【第一章 死の刻印スタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第一章 死の刻印
第1話 ウィットブレッド公爵家は、カレナの実家


「申し訳ないが、即答できん……。次の予定があるゆえ、失礼する! この館にゆっくりしてもらって、構わんよ?」

 

 上品な身なりをした初老の男は、にこりともせず、向かいで立ち上がった。

 

 彼の後ろで控えていた執事やメイドが、動き出す。

 

 男と正面で向き合ったまま、俺も立ち上がる。

 

「お時間をいただきまして、ありがとうございました!」

 

 頭を下げれば、初老の男は立ち止まる。

 

「室矢くん……だったね? 東洋人でこちらの魔術師とは、珍しい! 我がウィットブレッド公爵家も代々、そういう魔術を扱ってきた。現代は、もう下火だがね? 貴族のたしなみと考えてくれ。公爵家の令嬢であるカレナの紹介ゆえ、君の素性や実力は疑わない。だが、爵位をホイホイと与えるわけにもいかん!」

 

「はい、浅慮でした」

 

 俺の返答に、ウィットブレッド公爵は息を吐いた。

 

「爵位で身を守ろうとしたのは、間違っていない! 東洋人が欧州のボーディングスクールで暮らすとなれば……。ロンドンは、オカルト関連の場所が多い。観光をしたら、どうかね? お詫びと言っては何だが、ユニオンに滞在している間の費用は我が家で持つ」

 

「重ねてお礼申し上げます、公爵」

 

 頭を下げた俺に、では失礼する、という声で、去っていく気配。

 

 パタンと、大扉が閉められた。

 

 頭を上げた俺は、脱力しながら、ソファに座り直す。

 

 向かい合っている、長い金髪を夜会のようにアップで金色の瞳をしている女子が、座ったままで会釈。

 

「申し訳ございません、室矢さま! その……。お父様も、あれで考えていますから」

 

「ウィットブレッド様のご配慮、ありがたく思います」

 

 俺は、アタフタとする令嬢を見返した。

 

(ジェニファー・ウィットブレッド……)

 

 ユニオンの貴族として、今でも存在感がある、ウィットブレッド公爵家の娘。

 1周目では、留学生の1人として、浅からぬ縁があった。

 

 今は、もちろん他人。

 

(この様子だと、2周目だな!)

 

 傍から見れば、初対面で外国人の俺に親しげ。

 

(それも、日本人に対して!)

 

 壁際にいる執事やメイドは、俺に値踏みする視線だ。

 

 その雰囲気を察した室矢カレナが、話しかける。

 

「ジェニファー? 私が無理を言ったからな……。ダメ元じゃ」

 

「カレナは、どうするつもりですか? お父様も許可しましたし、ウィットブレッド家の者として歓迎しますが」

 

 苦笑したカレナは、首を振る。

 

「ありがたいが、遠慮する! 重遠といるのでな? お主に変な噂が立ったら、マズい。ロンドンで、ここにも立ち寄りやすい高級ホテルに宿泊したいが?」

 

 父親が費用をもつと豪語したことで、ジェニファーは笑顔で頷く。

 

「構いません! すぐに、全員分の予約を」

「……はい、お嬢様」

 

 担当らしきメイドが会釈して、こちらの人数などを聞き、静かに立ち去る。

 

 しばらく話して、ホテルの予約がとれた報告を受けたら、俺が帰ることを告げた。

 

 

 ◇ ◇ ◇

 

 

 ジェニファー・ウィットブレッドは、洋館の自室で、ため息をついた。

 

(まったく……。わざわざ、ヨーロッパへ来るとは!)

 

 1周目でも、ユニオンを揺るがすほどの騒ぎだった。

 現地へ来たとなれば、国が滅んでもおかしくない。

 

 とはいえ、ウィットブレッド公爵家に代々いたカレナの願いを撥ねつけた。

 

(少しは、役に立っておかないと……)

 

 今のカレナが機嫌を損ねただけで人を殺すとは思わないが、罪悪感を抱く。

 

 立ち上がったジェニファーは、父親の許可を得ることなく、敷地内にある魔術関連の倉庫に立ち入る。

 

 コツコツコツ……。

 

 今は蛍光灯やLEDがあるものの、念のためにスマホや懐中電灯を携帯。

 

 かび臭い古書、触ったら崩れそうな巻物、いかにも儀式に使いそうな置物。

 

 通路のスペースをはさみ、左右に金属のラックが壁のように並び、それらを展示している。

 

(代々の当主は、倉庫に入れるだけ……)

 

 目録はあっても、照合や、由来のリサーチをせず。

 

 ハンカチで鼻と口元をおおったジェニファーが、薄暗い空間を足早に進む。

 

 けれど、片手で口を押えている彼女は、少女の声を聴く。

 

『こっち……』

 

 ビクッとしたジェニファーが立ち止まり、空いている片手で懐中電灯のスイッチを入れた。

 

 丸い光が、薄暗い倉庫の棚と、そこに100年は鎮座しているものを次々になめまわす。

 

「誰ですか!?」

 

 ジェニファーは、出口へ走り出すべきだった。

 

 けれど、公爵令嬢としての所作や矜持が、それを許さない。

 

 もしも迷い込んだ人物がいて、助けを求めたなら……。

 

『こちらに、来てください』

 

 ビクビクしながらも、声がした方向へ丸い光を向け、歩き出す。

 

 

 倉庫の奥。

 

 極限状況のジェニファーは、床に描かれている六芒星と五芒星の魔方陣に気づかない。

 

 円周には、ラテン語、または古英語で何かが書かれている。

 

 中央には、小さな棺のような物体。

 

 黒檀による木箱に、赤い紐と黒い紐で縛ってある。

 

『ここから、出して?』

 

 女子中学生ぐらいの声が、ジェニファーの頭の中で響いた。




過去作は、こちらです!
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