マブラヴ火葬戦記 作:ポンコツ資源採掘重機駆除業者
疑似太陽炉搭載機スローネを駆るテオドール・エーベルバッハに与えられた任務は、ハイヴ攻略の障害となりうるBETAの排除。特に母艦級や光線級といった厄介な個体を優先して狩ってこいという指令だった。
「こちらスローネ
エレメントを組む義妹リィズの乗る機体と共に戦域へと到達したテオドールの視線の先には、三体の母艦級。その巨体から吐き出された要塞級と光線級の群れが、東ドイツ軍と米軍の戦術機部隊へと襲い掛かっている。
その時、一体の光線級のつぶらな瞳が、一機のバラライカへと照準を合わせているのが偶然にも目に入った。
「っ――」
咄嗟に、射線の間へと機体を割り込ませる。意識するより先に、テオドールの体は動いていた。
疑似太陽炉搭載機には、機体周囲に圧縮したGN粒子を展開することで形成されるバリア――GNフィールドという防御手段がある。照射された光線はそのGNフィールドによって防がれた。
「お返しだッ!」
テオドールは反射的にGNライフルの引き金を引く。反撃として放たれた橙色の粒子ビームが、再照射の準備中だった光線級を貫いて爆散させた。
「次だ」
そのまま機体を光線級の群れへと突貫させる。それは史上初、疑似太陽炉搭載機による単騎での
閃光のように光線級へと迫るテオドールの行く手を要塞級の壁が阻む。だが、要塞級など疑似太陽炉搭載機の敵ではない。強靭な外殻を紙のように貫く粒子ビームに穿たれ、六十メートル超の巨体が次々と地面に崩れ落ちた。
「くたばりやがれ、BETA共ッ!」
密集する光線級の群れへ、GNライフルの粒子ビームを叩き込む。つぶらな瞳をした光線級たちが瞬く間に橙色のビームに貫かれて爆散し、醜い汚い肉片と化した。
『もう、おいてかないでよお兄ちゃん!』
「リィズ、母艦級を一気に殲滅するぞ」
『了解』
エレメントを組んでいるリィズ機が追いつくと、テオドール機の背部アタッチメントと接続した。
『高濃度GN粒子転送完了』
「ありがとう、リィズ」
リィズ機からGN粒子が供給されたのを確認してから、テオドールは機体後部に装備したGNメガランチャーを展開する。その砲口は三体の母艦級へと向けられた。
「いっけええええッ!」
引き金を引く。収束されたGN粒子の奔流が解き放たれ、極光が母艦級を薙ぎ払った。
一体。
二体。
三体。
兄妹の共同作業で放たれた極光に焼かれた母艦級が相次いで崩れ落ちていく。地面が揺れ、衝撃と轟音が大気を震わせた。
「母艦級……撃破」
一息ついて、テオドールは先ほど庇ったバラライカへと秘匿通信を繋ぐ。
「退路を確保する。お前たちはそこから離脱しろ」
返事を待たず一方的に通信を切り、テオドールは機体を反転させた。そのまま追従するリィズ機と共に東ドイツ軍や米軍の退路を確保すべくBETAの群れへと突入する。橙色の閃光が戦場を駆け抜けた。
絶体絶命の危機から救ってくれた未知の機体との通信は、たった数秒間だけだった。離脱しろと告げられただけで、名前も、所属も、何一つ明かされないまま一方的に切断された。操縦席に響いたその声は素っ気なく、短く、しかし不思議と心惹かれる男のものだった。
一体どんな人なのだろう。あの未知の機体はどこの国のものなのだろう。自分を助けてくれた恩人への疑問は尽きない。そして――
「お礼、言えませんでした……」
助けられたウルスラ・シュトラハヴィッツは。別の世界では西ドイツへと一度亡命し、カティア・ヴァルトハイムという偽名を名乗っていた彼女は顔も知らない恩人にいつか直接会って感謝の言葉を伝えたいと、そう強く願った
その願いは、後に実現することになるが――それはまた、別のお話……。
-
☆☆☆
『諸君、海王星作戦は順調に推移している。全機所定通りの再突入に備えよ』
衛星軌道上で待機している俺たちハイブ突入部隊へと通信が入った。
地上での陽動作戦は順調に進行中らしい。人類初の低軌道爆撃や小型電磁投射砲の本格運用によって、BETAの数もかなり減らせたようだ。
軌道降下によるハイヴ突入の時は近い。
決戦前とあって、俺の血もたぎっている。
いよいよ、この俺根尾ロアノーク様の名が歴史に刻まれる瞬間が訪れそうだ。
え、お前誰だって?
酷いなあ。俺だよ俺。普段は暁グループの総裁やっているチート転生者の俺だよ。
今の俺の名前(偽名)は根尾ロアノーク。
暁グループ総裁、有田フラガの役割を影武者のクローンに押し付けて戦場に斑鳩公の名代として来ている日本帝国斯衛軍の大佐だ。
普段は斯衛の方をクローンにやらせているが、たまに息抜きで戦術機に乗りたい時にはこうして立場を入れ替わっている。
神からチート能力を授けられた俺は当然衛士としても優秀なのだ。反応速度、空間認識能力は言わずもがな。読心能力や未来予知能力まで兼ね備えている俺の衛士適正は間違いなく人類最高峰。あらゆる時空の記憶を継承した二次創作アルティメット武ちゃんとだって正面からやり合える自信がある。
そんな俺の正体がバレる心配もない。
ちゃんと鬼の様な仮面で素顔隠してるから。
今回は正式採用された量産型疑似太陽炉搭載戦術機でBETAを直接ぶっ殺せる絶好の機会だったから、コネをフル活用してこの作戦に参加することにした。いやあ、流石は斑鳩公。話が分かる偉い人で助かるわ。スパイ狩りで帝国議会を機能不全にして未曾有の国難を演出し、その間に公を将軍に次ぐ影響力がある政威軍監へと据えておいた甲斐があった。
『国連軌道艦隊司令部より各機へ。時は来た! 全機所定通り突入を開始せよ!』
いよいよ地上への降下の時が来た。
まずは低軌道爆撃に乗じて国連軍と欧州連合軍の戦術機部隊が軌道降下に用いる
次に米軍。
ちなみに米軍部隊の戦術機は全機ステルス搭載機だった。
「根尾ロアノーク、出撃する」
そして最後を飾るのが俺たち帝国斯衛軍と帝国軍戦術機部隊だ。
日本帝国が建造した最新鋭の疑似太陽炉搭載航宙艦から橙色の粒子を纏った帝国軍の戦術機たちが出撃し、大気圏へと突入していく。
その数およそ百機。
黒、白、黄、赤、青と機体色だけでなく調整した粒子の色まで機体ごとに異なる俺たち斯衛軍戦術機中隊十二機もその後に続いた。
ただし、帝国軍と俺たち斯衛軍は再突入殻なしだ。
「GNフィールド展開」
俺たちが乗っている日本帝国軍、日本帝国斯衛軍の新型戦術機『陽炎』。
「GN-Xじゃねえか!」とガンダム00視聴者が言いたくなりそうな姿をしているこの疑似太陽炉搭載戦術機は、盗まれた試作機と同じく機体を衝撃や熱から守ってくれるGNフィールドを展開可能だ。
「見せてやるぜBETA共……転生チート技術で武装した人間様の恐ろしさをな!」
地上から光線級によって照射される迎撃光線をGNフィールドで防ぎ、照射地点に粒子ビームの雨を降らせる。
地から天に。天から地へと。光線と粒子ビームの光の柱が乱立し、やがて地上からの迎撃は完全に沈黙した。
低軌道爆撃と先んじて降下していた部隊が分離後にそのまま質量兵器として地上に叩きつけた再突入殻が予想以上に光線級の数を減らしていたようだ。光線級による迎撃は想定していた規模を遥かに下回っていた。おかげで地上の光線級排除のために消費した粒子量は最小限で済んだ。
「全機無事か?」
ハイヴ内に通じている
『大佐、突入部隊全機健在です』
「よし、ではこれより門からハイヴ内へと突入する。全機、我に続け!」
先行している味方部隊に続くように俺たちもハイヴ内へと突入した。
機体に搭載されている各種センサ類がハイヴ内の構造を解析し、反応炉とG元素生成プラントへの最短ルートを割り出す。
先行していた国連軍、欧州連合軍、米軍部隊の現在位置も把握できた。
ちなみに全機ステルス搭載機で構成された米軍部隊の一部は、明らかに事前の打ち合わせにない独自行動をしていた。こいつらとだけは、何故か通信も繋がらねえ。たぶん先にG元素を確保して取り分以上の量をネコババする気だろう。俺たちにはその程度のインチキステルス通じないからな。狙いがバレバレだ。
「当初の予定通り、部隊を二手に分ける。A分隊は俺と共に反応炉へ、B分隊は米軍より先にG元素を確保してこい!」
『了解』
「G元素も初のハイヴ攻略の栄誉も俺たちがいただく。A分隊全機、突撃ぃっ!!」
『大佐に続けぇ! 帝国万歳! 将軍殿下万歳ィッ!!』
道を塞ぐ要撃級の群れを粒子ビームへ焼き払い、飛びかかってきた戦車級をビームサーベルで斬り払いながら、俺たちはハイヴ最奥への万歳突撃を開始した。
戦術機解説
擬似太陽炉搭載戦術機『陽炎』
日本帝国が開発した新型戦術機。
この世界初の第二世代戦術機に分類される機体であり、歴代ガンダムシリーズでも最強クラスの量産機として名が挙がるGN-X(ジンクス)を参考に作られた機体。既存の戦術機とは隔絶した戦闘能力を持つ。
『陽炎』帝国斯衛軍仕様
通常機とは異なり機体ごとに粒子の色が異なっている(ちなみに転生チートオリ主の乗っている機体の粒子は青色)。
他にも頭部が兜のようなデザイン(「マスラオぽいな……」と言いたくなる)になっていたり、全身刃物のような整備性が終わっている特殊装甲の代わりに機体各位にGNファングを装備することで、近接戦闘能力の向上を図っている。