、その後自らもその一員となって戦う決意を固めていた。

 

「数ばかりゴチャゴチャと……」

 

 ファングは先端から小型のビームサーベルが展開し、意思を持つかのようにチボラシュカの群れへ突き刺さっていく。一機、また一機と、装甲ごと貫かれた機体が火花を散らして沈黙していった。

 

「こんな奴等にやられるか!」

 

 武装警察軍の機体が必死に応戦するが、無駄だった。ファングは銃口からビームを撃ち出すこともできる。

 

 剣であり、銃でもある未知の兵装が四方八方から襲いかかる様は、もはや戦闘ではなく一方的な処刑に近かった。

 

「お前達が、お前らのような連中がいたからこの国は……父さんと母さんはッ!!」

 

 さらにテオドールは実体剣とビーム刃の特性を併せ持つ大型剣――GNバスターソードと、速射に優れたGNハンドガンを構え、ファングによる全方位攻撃に翻弄されている敵戦術機の群れへと突貫する。

 

「やっちゃえ、お兄ちゃん!」

 

 リィズの機体が阿吽の呼吸で援護射撃を浴びせた。

 

「そっちとは性能が、ダンチなのよッ!!」

 

 橙色の粒子ビームが雨のように降り注ぎ、チボラシュカを次々と撃破していく。生き残った機体も、テオドールのバスターソードが一閃するたびに装甲ごと両断された。

 

 武装警察軍の戦術機も突撃砲で反撃を試みるが、機体性能に差がありすぎてまるで歯が立たない。機動力で圧倒され、たとえまぐれで命中弾を得たところで、二機を覆うバリア――GNフィールドを突破すること叶わなず。戦闘内容は終始一方的なものだった。

 

 

 

「やれやれ。任務中にあまりはしゃぎすぎないでほしいな」

 

 他の二機とは一線を画す機体――二基の擬似太陽炉を同期させ、莫大なGN粒子を生成する試作ツインドライブシステムと可変機構を備えた指揮官機の中で、リボンズはやれやれと肩をすくめた。

 

 彼の機体の周囲には、大型四基、小型八基、計十二基のGNフィンファングが整然と旋回している。

 

 二人が激情のままに戦場を駆け抜けている間に、リボンズはとうに自分の任務を終えていた。

 

 眼下には、彼一人によって積み上げられた武装警察軍の戦車や戦術機の残骸の山が広がっている。

 

「まあいいさ。僕は器量があるからね。少しぐらいは大目に見てあげよう」

 

 その日、たった三機の戦術機による武力介入によって、国軍に匹敵する戦力を誇っていた武装警察軍は壊滅した。

 

 武装警察軍を殲滅し終えた三機はその後行方をくらませ、戦況を見守っていたクーデター軍は慌てて東ベルリンへの進軍を再開した。

 

 

 

 

 

「まさか貴様が裏切っていたとはな……ベアトリクス」

 

 ドイツ民主共和国首都、東ベルリン。

 

 クーデター軍によって制圧された国家保安省本部の一室で、国家保安省長官エーリッヒ・シュミットは、自らを裏切った腹心の部下を睨みつけた。

 

 シュミットは東ドイツを統制する立場にありながら、その実ソ連の秘密警察KGBの特務少尉であり、ソ連から核兵器を譲り受け、国民ごと国土を薙ぎ払い、見せかけのBETA討伐の功績で権力を維持することを計画していた男だ。

 

 しかし、その野望はソレスタルビーイングによる暗躍とクーデターによって潰えることになる。

 

「私たちの理想の実現にあなたは邪魔なのよ長官……いいえ、KGB特務少尉殿」

 

 ベアトリクス・ブレーメ。

 武装戦術機大隊『ヴェアヴォルフ』大隊長である彼女は、スパイ摘発等を主任務としているシュミットと同じソ連とも繋がり深いモスクワ派の人間だった。

 

 しかし大隊の隊員たちと共にクーデター軍を率いて現れた彼女は、何の躊躇いもなく同志であり上官であるはずのシュミットへと銃口を向けた。

 

 五年以上前からソレスタルビーイングに与していた彼女は、ずっとこの日のために牙を隠していたのだ。

 

「ベアトリクス隊長。シュタージファイルの確保、完了致しました」

 

「ご苦労様」

 

 虹彩を金色に輝かせている部下からの報告を受けて、ベアトリクスは銃の引き金へと指をかける。

 

「すべては来るべき対話のために。間も無くあの御方の導きによって、私とユルゲンの理想は叶えられるッ!」

 

 人類は全戦力を対BETAに注ぐべき。そう信じているベアトリクスは、己の理想に殉じるために躊躇なく引き金を引いた。

 

 シュミットが処刑されたことで、最後まで抵抗を続けていた国家保安省も陥落。

 

 東ドイツは軍の高級将校アルフレート・シュトラハヴィッツやユルゲン・ベルンハルトらが組織したクーデター軍『救国軍事会議』の手に落ちた。

 

 

 

 

 

 

 

 その日、世界中のテレビ、ラジオ放送、さらには暁グループによって世界に展開されている衛星通信ネットワークサービスまでもが、何者かによって一斉に乗っ取られた。

 

『地球で生まれ育った、全ての人類に報告させていただきます』

 

 乗っ取られたテレビ映像やネット動画には、謎のハゲたおっさんと、その背後で謎に中毒性があるBGMに合わせて踊るカボチャ頭のバックダンサーの姿が映し出された。

 

『私達はソレスタルビーイング。人類に反省を促すために組織された私設武装組織です』

 

 インパクト抜群の電波ジャック映像の中で、謎のおっさんは世界に対してそう力強く宣言した。

 

 東ドイツでのクーデターと世界への武力介入を宣言したテロ組織『ソレスタルビーイング』による世界同時犯行声明。

 

 この二つの大ニュースは、瞬く間に世界中の人々に周知された。

 

 東側諸国の当局は慌てて情報統制に乗り出したが、既に手遅れだった。

 

 革命の機運はもはや止めようがなく、東側陣営の崩壊は時間の問題となりつつあった。

 

 また東側、西側双方で背後のカボチャ頭の踊りが『人類に反省を促すダンス』として謎に大流行してしまった。

 

 

 




次回 海王星作戦

人類が力を合わせればBETAにだって負けません!(ガチ)
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