【第二章 The Princess's Knightスタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~ 作:初雪空
キャメロットで女性の専用エリアが、ざわつく。
ひそひそ話をしつつ、ジッと窺う視線。
それを気にせず、メイド服っぽい改造をした騎士服でキビキビと歩く女子。
頭の上の猫耳2つは長く美しい被毛の白で、お尻から伸びている尻尾も白だ。
人間にあるはずがないパーツ3つは、生きている猫のように動き続ける。
「ローズマリーさん? その格好は何ですか! 伝統ある円卓の騎士として、見過ごせません」
指導役の女が、腕組み。
向き直ったローズマリーは、無表情で答える。
「チンチラペルシャです……。ブリティッシュショートヘアのほうが、良かったですか? 私の黒髪にはグレーより白が似合うと、カレナ様がおっしゃいましたが」
「猫の種類ではなくて……。今、何と?」
女教官の質問に、ローズマリーが答える。
「ブリティッシュショートヘア――」
「その後です」
「カレナ様です! この飾りと、猫耳、尻尾をいただきました」
室矢カレナは、面倒な人物。
ここで没収、または処罰すれば、機嫌を損ねる。
ウィットブレッド公爵の館では、
女王陛下とも、面識があるようだ。
自分の好意を無下にされたと判断すれば、すごい勢いで正面から突っ込んできそう。
ここまで想像して、匙を投げる。
(私だけ睨まれるのは……。上に報告して、任せましょう)
腕を下ろした女教官が、息を吐く。
「そう……。良かったですね? もう、行きなさい」
「はい! 失礼します」
会釈したローズマリーは、尻尾をピンと立てた後に、ゆっくり振る。
周りの視線を集めつつ、立ち去った。
――食堂
広い空間で、思い思いに食事をする女子たち。
カフェテリアだが、並んでいる料理は一流。
注文後に仕上げるパターンも。
上品な雰囲気で、静まり返った。
お目当てのローズマリーが、トレイを滑らせつつ、カウンターで料理を選んでいく。
パチパチと瞬きをした女子グループが、小声で話し合う。
「頭の上……。猫耳?」
「それより、尻尾だよ! う、動いているよね?」
顔を赤くした女子グループが、ご機嫌そうに揺れる白い尻尾を眺める。
「……お尻のどっちかに?」
「たぶん、そう」
「あいつのマスターって、日本人の重遠
「とんでもない変態だよ! 従騎士が絶対服従だからって……」
「可哀想……」
「ローズマリーも、好きで前のマスターを殺したわけじゃないし」
「……うん」
ここに至り、室矢重遠の評判は地に堕ちた。
地形追従で必死に低空飛行をしていたが、地上の構造物に当たったか、歩兵の対空ミサイルか機関砲を食らったのだ。
ベトナム戦争でサンダーチーフが低空侵入による爆撃をしたら、ことごとく対空火器の餌食に……。
同じ末路をたどった重遠だが、この事実をまだ知らない。
ローズマリーの猫耳2つと尻尾には、それぞれ超小型の相転移エンジンを搭載している。
尻尾の根本を突っ込んでいるわけではない。
相転移エンジンとは、何もない空間をより低く安定した状態へ相転移させる時に発生するエネルギーを利用する無限動力だ。
それと脳波信号による無線リンクを行い、リアルの猫と同じ挙動を実現した。
本物と同じ動きと、柔らかくて温かい感触を追求した結果、電圧をかけると伸縮する特殊なゲルを人工筋肉へ。
今、ローズマリーの頭の上とお尻には、人類の科学技術をブレイクスルーできるだけの宝がある!
この相転移エンジンがあれば、外宇宙へ旅立てる宇宙船も夢ではない。
地球上のエネルギー問題を解決して、四次元より上の世界へ!
完璧な脳波コントロールの可能性も、無限大。
USとユニオンの国家予算を合わせても、その値段にまったく足りない。
だが、現実は残酷である。
SFを具現化したオーバーテクノロジーが行うのは、ただ1つ。
重遠を変態に相転移することで発生した余剰エネルギーによる、ローズマリーの救済である。
そして、ネコは可愛い。
「優しくしてあげないと」
「……そうだね!」
猫は、ユニオンで血統登録の仕組みが整えられ、激愛した女王も。
王族が率先して猫を飼えば、貴族たちも倣う。
首相官邸のネズミ捕獲長など、面白いエピソードも多い。
そのような猫が愛されないことが、あるだろうか?
いや、ない。
赤面したままで同情した、女子グループ。
前回とは正反対の雰囲気に包まれた食堂で、いよいよローズマリーが座る。
その隣にいるのは、やはりシャーリーだ。
シャーリーと一緒にいるセーラが、前のように避けず、聞き耳を立てている女子たちに戸惑う。
いっぽう、シャーリーはローズマリーに話しかける。
「それ、猫耳と尻尾?」
「……うん! チンチラペルシャだよ」
不安そうなローズマリーに、シャーリーが微笑む。
「ブリティッシュショートヘアは丸顔だから、それでいいんじゃない?」
「……ありがとう」
嚙み合っているトーク。
(((ネコ談義はいいから! 早く、重遠卿のことを教えて!)))
ギャラリーになっている女子は、心の中で叫んだ。
すると、シャーリーがその話題を振る。
「そう言えば、マスターは? 1人?」
「マスターが来るという報告! それに、必要な手続きで来たの」
他に喋らず、2人の会話は食堂の隅まで響く。
カウンターの奥では、ジューッという、焼きつける音。
「どう?」
「優しいよ? お風呂やベッドでも……」
セーラが、また紅茶を噴いた。
ゲホゲホと