【―外伝―メイド イン ロンドンの開始!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~   作:初雪空

20 / 20
指名手配となった室矢重遠は、どこへ!?
https://hatuyuki-ku.com/?p=707


第20話 優雅なマインスイーパー

「室矢様のお世話を命じられた、バーンズと申します」

「同じく、メイソンです」

 

 2人で、頭を下げる。

 

 現在は、室矢家の一行、正確には名字が変わったカレナを出迎えた後。

 敷地内にある、ゲストハウスだ。

 

 ウィットブレッド公爵家の当主が出迎えて、本邸の煌びやかな執事、メイドたちも並ぶ中、すみに立っていただけ。

 

 今になって、ようやく自己紹介……。

 

 用があるか、公爵家から呼び出しがあった時だけ、応対。

 

 けれど、カレナと室矢重遠を見極めなければ、動きようがない。

 

 フローラ・テレサ・バーンズが、最優先のタスクを考える。

 

(予想通り、カレナ様は公爵家の晩餐(ばんさん)に呼ばれた……)

 

 言うまでもなく、フローラの担当。

 

 公爵家の会話でスケジュールを探り、準備しなければいけない。

 

 ゼフィ・デ・メイソンに、声をかける。

 

「ゲストハウスは、任せたわよ? 分からないこと、すぐに確認できないことは、私に聞くという名目で時間を稼ぎなさい」

 

「はい、フロア長!」

 

 

 ――本邸 大食堂

 

 長机にズラリと並ぶ、銀食器。

 

 室矢カレナの後ろ、壁際に立っているフローラは給仕するも、覚えたばかりの知識と周りの動きで何とかついていく。

 

 いきなり本題に入るのは無粋で、世間話をはさみつつ、コース料理が進むだけ。

 

 上座にいるウィットブレッド公爵は、息を吐いた。

 

「私が目にするとは、思わなかったぞ?」

「……変わっておらんな、ここは」

 

 地球の裏側に嫁いだような娘と会ったわりに、事務的。

 カレナが幼いにせよ、公爵と対等に話しているのは、納得できず。

 

 夫人、その娘も、どちらかと言えば、怖がっている様子……。

 

 食後としての紅茶のカップを置いた公爵が、率直に尋ねる。

 

「日本土産はなかなかに興味深いが、どうするつもりだ?」

 

「留学にやってきた重遠の付き添いじゃ! ついでだから里帰り、という意味もあったが……。重遠は、爵位を欲しいそうだ」

 

 大食堂の空気が、張り詰めた。

 

 公爵は、探るように問う。

 

「お前の義理の兄が?」

「そうだ!」

 

 息を吐いた公爵は、首を横に振る。

 

「無理だ! 日本でどうだろうが、ここはユニオン! せめて、欧州で縁組みなりの理由を示してもらわなければ……。中世なら、公爵は子爵、男爵の爵位を併せ持ち、領地を預かる代官としての慣例的な爵位もあろうが」

 

 注がれた紅茶を飲んだ公爵は、肩を上下させる。

 

「お前には、騎士爵があるだろう? そのエスクワイア(従騎士)として扱えば、準貴族だ」

 

 ハラハラするフローラに対して、カレナはあっさり答える。

 

「そうだな……。悪いが、お主の口から言ってくれ!」

 

 嘆息した公爵は、しぶしぶ頷く。

 

「致し方あるまい……。返事は、変わらんぞ?」

 

「構わん! プリシラと会うかは未定だ。重遠の反応を見たあとに、決める」

 

 ため息をついた公爵が、呆れる。

 

「お前という奴は……。分かった! 明後日までに、時間を作る」

 

「よろしく頼む! 公爵家に迷惑をかけん。そもそも、プリシラとは個人的な付き合いだからな?」

 

 その説明で、かろうじて和やかな空気へ。

 

 公爵が立ち去り、夫人と娘も。

 

 それに続く形で、カレナも大食堂を後にする。

 

「ジェニファー! 少し、いいか?」

 

 立ち止まった本人が、母親を見る。

 

 首肯されたので、カレナに向き直った。

 

「何でしょう?」

 

「たいしたことではない……。久々に足を踏み入れたから、案内が欲しくてな?」

 

 後ろで控えているフローラの耳元で、地獄の底から響くような、小さな声。

 

「ミス・バーンズ? 女王陛下と親交があるカレナ様のお世話、よろしくお願いしますね?」

 

 忘れたくても忘れられない、公爵家のハウスキーパーの声だ。

 

 ハッと振り向けば、彼女はすでに離れていた。

 

 もはや、怪奇現象と同じ。

 

(噓でしょ!? 公爵家から追い出されたような令嬢が、女王陛下を呼び捨てにできる仲って……)

 

 今になり、プリシラの名前と繋がった。

 

 立っている床がグニャリと歪んだような錯覚を覚えるも、何とか(こら)える。

 

 

 ――数日後

 

 公爵と室矢重遠の対談は、スムーズだった。

 

 事前に聞いていた公爵は大人の対応で、心配された重遠のワガママもなく。

 

 話の流れで、公爵がロンドン滞在の費用を負担することに。

 

 室矢カレナの後ろで立っているフローラは、密かに感心する。

 

(へえ? 無理なお願いと分かっていて、これを狙っていたなら、面白い子ね!)

 

 たぶん、重遠はそこまで考えていない。

 

 ともあれ、公爵を激怒させるルートは、これで消えた。

 

 そっと見れば、ゼフィも上手くやっているようだ。

 

 重遠はネイティブ並みの英語を喋っていて、意思疎通で問題なし。

 女と見るや抱きたくなる色情魔ではなく、素直。

 

(よしよし! 何とか、乗り切れそう!)

 

 微笑みで固定しているフローラは内心で喜ぶも、その日の夜に、事態は急変する。

 

 ジェニファーが倒れたうえ、命の危険があると、分かったのだ。

 

 メイド2人は、室矢重遠の恐ろしさを思い知ることに……。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。