【第一章 死の刻印スタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~ 作:初雪空
「ご安心ください、公爵! 我らが来たからには、もう心配いりません」
上等なスーツを着込んだ中年男は、ドヤ顔でそう告げた。
他にも、スーツ姿の比較的若い男と、女。
(それでも、30代半ば……)
深夜にもかかわらず、俺たちが話し合っていた応接室へ駆けつけた。
見るからに面倒そうな雰囲気で、俺が素手で叩きのめそうな弱さ。
つまりは、そういうこと。
(
ソファーに座っている俺の視線を感じたのか、見るからに蔑んだ視線でこちらを見た中年男。
不機嫌そうに視線を外して、笑顔で公爵に向き直る。
「お困りであれば、我々が引き継ぎますが?」
おーおー、言ってくれる!
(公爵が、犯人グループに話を聞いていると?)
俺たちはカレナの権能により、本場の英語でやり取りしている。
その表情から、残り2人も同じ意見のようだ。
(こいつらの視点では、英語が分からない移民ぐらいの認識か……)
自分たちが立ったままで俺たちがソファーで客人扱いも、気に入らないだろう。
(手っ取り早く、怪しい東洋人を犯人と決めつけて、実績を上げたいのかも?)
ムッとした公爵が、言い返そうとする気配。
けれど、室矢カレナの声。
「ウィットブレッド公爵令嬢たる私の従者に、文句があるか? たいした推理だな! 移民を目の敵にしているヤードですら、そこまでの無能はいなかったぞ? 今から、ヤードの採用試験を受けてこい。警察学校で怒鳴られれば、多少マシになるだろう。早く、人間になれよ? おーう?」
満面の笑みで、小馬鹿にした口調。
リーダーの中年男が、一瞬で顔を赤くした。
残りの2人も、同じく。
カレナの辞書に、遠回しの嫌味はない。
いつでも、誰が相手でも、とりあえず殴るだけ。
こいつらが、すぐに言い返さないのは――
(カレナが見るからに白人で、ポジションや雰囲気から公爵家の人間っぽい! おまけに、海外基準では小学生もいいところで、大人の対応にしようと頑張っているわけか)
怒りを抑えるあまり、黙りこくった中年男を見かねて、アラサーの男が口を開いた。
「こ、公爵? こちらのレディは、どなたでしょうか?」
「室矢カレナだ! お主たちには、こう言ったほうがいいだろう! ブリテン諸島の黒真珠と……」
本人が答えれば、スーツ姿のラウンズ3人は動揺した。
無意識に、後ずさる。
(名前を言ってはいけない、あの御方かな?)
昔はやさぐれていて、深海に待機していた潜水艦に張り付き、海上へ緊急浮上するまでガンガン叩いた前科もあるらしい。
(迷惑どころじゃないな……)
ユニオンを襲ってきた艦隊を吹っ飛ばしたなど、その功績は神話のよう。
けれど、女は冗談としたようだ。
「伝説の魔術師を、よく知っていますね? それよりも、私たちの従騎士が例の人形を発見、追っています」
俺たちに因縁をつけるより、そっちを先に言え!
そう思いつつ、ひとまず聞く。
ようやく復帰した中年男が、もったいぶる。
「我々の従騎士は、その人形を破壊、または、逃げないようにしつつ応援を要請する手筈でございます! 他ならぬ、我々が……。公爵? どうか、お忘れなきよう」
片手を自分の胸の前で横にしつつ、頭を下げた。
俺たちを東洋人だから犯人だろ? と決めつけた件は、なかったことにする気らしい。
(どうしてくれようか……。俺の目的を考えたら、すぐにラウンズと敵対するのもマズいが、舐められっぱなしも論外だ)
ウィットブレッド公爵が思っていたよりも好意的だから、この人の立場を悪くしたくない。
(カレナの紹介があって……。俺もちゃんとした英語で、低姿勢だから?)
値踏みしていたのは、お互い様。
(差別主義になるしかない大貴族でも、身内認定すれば、甘くなるか!)
死の刻印があるジェニファー・ウィットブレッドも、心配だ。
俺がそう考える一方で、初老の男である公爵は頷いた。
「私の娘を救ってくれれば、その功績に報いよう」
オーバーに反応した中年男は、今までとは違う笑みに。
「おお! さすが、ユニオンを支えてきたウィットブレッド公爵!」
カレナが、すかさず提案する。
「私の説明は、終わったぞ?」
公爵が、首肯した。
「うむ……。お前たちは、下がってよろしい! ラウンズの方々に、紅茶と菓子を」
「畏まりました、旦那さま」
この部屋にいる、老齢の執事が答えた。
カレナが立ち上がり、俺たちも倣う。
「お嬢様とお連れの方々は、玄関まで案内いたします……」
老齢の執事が言えば、ドアに近い執事が動き出した。
「ご案内します」
メイドが、ドアを開く。
そこを通りすぎ、先導を始めた。
ゾロゾロと、豪華な内廊下へ。
歩きつつ、超空間のネットワークでカレナに尋ねる。
『なあ? ラウンズの規則だと、正騎士と従騎士は常に一緒では?』
『そうだ! あやつらは、自分の出世のために公爵への挨拶を優先したのじゃ』
ふざけている。
カレナが封印したほどの相手に……。
『いくら平和な時代とはいえ、この代償は大きいぞ? 1周目に来日したのは、ラウンズでも上位の騎士ばかりだった』
単なる、夜警。
電話一本で動く下っ端は、やる気がないか……。
『あやつらの従騎士は、死者の鉄道を走っている! かつて死人を運んだ先、ブルックウッド墓地にな? 安らかな死とは、ならんだろう』
誰が?
俺に、そう聞くだけの余裕はなかった。