【第一章 死の刻印スタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~   作:初雪空

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指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?
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第16話 俺が思っていた退治と少し違う

 忠犬みたいな雰囲気のローズマリーが、メイドのように差し出してきた。

 

「マスター! お手紙です」

 

「ありがとう……」

 

 受け取りつつ、お礼を述べた。

 

 ちんまりと立っているから、近くの椅子に座るように指示。

 

 本物のメイドが差し出したペーパーナイフで、上を切った。

 

 中にある書面を広げれば――

 

“このような手紙を出すことの無礼を、どうかお許しください”

 

 少女らしい文字が、飛び込んできた。

 

 嫌な予感がしたが、読まないわけにはいかない。

 

“次にあなた様のお名前を聞くと述べましたが、もう待ちきれません”

 

“以下の日程で、お会いできないでしょうか?”

 

“お返事をお待ちしております”

 

“ブルックウッド墓地で初めてお会いした、アンより”

 

 …………

 

 人の心、ないんか?

 

 いや、こいつは化け物だから、あるわけない。

 

「マスター?」

 

 近くのチェアに座っているローズマリーが、心配そうに尋ねてきた。

 

「いや、何でもない。それより……」

 

 視線を感じて、そちらを見た。

 

 会釈した執事が、要件を告げる。

 

「ご歓談中、失礼します! 室矢様につけるロンドンの案内人が来たので、お越しいただけますか?」

 

「分かりました。すぐに向かいます……。ローズマリーも、来るように」

 

「はい!」

 

 

 ――別の広間

 

 俺たちが入ったら、珍しくジェニファーもいた。

 

 死の刻印は減ったようだが……。

 

 社交界で変な噂が立たないよう、無理をしているようだ。

 

 すると、離れたチェアに座っていた青年が、俺たちに気づく。

 

 立ち上がって、こちらに会釈。

 

「おおっ! あなたが、Mr.室矢ですか? それとも、Sir重遠とお呼びするべき?」

 

「室矢で、構いません……。失礼ですが、どなたでしょう?」

 

 再び頭を下げた青年は、腰が低いままで告げる。

 

「申し遅れましたが、私はルーク・リー・エリヴォと申します。男爵家の三男で、この度はウィットブレッド公のお招きにより、参上しました……。室矢くんは、ロンドンを観光したいのですね? ああ、お掛けください」

 

「はい、そうです……」

 

 俺が座ったら、その後ろにローズマリーが立つ。

 

(死にかけているジェニファーを長居させるのは、マズい……)

 

 そう思い、さり気なく仕向ける。

 

「実は、エリヴォさんに男同士で相談したいことが……」

 

 ジェニファーが、それを受ける。

 

「なら、席を外しますね? 本日は、お会いできて嬉しかったです」

 

「こちらこそ……。ありがとうございました、レディ・ジェニファー」

 

 同じく立ち上がったルークが、会釈。

 

 ジェニファーは、メイドを引き連れて、退室。

 

 座り直したルークが、俺の後ろを見る。

 

「えっと……。そちらのお嬢さんは?」

 

 戸惑ったような声に、俺も座ったままで振り向く。

 

 まだ立っているローズマリーは、不思議そうに、見つめ返す。

 

「カレナのところへ、行きなさい」

 

「……はい、マスター」

 

 しょんぼりしたローズマリーが、トボトボと、出て行った。

 

 隙あらば、風呂までついてくるか、ベッドに潜り込もうとする。

 

(生い立ちが悲惨だったし、円卓(ラウンズ)でも居場所なし! 単純に、精神が幼いのだろう)

 

 前に向き直ると、ルークの近くへ歩み寄り、アンからの手紙を渡した。

 

「これをもらったのですが……」

 

「拝見します」

 

 15分ぐらい経ったら、ルークが頷く。

 

「分かりました……。私に、お任せください」

 

「お願いします」

 

 この時点で、俺は勘違いをしていた。

 

 ジェニファーの死の刻印を伏せるにしても、公爵家が持っていた化け物が暴れていて、それを退治する話は伝わっていると……。

 

 何も! 説明がなかったのである!

 

 つまり、ルークはそのまま理解した。

 

「時間がありません……。さっそくですが、準備を始めましょう」

 

「そうですね」

 

 立ち上がった俺は、ルークについていく。

 

 

 新しい服を買い、髪型を変えて、楽しく話しつつのロンドン観光。

 

「この辺りなら、チューブ(地下鉄)に乗らなくても回れますよ? ほぼ初対面であれば、人混みは避けたほうが――」

 

 

 ――数日後

 

 待ち合わせの場所だけなら、慣れた。

 

 ユニオンで初めての男友達、ルークにプロデュースされた俺は、見覚えのある金髪少女に気づく。

 

「お迎えに上がらず、失礼……。俺のことは、覚えていますか?」

 

「ええ! 前に会った時とは、雰囲気が違うような……」

 

 人形のようなアンは、戸惑い気味だ。

 

 しかし、どこで用意したのか、ボロボロの服だ。

 

 通行人がジロジロと見ていく様子に、すかさず提案する。

 

「レディ? 初対面で言うのは憚られますが、俺にプレゼントをさせてください」

 

「な、何かしら?」

 

 

 事前にリサーチしておいた店で、一式を購入。

 

 そのまま、着替え。

 

 周りからの視線がなくなり、カフェや専門店を回った。

 

 

 夕暮れ。

 

 展望台のような場所で、アンと佇む。

 

「今日は、とても楽しかったわ! ……どうしたの、重遠?」

 

 俺を見たアンが、尋ねてきた。

 

「楽しかったですが……。今も、ジェニファー様があなたのせいで苦しんでいると思うと」

 

 ポカンと口を開けたアンは、やがて理解する。

 

「あああっ! ごめんなさい……」

 

 両手で顔を覆いつつ、ペタンと座り込む。

 

 俺がそれに対応する中で、視界のすみに立っているローズマリーは焼いたパイ生地でソーセージを包んだソーセージロールの2つ目を食べていた。

 

 立たせたアンを正面から抱きしめつつ、思う。

 

(美味しいよな、ソーセージパン……)




過去作は、こちらです!
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