【第二章 The Princess's Knightスタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~ 作:初雪空
黒塗りの高級車が、ひた走る。
ロンドンから3時間ほどで、イングランド南西部にあるサマセット州へ到着。
見渡す限りの田園風景。
とあるラインで、“関係者以外立ち入り禁止” の警告。
ゆっくり停止した車に対して、白をベースにした儀礼的な騎士服と帯剣をしている女子がツーマンセルで近寄る。
運転手が、自分のIDカードを提示した。
「ご協力、ありがとうございました! 後ろの方も、お願いします!」
スーッと下がった、後部座席のウィンドウ。
「氏名と所属を――」
そこには、頭の上で猫耳2つがしきりに動く、長い黒髪を姫カットにした女子。
大人びた雰囲気で、青色の瞳が見つめ返す。
「重遠
片手で、顔写真などがついたプラスチック製のIDカードを提示する。
警備の女子は、猫耳が気になって仕方ない。
リアルの猫と同じように、どちらもピクピクと動く。
そうこうしている間に、監視カメラの映像で顔認証をしたAIが許可を出す。
ポンッ♪
手にしている端末で知った女子は、身分証と本人の顔を見比べる。
「確認しました! えっと……。頭の上の物体は?」
「マスターのため、です」
真剣な表情で頷いたローズマリーに、女子は考えるのを止めた。
(猫耳を頭につけた人物を通すなとは、言われていないし……)
そこに首を突っ込めば、面倒になる。
「分かりました! そっちは?」
「も、問題なし! トランク、車の下も確認済み! どうぞ、お通りください!」
上ずった声で、反対側の女子が答えた。
それを聞いたドライバーが、ゆっくりと敷地内へ走らせた。
残った女子2人で、ローズマリーと話した女子が尋ねる。
「もう1人は、誰だったの?」
「深みのあるバーガンディ色の最高級本革のケースで、Aの真上にプリンセスクラウンの
ギョッとした女子は、遠くなった高級車を見る。
「間違いなく?」
「うん! バッキンガム宮殿の事務方じゃなく、個人事務所のほう! 正規のIDカードもあるけど、二つ折りの右側は王女のサイン入りの推薦状」
息を吐いた女子が、首を振る。
「さっきの車は、ドアに個人紋章がなかった……。ぜんぜん見たことない顔だし、本当にどういう関係なんだろ? ゼフィ・デ・メイソンという名前も、まったく分からない」
しばらく考えてから、思い出す。
「ほら! ウチで正騎士の待遇になった日本人の……。誰だっけ?」
「ああ、いたわね? もうすぐ訪問するから、その先触れ? 王女殿下は、本気なんだ……」
暗い顔になった女子に、もう1人が慰める。
「あの侍女は見るからに貴族という雰囲気じゃなかったし、家名も聞いたことない。夜の相手をさせるための臨時雇いでしょ?」
「だけど、アドラステア様が自分の騎士にするって……。何で、いきなり登場した男に!? それも、東洋人? 嫌!」
「お、落ち着いて? どうせ、上が認めないから……」
その時、慰めているほうが気づく。
「あっ! ローズマリーって、マスター殺しの!」
「据え膳にして、また殺させるつもり!? 想い人を格下の従騎士に奪われた王女殿下が納得しないでしょ? 下手に消したら、王女殿下の中で永遠になっちゃう! 最悪、後追いするかも」
2人で悩むも、ローズマリーはもう通過した。
ヒステリックになった女子が、深呼吸。
「ごめん、言い過ぎた!」
「別にいいけど……。重遠卿、たぶん殺されるね? 男子の従騎士たちが訓練か、あるいは決闘を装って! 足りなければ、正騎士も出てくるよ」
あっさり流した女子が、すぐに悩み出す。
「ねえ? どうして、王女殿下は重遠卿を見初めたの?」
「そんなこと言われたって……。一目惚れじゃない?」
自分の立場を悪くしてまで公言するのは、妙だ。
円卓会議で言えば、公文書にも記載される。
大人しい女子が、推理。
「んー? 王女殿下を魅了した、とか?」
「……許せない!」
激高した女子に、推理したほうが慌てる。
「可能性だって! もうっ! ローズマリーは、どうだったの?」
「頭の上に、2つの猫耳があった……」
「へっ? 何、それ?」
詳細を説明したことで、大人しい女子も把握。
立ったまま、腕を組む。
「重遠卿の趣味? ケモナー?」
「かもね? 前より優しい雰囲気だったし、情報をもらえば――」
「それはいいけど……。どうするの?」
沈黙。
アドラステアの侍女であるゼフィに聞くのは、論外だ。
本人に報告される……。
しかし、ローズマリーは同じ従騎士でも、親しい相手がいない。
強気の女子が、肩を落とす。
「仕方ない……。シャーリーに期待か」
「うん! ローズマリーも、それなら話すよ!」
円卓の騎士は、男女別で生活する。
ちょっと目を離した隙に純潔が散らされる心配はない。
ここで、ローズマリーの猫耳に話題が戻る。
「あのさ? 頭の上の猫耳、似合うと思うんだ。王女殿下に……」
「分かる! 重遠卿と騎士の誓いをやるのは嫌だけど、プリンセスクラウンの代わりに猫耳をつけた王女殿下を見てみたい!」
言い終わった女子は、首をかしげる。
「シャーリーが言うには、重遠卿は従騎士3人を瞬殺って――」
「ないない! それを成立させるスピードは、音速を超えるぐらいよ? 公爵邸の広間でやったら、周りの人間ごと全滅」
実際、その通り。
従騎士だろうとあの状況では難しいし、マッハを超えれば、周りへの衝撃波で全て吹き飛ぶ。
室矢重遠は、出演する作品を間違えている。
どこかで発掘された巨大ロボットが謎パワーで敵の攻撃を弾きつつ、銀河の広範囲にいる兵器群を片っ端から倒しつつ、惑星を両断、銀河を切り裂く射撃をした挙句、最後は宇宙ごと滅ぼす。
その巨大ロボットを等身大に縮めて、生身にすると、重遠だ。
最近の悩みは、王女がラスボスっぽくなってきて、正妻の反応が薄くなってきたこと。
あと、和食が少ない。