【第二章 The Princess's Knightスタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~ 作:初雪空
歴史を感じさせる軽鎧を身に着けたエドワードは、ガシャッと音を立てつつ、ロングソードを体の前で立てた。
つかを握っている右拳をあごの下につけたら、正面で向かい合っている室矢重遠が鏡写しのように真似するまで待機。
右斜め下へ、ゆっくり振るう。
控えめな風切り音が2つ、静まり返った闘技場に響いた。
どちらも、ブーツと一体化した脛当て。
ロングソードを構え直し、自分が有利な位置へ動き続ける。
(貴様の腕、見せてもらおう!)
堂々と、正面から突っ込んだ。
身体強化をしているため、急加速した車のように白い閃光が伸びる。
対する重遠が両手で持っているロングソードと剣身がぶつかり、火花を散らしつつの嫌な音。
剣道の
エドワードは、押し返してきた重遠と剣同士を絡ませたまま、鍔であるガードで引っ掛けるように相手のソードを巻き込み、そのまま振り切った。
「おっと!」
宙を舞ったソードは、ガシャンと、地面に落ちた。
視線がそれた重遠に対して、至近距離からソードを突きつけたエドワードがゆっくり後ずさる。
一瞬の静寂の後で、見守っていたギャラリーの歓声。
切っ先を下ろしたエドワードは、疲れを感じる。
(本当に、ド素人か! まったく……)
アドラステア王女が、お願いに来るわけだ。
力加減を間違えて殺したら、エドワードの立場もなくなる。
身に着けている白い
落ちたソードを拾った重遠は、両手で構え直す。
息を吐いたエドワードも、しぶしぶ応じる。
今度は、両手を大きく上げて、上段の構えをする重遠。
(攻めてくる気か……)
接待ゆえ、隙だらけの胴体やソードを持っている腕に打ち込むわけにはいかない。
けれど、上からの一撃は強力だ。
気を引き締めつつ、ソードを受け流せるように構えて、相手の勢いに負けないための半身ぎみのポジションへ。
「たぁああああっ! ……んんっ?」
すり足で正面から近づいてきたと思えば、妙に腕を伸ばしての振り下ろしに、エドワードが弾くことであっさり軌道がそれる。
ギィイインッ! と金属音が響くも、重遠は振り下ろしたまま、しきりに首を傾げている。
完全に動きが止まって、意識もそれている重遠を攻撃するわけにはいかず、エドワードは後ずさりしつつの仕切り直しへ。
「んんー?」
上体を起こした重遠は、さらに対戦するも、なぜか剣同士がぶつかることを嫌がった。
そのせいで動きが不自然になったうえ、隙だらけ。
新品だった白いアーマーは、傷だらけに……。
バルコニーから、アドラステア・リーディ・シェラフィール王女の慌てた声。
『えーと……。男性の騎士で、ロングソードを持っている方! 申し訳ありませんが、2人で模範となる戦いを見せてください!』
笑っていたギャラリーで、男性エリアが動き出す。
じきに、
闘技場の隅にある待機スペースで座ったエドワードは、マスターに話しかけられる。
「終わってみれば、肩透かしだな?」
「……はい! 大怪我は避けますよ! あの
笑ったマスターが、今後について説明する。
「これで、アドラステア王女殿下の心証も良くなっただろう! 私から交渉して、何かしらの褒美をもらう……。重遠
「そうなんですか!?」
「ああ……。重遠卿が義妹にしたウィットブレッド公爵令嬢のカレナ様がおねだりして、公爵家の秘蔵を出したのだろう! 早く、
悩み始めたマスターに、エドワードは微笑む。
「任せてください! あいつに『円卓の騎士』の恐ろしさを教えて、義妹のカレナ様へ言うように仕向けます」
「大丈夫か? 今の様子では、まともに対応できるとは思えんが……」
「俺は騎士であって、初心者のインストラクターになった覚えはありません! 命を奪わず、後遺症が残らない程度で仕留めます」
迷ったマスターは、最後に頷く。
「頼んだぞ? くれぐれも、加減を間違えるな!」
「……Yes, my master.(はい、マスター)」
再び、重遠と向き合う。
ここで、エドワードが宣言する。
「重遠卿! あなたは、ウィットブレッド公爵邸で今とは別の
ざわつく、ギャラリー。
向かい合っている重遠は、キョトンとした。
「俺のものじゃないぞ? 所有者に言ってくれ……」
重遠の視線の先を追えば、王族が集まっているバルコニー。
けれど、室矢カレナは、
ロイヤルファミリーから、ジーッと見つめられたカレナが、溜息をついた。
全員が見守る中で、バルコニーの先端へ。
『重遠! そろそろ、刀とソードの違いは分かっただろう? 勝てよ?』
それっきり、奥へ引っ込み、ポテチを食べ始める。
言質は取れなかったが、秘蔵の
視線を戻したエドワードは、ニヤリとした。
「カレナ様の許可が、出たぞ? では、始めよう……」
同じようにソードの敬礼を交わしたら、闘技場は静まり返った。
素人を教導する退屈な時間ではなく、自分たちが見ることもなかった
エドワードは正面から走りつつ、ロングソードを鍔迫り合いへ。
ところが、重遠は前よりも平然とした顔で受け、正面から密着しているエドワードを押し返し始めた。
「なっ!」
お互いのソードの刃がこすれ合い、火花と嫌な音を立てる。
「こっちの剣術は、相手のソードに当ててから始まる……。なるほど! 相手と受けない刀のつもりじゃ、グチャグチャになるはずだ」
重遠の足元が凹みつつ、霊力による身体強化を上げていく。
それにつれて、エドワードが後ろに押され、重遠が力任せに振り切ったソードの勢いで走り寄った分だけ吹っ飛ばされた。
「くっ!」
軽く浮かんでいたが、両足で踏ん張り、ノックバックを止めた。
いっぽう、重遠はロングソードを地面と平行にする。
(突きか? 力はあるようだが、それで勝てるとは――)
パアンッ!
空気の破裂音が耳に届けば、目の前に切っ先がある。
反射的に片足をずらしつつ避けて、その体捌きでソードを振るう。
ところが、避けたソードがそのまま横へ薙いでくる。
(間に合わんっ!)
腕のガントレットを盾代わりに受ければ、嫌な音と、その衝撃。
今度は、横方向へ飛ばされた。
しかし、前ほどの勢いはない……。
追撃を防ぐためにソードを構えつつ、向き合う。
無表情の重遠も、同じようにソードを構えた。
姿勢を崩さないエドワードが、さっきの攻撃を防いだガントレットを見れば、大きな傷と凹み。
(修繕ができない
怒りに震えたエドワードは、腕から肩までの痺れる痛みを無視して、ロングソードの柄を握り直す。