【―外伝―メイド イン ロンドンの開始!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~ 作:初雪空
フローラ・テレサ・バーンズが、打ち合わせを行う。
「いい? 私たちは、室矢家の兄妹につくけど――」
室矢重遠は兄だが、日本人。
いっぽう、妹の室矢カレナは、ウィットブレッド公爵家のご令嬢で、名字を変えた。
首をひねったのは、ゼフィ・デ・メイソン。
「んん? ど、どういうこと?」
息を吐いたフローラが、自分の考えを整理するように、説明する。
「公爵家にとって大事なのは、自分たちの家族だったカレナ様! 重遠さまは、その客人というか、表向きは従者ね! 今のお二人は兄妹だから、同格として扱うけど」
「別の家の養子になったカレナ様の里帰りを歓迎して、その家にいる義理の兄も歓迎するが、彼は爵位なしの日本人だからユニオンの貴族の序列もある?」
おずおずと述べたゼフィに、フローラは頷いた。
「そういうこと! もう1つ覚えておいて欲しいのは、カレナ様が『ブリテン諸島の黒真珠』と呼ばれている魔術師で、重遠さまは弟子」
混乱したゼフィが、疑問を口にする。
「ブリテン諸島の黒真珠って……。私がお婆ちゃんから聞いた、古い伝承だったような? 代々の引継ぎか、自称?」
「さあ? カレナ様がそう思っていて、公爵家の方々も認めている! 本人に尋ねるのは、絶対に止めてね?」
釘を刺したフローラは、ため息をつく。
「重遠さまは、女性への博愛主義で……。婚約者の他に、女子を3人以上も引き連れているの」
「わぁお!」
驚いたゼフィが、ニマーッとする。
「えっ? まさか、ハーレム? 女同士で喧嘩しないの?」
「ひとまず、ハーレムと考えましょう……。客室はランクが低めの別棟だけど、『女を抱けるように』という配慮でもある! どれぐらいの滞在か不明だから、長期戦も覚悟しなさい」
言い終えたフローラは、座ったままで腕組み。
「私たち、部下がいない外様だから……。汚れたシーツやらの洗濯も、こっちでやるわよ? 本邸のランドリーメイドに任せたいけど、客の恥部を示すものを丸投げしたら、私たちも路上に放り出される!」
うんざりしたゼフィが、文句を言う。
「ここ、ソーホーじゃないんだけど……」
「あなたが重遠さまに要求されたら、私に振りなさい! ミス・ハウスキーパーに報告しつつ、プロの娼婦を呼ぶ……。女子を引き連れているなら、誘ってきても冗談半分でしょう。笑顔で、かわしなさい」
テーブルのタブレットを手に取りつつ、カレナが大きく映っている写真へ。
「カレナ様は、重遠さまに抱かれている可能性が――」
「ブホッ! きょ、兄妹で!?」
紅茶を噴き出したゼフィに、ジト目のフローラが指摘する。
「間違っても、お二人がいる時に反応しないでね?」
「だから、養子で兄妹になったと! ユニオンの公爵家と無名の日本人じゃ、結婚できない……。あれ? 重遠さまの婚約者は、納得しているの?」
肘を下げたままの降参で、フローラは言い捨てる。
「メイドごときが、知る必要ないでしょ? 室矢家がどれだけマニアックな性癖や日常でも、私たちには関係ない! 婚約者に隠れて愛し合っている可能性もあるから、私たちが告げ口するかバラすような形だけは避けなさい! 大きな問題は、室矢家の女子が敷地に出入りする可能性が高いこと! 成りすましを入れたら、シャレにならない。あなたも、申告があった女子の顔と名前をできるだけ覚えるように! 宗教は五月蠅くないようだし、アレルギーもなく、食事のえり好みもなし。その意味では、気楽ね?」
「滞在するのは、カレナ様と重遠さま?」
息を吐いたフローラは、悩み出す。
「だと思うけど……。最悪、ハーレム全員が住みつく! そうなったら、2人で回らない。私からミス・ハウスキーパーに報告して、応援を呼ぶ」
「面倒な相手が大勢で、よく分からないスケジュール……」
それを聞いたフローラが、嘆息する。
「だから、私たちにやらせるの! 私が重遠さまについて見極めるから、あなたはカレナ様について? 重遠さまが扱いやすいと分かれば、あなたに任せる」
「えーっ! 私も、カレナ様がいい!」
真顔のフローラは、首を横に振った。
「ダメ! 今のあなたでは、公爵家の食卓などで恥をかくわ! カレナ様に会うために、王侯貴族が来るでしょうし……。公爵家のメンツを潰したら、まともな再就職すら無理になる。本当は、最初にカレナ様を任せることも心配! 彼女が気難しいか意地悪なタイプだと、自分についた侍女を潰しにくるだろうし、めちゃくちゃな要求をしてくる恐れもある」
悩ましげに答えたフローラを見て、ゼフィは少しずつ実感する。
「他に、気を付けることは?」
肩をすくめたフローラが、投げやりに言う。
「やりながら、修正していくしかない……。1人で抱え込まないように! あなたと私は、運命共同体! 『叱られるかも』と隠さず、どんな些細な違和感であっても報告して? 私も、情報共有を密にするから」
「はい、フロア長……」
しおらしくなったゼフィに、笑顔のフローラが告げる。
「柔軟な態勢を維持しつつ、臨機応変に対処しましょう!」
「それって、行き当たりばったりでは?」