【第一章 死の刻印スタート!】異能者が普通にいる世界へ転生した2周目は海外の死亡フラグと戦う!~新たなヒロインたちの悲哀と救い~ 作:初雪空
シャーリーの大声で、公爵邸の広間は微妙な空気に。
気づいた本人が、縮こまる。
「あっ! いえ、1人で行かせるべきではないと――」
「私の弟子が、失礼いたしました! わたくしどもの同行は可能ですか?」
師匠である老人の男、レノックスが、取り成した。
チェアに座っている室矢カレナは、後ろに立っている俺を見る。
「どうする?」
「爵位の件は、もういい!
「でしたら、1つ、お願いしたいことがあります」
唐突に、お嬢様モード。
座ったままで振り返っているカレナは、はにかんだ。
「今だけ……。私のテオフィルに戻ってくれませんか?」
この状況で、『神話伝承テオフィル』ごっこか!
そう思いつつ、了承する。
「シュヴァルツを身に纏って、
一瞬だけ顔をしかめたカレナは、すぐ笑顔に戻る。
「ええ! それで、構いません……」
前に向き直ったカレナが、立ち上がった。
後ろへ振り向きつつ、再び金色のオーラで周囲を満たす。
「地上を守護する女神カレストゥーナが、テオフィルに命じます!
それを聞いたかのように、空中で金属音が響き、腕、足、胸部、肩、腰、足と、独立したパーツが覆っていく。
前よりも控えめな、シャーリーの声。
「えっ? どうして、
それに構わず、自分の体に馴染んでいるかどうかをチェックする。
(頭のヘッドギアも、重さを感じないな?)
手足のつけ根が開放的で動きやすく、意匠的な白銀のプレートアーマー。
シュヴァルツだ……。
ブーツと一体化した足で絨毯をすりつつ、ガントレットと一体化した拳を開いて握る。
(どうせ、2周目だからな? 好きにするか!)
広間にいる全員の視線を感じつつ、ガシャリと鎧を鳴らしつつ、片膝をつき、片方の拳も床につけた。
「カレストゥーナ様の仰せのままに……」
「そちらのお二人も、どうぞ!」
満足げなカレナの声と同時に、近くで別の風が吹く。
跪いたままで横を見れば、広間の中で、ドアの形に切り取ったように外の景色がある。
(
俺は、頭以外を覆うプレートアーマー、通称ギアを鳴らしつつ、立ち上がった。
◇ ◇ ◇
ブルックウッド墓地。
青空と白い雲が広がり、その下に広大な緑の大地と、無数の墓石が並ぶ。
世界でも有数の、小国がすっぽりと入るほどの広さ……。
そこを見回したシャーリーは、息を吐く。
「お爺ちゃん? 何で、あいつが
「静かに……。彼は、オルコスの管理者であるウィットブレッド公爵家のご令嬢の側近のようです。秘蔵の逸品があっても、不思議はない」
レノックスが答えながらも観察しているのは、
(しかし……。私も知らない
年の功でポーカーフェイスだが、内心では動揺していた。
孫娘のシャーリーが指摘したように、これほど見事な
(
どうにも、キナ臭い。
(誰が、どのように隠し持っていたのか? あの正騎士たちで、1つ確かめる必要があるな? いずれにせよ、処分されるのは確実だ)
いっぽう、従騎士の平服でも可愛らしいシャーリーは、退屈そうに両手を頭の後ろで組み、片足で地面をグリグリと削る。
「あーあ! 私の
「外では、マスターと呼びなさい」
いつもの調子で答えたが、すぐに真顔へ。
「
「……勝利を我らに」
両手を下ろしたシャーリーが呟けば、重遠のリピートのように、空中に出現したパーツがそれぞれの部位に装着されていく。
奇しくも、同じ白銀。
けれど、見ただけで分かるほどに違う。
体を覆っている面積、輝き、表面の意匠すら……。
片手で身長ほどのハルバードを立てつつ、ガシャリと音を鳴らしたシャーリーが、息を吐く。
視線の先には、重遠の後ろ姿。
よっぽど、納得できないようだ。
「ん? あいつ、武器は? まさか、素手で!?」
言われてみれば、下ろしたままの両腕には何もない。
少なくとも、そう見える。
次の瞬間に、広範囲の地面が下から弾け飛び、無数の
この時点で、レノックスも左腰にいつの間にか吊るしている鞘に手をかけ、右手でゆっくりと引き抜く。
いかにも騎士らしい直剣が、上からの日光でギラリと輝いた。
「ここも、奴らのテリトリーというわけですか……」
レノックスの独白に答えるように、円を描くように囲んでいるゾンビたちの一角が空いた。
円陣の先から、目深にフードを被り、それに一体化しているローブで体を隠した人間が近づいてくる。
「そうだ! この日を待ち望んだぞ……。いよいよ、ここが新たな首都になるのだ! 死者の国としてな?」
しわがれた声は、間違いなく男だった。