【第一章 死の刻印スタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~   作:初雪空

3 / 5
室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
https://hatuyuki-ku.com/?p=707


第3話 騎士よりも政治家がお似合いな連中

「ご安心ください、公爵! 我らが来たからには、もう心配いりません」

 

 上等なスーツを着込んだ中年男は、ドヤ顔でそう告げた。

 

 他にも、スーツ姿の比較的若い男と、女。

 

(それでも、30代半ば……)

 

 深夜にもかかわらず、俺たちが話し合っていた応接室へ駆けつけた。

 見るからに面倒そうな雰囲気で、俺が素手で叩きのめそうな弱さ。

 

 つまりは、そういうこと。

 

円卓(ラウンズ)の中で、下っ端だな? 1周目の俺が日本で会ったのは、奴らの中でもトップクラスだったにせよ……)

 

 ソファーに座っている俺の視線を感じたのか、見るからに蔑んだ視線でこちらを見た中年男。

 

 不機嫌そうに視線を外して、笑顔で公爵に向き直る。

 

「お困りであれば、我々が引き継ぎますが?」

 

 おーおー、言ってくれる!

 

(公爵が、犯人グループに話を聞いていると?)

 

 俺たちはカレナの権能により、本場の英語でやり取りしている。

 

 その表情から、残り2人も同じ意見のようだ。

 

(こいつらの視点では、英語が分からない移民ぐらいの認識か……)

 

 自分たちが立ったままで俺たちがソファーで客人扱いも、気に入らないだろう。

 

(手っ取り早く、怪しい東洋人を犯人と決めつけて、実績を上げたいのかも?)

 

 ムッとした公爵が、言い返そうとする気配。

 

 けれど、室矢カレナの声。

 

「ウィットブレッド公爵令嬢たる私の従者に、文句があるか? たいした推理だな! 移民を目の敵にしているヤードですら、そこまでの無能はいなかったぞ? 今から、ヤードの採用試験を受けてこい。警察学校で怒鳴られれば、多少マシになるだろう。早く、人間になれよ? おーう?」

 

 満面の笑みで、小馬鹿にした口調。

 

 リーダーの中年男が、一瞬で顔を赤くした。

 

 残りの2人も、同じく。

 

 カレナの辞書に、遠回しの嫌味はない。

 いつでも、誰が相手でも、とりあえず殴るだけ。

 

 こいつらが、すぐに言い返さないのは――

 

(カレナが見るからに白人で、ポジションや雰囲気から公爵家の人間っぽい! おまけに、海外基準では小学生もいいところで、大人の対応にしようと頑張っているわけか)

 

 怒りを抑えるあまり、黙りこくった中年男を見かねて、アラサーの男が口を開いた。

 

「こ、公爵? こちらのレディは、どなたでしょうか?」

 

「室矢カレナだ! お主たちには、こう言ったほうがいいだろう! ブリテン諸島の黒真珠と……」

 

 本人が答えれば、スーツ姿のラウンズ3人は動揺した。

 

 無意識に、後ずさる。

 

(名前を言ってはいけない、あの御方かな?)

 

 昔はやさぐれていて、深海に待機していた潜水艦に張り付き、海上へ緊急浮上するまでガンガン叩いた前科もあるらしい。

 

(迷惑どころじゃないな……)

 

 ユニオンを襲ってきた艦隊を吹っ飛ばしたなど、その功績は神話のよう。

 

 けれど、女は冗談としたようだ。

 

「伝説の魔術師を、よく知っていますね? それよりも、私たちの従騎士が例の人形を発見、追っています」

 

 俺たちに因縁をつけるより、そっちを先に言え!

 

 そう思いつつ、ひとまず聞く。

 

 ようやく復帰した中年男が、もったいぶる。

 

「我々の従騎士は、その人形を破壊、または、逃げないようにしつつ応援を要請する手筈でございます! 他ならぬ、我々が……。公爵? どうか、お忘れなきよう」

 

 片手を自分の胸の前で横にしつつ、頭を下げた。

 

 俺たちを東洋人だから犯人だろ? と決めつけた件は、なかったことにする気らしい。

 

(どうしてくれようか……。俺の目的を考えたら、すぐにラウンズと敵対するのもマズいが、舐められっぱなしも論外だ)

 

 ウィットブレッド公爵が思っていたよりも好意的だから、この人の立場を悪くしたくない。

 

(カレナの紹介があって……。俺もちゃんとした英語で、低姿勢だから?)

 

 値踏みしていたのは、お互い様。

 

(差別主義になるしかない大貴族でも、身内認定すれば、甘くなるか!)

 

 死の刻印があるジェニファー・ウィットブレッドも、心配だ。

 

 俺がそう考える一方で、初老の男である公爵は頷いた。

 

「私の娘を救ってくれれば、その功績に報いよう」

 

 オーバーに反応した中年男は、今までとは違う笑みに。

 

「おお! さすが、ユニオンを支えてきたウィットブレッド公爵!」

 

 カレナが、すかさず提案する。

 

「私の説明は、終わったぞ?」

 

 公爵が、首肯した。

 

「うむ……。お前たちは、下がってよろしい! ラウンズの方々に、紅茶と菓子を」

 

「畏まりました、旦那さま」

 

 この部屋にいる、老齢の執事が答えた。

 

 カレナが立ち上がり、俺たちも倣う。

 

「お嬢様とお連れの方々は、玄関まで案内いたします……」

 

 老齢の執事が言えば、ドアに近い執事が動き出した。

 

「ご案内します」

 

 メイドが、ドアを開く。

 

 そこを通りすぎ、先導を始めた。

 

 ゾロゾロと、豪華な内廊下へ。

 

 歩きつつ、超空間のネットワークでカレナに尋ねる。

 

『なあ? ラウンズの規則だと、正騎士と従騎士は常に一緒では?』

 

『そうだ! あやつらは、自分の出世のために公爵への挨拶を優先したのじゃ』

 

 ふざけている。

 

 カレナが封印したほどの相手に……。

 

『いくら平和な時代とはいえ、この代償は大きいぞ? 1周目に来日したのは、ラウンズでも上位の騎士ばかりだった』

 

 単なる、夜警。

 

 電話一本で動く下っ端は、やる気がないか……。

 

『あやつらの従騎士は、死者の鉄道を走っている! かつて死人を運んだ先、ブルックウッド墓地にな? 安らかな死とは、ならんだろう』

 

 誰が?

 

 俺に、そう聞くだけの余裕はなかった。




過去作は、こちらです!
https://hatuyuki-ku.com/?page_id=31
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。