「今回の作戦領域は、プランテーション直下にあるマグマ燃料の第3採掘施設内部だ」
ブリーフィングルームの巨大なホログラムスクリーンに、複雑に入り組んだ地下施設の構造図が映し出される。ハチの淡々とした声が、室内の緊迫感をさらに引き締めた。13部隊の全員が、その画面を真剣な表情で見つめている。
「本部より作戦指示があった、確認したのはコンラッド級。数は複数。場所はこの13都市近郊のマグマ燃料採掘現場。君たちの任務は、レベル8の2つのエリアに現われた叫竜を完全に殲滅することだ。そのため、今回はフランクスチームとフランドールチーム、二手に分かれて施設へ進入してもらう」
「ついに叫竜との戦いか……」
ゴローが拳を握りしめ、ゾロメは「へへっ、いよいよ初陣だぜッ!」と高らかに声を上げる。イチゴやナオミ、クロたちも静かに闘志を燃やしていた。
ブリーフィングを終え、パラサイト、およびパイロットたちは各自の機体が待つ格納庫へと急いだ。ココピットに滑り込み、起動シークエンスへと移行する。しかし、そこで予期せぬトラブルが発生した。
『あと少しだからちょっと待って……!』
通信機からイクノの焦燥を含んだ声が響く。彼女が搭乗するフランドール『クロロフィッツ』のパラキャパシティが不安定となり、コネクトできないのだ。
無情にも出撃の時間は迫っており、クロロフィッツは起動できないまま格納庫へ置いていかれることとなった。
─────
残されたメンバーで地下採掘現場へと突入した13部隊は、作戦通りフランクスチームとフランドールチームに分かれて別ルートを進んだ。周囲はマグマ燃料を送る配管が詰められており、行く途中に見えた貯蔵庫らしきものから放つ仄暗い橙色の光に満ちている。
その時、両チームのレーダーが同時に敵の影を捉えた。
「叫竜、目視しました!」
フランドールチームのルート。ナオミの「作戦通り行くわよ、クロ!」という鋭い指示と同時に、クロのグラジオラスが滑るように前進した。無駄のない動きで叫竜の懐へと潜り込み、手にしたブレードを一閃。先制の一撃を放つが傷が浅く倒しきれていない。
「倒しきれてない!ツグミ、追撃!」
ナオミの緊迫した声が響く
「任せろ!」
一瞬の隙も見逃さず、ツグミが駆るアイリスが即座に反応した。構えたガトリング砲が激しく火を噴き、無数の光線が叫竜へと叩き込まれる。連射を受けコアを破壊された叫竜はついに動きを止めた。
しかし、ほぼ同じタイミングで叫竜と交戦に入ったフランクスチームでは、アクシデントが起きていた。
「きゃあああ!?」
叫竜の不意打ちを受け、アルジェンティアが吹き飛ばされて倒れてしまう。その状態でまともに攻撃を受けた衝撃により、ミクが意識を失いアルジェンティアは沈黙してしまった。
「ミク!!」
ゾロメの叫びが響く中、叫竜が追撃を仕掛けようと迫る。
「離れろォー!!」
すぐさま動いたのはココロ、フトシが駆るジェニスタだった。息を合わせた連携で叫竜を砲撃で吹き飛ばし、動けなくなった隙をデルフィニウムが鋭い一撃で叫竜を突き刺し、なんとか撃破に成功する。
だが、安堵する時間は与えられなかった。
両チームが倒した叫竜を倒すのに時間をかけてしまい、高エネルギーのマグマ燃料が周囲に激しく噴出する。その莫大な熱源に反応するように、施設の奥からさらなる小型叫竜の群れが、両ルートへと怒涛の勢いで集まり始めてしまった。
フランクスチームは、気絶したミクを抱えるアルジェンティアを守らねばならず、圧倒的な数的不利も重なって完全に防戦一方に追い詰められていく。
一方、フランドールチームの前にも、同様に叫竜の群れが殺到していた。
「いくらなんでも、多すぎだろ....!」
「どうしたの、ゾロメ!ミクに何かあったの!?」
「……これだけの数が一度に……!」
ナオミの顔に焦りの色が浮かぶ。しかし、即座に気を取り直す。
「みんな落ち着いて! ここは狭すぎるわ、まずは奥の広いエリアへ誘導して!」
ナオミの的確な指示に従い、グラジオラスとダリア、そしてツグミのアイリスが後退しながら叫竜を引きつける。開けた空間に出た瞬間、ナオミが叫んだ。
「ツグミ、! 通路の出口を制圧して!」
「了解! こっから先は通さねぇ!」
ツグミのアイリスが構えたガトリング砲が、火を噴いた。凄まじい連射音が施設内に響き渡り、押し寄せる叫竜の群れを足止めする。激しい弾幕によって叫竜たちの注意が完全にツグミへと集まった。
「クロ、ナオミ、今だ!」
「いくよ、クロ!」
「わかった!」
ガトリングの砲撃に気を取られ、動きの止まった叫竜の側面から、クロのグラジオラスとナオミのダリアが同時に襲いかかる。連携して確実に核を粉砕し、再びツグミがヘイトを集め、隙ができたところを二機で仕留める──。
ナオミの焦りつつも乱れない統率のもと、この戦術を何度も何度も繰り返したフランドールチームは、押し寄せた叫竜の群れをすべて殲滅することに成功した。
「はぁ……はぁ……、やった、のか……?」
ツグミが息を荒げる。
「.....そう.....思うわ....」
ナオミも肩で息をする。周囲には叫竜の残骸が転がっていた。
「.......ここは何とかなったけど、イチゴ達は大丈夫かな....」
同時刻。
苦戦を強いられていたフランクスチームの元には、ナナの待機命令を無視して乱入した、純白のフランクス──ストレリチアの姿があった。圧倒的な力によって周囲の叫竜は瞬く間に蹂躙され、イチゴ達はその介入のおかげで危機を脱し、一足先に地上へと引き揚げていた。
─────
戦闘を終えたクロたちがフランクスチームのルートを確認した時には、激しい戦闘の痕跡が残されているだけだった。
地下施設での激しい戦闘を終え、フランドールチームの面々が地上へと帰還すると、先に上がっていたフランクスチームのメンバーや、待機していたイクノとミツル、そしてナナとハチが集まっていました。
そこにあったのは、先ほどの窮地から脱した安堵と、何より「予期せぬ奇跡」を目の当たりにしたコドモたちの、どこか興奮冷めやらぬ明るい空気でした。
「クロ! ナオミもツグミも、全員無事だったんだね!」
フランドールから降りた私に、真っ先に気づいたココロが弾んだ声で駆け寄ってきました。戦闘の疲労はあるものの、その表情は驚くほど晴れやかに見えた。
「うん、私たちはなんとかね。そっちはストレリチアに助けられたって聞いたけど……一体何があったの?」
クロの問いかけに、今度はフトシが「それがさ、本当に驚きなんだよ!」と、顔を綻ばせながら夕暮れの空へ指差しました。
「俺たちが叫竜に囲まれて本当に危なかったとき、ストレリチアが乱入してきて一瞬で片付けてくれたんだ。……で、そのストレリチアを動かしてたのが、ヒロなんだよ!」
「ヒロが……?」
私が驚いてフトシの指す先を見ると、そこには優雅に空を飛ぶストレリチアの姿があった。
「ああ! ナナの命令を無視して飛び出してきたときは驚いたよ。けど、あのゼロツーとコネクトしたのに、あれだけ動かせれるんだよ!」
「凄えな……!」と横からツグミも目を輝かせ、ナオミも「ヒロ、フランクスに乗れたんだね……」と感心したように息を吐き出します。
少し離れたところでゾロメが泣いているのが見えるがゴローが慰めているので任せることにした。
クロたちの初陣は、多くのハプニングに見舞われながらも、第13部隊の未来に大きな希望と可能性を灯す形で終えるた。