元パーティーメンバーに『ざまぁ』されないように世界の果てまで逃げる   作:hoge55

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1話

「貴方にはパーティーを抜けてもらいます」

 

 そう語る少女の目線には絶望した様子の少年がいた。

 あーあ、おれし〜らね!

 

 

 

 

 思い出したのはたぶん、5歳くらいの頃だと思う。

 

 そのぐらいの時にふわ〜っと日本で生きていたという前世の記憶が蘇ってきた。といっても鮮明な物ではなく記憶は朧げで細かいところは抜け落ちている。だから前世の記憶が戻った時にそれほど混乱しなかったのだと思う。

 

 そんなだから特に前世の記憶を使って何かしようという気は起きなかった。日本の技術を利用した成り上がりだの、幼少期より自我がハッキリしているアドバンテージを利用してだの、そういったものをしたところで面倒でしかない。そもそもやろうと思っても何をしていいか分からないしな。

 

 強いて言えば身の振り方が少し変わったことだろうか。周囲のお手伝いをよくするようになり、共に暮らす子供達の世話も進んでするようになった。

 

 今世の俺はとある村の孤児院に預けられており、両親の顔は覚えていない。

 院長に聞いても『貴方の家族はここにいますからね』と優しく諭され答えは教えてくれない。まあ、孤児院にいる以上、おそらく捨てられたのだと思う。だからと言って特に思うことはないが。

 

 普通だったら怒ったり悲しんだりするのだろうが、俺には前世の記憶がある。

 貧しい暮らしに耐えられず我が子を売ったりすることもあるこの世界、孤児院に預けられた程度ならまだ優しい両親ではあるのだろう。

 

 それに孤児院の院長や教会からやってくる修道士達も愛を持って育ててくれた。

 立場上、彼らも裕福な暮らしは出来ていないというのに、それでも我が子のように俺たち孤児を育ててくれた。

 

 それだけで十分だと思う。

 院長の言葉もあながち間違いではない。

 今世の俺にとって、俺の親は院長だ。

 

 

 そんなこんなで11歳になった日、俺は修道士に連れられて近くの街の教会にやってきた。

 

 この世界では10歳になった人間は“才能”と呼ばれる加護を女神様より授かるようだ。才能は人によって千差万別で、どういった才能が授かったかは教会で判断できるとのこと。

 

 俺の場合は両親から孤児院に捨てられていたことから正確な誕生日、年齢がわからないことから大体10歳になっただろうな〜って日からさらに1年経ってこの日を迎えた。

 10歳かと思ったら実は9歳でした!とかだったら面倒だしな。

 

 前世の記憶とは異なる、異世界のイベント。

 思わずワクワクし、それが周りにも伝わっていたようで修道士から微笑ましい顔で見られた。

 

 

 で、待ちに待った才能判定イベントだが、教会にいる才能判定師から告げられた結果は授かった才能は<無し>。

 

 

 悲しくはあったが、まあそんなもんかと感じた。前世の俺も何かしらの能力が突出していたわけでもなく平凡だったようにも思う。

 だからその程度の感想しか出てこなかった。

 

 しかし、周りはそうではないようだった。

 

 同行していた修道士は絶句し、判定師もどこか俺を憐れむような目を向けていた。話を聞くとどうやら才能がないというのは“女神様から見放された存在”とされているようだった。

 

 なんじゃそらとは思ったが、全人類が女神から授かるはずのものが無いとなると、確かにそう思われても仕方ないかと思った。

 

 同時に、これからの人生は面倒になりそうだとも思った。“女神様から見放された存在”という言葉からおそらく忌避すべき存在なのだろう。実際、俺のような存在は極少数ではあるものの、その多くは迫害の対象となっているようだ。

 判定師が俺を憐れむように見ていたのもそれが理由だろう。

 

 教会の隅っこでこれからどうすっぺかな〜なんて呑気に考えていると仲良くしてくれている修道士が声をかけてきて今後の事について話してくれた。

 まとめるとこんな感じだ。

 

・私たち教会は貴方を支援する。

・貴方はこれからとある人物の弟子となり一人でも生きていけるよう修行してもらう。

・苦しくなったらいつでも帰ってきてもいい、貴方の家族はここにいるから。

 

 うーん、最高じゃないかあ!?

 

 女神様を信仰する教会が女神様から見放された俺を支援するのは教会の教え的にどうなんだと思ったが、俺のような存在が迫害されている現状をよく思っていない教会の人間は多くいるようで、見かけ次第支援するよう活動しているとの事。

 

『きっと貴方は女神様からの手助けがなくとも生きていけるほどの人。だから女神様は才能という贈り物を授けなかったのだと思います。けれどもそれは今の世では困難な道のり。私たちに貴方が正しく歩いていけるよう、手助けをさせてください』

 

 なんて素晴らしい人なんだろうか。教会万歳!

 

 ただ、教会が支援するといっても手の届く範囲は限られている。突然やっかみを受けたり見知らぬ誰かに因縁を突然つけられたり様々な危険に遭遇することがあるだろう。

 そういった事態を自分だけでも解決できるように修行をつけてくれるとのこと。

 

 生活の仕方や周囲とのコミュニケーションの取り方は修道士からも問題は無いだろうと言われたからじゃあ何の修行をするんだと思ったら、冒険者として独り立ちできるよう鍛えてくれるとのこと。

 

 冒険者。孤児院で暮らしていた時にも軽く聞いたことはあるが、この世界にはまだまだ人類未到の地はたくさんあるらしく、代表的なのはダンジョンと呼ばれる地だろう。

 ダンジョンは世界各地に発生しており、魔素と呼ばれる空気で満ち、魔獣などが活性化し人類が攻略するのに難航している場所だ。

 冒険者はそういったダンジョンを攻略したり、他にも人々の悩み解決なんていうことも手広くやっているようだ。

 

 そんな冒険者としてやっていけるよう鍛えてくれるのは、とある騎士団の人間だった。

 たまたま、俺が才能判定する日にこの教会に足を運んでいたらしく、修道士から頼み込まれ俺に修行をつけてくれるようだ。

 

 修道士から話を聞いた当初は騎士として育てるつもりだったらしいが、色々考えた結果、冒険者として育てる事にしたようだ。騎士は身分だったり、必要な資格だったりが必要だから俺としてもそっちの方が助かる。

 

 騎士様はそのことに申し訳なさそうだったが、俺の方こそ与えてもらってばかりで申し訳ない。

 これからよろしくお願いしますと頭を下げ、修行の日々が始まった。

 

 

 修行が決まってからはすぐに孤児院を出て騎士様が活動する王都で暮らすようになった。

 院長とはしばらく会えないだろうけど、一人で生きていけるぐらい強くなったらまた会いにくると伝え別れた。泣いてはいない。嘘、ちょっぴり泣いた。

 

 騎士様は騎士団内ではかなり重要なポジションについており常に忙しい様子で、ずっと手取り足取り教えるなんてことはされなかった。それでも隙間時間で顔を出して来て俺に訓練をつけてくれた。

 

 走り込み、筋トレといった基礎的なものから武器の扱いや魔法の訓練。

 武器は剣・槍・弓・短剣・斧等々、さまざまな得物を触らせてくれてある程度扱えるようになった。中でも特に盾の扱いに適性があったようで、将来、冒険者間でパーティーを組んだ時に盾役として役割を果たせるよう、重点的に鍛えられた。

 

 パーティーを決める上で盾役は非常に重要なポジションで熟練の盾役はどこも欲しているらしい。

 

 冒険者はダンジョンにて魔獣と戦うことがほとんどで、魔獣は強力かつ群れで襲いかかってくることが多い。

 そんな魔獣に対し、盾役は前線で味方が敵を倒すためのスペースを確保しつつ、敵の行動阻害、また、前に出過ぎて孤立しないよう味方全員に位置関係を把握して立ち回る必要がある。

 また、攻撃を受けすぎるのも味方からの支援に負荷をかけてしまうため敵の攻撃を正面から受けすぎないことも重要だ。らしい。

 

 騎士様も騎士団内では戦闘時に盾役をしているようで随一の実力があるようだ。

 だから様々な技術を仕込まれ、若くして熟練の盾役と遜色のないほどに成長できた。

 

 地獄のような修行だったが成し遂げられたのは前世の記憶のおかげだろう。

 どれだけ苦しかろうが、前世では考えられないような目まぐるしい日々、冒険者という浪漫を感じる職業。

 心躍らない訳が無い。

 

 騎士様も本来はもう少し手心を加えるつもりだったが、弟子を取るのは初めてだったようで全くへこたれない俺に楽しくなり、ついやりすぎてしまったという。

 

 修行を終え、免許皆伝だ!と太鼓判を押されたのは16歳の時だった。

 ちょうど、この世界での成人の時だった。

 

 およそ5年ほど、長いようで短いような時間だったが、後にも先にもこれほど濃密な時間を過ごしたのはこの時だけだろう。

 実は、この5年で騎士様の騎士団内外における影響力も強くなり、身分が低く、親のいない俺でも騎士団へと入れるよう関係各所へ調整を済ませていた。

 

 それを告げられた時、本当に嬉しかった。

 やっぱり思ったがこの世界の人々は皆優しい。心が温まる。

 悩みに悩んだが、結局騎士団入りはしなかった。

 

 そこまでしてもらって断るのはどうなんだとも思う。

育ててもらった恩は無いのかと。

 

 ただ、それよりも冒険者という職業に俺は魅了されてしまっていた。

 

 前世で読んだ物語のような冒険譚、未知の大地を歩む人類の最前線。

 そういったものに俺はすっかり心を奪われ、どうしてもこの道を歩みたかった。

 

 騎士団入りを断った時、騎士様は『そんな気はしていたよ』笑っていた。

 他の騎士団員とも修行中に知り合っていたため、騎士団に入らないことを惜しむ様子だったがそれでも俺の選んだ道を応援してくれた。

 

 いつかこの人たちに何らかの形で恩を返そうと、そう決意した。

 

 

 騎士様の元を離れ、最初に向かったのは生まれ育った孤児院。修行を始めた頃は余裕があったため文通をしていたが途中からその余裕も無くなりほとんど音信不通のような状態だった。

 

 孤児院に戻り院長や孤児達、縁のある修道士達と再会し、これまでの事、これからの事をたくさん話した。

 騎士様が裏で現況を院長達に報告していたからみんな既に知った内容であるけど、俺の口から話すことを楽しく聞いてくれていた。

 

 『きっと貴方はどこまでも飛んで行ける。貴方の行先に幸多からんことを』

 

 孤児院で暫く過ごし、再び孤児院を出る時に院長から言われた言葉だ。

 初めはどうなるか不安だという気持ちもあったが、今は希望で胸が満ちている。

 

 と、孤児院を出発してようやく思い至った。

 

 

 俺は主人公では?

 

 

 前世の記憶でそんな感じの物語がたくさんあったはずだ。

 前世の記憶を持った主人公が異世界で成り上がるとかそういう感じのやつ。

 まさに今の俺の状況と一緒だ。

 

 なら、俺はただ冒険するだけじゃない。もっとでかいことをするべきだ。それが主人公として、そしてたくさんの人達に支えられて成長した俺がすべきことだ。

 

 そうして定めた俺の目標は“世界制覇”。

 世界中に点在するダンジョンの制覇、そして人類未到の地の攻略。

 

 これを成し遂げれば俺の名は世界に轟き、歴史に名を刻むだろう。みんなも喜ぶし、出会ったとこはないが俺のような才能<無し>の人たちへの迫害も無くなるだろう。

 

 うん、みんなハッピーになれて素晴らしい。まるで主人公だ。

 そうして俺は“世界制覇”を人生の主題にし、活動を開始した。

 

 

 まず向かったのは近くの街。

 ここには冒険者組合、通称ギルドと呼ばれる、拠点がある。ギルドでは冒険者のための活動支援や依頼斡旋、冒険者間での情報交換等を行う場となっている。

 

 この街にあるのは支部ではあるものの、十分に施設は整えられておりギルドの建屋内も活気付いており、雰囲気のいい場所だった。早速俺は冒険者として登録し、活動を始めた。

 

 最初はソロで活動していたが、暫く経った頃、複数のパーティーから誘われそれからは助っ人のような形でいろんな人たちと冒険を共にした。騎士様の言ったように盾役は重宝しているようで、若手のパーティーから熟練のパーティーに至るまで様々なところから声がかかった。

 その度に助っ人ではなく正式加入しないかと誘われたが、毎回断っていた。

 

 理由は一つ。

 俺が主人公だからだ。

 

 主人公ならば仲間達もそれに見劣りしないぐらいのタレント揃いであるべきだと思っていた俺は仲間になるメンバーは慎重に吟味していた。パーティー正式加入の話を受けた時は失礼ながら勝手に評価し、中には惜しいと思うような人たちもいたが、そのどれもが与えられた才能がパッとしなかった。

 

 自分に無いものだから、仲間となるメンバーの才能は特に重視したい。

 

 

 そうして助っ人冒険者として活動し、活動拠点も転々として2年が経った頃。

 18歳となった年に、その時拠点としていたギルドで俺は運命の出会いをした。

 

 

『貴方が有名な“鉄の渡り鳥(アイゼン・ミグラント)”、ですよね。私たちとパーティーを組んでいただけないでしょうか』

 

 ギルドで次の依頼を吟味していた俺に声をかけてきたのは俺より年下のように見える女の子。

 

 一目見て理解した。

 この子はヒロインに違いない。

 

 ブロンドの髪は絹のように滑らかで、こちらを見つめる宝石のような碧眼は吸い込まれてしまいそうなほど深く、澄んでいる。まだ少女のあどけなさを残した可憐な顔立ちは、触れたら壊れてしまいそうなほど繊細で、端正という言葉すら生ぬるい。

 これまで数多くの冒険者と出会ってきたけれど、これほど胸を締め付けられるような美しさを持った女の子には、ただの一度も出会ったことがない。

 

 というか一目惚れだった。

 俺の主人公ストーリーのヒロインは、絶対にこの子しかいないと直感した。

 

 もう心は決まっているが一応、念のため才能を聞いておいた。

 

『才能ですか?私の才能は<剣聖>です』

 

 はいヒロイン確定!お疲れ様でした!

 答えを聞いて速攻パーティーを組み共に活動をすることになった。

 

 女の子は俺の2歳年下で名前はアリアというらしい。君に似合った美しい名前だね(ニチャア)。

 

 自己紹介がてらお互いの話して、大体の事情がわかった。

 なんでもアリアは共に田舎村で育った幼馴染の男の子と世界中を旅するという約束をして冒険者として活動していたが、二人で活動するには少し限界が見えてきたから仲間を増やそうと考え、そうして白羽の矢がったたのがギルド職員からお勧めされた俺だったらしい。

 

 うーん、もしかして俺、お邪魔虫?

 

 共に田舎村で育ち、幼い頃に世界中を旅すると約束をし、14歳という若さでここまで二人で冒険をしてきた。

 

 うーん、これはお邪魔虫!

 

 いや、まだだ。まだわからん。

 少女の隣にいた少年にどんな才能を授かったのか聞いてみると恐ろしい事実がわかった。

 

『僕の才能は、その・・・・・・<ステータス編集>です』

 

 少し答えにくそうにしていた少年の口から出たのはとんでもない才能だった。答えにくそうにしていたのは使い方がわからないからだそうだ。そもそもどんな才能なのかわからないと。

 分かってたまるか!そんなクソチート!田舎に帰れや!

 

 だが、俺としては分かったことがある。悔しいが。

 

 俺は主人公ではなかったということ。

 俺ではなくこの少年こそが主人公なのだと。

 

 前世の物語でもそんなのがあった気がする。

 使えないと思われていた能力が突然覚醒し無双する。そんな感じだったはずだ。

 

 だとすると俺の役割は何だ。

 そう、“無能”とされている少年を貶し、いずれ少年に“ざまぁ”される役割。そんなとこだろう。

 

 “無能”なのは俺のほうだよクソが!!

 

 そんな俺の様子を悟ったのか少年は少し身を縮こませたが、関係悪化はまずいと思いすぐにフォローする。俺の全力フォローに気をよくした少年は少女と同じように俺とのパーティー結成を喜んでくれた。

 

 

 そこからは早かった。

 <剣聖>を授かっていたアリアとの連携も少し共に闘うだけで併せられるようになり、これまで倒せなかったような魔獣も倒せるようになった。

 

 元々俺は“鉄の渡り鳥(アイゼン・ミグラント)”という呼ばれ方をしていた。どこへでも行き、降り立った場所ではどんな攻撃も通さない鉄壁を誇る。名前の所以はこんなところだろう。

 

 そんな俺が正式なパーティーを組んだという話は俺の想像以上に話題になったらしく、俺を育ててくれた騎士様からも祝福の手紙が届いた。

 ええ、暇じゃん・・・・・・なんて失礼なことも思ったが祝福の言葉自体は嬉しく、少し浮き足だった返事をしてしまった。

 

 そうして正式にパーティーを組んでから2年が経ち、仲間も二人増えて総勢5名という少ないながらもそれぞれの役割がバラけてバランスの取れた良いパーティーとなった。

 

 

攻撃役のアリア。

盾役の俺。

斥候の男エルフ。

後衛の女魔法使い。

そして、荷物持ちの少年。

 

 

 そう、荷物持ちの少年だ。

 あれから2年経ったが未だに才能の使い方がわからず、戦えないでいるため俺たちの荷物持ちとして働いてもらっている。

 

 魔獣と戦うのは俺たちで十分な上、連携も完璧なため戦闘における問題も起こっていないことから少年だけ戦わないことに特に不満はなかったが、少年はそうは思わなかったらしい。適材適所で良いと思うけどなあ。

 

 どうにか自分も戦えないかと四苦八苦していたから、ギルドで貸し出している訓練場に連れて行き戦闘の指南をした。その日から少し距離を取られるようになった。なぜだ。

 そのことをみんなに相談したら男エルフには失笑され女魔法使いには爆笑された。ぶっ飛ばすぞ。

 

 アリアは少し悲しそうな顔をしていたが、特に何も言わなかった。その様子を見て俺は思った。

 

 

 あれ?もしかして俺ワンチャンある?

 

 

 この2年で何となく察してはいたがアリアは少年に対する恋心が無いようだった。昔はあったのだろう。二人で共に冒険しようなんていう約束をするぐらいだったのだから少なくとも淡い想いはあったはずだ。

 

 だが、実際に冒険を続けるうちに少女に何かしらの心変わりがあったのかは知らないが少年に対する気持ちは無くなったとか、そんなところだろう。

 

 

 よし!ちょっくら狙ってみるか!

 

 

 アリアとは元々共に訓練する仲ではあった。

 俺は自身の活動をしやすくするため周囲へ自分に与えられていた才能は<防壁>と言うようにしていた。これは冒険者として活動する前、修行している時に騎士様と取り決めていたことだ。その方が活動しやすいだろうと。

 

 実際、盾役としてかなり鍛えられていたから誰にも疑われることなく、素晴らしい才能を授かったなと出会った人みんなから言われた。今のパーティーメンバーにもそう言っており、その嘘がバレないように俺は冒険以外の時間、全てを訓練に注ぎ込んでいた。才能を騙るからには相応の力が必要だからな。

 

 訓練自体は誰に言うでもなく一人でやっていたが、時折ギルド職員から若手の訓練をしてほしいと頼まれた時は面倒を見たりしていた。

 そうやっていつも通り、ギルドが解放している訓練場で訓練しているとアリアが自分にも訓練をつけてほしいと頼み込んできて、それから空いた日はいつも共に訓練していた。当時は俺の方が強かったらその申し出はアリアの強くなりたいという純粋な思いであり、俺としてもその思いは嬉しかった。

 

 デートのようなことはできないが、パーティーの誰よりも、なんならアリアの幼馴染である少年よりも近い位置に入ると感じていたため訓練中の会話を増やし徐々に仲を深めていった。

 

 純愛、これは純愛じゃないか!

 

 今まで才能を騙るためという義務で行ってきた訓練がこの時からは高揚感、幸福感を感じられるようになってきた。

 

 今ではアリアの実力は俺よりも高みにいるが、それでも俺の訓練に付き合ってくれており、その事実にも嬉しく感じていた。訓練場を借りる際、ニヤニヤしていて気持ち悪いとギルド職員に言われるぐらいには浮かれていた。

 

 

 だからだろうか、アリアに俺の無能を見抜かれたのは。

 

 

 ある日、ギルドから緊急の依頼を課された。

 とある村の近くに出現した魔獣の討伐。

 

 なんでもない魔獣討伐だと思ったが、話を聞いてみると既に周辺の環境に甚大な被害が出ており、その村もいつ襲撃されて崩壊してもおかしく無い状況だそうだ。

 魔獣を刺激しないよう少しずつ村人の避難誘導を進めてはいるものの、一刻も早く原因である魔獣を討伐してほしいとのこと。

 

 本来このような案件は騎士団の管轄だが、その騎士団は別件にかかりきりで動かせないこと。騎士様からも謝罪をギルド職員越しに受けた。

 

 

 そこまでされずとも俺たちはこの依頼を受けるつもりでいたし、この街にいる冒険者だと俺たちが最も強かったから俺たちが行くべきだろう。

 

 そうして現場に辿り着き調査を続けるうちに判明したのは聞いていた以上に魔獣が強大だったこと。これまでで一番の戦いになることを全員が感じた。

 村人たちの避難誘導をする傍ら、魔獣との決戦準備を進め、さあこれから戦いを挑もうと。その直前にアリアから呼び出された。

 

 

『戦いの前に確認させてください。あなたの才能<防壁>についてですが・・・・・・嘘、ですよね。たぶんですけど、才能・・・・・・授かって、ない、ですよね』

 

 

 おーい!決戦前になんてこと言ってんだよ!

 みたいなことを言って誤魔化したが、どうやらアリアにはその根拠と今ここで確認しなければならない理由があるようだ。

 

 訳を聞くと、俺に才能が無いと確信したのは度重なる訓練の中でだそうだ。

 <剣聖>のおかげか、人の体に宿る魔力や気力のような目に見えないエネルギーの動きが細部に至るまで把握することがアリアにはできるようだ。魔法使いが使うような魔力探知とは比較にならないレベルで。

 

 そして才能により発動する能力には必ずそういった目に見えないエネルギーが動くらしく、その動きが俺には無かったそうだ。元々そのような疑念を抱いていたが、度重なる訓練で疑念は確信へと変わったようだ。

 

 そんなのずり〜よ〜!

 なんて嘆いても仕方無い。

 

 切り替えた俺はあっさり認めて、アリアにどうする気だと聞いた。

 

『このことを吹聴する気はありません。ただ・・・・・・この先の魔獣との決戦は下がっていてください』

 

 おい!差別か!無能差別か!

 というのは冗談で、この先の魔獣との決戦はこれまで経験したことのない戦いになるだろうことはわかっている。実際、荷物持ちの少年は力になれることは無いだろうと街に残ってもらっている。本人も苦しそうにしてはいたが納得した。

 

 そして才能を授かっていないことがわかった俺に対しても、この先の激戦は危険だと判断してこんなことを言ったらしい。・・・・・・俺に傷付いてほしく無いから逃げてほしいとも言っていた。

 

 俺は普通にキレた。

 

『ここまできて尻尾巻いて逃げるほど俺は弱くない』

『才能なんてなくとも戦えるほど鍛えてきた』

『そんな心の強さがあったから女神様は俺に才能を授けなかった』

『俺の強さはキミが一番分かっているはずだ』

『何より俺はーーーキミを守るために盾を構えている』

 

 みたいなことを捲し立て、どさくさに紛れてくっさい台詞も言った。なんならアリアは俺の言葉にボケッとしていたから抱きしめた。

 

 我に返ったアリアは顔を真っ赤にしてなんか色々言っていたが俺の参戦は認めたようだった。

 やったぜ。

 

 

 そうして始まった魔獣との決戦。

 なんか普通に勝った。

 

 もちろん、これまで戦ってきた魔獣の中でぶっちぎりで強かった。

 

 そしてそれ以上にアリアが強かった。

 いやなんで?

 なんか別人レベルで強くなってたんだが。無事に勝ったからいいけど。

 

 そうして村に平和が訪れ、俺たちは街に凱旋した。

 

 俺たちの名は広く知れ渡り、騎士団からも感謝され、なんなら王様からも感謝の言葉を頂いた。恐れ多くも王城に招待され、王からの言葉を頂き、王が開いてくれた祝勝会では旨いもんたらふく食べた。

 

 祝勝会では別件に掛かり切りだった騎士団も無事問題解決できたようで参加しており、久しぶりに騎士様とも再会できた。お互いの近況報告、そして俺の仲間たちを紹介していると、アリアが顔を赤くし緊張した様子で今まで聞いたことのないような自己紹介をしていた。

 結婚前のご両親への挨拶じゃねえんだからそんな気負うなよ(笑)。

 

 え?気が早い?うるせえ!!

 

 

 それから俺たちはしばらくの間は休養に当てようということになった。

 大きな怪我なく魔獣に勝ったとはいえ、魔獣が放ったプレッシャーは途轍もなく疲労はかなり残していた。

 

 俺もずっと続けていた訓練も数日だけではあるが止めて、アリアとデートをしていた。疲れてはいたものの、アリアの笑顔を見てそれらは全て吹っ飛んだ。

 

 魔獣との決戦前にあんなことをしたのは勝算があったから。あとはもう我慢が出来なかった。

 アリアも気持ちは俺と同じだったようで交際を始め、パーティーメンバーの男エルフと女魔法使いに報告したところ『やっとか』と言われ祝福された。少年には言えてない。怖いから。いつかは言う。

 

 

 そうしてゆったりした日も数日経ち、訓練も再開してさらに数日が経った頃。

 パーティーとして冒険者活動を再開しようといったところでメンバー5人が集まったところで、アリアが何か覚悟を決めた表情をして少年に対して口を開いた。

 

 

「貴方にこのパーティーから抜けてもらいます」

 

 

 あーあ、おれし〜らね!!




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