プランテーションの司令室には、幾つものモニターが整然と並んでいた。
薄暗い室内を照らすのは、画面から放たれる光と、時折点滅する計器の明かりだけ。
正面の大型モニターには、荒野で実機訓練を続ける13部隊の姿が映し出されている。
四機のフランクス。
そして、三機のフランドール。
七機の巨大な機体が、隊列を組みながらゆっくりと前進していた。
まだ動きにはぎこちなさが残っている。
機体ごとに歩幅は微妙に異なり、隊列が崩れかけることもあった。
それでも、コドモたちは何度も位置を修正しながら、少しずつ互いの動きに合わせようとしていた。
ナナは、その光景を静かに見守っていた。
画面の中では、デルフィニウムが進行方向を変え、それに合わせてほかの機体が移動している。
機体との接続状態を示す数値も、訓練開始直後に比べれば落ち着いてきていた。
もちろん、まだまだ課題は多い。
それでも、彼らが自分たちの力で動き始めていることは確かだった。
ナナは小さく息を吐く。
その時だった。
手元の専用端末から、鋭い着信音が響いた。
ナナは画面へ視線を落とした。
表示された通信元を確認すると、わずかに表情を引き締める。
そして、通話を開いた。
「はい、ナナです」
端末の向こうから、落ち着いた声が聞こえてくる。
ナナは黙って耳を傾けた。
最初はいつもの穏やかな表情を保っていたものの、話が進むにつれて、その眉が少しずつ寄っていく。
「……ええ」
相手の言葉を確認するように、小さく頷く。
「……実機での起動テスト、ですか?」
ナナは、もう一度モニターへ視線を向けた。
画面の中では、七機の巨人が夕日に照らされた荒野を進んでいる。
その姿を見つめながら、ナナは静かに話の続きを聞いていた。
─────
やがて、長かった訓練が終了した。
夕日が地平線の向こうへ沈み始め、荒野を黄金色に染めている。
訓練を終えたフランクスとフランドールは、次々とプランテーションへ帰還した。
巨大な格納庫の扉が開き、七機の機体がゆっくりと内部へ進んでいく。
重厚な機械音が、駐機ドッグに響き渡った。
整備員たちが機体の周囲へ集まり、それぞれの状態を確認し始める。
コックピットのハッチが開き、コドモたちが次々と降り立った。
「はぁぁ……疲れたぁ……」
フトシが大きく息を吐く。
「何言ってんだよ! まだまだ余裕だろ!」
ゾロメが得意げに胸を張る。
その隣では、ミクが呆れた顔をしていた。
「さっき転びかけたの、誰のせいだと思ってんのよ……」
「う、うっせーな!」
そんなやり取りを聞きながら、ほかの仲間たちも歩き始める。
初めての実機訓練。
予想していた以上に神経を使うものだった。
体そのものを激しく動かしていたわけではない。
それでも、長時間にわたって巨大な機体とつながり続けた疲労は、確かに体に残っていた。
「んん〜っ!」
一方、クロは両腕を大きく伸ばし、気持ちよさそうに背筋を反らしていた。
その表情には、周囲ほど強い疲れが見られない。
それどころか、初めて本格的に動かしたグラジオラスの感覚が、まだ少し楽しいらしかった。
そんなクロへ、隣を歩いていたツグミが声をかけた。
「ナオミから聞いたんだけどさ。コネクトする時何も感じなかったって本当か?」
「ん?」
クロが顔を向ける。
「本当だよ! 痛くも痒くもなくて、本当に何も感じなかった」
あまりにもあっさりとした返事だった。
ツグミは数秒ほど目を丸くする。
そして、感心したように声を上げた。
「マジかよ……凄えな、クロ! たった一回の搭乗でそこまで機体に馴染むなんてよ!」
「ふふん、でしょ〜?」
クロは嬉しそうに笑った。
そして、両手を腰に当て、えへんと胸を張る。
長い黒髪が、肩の後ろでふわりと揺れた。
褒められてすっかり得意げになっている。
ツグミはそんな彼女を見て、思わず笑った。
「ははっ、調子に乗るのも早えな!」
「だって、ツグミが褒めてくれたんだもん!」
「そりゃ褒めるだろ。普通、そんな簡単にできるもんじゃねえし」
ツグミの言葉に、クロはますます嬉しそうに笑う。
その様子を、ナオミは隣で微笑ましく見つめていた。
昨日は接続の負荷によって意識を失い、鼻血まで流していたクロ。
あの時のことを思えば、今日こうして元気に笑っている姿を見るだけで、胸を撫で下ろしたくなる。
もちろん、気になることは残っていた。
自分とはあまりにも異なる、クロの接続時の感覚。
けれど、今は無事に訓練を終えられたことを喜びたい。
ナオミはそう思い、クロへ何か声をかけようとした。
その時だった。
「ねえ、教えて!」
鋭い声が、駐機ドッグに続く廊下へ響き渡った。
クロたちは、一斉に足を止めた。
声のした方へ振り向く。
そこにいたのは、イチゴだった。
その正面にはゼロツーが立っていた。
「あ、あの子……」
クロが小さく呟く。
今朝の食堂でも見かけた、あの不思議な少女だった。
何者なのか、まだ詳しく聞いていない。
そんなクロの様子を見て、ツグミが思い出したように顔を近づけた。
「そういえばクロにはまだ言ってなかったな。あの子と乗ったステイメンは、3回目には必ず命を落とすっていう『パートナー殺し』のピスティルなんだ」
「パートナー殺し……それが、あの人?」
クロは少し驚いたように瞬きをした。
そして、ゼロツーの方へ小さく指を向ける。
その横で、ナオミが静かに頷いた。
「そうよ。ナナさんが言っていたけれど……あの子には叫竜の血が流れているそうなの」
「きゅうりゅうの、ち……?」
クロは首を傾げた。
叫竜。
自分たちが戦うことになる、人類の敵。
その血が、あの少女の体に流れているという。
言葉の意味は理解できる。
けれど、それが具体的にどういうことなのかは、クロにはまだよくわからなかった。
(……叫竜って、あの大きいのだよね)
昨日、グラジオラスで殴り飛ばしたという怪物。
その血を引く少女。
クロは、もう一度ゼロツーを見つめた。
しかし、その少女は周囲から向けられる視線など気にしていないようだった。
ただ、目の前のイチゴを興味深そうに見つめている。
そして、イチゴは真剣な表情でゼロツーと向き合っていた。
◇
「どうしてヒロなの?」
イチゴの声が響く。
その問いに、ゼロツーは口に咥えていた棒付き飴をゆっくりと取り出した。
「ヒロ……? それって、僕のダーリンのこと?」
「……またその呼び方」
イチゴは眉をひそめた。
『ダーリン』
その言葉を聞くたびに、胸の奥がざわつく。
自分でも、どうしてこんなに気になるのか、うまく説明できなかった。
けれど、ゼロツーがヒロをそう呼ぶことが、どうしても引っかかる。
イチゴは小さく息を吸った。
そして、まっすぐゼロツーを見据えた。
「あの時、叫竜を倒してくれたことには感謝してるわ。でも……これ以上ヒロに関わるのはやめてほしい!」
その言葉には、強い決意が込められていた。
昨日、ゼロツーがヒロと共に叫竜を倒したこと。
そのおかげで、自分たちが助かったこと。
それは、紛れもない事実だ。
感謝していないわけではない。
しかし、それとこれとは別だった。
「なんで?」
ゼロツーは、あっけらかんと聞き返した。
まるで、何が問題なのかわからないとでも言うように。
その態度が、イチゴの胸をさらにざわつかせた。
「あなたはうちの隊じゃないから。どうせ居なくなるなら……ヒロにヘンな期待をさせないで!」
イチゴは言い切った。
ヒロは、ようやくフランクスに乗れるかもしれないという希望を見つけた。
けれど、その希望がゼロツーにしかつながっていないのだとしたら。
彼女がいなくなった時、ヒロはどうなるのか。
また、あの時のように傷ついてしまうのではないか。
そんなことを考えると、黙っていられなかった。
「へえ〜……」
ゼロツーが、ゆっくりと笑った。
その笑みには、どこか相手を試すような色が浮かんでいた。
そして、一歩。
イチゴとの距離を詰める。
「君、ダーリンの何なの?」
その問いは、思いがけず胸の奥へ入り込んできた。
ヒロの何なのか。
幼い頃から一緒にいた仲間。
同じ13部隊の一員。
ずっと、気にかけてきた相手。
けれど、それらをすべて口にすることはできなかった。
イチゴは背筋を伸ばす。
そして、毅然と答えた。
「……この隊のリーダーだよ」
ゼロツーは、じっとその顔を見つめた。
そして、さらに近づく。
イチゴは思わず身構えた。
顔が近い。
息がかかるほどの距離だった。
ゼロツーは、まるで何かを確かめるように、イチゴの匂いを嗅いだ。
イチゴの耳が、わずかに赤くなる。
それでも、目を逸らすまいと必死に堪えた。
こんなことで怯んでたまるか。
そう思った、次の瞬間。
──ぺろっ。
「ッ!?」
突然、頬へ奇妙な感触が走った。
ゼロツーが、イチゴの頬を舐めたのだ。
イチゴは反射的に顔を引いた。
慌てて頬へ手を当てる。
驚きと困惑が入り混じり、言葉にならなかった。
ゼロツーは、そんな反応を楽しむように小さく笑う。
そして、唇を軽く湿らせた。
「……甘いね。嫌いじゃないよ」
そう言い残すと、あっさりと踵を返した。
長いピンク色の髪が、ふわりと揺れる。
まるで気まぐれな猫のように、ゼロツーは何事もなかったかのように歩き去っていった。
イチゴは、その背中を睨みながら見送った。
頬に当てた手を、なかなか離せない。
突然の出来事に、怒るべきなのか、驚くべきなのかすらわからなかった。
少し離れた場所では、クロたちもその光景を見ていた。
「…………」
ナオミは不快そうに眉をひそめている。
ツグミは、去っていくゼロツーの背中を見つめながら、心の中で呟いた。
(なんだアイツ……)
あまりにも自由奔放だった。
相手が困惑していようと、周囲がどう思おうと、まるで気にしていない。
クロもまた、不思議そうに首を傾げていた。
(……変わった子だなぁ)
食堂で見かけた時も、そう思った。
けれど、今の出来事を見て、ますますわからなくなってしまった。
あの少女は、一体何を考えているのだろう。
クロは、ゼロツーの姿が消えていくまで、じっと見つめていた。
─────
翌朝。
ミストルティンの中庭には、柔らかな陽光が降り注いでいた。
木々の葉が風に揺れ、地面に淡い影を落としている。
空は晴れ渡り、寄宿舎の周囲には穏やかな時間が流れていた。
その中庭で、二人の少年がボールを蹴り合っていた。
何気ない遊びの最中、フトシがぽつりと口を開いた。
「俺たち、ちゃんと戦えるようになるのかな。あの叫竜ってヤツに……ヒロが乗ってたフランクスみたいに」
その声には、少しだけ不安が滲んでいた。
昨日まで、自分たちは訓練を受ける立場だった。
しかし、これからは本当に叫竜と戦うことになる。
あの巨大な怪物を目の当たりにした今、怖くないと言えば嘘になる。
フトシはボールを蹴り返した。
ゾロメはそれを足先で受け止める。
「はあ? 言っとくがあれは、乗ったうちに入んねえよ! 落ちこぼれのアイツに動かせるわけねえだろ」
吐き捨てるような声だった。
「でも実際、動いてたじゃん。パパたちもなんかヒロのこと気にかけてるみたいだし」
フトシは首を傾げる。
実際にストレリチアは動いていた。
そして、叫竜を倒した。
あの機体からヒロが降りてきたことも、確かに見ている。
その事実を、なかったことにはできない。
ゾロメは何か言い返そうと口を開いた。
しかし、その前に別の声が割り込んだ。
「聞けば、あのゼロツーというピスティル、一人でもフランクスを動かせる特殊体質みたいですよ。みなさんもご覧になったでしょう、あの四足歩行の異形を。つまりヒロは、ただあれに乗せられていただけに過ぎないということです」
少し離れた柱のそば。
そこには、ミツルがいた。
柱に背を預け、腕を組んだまま、冷ややかな視線を向けている。
その口調は落ち着いていた。
けれど、どこか相手を見下すような響きがあった。
ゾロメが振り返り、得意げに笑った。
「ほーら見ろ! アイツに先越されたなんて、俺は絶対に認めねえぞ!」
まるで、自分の考えが証明されたとでも言うようだった。
「……本当か? 一人でフランクスを動かすなんて危険だって、前に聞いた気がするが」
一方で、近くに座っていたツグミが疑問を口にした。
彼は腕を組み、ミツルへ視線を向ける。
一人でフランクスを動かすこと。
それが、どれほど負担の大きいことなのか。
詳しくは知らない。
けれど、危険だと聞いた覚えはあった。
ミツルは、そんな疑問にも動じなかった。
「あれだけの重傷を負っていながら、昨日の朝にはすでに完治していました。仮に傷だらけになったとしても翌日にすぐ回復するのなら、一人で機体を動かすことなど余裕ということです」
「…………」
ツグミは、少し眉を寄せた。
ミツルの説明には、それなりに筋が通っているようにも聞こえた。
しかし、どうにも納得できない。
(そうか……? 本当にそうなのか?)
昨日のゼロツー。
食堂で見た、あの自由奔放な少女。
そして、叫竜と戦っていたストレリチア。
それらを思い返しても、ツグミの中には何か引っかかるものが残っていた。
その時だった。
中庭の通路を、一人の少年が歩いていた。
ヒロだった。
首に、タオルを巻いている。
どうやら、自主訓練を終えて戻ってきたようだ。
ゾロメは、その姿を見つけるとにやりと笑った。
「あんまり調子こいてんじゃねえぞッ!」
次の瞬間。
勢いよく蹴り出されたボールが、一直線にヒロへ飛んだ。
鈍い衝撃が、ヒロの背中へ走る。
「ッ……!」
ヒロは思わず前へよろめいた。
抱えていたタオルが地面に落ちる。
跳ね返ったボールは、高く空へ舞い上がった。
フトシは、呆然と立ち尽くした。
まさか、本当にヒロへ向けて蹴るとは思っていなかったのだ。
しかし、当のゾロメは大喜びだった。
「ビンゴォ! 俺様スゲー!!」
両手を上げ、得意げに笑う。
その声が、中庭に響き渡った。
「おいッ!!」
低い怒声が、空気を切り裂いた。
ゾロメが振り返る。
そこには、ツグミが立っていた。
先ほどまでの日陰から飛び出し、大股でこちらへ歩いてくる。
その表情には、明らかな怒りが浮かんでいた。
「……なんだよ?」
ゾロメは眉をひそめる。
しかし、ツグミは足を止めなかった。
「お前、あのピスティルが来てからヒロに突っかかることが増えたが……なんでそう邪魔ばっかりするんだ!!」
その声には、普段の明るさがなかった。
本気で怒っている。
それが、誰の目にもわかった。
ゾロメは一瞬だけ目を丸くした。
しかし、すぐに不満そうに顔をしかめる。
「はあ!? お前、女にただ乗っけてもらっただけの泣き虫野郎を庇う気かよ!?」
その言葉が響いた瞬間。
地面へ落ちたタオルを拾おうとしていたヒロの手が、ぴたりと止まった。
ヒロは、顔を上げられなかった。
女に、ただ乗っけてもらっただけ。
その言葉が、胸の奥へ深く突き刺さる。
自分は本当に、ストレリチアを動かしたのだろうか。
それとも、ゼロツーの力に助けられていただけなのだろうか。
そんな不安が、再び顔を覗かせた。
一方、ツグミは深いため息を吐いた。
怒りを通り越して、呆れたような表情だった。
「お前……自分が下だからって、上にいるヒロを強引に下げようとしてんのか? 無様で見てらんねーよ」
「……あぁ?」
ゾロメの顔が、みるみる険しくなる。
その言葉は、彼の自尊心を真正面から傷つけた。
自分が下だということ。
ヒロが上だということ。
そのどちらも、ゾロメには認められなかった。
「 なんだよ、やんのかぁ!?」
ゾロメが一歩踏み込む。
額と額が、強くぶつかった。
「やってみろよ!!」
ツグミも一歩も引かない。
「上等だこらァ!!」
互いの胸倉を掴み合う。
今にも拳が飛び交いそうな距離だった。
フトシは、慌てて二人を見やる。
「ちょ、ちょっと……」
しかし、完全に頭へ血が上っている二人には、その声は届かなかった。
その時だった。
「ちょっと! 何やってるの!?」
「おいおい!!」
偶然、イチゴとゴローが中庭へやって来てきた。
二人は状況を見て、すぐに顔色を変える。
ゴローは迷わずゾロメの背後へ回る。
そして、両腕を使って彼を羽交い締めにした。
「おい、落ち着けって!」
「離せよゴロー!」
ゾロメが暴れる。
その一方で、イチゴはツグミの前へ立ちはだかった。
「止めなって!」
しかし、ツグミの怒りは収まらない。
「ゴロー!! そのまま押さえてろ!! 俺がコイツの性根を叩き直してやるッ!!」
そう叫びながら、裾をまくり腕をぐるぐると回し始めた。
(いや、そんなつもりで押さえてないぞッ!?)
ゴローの顔が引きつる。
ゾロメを止めるために押さえているのであって、殴らせるためではない。
しかし、ツグミは完全にそのつもりだった。
「ツグミ、落ち着けって!」
ヒロも慌てて声をかける。
けれど、ツグミは止まらない。
普段のツグミなら、ここまで頭に血を上らせることはない。
しかし、一度怒りに火がつくと、周囲が見えなくなってしまうことがある。
今は、まさにその状態だった。
誰もが、拳が振り下ろされると思った。
その時──
「ツグミィィイイイ!!!」
林の奥から、凄まじい叫び声が響いた。
「!?」
ヒロが振り向く。
イチゴも、反射的に声のした方へ視線を向けた。
木々の間。
そこから、猛烈な勢いで走ってくる人影が見えた。
長い黒髪。
見慣れた制服。
そして、驚くほどの速度で地面を蹴る足。
「クロ!?」
イチゴが目を見開いた。
クロだった。
その表情は、いつもののんびりしたものとは違う。
必死だった。
何かを止めなければならないという、一心で走っている。
「!」
ヒロとイチゴは、瞬時に危険を察知した。
そして、ほとんど同時に脇へ飛び退いた。
次の瞬間。
クロが、地面を強く蹴った。
「止めなさあああああああああいッ!!!」
──ドゴッ!!
凄まじい勢いのドロップキックが、ツグミの右肩へ直撃した。
「ぐうっ……!!?」
ツグミの体が、大きく吹き飛んだ。
地面に叩きつけられ、そのまま数メートルほど転がっていく。
その場にいた全員が言葉を失った。
一瞬の出来事だった。
先ほどまで殴り合い寸前だったツグミが、今は地面に転がっている。
そして、蹴りを放ったクロはくるりと体勢を整えた。
地面へ着地すると同時に受け身を取り、軽やかに立ち上がり周囲を見回す。
どうやら、殴り合いは止まったらしい。
それを確認すると、クロはすぐにツグミのもとへ駆け寄った。
「ごめんね、ちょっと強く蹴りすぎちゃったかも……大丈夫……?」
地面にしゃがみ込み、心配そうに顔を覗き込む。
「あ、ああ……大丈夫だ……」
ツグミは右肩を押さえながら、何とか起き上がった。
痛みに顔をしかめる。
しかし、先ほどまでの怒りは、すっかり消えていた。
代わりに、少しばかり情けなさそうな表情が浮かんでいる。
「……はぁ……」
ツグミは深く息を吐いた。
そして、ゆっくりと顔を上げる。
「すまん……怒りで頭に血が上って、また周りが見えなくなった」
その声には、素直な反省が滲んでいた。
ツグミは一人ずつへ視線を向け、静かに頭を下げた。
「……悪かった」
ゴローは、ようやく肩の力を抜いた。
イチゴも、ほっとしたように息を吐く。
もちろん、痛みが消えたわけではない。
けれど、クロが本気で自分を止めようとしてくれたことはわかっていた。
そして、自分がどれほど周りを見失っていたのかも。
一方、ゾロメは不機嫌そうに鼻を鳴らした。
「けっ!」
そして、ぷいと顔を背ける。
謝罪を素直に受け入れる気分ではないらしい。
「…………」
ヒロは、黙って拳を握っていた。
ゾロメの言葉が、何度も頭の中を繰り返す。
女にただ乗っけてもらっただけ。
落ちこぼれ。
泣き虫野郎。
それらの言葉が、胸の奥へ重く沈んでいた。
本当は、自分だって信じたい。
あの時、確かにフランクスに乗れたのだと。
自分の力でもう一度空へ飛べるのだと。
けれど、まだ何も証明できていない。
「……チャンスさえあれば、俺だって……!」
ヒロが、絞り出すように呟いた。
その声を、イチゴは聞き逃さなかった。
「……ヒロ」
心配そうに、その名を呼ぶ。
ヒロは顔を上げない。
ただ、強く拳を握りしめていた。
イチゴは何か言葉をかけようとした。
しかし、その時だった。
ポケットの中で、端末の着信音が響いた。
イチゴは端末を取り出した。
画面に表示された名前を確認すると、小さく呟く。
「ナナ姉からだ」
そして、メッセージを開いた。
イチゴはメッセージの内容を確認していた。
やがて確認し終えると、端末を閉じる。
「何だったの?」
ヒロが尋ねた。
イチゴは顔を上げ、周囲の仲間たちへ聞こえるように声を張った。
「全員、19時にブリーフィングルームに来てって。何か話があるみたい」
「……ブリーフィングルーム?」
ツグミは右肩をさすりながら、少し考え込む。
クロは不思議そうに瞬きをした。
一体、何の話があるのだろう。
─────
午後七時。
ブリーフィングルームには、13部隊のコドモたちが集まっていた。
室内の正面には、大型モニターが設置されている。
その前に立っていたのは、ナナとハチだった。
コドモたちは、思い思いの表情で二人の説明を聞いていた。
「……俺とクロが、実機で模擬戦ですか?」
ヒロが、驚いたように呟いた。
その隣では、クロもぱちぱちと瞬きをしている。
ナナは穏やかに頷いた。
「ええ、そうよ」
続いて、ハチが説明を加える。
「内容次第では正式なパラサイトに、960の場合はフランドールの正規パイロットとして選出することも検討している」
「!」
その言葉を聞いた瞬間、ヒロの表情が変わった。
正式なパラサイト。
その言葉が、胸の奥に強く響いた。
これまで、自分にはもう道が残されていないと思っていた。
フランクスに乗れなかった。
パラサイトとして認められなかった。
けれど、もし今回の模擬戦で結果を残せれば。
後ろから、ゴローがそっと肩を叩いた。
「やったな、ヒロ!」
その声には、心からの喜びが滲んでいた。
ヒロは振り返り、小さく笑った。
まだ決まったわけではない。
けれど、確かにチャンスが与えられたのだ。
その事実が、何より嬉しかった。
「っ!」
クロも同様に顔を輝かせた。
正式なパイロット。
そうなれば、自分も13部隊の一員として戦える。
みんなと一緒にいられる。
その可能性が、目の前に広がっていた。
「やったね、クロ!」
隣のナオミが、嬉しそうに声をかける。
「うん!」
クロは元気よく頷いた。
その笑顔には、迷いがなかった。
しかし、まだ話は終わっていなかった。
「まずは、016のパートナーだが──」
ハチが口を開いた、その時。
「僕が行くよ」
軽やかな声が、部屋の入り口から響いた。
全員が振り向く。
そこに立っていたのは、ゼロツーだった。
「ゼロツー……!」
ヒロが、驚きと喜びの入り混じった声を上げる。
ゼロツーは、そんな彼を見て満足そうに笑った。
「だって、僕のダーリンなんだからさ」
その声には、何の迷いもなかった。
当然のことを言っている。
そんな口調だった。
しかし──
「待ってください!」
イチゴが勢いよく手を挙げ、まっすぐナナとハチを見つめていた。
「パートナーは、私にやらせてください」
「イチゴ……?」
ヒロは戸惑った。
イチゴはすでにゴローというパートナーがいる。
そんな彼女が、なぜ自分と組もうとするのか。
イチゴは真剣な表情のまま、言葉を続けた。
「彼女は私たちの部隊の所属ではありません。それに、ヒロの適性を見るだけなら……アタシがパートナーでも良いはずです」
その声には、確かな決意があった。
ヒロに、もう一度チャンスを与えたい。
彼が本当にフランクスへ乗れるのか、確かめたい。
その思いは本物だ。
しかし、同時に。
ゼロツーに、これ以上ヒロを近づけたくない。
そんな感情も、胸の奥にあった。
「それならイチゴである必要も無いでしょう」
不意に、皮肉めいた声が割り込んだ。
ミツルだった。
彼は腕を組み、冷ややかな笑みを浮かべている。
「第一、ゴローというパートナーがありながら、ヒロとも乗るだなんて」
イチゴは思わずゴローへ視線を向けた。
ゴローは少し困ったように笑っていた。
そして、気にしなくていいと言わんばかりにひらひらと手を振る。
「こーら、勝手に喋らないの」
ナナが穏やかな声で場を制した。
そして、ゼロツーへ視線を向ける。
「ゼロツー。ストレリチア使用の許可は、本部から降りていないわ。だから今回のヒロのテストは、この中の誰かに頼むことになるの」
ストレリチアが使えない。
つまり、昨日と同じ組み合わせで試すことはできないということだ。
ゼロツーはつまらなさそうに肩をすくめる。
「な〜んだ、つまんないの」
そして、軽く息を吐いた。
「まあいいよ、まだこの前の怪我が癒えてないしね」
「……え?」
ヒロは、思わず顔を上げた。
昨日の朝。
ゼロツーの体には、傷らしい傷が見当たらなかった。
あれほど怪我をしていたのに、もう治っているように見えた。
「え、ちょっと……!」
ヒロが声をかける。
しかしゼロツーは気にした様子もなく歩き始めた。
イチゴの前で足を止める。
イチゴは反射的に身構えた。
昨日、頬を舐められたことが頭をよぎる。
思わず、その頬へ手を当てた。
ゼロツーはただ楽しそうに笑った。
すると、イチゴの肩へ軽く手を置く。
「じゃあ、君に譲ってあげるよ。やってみるといいさ」
その言葉にイチゴは少しだけ眉をひそめた。
まるで、ヒロが自分のものだとでも言うような口ぶりだった。
ゼロツーは、イチゴの耳元へ顔を寄せた。
「……ダーリンによろしくね」
「……っ」
イチゴの表情が、硬くなる。
ゼロツーは、それ以上何も言わなかった。
満足そうに微笑むと、静かに踵を返す。
そして、ブリーフィングルームを出ていった。
イチゴは、その背中を強い視線で見送った。
「……じゃあイチゴ、任せるわね」
ナナが、静かに声をかける。
「……はい」
イチゴは力強く頷いた。
その隣で、ヒロはまだ扉の方を見つめていた。
「ゼロツー……」
小さくその名を呼ぶ。
返事はなかった。
ハチは、そんなやり取りを気に留める様子もなく、次の説明へ移った。
「では、この中で016の相手を買って出る者は?」
「はいッ!!!」
問いかけが終わるよりも早く、ゾロメが勢いよく手を挙げた。
ミクが、驚いて隣を振り向く。
「げぇッ!? ちょっと、何勝手に──」
しかし、ゾロメは構わず胸を張った。
「あいつらに俺様の実力を見せてやるんだよ!」
その目は、イチゴとヒロの方を向いていた。
中庭での出来事。
ツグミに言われたこと。
そして、ヒロが自分たちより先にフランクスへ乗ったという事実。
それらが、まだゾロメの中で燻っていた。
今回の模擬戦は、自分の実力を証明する絶好の機会だった。
ミクも一瞬だけイチゴへ視線を向ける。
少し迷った後、手を挙げた。
「……やります」
「決まりね」
ナナが頷く。
ハチは端末へ目を落とし、続けて口を開いた。
「次に、960の相手を買って出る者は?」
「クロはパイロットだから、出来れば同じパイロットにやってもらいたいわ」
ナナが補足した。
その言葉に、数人が顔を見合わせる。
フランドール同士の模擬戦。
それは、パイロットにとっても貴重な訓練になるはずだった。
しかし、誰が相手を務めるのか。
短い沈黙が流れた、その時──
「俺がやる」
ツグミが、すっと手を挙げた。
「ツグミ?」
クロが顔を向ける。
その隣で、ナオミが少し心配そうに眉を寄せた。
「ツグミ、大丈夫なの……?」
彼女の視線は、ツグミの右肩へ向けられていた。
中庭で、クロのドロップキックを受けた場所だ。
ブリーフィングルームへ来る途中も、時折肩をさすっていた。
その様子を見ていたナオミとしては、心配せずにはいられなかった。
しかし、ツグミは軽く笑った。
「怪我は大丈夫だ、このくらいなんてこと無い。……ただ、今は気持ちを晴らしたいんだ。八つ当たりみたいになっちまって悪いがな」
その声には、少しだけ申し訳なさが混じっていた。
昼間のことを、まだ引きずっているのだろう。
ゾロメと衝突したこと。
怒りに任せて、周囲が見えなくなったこと。
そして、クロに止められたこと。
それらを思い出すと、何とも言えない気分になる。
けれど、模擬戦で思い切り体を動かせば、少しは気持ちを切り替えられるかもしれない。
そんな考えだった。
クロはそんなツグミを見つめ、にっこりと笑った。
「全然大丈夫だよ!」
あまりにも明るい返事だった。
ツグミは一瞬だけ目を丸くする。
「そうか……」
少し照れくさそうに笑った。
かつては、同じフランクスへ乗ろうとした二人。
しかし、今はそれぞれ別のフランドールへ乗っている。
そんな二人が、今度は模擬戦で向かい合うことになる。
そのことが、クロには少し楽しみでもあった。
「じゃあ、これで決まりね」
ナナが、穏やかに頷いた。
ハチは全員を見渡す。
そして、淡々と告げた。
「模擬戦は明朝に行われる──」
その時だった。
「はいはいはーい!! 今すぐやらせてください!!」
ゾロメが、勢いよく立ち上がった。
待ちきれないとでも言うように目を輝かせていた。
せっかくのチャンスだ。
明日まで待つなど、我慢できない。
そんな様子だった。
ハチは、しばらくゾロメを見つめた。
そして、手元の端末へ視線を落とす。
数秒ほど、何かを確認した。
「……では、10分後に行う」
「!」
室内の空気が、一瞬止まった。
それは、あまりにも突然の決定だった。
ヒロは思わず目を見開く。
イチゴも、少し驚いたようにハチを見つめた。
ナオミはクロへ視線を向ける。
「え?もう?」
クロはぱちぱちと瞬きをした。
明日だと思っていた模擬戦。
それが、今から始まることになったのだ。
次の瞬間。
クロの顔に、嬉しそうな笑みが広がった。
(……そっか! もうすぐなんだ!)
胸が、どきどきし始める。
正式なパイロットになれるかもしれない。
その機会が、すぐ目の前まで来ていた。
─────
ブリーフィングが終わり、コドモたちはそれぞれ準備へ向かった。
男子棟の部屋では、ヒロとゴローが二人きりになっていた。
ゴローはいつもかけている眼鏡を外している。
白地の布でレンズを丁寧に拭いていた。
「ゾロメの奴、あんだけ悔しがってたんだな〜」
苦笑交じりに呟く。
その言葉に、ヒロは少しだけ視線を落とした。
「……ごめん。イチゴは、ゴローのパートナーなのに」
ヒロの声には、申し訳なさが滲んでいた。
ゴローとイチゴ。
二人はすでにデルフィニウムのパートナーとして認められている。
その間に自分が入り込むような形になってしまった。
それが、少し気がかりだった。
ゴローは眼鏡のレンズを光にかざして確認し、眼鏡をかけ直す。
「気にすんなって」
穏やかな声だった。
ヒロは顔を上げる。
その時、端末の着信音が響いた。
ヒロはポケットから取り出し、画面を確認する。
「準備できたって?」
ゴローが尋ねた。
「うん」
ヒロは小さく頷き、端末をしまった。
「……じゃあ、行ってくる」
ゆっくりと立ち上がる。
その足取りには、少しだけ緊張が滲んでいた。
ゴローは、そんなヒロの背中を見つめる。
「おう、後でな」
ヒロが扉へ向かう。
その手が、ドアノブへ伸びた時だった。
「ヒロ、気にすんなよ。あいつ、一度言い出すと聞かないからさ〜」
ゴローが、いつもの調子で声をかけた。
ヒロは振り返った。
ゴローは、穏やかに笑っている。
その顔には、少しも怒りや不満がなかった。
ただ、友達を応援したいという気持ちが浮かんでいた。
ヒロは小さく笑った。
そして真剣な表情へ戻る。
「俺……このチャンスを絶対にものにしてみせる……!」
その声には、強い決意が込められていた。
もう逃したくない。
ようやく巡ってきた、自分の可能性。
それを今度こそ掴みたい。
ゴローはそんなヒロを見つめ、温かく笑った。
「ああ、お前ならできるよ」
その言葉にヒロは力強く頷き、部屋を後にした。
◇
一方、女子棟の部屋ではクロとナオミが、二人で話していた。
窓の外には、夕暮れの光が残っている。
部屋の中には、静かな時間が流れていた。
「これで良い成績出したら、正式にパイロットになれるんだね!」
クロが嬉しそうに声を弾ませた。
「そうね」
ナオミが優しく頷く。
その返事を聞くと、クロはさらに身を乗り出した。
「それってさ……みんなと一緒に居られるって事だよね!」
その言葉は、あまりにもまっすぐだった。
正式なパイロットになること。
それがクロにとって何を意味するのか。
ナオミは改めて思い知らされた気がした。
クロにとって大切なのは、優秀な成績を残すことでも、ほかの誰かより強くなることでもない。
仲間たちと一緒にいられること。
それが何より嬉しいのだ。
「ふふ、そうだね」
ナオミは柔らかく微笑んだ。
クロも嬉しそうに笑う。
その表情はいつもと変わらず明るかった。
そんなクロを見つめていると、ナオミはふと思い出した。
「そういえば、ツグミが右肩を抑えてたけど……どうしたの?」
「あ、それね!」
クロがぱっと顔を上げ、今朝の出来事を思い出す。
ゾロメとツグミ。
今にも殴り合いになりそうだった二人。
そして自分が取った行動。
クロは身振り手振りを交えながら説明し始めた。
林の中から走っていったこと。
ツグミが怒っていたこと。
止めようとして、そのままドロップキックをしたこと。
話すうちに、クロの身振りはどんどん大きくなっていく。
「それでね、こうやって走って──」
クロは腕を振る。
「そのまま、ばーんって!」
両手を広げ、勢いよく足を動かす仕草をした。
「…………」
ナオミは言葉を失った。
「そんなことがあったの……!?」
思わず目を見開いた。
クロはこくこくと頷く。
「うん!」
その顔には特に悪びれた様子はなかった。
もちろん、強く蹴りすぎたことについては申し訳なく思っている。
けれど、あの時は本当に止めなければならなかった。
それだけは確かだった。
「見つけた時は本当に焦ったよぉ。ツグミって怒ると、よく周りが見えなくなっちゃうからさ〜」
クロは少し困ったように笑った。
ナオミはその言葉を聞いていた。
ツグミは普段は明るくて面倒見がいい。
ゾロメやフトシとふざけ合い、クロともよく笑い合っている。
だからこそ、そんな一面があるとは思わなかった。
「そっか……全然知らなかった」
ナオミは小さく呟いた。
クロはいつもの調子で笑っている。
けれど、ツグミのことをよく知っているからこそ、あの場面ですぐに行動できたのだろう。
そんなことを考えたその時。
クロのポケットから、電子音が響いた。
「……ん?」
クロは端末を取り出す。
画面を確認すると、ぱっと表情を明るくした。
「準備できたの?」
ナオミが尋ねる。
「うん、そうみたい!」
クロは端末を閉じポケットへしまい、勢いよく立ち上がる。
「よーしっ!」
小さく気合を入れる。
その表情には、先ほどまでの明るさに加えて、少しだけ緊張が浮かんでいた。
それでも、不安に押しつぶされそうな様子はなかった。
クロは扉へ向かって歩き始める。
その背中へ──
「クロ、頑張って!」
ナオミが力強く声をかけた。
クロは足を止め、振り返る。
長い黒髪がふわりと揺れた。
「うんっ!!」
満面の笑みだった。
ナオミも、自然と笑顔になる。
その笑顔を見届けると、クロは再び歩き始めた。
扉が開く。
軽い足音が廊下へと消えていく。
「…………」
ナオミはしばらくその扉を見つめていた。
昨日、無理な接続をして倒れたクロ。
今日は驚くほど自然にフランドールを動かしていたクロ。
そして今、正式なパイロットになるための模擬戦へ向かうクロ。
その姿が頭の中で重なっていく。
「……頑張ってね」
ナオミはもう一度小さく呟いた。
窓の外では、夕暮れの最後の光がゆっくりと沈んでいった。
男子棟を出たヒロもまた同じように模擬戦の準備へ向かっていた。
二人に与えられた、新たな機会。
一人は、失いかけた翼を取り戻すために。
もう一人は、大切な仲間たちと共に居続けるために。
それぞれの胸に、異なる思いを抱きながら。
ヒロとクロは、これから始まる模擬戦へと歩みを進めていった。
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