元パーティーメンバーに『ざまぁ』されないように世界の果てまで逃げる   作:hoge55

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2話

「貴方にはこのパーティーを抜けてもらいます」

 

 アリアに言われ絶望する少年、ゼイロは声を震わせて言う。

 

「どう、して・・・・・・これまで一緒に、頑張って来たじゃないか・・・・・・」

 

 そらそう思うわな〜、急にパーティー追放だなんて。

 

「ゼイロくん、貴方が今まで頑張ってきたのは分かっています。でも、これから先、貴方じゃ力不足だと思うんです」

 

 力不足と言い切るアリアの言葉を聞いてゼイロは悔しそうに歯噛みする。実際、この間の魔獣戦では街に待機してもらっていた。いつもはダンジョンの探索でも後ろについて来てもらってはいたが今回ばかりは相手が悪いと、そう伝えて。

 

「それは・・・・・・!これから頑張るからっ!」

 

 あっ、女魔法使いちゃんが舌打ちした。やめて!俺たちが悪者になるだろ!

 

「アンタね・・・・・・ずっと前から強くなるって、才能を使えるようになるって自分で言ってたわよね?じゃあこの体たらくは何なのよ、今まで何をしてたの?」

「おい、あんま言い過ぎんなって・・・・・・」

「アンタは黙ってなさい!」

「ハイ・・・・・・」

 

 こういうギスギスはあまり好きじゃ無いため言いすぎないよう注意したら逆に怒られた。だからやめろって・・・・・・。

 女魔法使いがそう言いたくなるのも、まあ・・・・・・正直わかる。

 

 ぶっちゃけ荷物持ちなら誰でもいいし、目の前で暗い顔をするゼイロよりも適役はいる。なんなら今の俺たちは名声があり、資金にも余裕もあるため人材募集し、報酬にも色をつければ優秀なメンバーは見つかるだろう。

 これまでそうしなかったのはリーダーであるアリアと幼馴染だったからだ。本人にもやる気はあったしな。

 

「うっ・・・・・・これからはもっと頑張るから!」

「あーうっざ、もういいわ。私帰るから」

「あっ、マギサちゃん!」

 

 ゼイロの言葉に心底呆れた様子の女魔法使い、マギサはアリアの静止も無視してこの場を去った。

 今この場にいるのは俺、アリア、ゼイロくん、そして男エルフのユートリアの4人。ユートリアの住む宿の部屋が広いためそこに集合しており、俺たちの醜態を誰かに見られているわけじゃないが、途轍なくどんよりとした空気が部屋に満ちている。ユートリア、ごめんな。

 

「これ以上どうしたらいいんだよ・・・・・・僕だって頑張って・・・・・・」

「うーん、じゃあまた俺と一緒に訓練しよう!」

「・・・・・・やめておけ、君の訓練はやり過ぎる節がある」

 

 えー、騎士様式訓練良いと思うけどな。俺の訓練を経験したことのある冒険者たちからも好評だ。ゼイロくんが貧弱すぎるのが悪いと思う。

 とはいえ、ゼイロくんが貧弱なのは何となく予想はついている。

 

 ゼイロくんの授かった才能は<ステータス編集>。おそらく自分の能力値を好きに操作できる系の能力だろう。改竄では無いと思いたい。そして、そんな能力だからこそ、才能の副次的効果で訓練による能力値上昇ができないんじゃ無いかと考えている。

 こんなもの推測ですらない俺の妄想だが、何かのヒントになるかとは思いゼイロくんにそれとなく伝えたことはある。だが、結果は見ての通り、才能の覚醒はできなかった。

 

「じゃあそうだなぁ・・・・・・気合いだ!気合いで何とかしよう!俺も気合いでどうにかなったことが何度もある!」

「・・・・・・君はもう口を閉じたほうがいいな、話が拗れる」

「んでだよ!」

 

 俺とユートリアのコントじみたやり取りで少し部屋の空気も軽くなった。よし、これでゼイロくんも自分の気持ちを言いやすくなっただろう。さあ言ってみな!君の気持ち!俺たちは受け止めるぜ!

 

「ーーーいいよね、カイルは」

「あれー?俺だけー?」

 

 まさかの俺への単独指名。ちょっと茶化しすぎたか?それはごめん。

 

「だってカイルは・・・・・・!アリアのことが好きだから、僕がいなくなって清々するよね!邪魔者がいなくなったって!!」

 

 図星で草。いや草じゃないが。

 確かにゼイロくんにパーティー抜けてもらうってアリアが切り出した時にぶっちゃけ『ラッキー』だとは思った。だがそれだとお互いに遺恨が残る。抜けてもらうのならもっと互いの気持ちを整理した上で抜けてもらうべきと思った。そう言おうとする前にゼイロくんがさらに畳み掛ける。

 

「アリアもこんな男のどこがいいの!?僕との約束は忘れたの!?一緒に世界を冒険しようって!!」

 

 あっ、それ自分で言っちゃうんだ・・・・・・。

 せっかく軽くした空気が一気に重くなったよ。なんならさっきより重くなった。重い空気の発生源は当然アリアだ。

 

「・・・・・・めて」

「どうして!僕を裏切ったの!?」

「もうやめて!!」

 

 アリアの拒絶にそれまで激昂していたゼイロくん含めて全員が息を呑む。アリアがここまで大きな声を出したのは初めてだ。

 

「アリア・・・・・・?」

「お願いだから・・・・・・やめて、これ以上・・・・・・思い出を汚したくない・・・・・・!」

 

 アリアは絞り出すようにそう言う、その場で俯く。目元が赤くなっているのが微かに見えるため泣いているのだろう。慰めたいがグッと堪える。ここで俺が行ったらユートリアの言ったように余計に拗れる。

 

「なんで、なんでだよ・・・・・・!もうっ、こんなパーティーどうでもいい!!僕の方から抜けてやる!!」

 

 怒りを顔に染めたゼイロくんはそう言い捨て部屋を出て行った。うそやん、もうちょっと話し合おうや。このままじゃ絶対まずいって。とはいいつつゼイロくんのあの様子じゃ静止したところで余計に拗れるのが目に見えている。

 ようは詰んでいたのだ、初めから。

 

「・・・・・・明日、ギルドで集まりましょう。そこで相談させてください」

「・・・・・・うい」

 

 アリアはそう言い、よろよろと部屋から出ていく。

 最後に残されたのは俺とユートリア。

 

「アリア嬢について行かないのか?アリア譲の男なら慰めてやるのが筋だと思うが」

「そこまで柔な女じゃねーよ。幼馴染との喧嘩別れ直後だ、男の俺がいくより同姓のマギさんが上手いことやってくれるだろ。どうせそばで控えてたんだろ?」

「フム、気付いてたのか」

 

 恐らくマギサとユートリアには事前に話していたのだろう、ゼイロくんにパーティー脱退の話をするのは。俺だけ伝えられなかったのは、おそらくアリアの配慮だろう。俺とアリア、ゼイロくんの三角関係に加えてアリアは俺の才能の秘密を知っている。俺にこの話を事前に相談しなかったのも、まあ理解はできる。ただ・・・・・・。

 

「やるんなら俺にも言って欲しかった気持ちはあるけどなぁ」

「アリア嬢は君を守ろうとしていたんだ、分かってやれ」

「わーってるよ、ちょっとした愚痴だ」

 

 その後、軽く雑談してから俺もユートリアの部屋を後にした。

 

 

 ユートリアと別れた俺は特にやることもなかったためいつも通りギルドの訓練場へと行き、訓練をしていた。いや、アリアがいないからいつも通りではないか。

 基本的に俺は左手に大盾を持って右手の剣をチクチクと刺したりして戦うが、訓練では盾を持った立ち回り以外に普段の戦闘で使わない武器もいつでも使えるように何度も振るうようにしている。これは騎士様からの指導が今も根強く残っているだけだ。盾役だからと言って盾だけ構えていればいいのではなく、むしろ最も敵と接触する役回りだから手札は多ければ多いほどいいとのこと。この教えのおかげで何度も助かったことがあるため今でも忘れず訓練を続けている。

 

 訓練用の型を何度か繰り返し、休憩中にゼイロくんとのやりとりを思い出す。

 

 あれ絶対あとから面倒なこと起きるよなあ。目に見えてる爆弾放置するようなもんだよ。つってもアリアの意志は硬そうに見えたし他のメンバーもゼイロくん脱退に反対する様子は無かったし、なんならゼイロくんも捨て台詞と共にどこかに行ったし・・・・・・。パーティー内の人間関係によるトラブルはよくある話ではあるが、状況がなぁ。

 

 ゼイロくんの才能、<ステータス編集>。前世の記憶から考えるのであればかなり強い、というか破格の才能だろう。よくあるゲームのような取得したスキルポイントを各種能力に割り振るような、そんな能力ならまだいい。“編集”というのだからそれ以上に自由にカスタマイズできるのだろう。加えて、才能そのものの成長も考えれば上限が見えない。

 

 女神様から授けられる才能は“進化”が可能だ。人が心身ともに成長した時、才能はそれに呼応し“進化”する。アリアがいい例だろう。

 先日の魔獣戦、本来ならもっと苦戦し犠牲無しでは勝てなかった相手だが、アリアはそれを覆した。それが才能の“進化”だ。あの土壇場でアリアは何かしらの成長をして才能を“進化”させて魔獣を討伐した。

 同じことがゼイロくんに起こった場合、“編集”以上の力であればもしかすると“改竄”なんてこともできるようになるかも知れない。もしそうなれば間違いなく当代最強の冒険者となるだろう。

 

 まあゼイロくんの場合、まずは才能を正しく使えるようにならないといけないが。

 というか、もしこの先ゼイロくんが才能を十全に使えるようになったら俺たち復讐されるよね?それが一番怖いんだけど。前世の物語にもそんな話があったはずだ。パーティーから追放された人間が能力に覚醒して復讐するみたいな感じのやつ。

 

 今後のゼイロくんの活動方針はわからないが、できるだけ接触を避けるため遠くへ逃げるべきか・・・・・・?

 ゼイロくんに関する問題の答えは出ないが、一人で考えても仕方ないか。どうせ明日またアリア達と会う。その時に相談しよう。そんじゃ、面倒なことは酒飲んで忘れるに限るぜ〜!

 

 自分に課していた訓練も一通り終わっためギルドへ向かい知り合いのギルド職員を呼んで連れ出す。既に太陽は沈んで夜となっており、職員の仕事も終わっていたようですんなりと着いてきてくれた。

 ギルドの建屋内に冒険者達のための大衆酒場があるため酒を頼んでから空いた席に座る。

 

「今日もお疲れさん!かんぱーい!」

「乾杯」

 

 あ〜うっめ!いつもより美味く感じるわ!

 

「お疲れのようですね、何かありましたか?」

「聞いてくれよ〜、実はウチのパーティーがな・・・・・・」

 

 俺の様子にやれやれと言った感じで飲み相手のギルド職員が聞いてくれる。やっぱりこいつは優秀だな、話は聞き上手だし細かいところにもよく気がついてくれる。

 こいつが男ではなく女だったらアリアではなくこいつに惚れてたかもしれん。いや、どうだろう。わかんね。

 

 もちろん、ゼイロくんとのトラブルは小声で話している。パーティーの醜態であるし、ゼイロくんの名誉もある。俺たちはそれなりに名の知れたパーティーだから今回のけんはすぐにみんなの知るところになるだろうが、俺達からわざわざ吹聴する必要もないだろう。ゼイロくんの名誉もあるしな。

 こいつのような優秀なギルド職員なら誰かに話す心配もない。

 

 話し終えると、じっと話を聞いていた職員は開口一番に言った。

 

「タイミングとしてはベストでは?」

「お前何言ってんの!?」

 

 本当に何言ってんの?びっくりして酒吹きそうになったわ。

 

「元々、ゼイロさんが抜けるのは時間の問題だったと思いますよ、貴方が感じていたかは知りませんがね。パーティーのランクに見合わない人間がメンバーにいてもお互いに不幸になるだけでしょう。人間関係も複雑でしょう」

「えぇ・・・・・・周りからはそう見えてたの・・・・・・?」

「ええ、そりゃあもう。田舎から共に都へ出てきた幼馴染の男女がいて、その男にとって大切なパートナーが別の男に惹かれていく・・・・・・よくある話です。貴方に悪気は無かったとしても、貴方とアリアさんが結ばれた時点でゼイロさんに居場所はなかったでしょう。現状のゼイロさんには自分の立ち位置を奪い返すような実力もなかった・・・・・・ギルド職員としての客観的な評価はそんなところです」

「そういうもんか・・・・・・あれ、アリアと付き合ったことお前に言ったっけ?」

「魔獣との決戦後、休養と称してアリアさんとデートしていた姿は有名ですよ。おめでとうございます」

「お、おお、あんがと・・・・・・」

 

 まじかよ、浮かれてた俺の姿みんなに見られてたってこと?なんかやけに街の人たちに微笑ましい目で見られてたのはそういうこと?訓練するためにギルドに来るたび、ギルドに屯ってる冒険者にニヤニヤした目で見られてたのってそういうことか?

 

 恥ずかしい、恥ずかしいがそれよりも俺はアリアとイチャイチャしたいため甘んじて受け入れよう。

 

 ジョッキに残った酒をゴクゴクと一気に飲みほし、追加の酒を頼む。

 

「酒追加!ください!」

「照れてるの珍しいですね、隠せてませんよ」

「うるせえやい」

 

 恥ずかしさを隠すようにツマミを食べ進め追加の酒を飲む。いつもはこんなに飲まないが、たまにはいいだろう。

 話の途中で言っていたこいつからのゼイロくんの評価には少し驚いた。ギルド職員としてこいつは適切に冒険者の評価を行っているが、若手の冒険者には多少甘く見ている。だが、ゼイロくんには随分辛口だった。冒険者になって数年経っていたというのが大きいのだろうか。

 

「おいおいここで飲んでるのを見るのは久しぶりだな〜カイルさんよぉ〜」

 

 なんて考えてると、近くで飲んでいた大柄な冒険者が酒の入ったジョッキを持ったまま俺に肩を組んで絡んできた。

 酒くっさ、顔近づけんなよ。

 

「んだよ、だる絡みしてくんなあっちで飲んでろ」

「連れないこと言うなよ〜俺たちの仲じゃねえかよ〜」

「そんな仲良くねえだろ俺たち・・・・・・」

 

 急に俺に絡んできたこの大柄な冒険者とは何度か共に訓練をしたことがある程度だ。アリアと良い感じの雰囲気なのが気に入らないと言ってきて喧嘩を売られた。それで俺の訓練にへばることなく付いてくることが出来れば俺が酒を奢る、逆ならこいつが俺に酒を奢る。そんな勝負をした。勝負は俺の勝ち、それからも何度か同じ勝負をして全戦全勝。勝負の回数が10を超えたあたりで勝負を仕掛けてこなくなった。それからはたまに一緒に酒を飲む程度の仲だ。あれ?もしかして俺達仲良いのか?ちなみに冒険者として一緒に活動したことは一度も無い。

 

「そんで何の用だよ、つまんねー話なら帰れ」

「ばっかお前、クソおもしれー話だから聞けって。さっきまで随分と『自分疲れてます〜』みてえなオーラ出してたからな。それでどうしてそんなだったのか俺なりに考えてみたんだけどよ・・・・・・」

「・・・・・・おい待て、それ以上は言うな。お前が言うとーーー」

「ーーーずばり!オメーんとこのゼイロがパーティー抜けたな!?」

「おまっ、ばか!」

 

 俺が静止するよりも早く、コイツは言い切り、会心の一撃だと言わんばかりのドヤ顔を見せる。うぜえ。

 コイツの声が聞こえたのか酒盛りをしていた冒険者達がこぞって俺たちに群がってくる。

 

「おいゼイロが抜けったてまじか!?」

「よっしゃあ!賭けててよかったーっ!」

「クソっ、俺は『泣きついて残留』に賭けちまってた・・・・・・!」

「はいはーい、掛け金の払い戻しはこちらで行いまーす。列に並んでお待ちくださーい」

 

 うそだろ、こいつらまさかゼイロの抜けるタイミングで賭けてたのかよ、下劣すぎんだろ・・・・・・ていうか胴元ギルド側じゃねえか、受付の方にさっきまで酒盛りしてた冒険者達が並んでるぞ、それでいいのか冒険者組合。

 

「すみませんね、こういったものはあまり好きでは無いでしょう」

「まあな、賭け自体はどうでもいいが、誰かの不幸で賭けるってのはどうしてもな」

「重ね重ねすみません・・・・・・ただ、これだけゼイロさんが蔑まれている原因の一つは貴方にありますがね」

「は?おれ?」

「ええ。一方はパーティーの盾役として魔獣達の攻撃を一身に引き受け、それを確実に遂行するため来る日も来る日も訓練に明け暮れる。一方は戦う術を持たず好いた女性へのアプローチだけは欠かさず行う。どう考えても後者は嫌われるでしょう」

「ーーーついでに言えばな」

 

 いつの間にか姿を消していた賭け騒ぎの元凶が賭けに勝ったのか妙にホクホクした顔で俺たちと同じテーブルに座る。姿消してたのは払い戻し機良い受け取りに行ってたからか。調子のいいやつだな。

 

「そもそもだ、荷物持ちって役がおかしいだろ」

「しゃーねーだろ、あいつ戦えねえんだから」

「そうじゃねえ、荷物持ちなんていらねえだろ。この間の魔獣戦ではゼイロはこの街に置いて行ったそうじゃねえか。これまでで一番の戦いっつーのにな。それで何も問題無かったのならいてもいなくても変わんねーだろ」

「俺たちはあいつが強くなることに期待してたんだよ」

「そう思ってたのはオメーとアリアちゃんだけだろ、他二人は早々に見切りを付けたって聞いてたぜ。ああ、俺は才能を使いこなすことに期待してたしなんなら女神様に願ってたぜ。『ゼイロが才能を使えるようになりますように』ってな」

「・・・・・・お前はゼイロ嫌ってないのか?」

「ハッ、誰があんな“無能”擬き好きになるか、嫌いに決まってんだろ。ゼイロみてーなバカが悪目立ちするから“無能”への迫害は無くならねーんだよ」

 

 そうキッパリと言い切り酒を煽る。

 ゼイロは周囲から“無能”と呼ばれている。もちろん俺とアリアはそう言われるのはあまり好きではないからみんなも俺たちの前では“無能”呼ばわりはしていなかったが、この様子なら陰でよく言っていたのだろう。

 そんな“無能”扱いされているゼイロの評判が落ちれば落ちるほど人々は『やはり“無能”は女神様から見放された唾棄すべき存在』なんて考えになりかねないとコイツは危惧していたのだろう。コイツは元は教会所属だったらしい。どうして今こうして冒険者をしているかは知らないが、教会で働いていた経験があるから“無能”への迫害を懸念するようなことを言っているのだと思う。

 

 どんちゃん騒ぎする周囲とは反対に、俺たちの席の空気が少し悪くなったな、なんて思っていると俺とコイツのやり取りを黙って聞いていたギルド職員がパンと手を叩いて空気を変えてくれた。やっぱお前優秀だよ!

 

「それで、これからどうするんですか?先ほども言いましたがタイミングは良かったと思いますよ。先日の魔獣討伐で貴方方のパーティーは国から正式な感謝を受け、この街だけでなく、国全体にその名声を轟かせました。今、追加のパーティーメンバーの募集を行えば優秀な人材はいくらでも見つかるでしょう。なんならクランだって作れるかと思いますよ」

「そーゆーことね・・・・・・クランはいらん責任とかあるだろうし考えてねーわ、追加は・・・・・・うーん、どうすんのかな、明日また集まるからそん時に方針決めかな」

「募集するのでしたら仲介しますよ。といっても繰り返しにはなりますが、貴方方であればギルドを仲介する必要はないでしょうがね」

「いや、追加メンバーが欲しい時はお前に頼むわ、俺らじゃ見極めが難しい。お前ならいい人材発掘してくれるだろ」

「おい!優秀な人材ならここにいるぞ!」

「お前既にパーティー組んでるだろ。あと脳筋バカは要らん」

「誰が脳筋だ!オメーも脳筋側だろうが!」

「誰がクルミ脳だぶっ飛ばすぞ!俺が脳筋になるのは手がなくなった時だけだ!普段はクールかつ冷静沈着パーティーの頭脳担当やってるわ!なあ!お前もそう思うよな!?」

「いつもの貴方は十分バカですよ」

「俺の味方してくれよ!!」

「ギャハハハハハ!!」

 

 俺たちの間にあったどんよりとした空気も一瞬で消え去り、いつもの明るい空気が帰ってきた。なんだかんだ言って、ここで酒飲む時はくだらない話してる時が一番美味い。

 それから小一時間ほど酒を飲み進める宿へと戻る。あ〜なんか悩んでたけどどうでもいいや!気分がええ!

 

 ちなみに賭けの話がギルド支部長に伝わったようで職員達に特大の雷が落とされたようだ。ナム。

 

 

「おはよーっす・・・・・・って俺が最後か、悪い」

「おはようございます、カイル。私たちも先ほど来たばかりですから構いませんよ」

 

 次の日、ギルドへ向かうと既にメンバーが揃っていた。みんな起きるの早いな。集まった時間が朝早いこともあってまだギルドに他の冒険者達の姿もあまり見えず、これならゆっくり話ができそうだ。

 立ち話もなんだということでここで朝食をとりながら今後の方針を決めることにした。

 

「それで、これから俺たちの活動方針はどうするんだ?」

「マギサちゃんには既に伝えましたが、予定通り『眠らずの洞窟』の攻略を進めようかと思います」

「フム、妥当だな。私も賛成だ。カイルはどうだ?」

「俺も同意見だな、この前の魔獣騒ぎで攻略も途中になってたしな。この街周辺のダンジョンもそこで最後だし、パパッと攻略しようぜ」

 

 俺たちのパーティーは各地のダンジョンを攻略しつつ、未到の地の調査等をメインの活動としてきた。この街周辺で発見されているダンジョンもほどんど攻略を終え、残すは街の西方にある『眠らずの洞窟』のみとしていた。しかし・・・・・・。

 

「油断すんじゃないわよ、一度は攻略失敗してるんだから」

 

 マギサの言った通り、俺たちのパーティーは一度このダンジョンの攻略に失敗して撤退している。事前にダンジョンの情報は収集して入念な準備の上

挑戦したが、『眠らずの洞窟』の特徴である出現する魔獣達の圧倒的な物量に押し負けて俺たちは撤退した。

 

「当然油断はしねーし、攻略の手立てだってある。俺の立ち回りを変えりゃあ次は少なくとも前よりも深い位置まで進める」

「それって前アンタが言ってたやつ?私、アンタがそういう立ち回りをしてるのみたことないんだけど」

「そりゃパーティー組んでから実戦ではあまりやらなくなったしな。ソロでやってた頃はそういう立ち回りしてたぜ」

 

  ふーん、とマギサは興味なさげに俺の言葉を聞き流す。いや、自分で聞いたなら最後まで聞けよ。ほんと飽き性だなお前。

 

「予定通りダンジョンへ挑戦することが決まったのはいいが、我々のパーティーには脱退者が出た。メーンバーの募集は行うのかね?」

「おーそれは俺も気になってた。アリアはそこんとこ考えてんのか?俺としてはせっかくだし新しいメンバー迎えてもいいとは思うけど・・・・・・つーかゼイロくんは脱退でいいのか?」

「ゼイロ少年なら既に街から去っている。昨日、少年が借りている宿の様子を見たが既に荷物をまとめて出ていったと宿の管理人が言っていたよ。街の門番も少年が街の外へ出ていくのを見たと聞いた」

「早すぎだろ・・・・・・昨日、あの後すぐに出ていったのか・・・・・・」

「・・・・・・ゼイロくんとは・・・・・・昨日、決別したので、脱退という扱いでお願いします。彼も戻ってこないでしょう。新しいメンバーについては私も探してみていいかと考えていました」

「そうね、私も同意見よ。できれば支援魔法に長けたメンバーが欲しいわ。私も本職に戻って好き放題動きたいわ」

「好き放題動いたらダメだろ・・・・・・」

「ああん?何か言った?」

「ナニモイッテナイデス・・・・・・」

 

 チンピラだ〜チンピラがいるよ〜。元々ツリ目なのもあって、睨まれると普通に怖い。実際、マギサは魔法学園に在籍してたころ、学園の風紀委員長を担当していたらしいがヤンチャな学生達を恐怖と暴力で締め上げていたらしい。こえ〜。

 ちなみに今までメンバーの追加をしなかったのはダンジョン攻略に失敗したことがなかったからだ。マギサも不満を口に出してはいたが、パーティー内での自分の役割を本気で嫌がってなかった。どうせ『本職じゃないのに支援魔法ぶん回してる私すげ〜』なんて考えていたのだろう。

 これまで挑戦してきたダンジョンを全て一発で攻略してきて、だからこそ俺たちは先日の魔獣攻略前から既に名の知れたパーティーだったが、『眠らずの洞窟』で初めて躓き、ついにパーティー編成に問題があるということが本格的に浮き上がった。

 

「マギサちゃんの言う通り、支援魔法に長けた方が欲しいですね。現状、マギサちゃんに負担を掛けてしまっているので専門の方が欲しいです」

「妥当だ。マギサ嬢に本来の役を担ってもらうにはその方向が良いだろう」

「支援魔法苦手なのよね、私もパーティーの支援役として完璧に熟していたとはいえ、本職が欲しいわ」

「え、俺、一度もマギさんからの支援受けたことないけど・・・・・・」

「アンタは必要ないでしょ」

 

 それはそう。騎士様も言っていた。『盾役を担うのならその能力を発揮するには個人で完結すべき』と。この教えを受けていたため、俺は誰と組んでも高いパフォーマンスを発揮できていたし、支援を必要としていなかった。そのために必要な能力は全て騎士様に仕込まれている。

 俺がそんなだからマギサもこれまで俺に支援魔法の対象外としていたし、だからこそ他のメンバーへの支援を完璧に出来ていたのだろう。そのマギサが本職の支援役が欲しいと言ったのは自分の本職に戻りたいという理由の他に、俺に対する後ろめたさがあったのだろう。マギサはツンデレなのだ。なんてアホなこと考えているとマギサに睨まれた。前言撤回、俺に対する後ろめたさねーわ。

 

「んじゃ、まずは新メンバー探し。新メンバーとのパーティーの連携を調整してから『眠らずの洞窟』へ再挑戦、って流れか」

「ですね。募集についてはギルドへ仲介してもらおうかと思いますが、みなさんそれでよろしいでしょうか」

 

 異論無し。ということで朝食を終えたところで受付へ向かい、いつもの職員へ声をかけたところ・・・・・・。

 

「皆さん、おはようございます。そのご様子ですと、新規メンバーの仲介をご所望ですね。皆さんのパーティーに相性の良いと思われる冒険者を数名、候補としてリストアップし書類にまとめております。こちらをご確認ください」

「君、よく有能って言われない?」

「はい、よく言われます」

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