【第一章 死の刻印スタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~   作:初雪空

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室矢重遠は、ゼロから天までの道のりを歩む!
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第6話 神話の時代にいた女神の怒り

 両手には古ぼけた銀のダガー、リジェクト・ブレードが二振り。

 その切っ先は、襲ってきた従騎士3人へ向く。

 

 どいつも土気色で、内側からミミズが走っているような線がいくつも走っている。

 

 だが、その顔は悲壮……。

 

(すでに、操り人形か! 自我を残したまま)

 

 悪趣味な話だ。

 

 報告していたリーダーらしき男が、叫ぶ。

 

『偉大なるドゥクス様のため、カレナを殺さなければ――』

「やりなさい、重遠」

 

 お嬢様モードになった室矢カレナの声が、後ろから響いた。

 

「致し方ないか……」

 

 俺の独白に、サロンで徹夜したと思われる正騎士3人の声が続く。

 

「待て!」

円卓(ラウンズ)の騎士を殺すのか!?」

「今、とめます!」

 

 俺がリジェクト・ブレードを消して、素手になると、3人は黙る。

 

 けれど、握った右拳を引き、左腕を引く動作からの正拳突き。

 

 再び突進してきた従騎士3人の間を一筋の光が通り抜けるや否や、彼らが身に纏っている誓約(オルコス)が粉々に砕け散る。

 

 後ろへ吹っ飛んだ3人は、ボロボロの服で、床に叩きつけられた。

 

 俺は、伸ばしたままの右腕をゆっくりと戻す。

 

(2周目だけあって、上手くなったものだ……)

 

 軽いパンチ一発で、コレ。

 

 1周目では刀に頼るしかなかったが、もう素手でも扱える。

 

 日光が一面から差し込む広間で、瀕死の3人は倒れたまま、自分の師匠である正騎士を見上げた。

 

 けれど、正騎士たちの反応は辛辣。

 

「何たる、失態!」

「名もなき東洋人ごときに、触れることもできないとは……」

「ラウンズの騎士が負けたうえ、誓約(オルコス)まで失うなんて」

 

 近寄ることもなく、弟子を罵倒する。

 

 目を丸くしていた執事、メイドは、雰囲気を変えた。

 ポーカーフェイスのままだが、蔑んだ視線で正騎士たちを見る。

 

 正騎士3人が、自らに仕えている従騎士、それも直に死ぬ者に、この仕打ち。

 

 ウィットブレッド公爵に仕えるプロだからこそ、主君がその忠誠に報いず、裏切ることを許せないのだろう。

 

 彼らは、知っている。

 

 正騎士3人が弟子だけ現場へ向かわせて、自分たちは公爵に取り入っていたことを……。

 

(全員で動いていれば、この事態を避けられたかもしれない)

 

 それは、公爵からも要求されたことだ。

 

 ところが、彼らは動かず。

 

(その結果が、これ……)

 

 ゆっくりと、前へ歩む。

 

 その気配を感じた全員が、俺を見た。

 

 床に倒れたままの従騎士3人は、恐怖に歪んだ顔で、遠ざかろうと這いずる。

 

 最も近い1人に辿り着き、片膝をつく。

 

 トドメを刺されると悟った青年が、顔を背けつつ、目を閉じた。

 

 俺は、床にある片手を握る。

 まだ拳を保護する部分が残っていて、ガシャリと鳴った。

 

 思わぬ展開に、茫然としたままで俺を見上げる青年。

 

「よく頑張った! お前たちの尊厳と命を奪った連中は、俺が倒す! あとは任せろ」

 

 涙を流した青年は、土気色のまま、絞り出すように呟く。

 

『すまん……』

 

 同じく、這いずるように近づいた残り2人の手も握る。

 

『頼む……』

『お願い』

 

 やがて、燃え尽きた物体が煙になるように消え去った。

 

 片膝をついたままの俺は、固まったままの正騎士3人のほうを向く。

 

 いや、騎士ではない。

 

 問うべきは――

 

「あなた方は、それでも人間か?」

 

 理解した3人が、瞬時に激怒する。

 

「わ、我々の従騎士を殺して、タダで済むと思うな!」

「公爵の前で、何という無体を……」

「この件は、ラウンズとして正式に抗議します!」

 

 そこで、気づく。

 

 この広間にいる全員が、自分たちの敵になったことを……。

 

 使用人ですら感情を殺しきれず、名状しがたい表情を浮かべている。

 

 娘のジェニファーがじわじわと殺されている公爵は、もはや激怒したという表現すら生温い。

 

 1人用の豪華なチェアで立ち上がり、大声で叫ぶ。

 

「貴様らは――」

 

 金色の光が、辺りを満たしている。

 

 表現しにくい圧迫感に、そちらを見た公爵が黙った。

 

 そこにいたのは、生意気な令嬢であったはずの存在。

 

 同じくチェアに座りつつ、陰のある笑みを浮かべている。

 

「フ、フフフフ……」

 

 握りしめているひじ掛けが、たった今、乾いた音を立てて砕けた。

 

 顔を上げたカレナは、辺りを金色で満たしつつ、低い声で宣言する。

 

「よくも、見せてくれましたね? この私に……」

 

 立ったカレナは、雰囲気がまったく違う。

 

 気を抜いたら、ひれ伏したくなるほどの威厳。

 

「かつて、私が作ったギア……。それを纏った戦士に対して……」

 

 一歩ずつ、カレナが進む。

 

「多くの守護者(ガーディアン)が私に仕え、散っていきました……。それは、テオフィルとて、例外ではない」

 

 俺のほうを見たカレナは、すぐに向き直る。

 

「今となっては、ギアも神話の時代と比べ物にならない……。久しぶりに見ましたが、もはや残骸と変わらない有様!」

 

 クリエイターの顔になったカレナは、すぐに毅然とした表情へ。

 

 口が半開きの愚か者たちに、真実を告げる。

 

「たった今、テオフィルに倒された者たちは、あなた方がついていれば助かりました! それを棚に上げて、よくも……」

 

 低身長の幼い姿のまま、カレナは叫ぶ。

 

「その身にギアを纏い、守護者(ガーディアン)の真似事をしながら、この体たらく……。恥を知りなさい!!」




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