【第二章 The Princess's Knightスタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~ 作:初雪空
エドワードは、室矢重遠の手足を1本もらうことに決めた。
(こちらが手加減していれば――)
しかし、次の瞬間に正面からソード同士がぶつかる音。
反射的に両足で踏ん張ったが、体当たりされたような衝撃で後ずさる。
「くっ!」
火花を散らしつつ、お互いの剣身がこすれ続ける。
(慣れてきたか……)
正面から密着している重遠は、ボロボロになった白い鎧のわりに楽しそう。
それを見たエドワードが、我を忘れる。
(貴様は、カレナ様に次の
ギリギリと歯を鳴らしたエドワードが、片足を引いての崩し。
いきなり支えを失った重遠は、前へ突っ込んでくる。
その顔面へポンメル(柄頭)を叩きつけ、鏡を見るたびに思い知らせ――
エドワードの視界が、いきなり低くなった。
「ぐぅ……」
無意識にうめきつつ、痛みを実感する。
沈み込んだ重遠の足払いで前に置いていた足を横から押されて、側面から地面に叩きつけられたのだ。
片手を支えにしながら、立ち上がる。
(……いつ?)
意識がそれていたこともあるが、分からなかった。
待っていた重遠を真似るようにソードを構え、今度は攻める。
側面から遠心力を利かせての一撃は受け止められるも、鍔迫り合いで伝わってくる相手の感触を頼りに急所への突き――
前へ踏み込みつつ半身になった重遠が伸ばした片手で喉のあたりを前から押しつつ、片足で外から刈ったことで、後ろへ倒れる。
訳も分からず、背中から叩きつけられ、ソードも手放す。
「ガハッ!」
大恥をかいたエドワードは構え直し、後ずさりで距離をとる。
(殺してやる!)
もはや、それしか頭にない。
中段の構えだが正面から走っていくうちに切先は下がり、剣道でいう脇構えに近い状態から突進の勢いと腰のひねりによる切り上げへ。
直後は無防備になるが、ただ受ければ防御ごと斬り捨てるだけの威力だ。
振り切ったエドワードが視線を下げれば、そこには地面に這うように沈み込んでいる重遠がいた。
(こいつ、俺の切り上げのさらに下へ飛び込んだのか!?)
スローモーションのように、見えていく。
足を大きく開いた重遠が全身で跳ね上がり、その先にある金属色の死神の光。
とっさに上体をそらしたが、ソードを持っている両手は置き去り。
「あっ……」
両断される腕を想像したエドワードは、それを待つことしか許されない。
『そこまで!』
アドラステア王女の叫びが、耳に届く。
ほぼ同時に、重遠が片足を滑らせて、地面に倒れこむ。
ソードを持ったままで器用に転がりつつも、立ち上がる。
それでも勢いを殺しきれないのか、アイススケートのように回転し続けて、ようやく止まった。
満員の闘技場が、静かに……。
『この勝負は、私が預かります! 良いですね?』
バルコニーで前に出てきたアドラステアは、引きつった顔だ。
よっぽど、慌てているらしい。
見たことのない表情に、エドワードは胸が痛くなった。
(王女殿下に、ここまで言わせてしまった……)
加えて、ゲストに殺すつもりで切りかかったのだ。
無傷で済んだのは、結果論に過ぎない。
(何という失態! 俺は、何をやっているんだ!?)
一歩間違えれば、大惨事だった。
今更ながら、罪悪感に苦しむ。
大きく息を吐いたエドワードは、剣を下ろして、作り笑顔。
「強いな、君は! だけど、最後のカウンターは危険だと思うよ? 姿勢を崩しすぎたから、転んだわけで」
「いや、あれはわざと――」
『誇りなさい、重遠!』
遮るように、アドラステアの叫び。
割り込んだ彼女に、誰もが唖然として見る。
これまでにない、必死な声だ。
『あなたは、円卓の騎士と互角に戦えたのです! それを喜びなさい!!』
自分の騎士と公言しておきながら、殺意すら込めた視線で見下ろすアドラステア。
彼女を見上げた重遠は、やがて頷く。
視線を戻し、エドワードに話しかける。
「わざわざ、ありがとう! 1つだけ言っておくと、俺は日本で剣術をやっていた。刀を使う……。武士とか
「まったくの素人じゃなかったのか! 俺も、良い経験になったよ。ありがとう」
自然な笑顔になり、片手を差し出したエドワードに応じる、重遠。
ギャラリーの誰かの拍手で、それは広がっていく。
――王族がいるバルコニー
アドラステア・リーディ・シェラフィールは、フラフラと歩き、揚げたてのポテチを食べ続ける室矢カレナに歩み寄る。
「疲れましたぁ……」
許可を得ずにポテチをつまみ、立ったままでサクサクと食べた。
気にしないカレナが、同じく食べつつ、同情する。
「重遠はあの調子で、『男友達が少ない』と嘆いておるからの!」
「そりゃ、少ないですよ! 他人を気にしないのも、程があります! ハアッ……」
超空間のネットワークで未来予知したアドラステアが止めたから、重遠はエドワードの伸びた腕を両断する直前でベクトルを変えた。
ただ勝つだけなら、簡単。
正面で組み合ったまま圧し潰せたし、相手の死角に回り込んで切り付けられた。
悪気がないから質が悪いと、女子2人はそろって息を吐く。
何か問いたげなロイヤルファミリーに構わず、ポテチを食べ続けた。
油で光沢が出てきた唇を自分で舐めつつ、アドラステアが尋ねる。
「しょっぱくないですか?」
「そうか? 私は、これぐらいが好みじゃ!」