いつものモノクマの説明から学級裁判は今回も幕を開ける。
最初はトワイライトシンドローム殺人事件をプレイしたことのない人の為にその説明からすることになった。
その中でゲームが現実とリンクしていることや登場人物が俺たちの中にいることが全員に共有されたのだった。
「トワイライトシンドローム殺人事件のことは分かったっすけど、やっぱり唯吹はあの血文字が気になるっす。確かパンクな感じの文字だったっすけど...」
「それはチミドロフィーバーのことですよね!」
「ああ、確かに嫌でも目立つところにあったがあれはなんなんじゃ?」
「あれは連続殺人鬼ジェノサイダー翔が必ず現場に残していくと有名な血文字です。今回もジェノサイダー翔が残したものの可能性は充分にあります!」
「流石ソニアさん!博識でいらっしゃる!」
ソニアが目を輝かせながら解説するが中にはそれに反してゾッとした顔を見せるやつもいた。
「えっ!?ということはわ、私たちの中に、ジェノサイダー翔が紛れ込んでるってことですかぁ?」
「うるさい、ゲロブタ!そんなことどうでもいいよ!犯人は決まってるだからさ!犯人は九頭龍あんたしかいないもん!」
「は?だから俺はこの事件とは何も関係ねーって言ってるじゃねーか。」
西園寺が我慢の限界と言わんばかりに九頭龍を糾弾する。再びビーチハウスでの言い争いが再開されるようだった。
「だってトワイライトシンドローム殺人事件によればE子を殺したのもあんたらしいじゃん!それでE子に味方した小泉おねぇのことも恨んでて殺したんでしょ!あんたしか動機のあるやつがいないじゃん!」
「たかがゲームで人を犯人扱いするじゃねーよ!それに俺は今日ビーチハウスになんか行ってねーぞ!」
「うーん、九頭龍くんが犯人かどうかはともかく九頭龍くんがビーチハウスに行った証拠なら見つかったよ。」
七海が二人の言い争いに割り込むが、俺が見つけた証拠の中で九頭龍がビーチハウスに行ったことを証明する証拠はなかった。ということは七海は俺が見つけられなかった何かを掴んだのか。
そこで俺は七海に問いかける。
「七海、その証拠ってなんのことだ?」
「私が見つけたっていうより、狛枝くんかな。」
「狛枝?」
「ああ、七海さんはビーチに残った足跡の事を言ってるんだね。確かにビーチにはビーチハウスから海へ続く足跡が残されていたよ。それも九頭龍くんの足跡がね。学級裁判でみんながボクのみつけた証拠を使ってくれるなんて、みんなのコテージから足跡を採取した甲斐があったよ。」
「けっ!また気持ちわりーことをしてやがった。」
左右田が狛枝に悪態をつくが狛枝は意にも介せず九頭龍を追求する。
「九頭龍くん。この証拠がある限り君がビーチハウスに行ってないって主張には無理があるんじゃないかな。」
「そうだよ!だから私は捜査してるときからずっとこいつが犯人だって言ってたんだよ!どうせ小泉おねぇを殺したときの返り血を洗いに行ったんじゃないの?全く、間抜けにもビーチに足跡を残すなんてねー。きゃはは!単細胞に相応しいノータリンっぷりだねー。」
「ま、待てや!好き勝手言いやがって!確かに俺はビーチハウスに行ったけどよ、そもそも犯人はジェノサイダー翔っつう殺人鬼じゃなかったのか?俺がその殺人鬼だとでも言うつもりか!」
「確かに私が聞いた話ではジェノサイダー翔はセーラー服を着た女子中高生ということだった。女子が疑われているのならまだしも九頭龍が犯人というのは無理があるのではないか?」
辺古山が九頭龍を擁護するも犯人は九頭龍だと決めつけている西園寺は聞く耳を持たない。
「はぁ?そんなのそのゴミクズが頭のおかしい殺人鬼のマネをしたってだけでしょ。疑いの目を女子に向けるためにさ。そんなことをする理由のあるやつはむしろこいつしかいないんだよ。」
「おい、本当にこのちっこいのが犯人なのか?」
「確かにこいつは怪しいよな。実際ビーチハウスに行ったことを隠してやがったし。」
終里と左右田を始めとしてちらほらと九頭龍に疑いの目を向ける者が現れ始める。
「もういいよ!さっさとこいつに投票して処刑しちゃおうよ!」
そこに割って入ったのは狛枝だった。
「ちょっと待って、西園寺さん。その前に一つ聞きたいことがあるんだけどさ、14:20に君がビーチハウスに行ったことは間違いないんだよね。」
「う、うんそうだけど。」
「じゃあ次に九頭龍くん。君がビーチハウスに行ったのは何時のこと?」
「確か、14:40頃の事だったな。で、それがどうしたってんだ?」
「いや、そんな大したことじゃないよ。じゃあ他の人でビーチハウスに行った人はいる?」
お互いの顔を見ながらも誰も答えるやつはいなかった。つまり西園寺と九頭龍以外誰もビーチハウスには行っていないと言っている。
「狛枝よぉ。ねちねちと探りを入れるがお前さんは何がしたいんじゃあ?」
「ごめんね、次で最後。ねぇモノクマ、ボク達のうち3人が死体を見つけたときに鳴る死体発見アナウンス、あれには犯人も含まれるの?」
「えー?それをボクに言えと?」
「推理の為なんだ。学級裁判を公平に進める為にも必要な情報だと思うけど。」
「うーん、本当は教えたくないんだけどなぁ。でもそこまで言われて教えなかったらボクがケチみたいに思われるかもしれないしなぁ。」
「さっさと教えるでちゅ!仮にもゲームマスターなら正直に吐くでちゅ!」
「はいはい、分かったよ!言えばいいんでしょ言えば。死体発見アナウンスの3人についてはボクがフレキシブルに対応してあります。つまり犯人が含まれるか含まれないかはボク次第ということです。まあ今回に限って言えば、犯人は3人の中に含まれてるよ。」
「なるほどね。よく分かったよ。」
「いやいや、分かんねーよ。俺たちにも分かるように説明しろよ。」
左右田が狛枝の意図が読めず食ってかかる。
「あれ?そうかな。超高校級の才能を持つみんなならすぐに分かるような簡単な問題なんだけどな。ボクの質問が悪かったのかな?」
「そういうことか!」
「流石は日向くんだね。もしかして君の超高校級の才能は謎を解くことに特化したものだったりしてね。いや、それよりももっと大きなものがあったりね。」
狛枝は相変わらず笑顔で俺に語りかけるが何か含みを持たせたような言い方で俺は少し緊張した。
しかし今はそれどころではないためいち早く狛枝の意図に気づいた俺はそれを皆に伝える。
「モノクマによれば今回の死体発見アナウンスが示すのは犯人を含めた3人の人間が死体を見たという事実だ。ここで九頭龍が犯人だと仮定すると西園寺と九頭龍しか死体を見ていないから死体発見アナウンスは鳴らないはずなんだ。」
「うん、その通りだよ。それにちょうどボクたちは九頭龍クンがビーチハウスに行った14:40頃に死体発見アナウンスを聞いているから、九頭龍クンが犯人ではないなら、小泉さんが殺害されたのはそれよりも前ってことになるね。
なんにせよ、死体発見アナウンスに含まれる3人とは西園寺さん、九頭龍クン、そして犯人のことで、九頭龍クンが犯人ではありえないんだ。」
「さっき狛枝くんがみんなにビーチハウスに行ったのかどうかを聞いたのはこの主張を見越してのことだったんだね。」
「そうだよ、七海さん。ボクがこの主張をした後にその質問をしたら犯人が後出しで自分もビーチハウスに行ったと言いかねないからね。もしそうなった場合、九頭龍クンが犯人だと仮定しても死体発見をしたのが三人ということになって、今回の死体発見アナウンスの条件を満たすから九頭龍クンが犯人ではないと言い切れなくなっちゃうんだ。」
相変わらず狛枝はとても俺たちとは相容れないような価値観を持ってる様なやつだけどそれでも頭脳や洞察力は本物だ。今周回でも助けられたな。
「九頭龍、そろそろあの日何があったのか本当の事を話してくれないか?」
「....」
「日向や狛枝はお前を信用し潔白を晴らしてくれた。お前もそろそろ誰かを信用してもいいのではないか?」
「ああ、確かにそうだな。受けた恩に報いるのが通すべき筋だ。極道の俺がそんなことを忘れちゃお笑い草だな。いいぜ、全ててめーらに話す。」
そして、九頭龍はあの日起こったことを一つずつ語り始めた。
「俺は15:00にビーチハウスで小泉と話があってよ。14:40にはビーチハウスに行ったんだ。そんで道路側の扉を開けようとしたんだが開かなかったんだ。
俺は仕方なくビーチ側に回ってそっちから入ろうとしたんだが小泉の死体で道路側のドアが塞がれてやがった。待ち合わせをしてたやつが既にその場で死んでんだ。流石に俺も動揺した。」
「となると西園寺さんは道路側の扉から入ったらしいから、西園寺さんがビーチハウスに来てから、九頭龍くんがビーチハウスに来るまでの20分の間に犯人が塞いだんだね。」
七海の情報を整理し、九頭龍はそれに対しては無言のまま続ける。
「で、ビーチハウスに入ろうとしたんだけどよ、俺は実はその時犯人に会ったんだ。」
「え、犯人を見てるっすか!?」
「いや、犯人が誰かは分からねえ。そいつは黒い布みてーなものを被ってたし穴が空いて辛うじて見えた目元だけじゃ判別できねーからな。でもよ、そいつは俺がビーチハウスに入ろうとした途端いきなり死角から飛び出して来て、俺が反応する間もなく何かを俺の目にぶっかけてきやがった。
その時はあまりの痛みで何をかけられたのか分かんなかったが現場を見る限りどうやら七味だったみてーだな。」
黒い布?もしかしてあれの事じゃないのか?
「九頭龍。ビーチハウスのクローゼットで穴の空いた暗幕を見つけたんだけどこれってお前が見た犯人が被ってたものじゃないのか?」
「確かに言われてみりゃあ暗幕だったような気もするな。」
「そうか。それにあの暗幕には七味も少し付着していたんだ。おそらく九頭龍に七味をかけたときその粉末が暗幕にも着いたんだな。」
九頭龍の証言を補強する暗幕の事を聞いて皆も九頭龍のことをほとんど信用しているようだった。
そこへさらに狛枝が付け加える。
「七味を九頭龍クンの目にかけることによって犯人は九頭龍クンが海へ向かうように誘導したんだよ。」
「誘導ってなんでそんなことする必要あるんだ?」
終里が狛枝に尋ねるが狛枝は落ち着いた様子で淡々と答える。
「それはもちろん九頭龍クンに疑いを向けさせるためだよ。あのビーチハウスのシャワー室は使えないし、飲料水の入ったペットボトルは全て空だった。あの場で七味をかけられた九頭龍クンが海に向かうのは当然のことなんだよ。
だからこそ犯人はそれを利用した。小泉さんの死体で道路側の扉を塞いで砂浜を通ってしかビーチハウスに入れないようして、さらに七味をかけてさも海水で返り血を落としたように見えるような足跡を砂浜に残した。動機に加えて砂浜に足跡まで残ったら疑われない方がおかしいからね。」
「そうだとしても犯人はそのあと暗幕を処理しなくてはいけませんよね?そんなことをする余裕があったのでしょうか?」
「それは問題じゃないよ。九頭龍クンの視界が奪われて、彼が海に向かっている間に暗幕をクローゼットの中に放り投げて、道路側のドアから逃げればいいだけだからね。30秒もあればできたはずだよ。」
「それに俺と辺古山がビーチハウスに突入した時、道路側のドアは開いたんだ。それは犯人が道路側のドアから逃げる時に小泉の死体をドアの前からずらさざるを得なかったからなんじゃないか?そうしないと道路側から出られないし、砂浜側から出ると自分の足跡もビーチに残してしまうからな。」
「そもそもビーチハウスの入り口に七味もいっぱい落ちてたし、うん、犯人があそこで九頭龍くんに間違いないと思うよ。」
狛枝と俺と七海のアシストにより事件の見えなかった部分がようやく照らされ始めた。
「それは分かったんすけど、冬彦ちゃんが最初から話してくれたら早かったんじゃないっすかね?」
「仕方ねーだろ。明らかに俺が怪しまれるに決まってる。実際、西園寺のヤローも俺をとことん疑ってきたじゃねーか。」
「.....」
西園寺は俯いて反応がない。さっきまで九頭龍のことを罵りながら疑っていた手前気まずいのだろうか。
「そういや少し気になったんだけどよ。狛枝のやつ、飲料水のペットボトルが全て空になってたとか言ってたよな。でも俺が始めてあの島に行ったとき大量にあったはずだけど、それも九頭龍を嵌める為に犯人が中身を捨てたってのか?」
「うーん、捨てたっていうのはちょっと違うかな。犯人があのペットボトルの水を使ったのは九頭龍クンの件だけじゃない。他の明確な目的もあって使ったはずだよ。そうだよね、日向クン?」
「お、俺か?」
「そうだけど問題でもあった?君なら既にその答えも気づいてるんじゃないかな。殺人をまるで予知してるかの様に次々と行動できるほどの頭脳を持つ君ならさ。」
こいつもう殆ど俺の秘密に気づきかけている。正直、狛枝に知られるのは一番厄介なことになりかねない。だが、それについては後だ。
「あの水は血痕を隠滅する為に使われたと思う。小泉から冷蔵庫の間に一本道を作るように水びたしにになっていた。小泉は冷蔵庫の側で殺害された後、ドアの方へ引きずられたんじゃやいか?」
「小泉は冷蔵庫付近で殺されたか。でもよあの現場には凶器らしきもんは無かったはずだぞ。犯人が持ち去ったっつうのか?」
確かに九頭龍の言う通り凶器は未だに見つからない。限りなく犯人が持ち去ったという可能性は低い。仮に持ち去ったとしても修学旅行のルールで捨てることはできないからだ。
じゃあやっぱり凶器はあの現場にあるのか?...九頭龍だ!そうだその手があったか!
「分かったぞ、凶器のありかが。凶器はずっと俺たちの前にあったんだ。」
「そのような代物、我が邪眼をもってしても見透かすことはできていないが?」
「凶器は冷蔵庫だ!犯人は小泉を押し倒して小泉の頭を冷蔵庫の角に強打させたんだ。その証拠も残ってるぞ。」
「証拠だと?」
「冷蔵庫にかかった水だ。冷蔵庫のクローゼット側の上面と側面が万遍なく水浸しになってたんだ。もしクローゼット付近で別の凶器で殺されたならこんなに冷蔵庫をメインにして水をかける必要はない。余計な証拠を残すだけだからな。水が冷蔵庫のクローゼット側そこだけを狙った様に水をかけられていることが冷蔵庫が凶器である理由なんだ。」
「怪しいのは分かるんだけどよ、冷蔵庫の角に小泉の頭部を殴打したってのは日向の想像なんじゃねーか?」
「そ、それは違うんですぅ、左右田さん。ええと、私が小泉さんの検死をさせてもらったんですけど小泉さんの頭部の傷は確かに切り傷だったんですけど何か鋭いもので突かれてできた切り傷だったんです。そしてあれだけ深いものだったとなると小泉さんが押し倒されて角に頭をぶつけたっていうのも納得がいくような、いかないような、」
「ええい、ムズムズするのおー!ハッキリせんかいいい!!」
「ひぃぃぃ!納得できますぅーー!!」
罪木の検死結果に救われた。九頭龍に殴られ地面に叩きつけられて気を失った経験がまさかこんなところで閃きをもたらすなんて。良くも悪くもこの世界、何が起こるかつくづく分からないものだと思う。
だが、勝負はこれからだ。
この学級裁判の結果は最後は投票によって決定される。つまりより多くの人を説得できるか否かにかかっている。一人や二人が犯人を分かっていても意味がないのだ。
しかし、狛枝や七海にも助けられてここまで来ることができた。ここまでの証拠が揃えば大丈夫だろう。これでようやく犯人を名指しすることができる。
「この事件の犯人が分かった。」
そして、俺は、狛枝と七海以外の皆が驚きの表情で見る中で、犯人の名前を口にした。
「小泉を殺した犯人はソニア、お前じゃないのか。」
「わ、わたくしですか?」
「ソニアが小泉を殺した、だと...?」
「おい、日向お前ソニアさんに対してそれは失礼すぎんだろ。」
「左右田の言う通りだな。ソニアがその様な卑劣な行為をする者とは到底思えん。」
ソニアはビックリした反応を見せ、左右田は怒り、田中はあくまで冷静に反論してくる。
「まず怪しいのはジェノサイダー翔の血文字だ。この中でジェノサイダー翔について知っているのは俺、辺古山、ソニアの3人だ。俺と辺古山は事件直前まで一緒にいたから血文字を残せた筈がないんだ。そうだよな、辺古山?」
「ああ、確かに私は事件直前は日向と共にいた。死体発見アナウンスもそのとき聞いたのだ。」
「だ、だけどよ、それはその血文字が模倣だったらの話だろ。もし俺たちの中に本物のジェノサイダー翔が紛れ混んでたら怪しいのはソニアさんだけじゃねー。女子全員が犯人候補だろ。」
「左右田さんの言う通りです。それに仮に模倣だったとしてもオカルトマガジンは図書館にあって誰でもジェノサイダー翔について知ることができました。それなのに私だけが犯人呼ばわりされる筋合いはありません!」
ソニアも必死であるようだった。口調はいつもの様に品に満ち溢れているが焦りと動揺を隠し切れていない。普通ならそんな細かいこと気づくこともないのだろうか幾度となく追い詰められた犯人の様子を見ていれば勘も中々馬鹿にはできない。
「日向よ。仮にもソニアを忌むべき殺人者だと糾弾するならば、より明確な根拠を見せてみよ!それがお前に課せられた義務に他ならない。」
「田中も左右田もソニアが小泉を殺した犯人だと信じたくないのは理解できる。でも、その為にここで真実が闇に葬られるのは俺が許さない。俺たちは死んだ花村や十神、小泉の思いも背負ってるんだ!」
「で、ではなんだというのです。わたくしが犯人だとおっしゃる根拠は。」
「七味だよ。それがお前の犯行を立証する何よりの証拠だ。」
「っ!」
ソニアも気づいたようだった。自らが犯した決定的なミスに。
「あの七味は旧館の厨房から持ち出されたものだと分かったんだ。」
「旧館って輝々ちゃんが殺された場所っすよね?」
「ああ。問題になるのは七味がいつ持ち出されたかだ。前回の事件の捜査の時、俺と十神が厨房に行ったけど何も持ち出されたものはなかった。つまり、七味は俺と十神が厨房を去ってから今回の事件で使用されるまでの間に持ち出されたことになるんだ。」
「お待ち下さい!日向さんと十神さんが見落としただけで実際、持ち出されていたかもしれません。例えば前回の事件の捜査が始まるよりも前に犯人が他の方の目を盗んで厨房に侵入した可能性もありますよね。」
「いや、それもないんだ。ソニアお前は前回の事件の捜査の時、俺と十神に話してたよな、捜査が始まってすぐ厨房に来たけど何も変わった様子はなかったって。お前自身が言ったことだぞ!」
「それにパーティー直前には日向クンと十神クンが旧館の備品リストを見ながら凶器回収を兼ねてありとあらゆるものをチェックしてるよね。犯人による持ち出しがあったと考える方が難しいと思うよ。」
「ソニアよ。日向たちの述べることは本当にそうなのか?真実であるならば正直に答えて欲しい。」
「た、田中さん...私は....」
田中の問いかけにソニアは思い詰めた表情をしながらも答えることができない。何か葛藤するような表情で田中を見るだけだった。
「でも、狛枝なら持ち出すことができるじゃねーか!あいつならここ最近ずっと旧館にいたんだからな。」
「はあ、左右田クン。ボクの両手両足に錠をつけたのは君自身だよね。モノミも旧館にいたから間違いないよ。だよねモノミ?」
怒る左右田とは対照的にため息混じりに呆れた様子で狛枝が反論する。
「はい、そうでちゅ。前の学級裁判が終わって旧館に入ったのは捕まった狛枝くんと被害者の小泉さんと捜査をしに来た日向くんだけでちゅ。」
「ほらね。この中の誰も犯人にはなり得ないんだよ。となると七味を持ち出すことができた犯人はソニアさん以外存在しないんだよ。」
「騙されねーぞ!俺は、俺は、絶対に信じねえからな!」
「君がソニアさんにゾッコンなのは分かっていたけど、その往生際の悪さもここまでくると絶望的だね。」
「証拠とかそんなもんは関係ねえ!今までさんざん一緒に過ごしてきてなんだよ、お前らの態度は!お前らはソニアさんがどれだけ、どれだけ優しくて思いやりのある人か知らねえからそんなことが言えるんだ!なのに!殺人なんて、そんな...」
その時、学級裁判場に大声が響きわたった。普段聞き慣れないやつの大声に裁判場は鎮まりかえった。
「もう、いいんです!もう、いいんですよ、左右田さん。私は貴方に庇われる資格なんてありません。だって私が小泉さんの命を奪ってしまったんですから。」
「え...ソニアさん....ははは...冗談きついですって...」
「冗談ではありません。すべて本当のことです。」
そう告げたソニアは徐に服のポケットから七味の入っていた空の瓶を取り出した。
「これが..私が犯した罪の証です。」
「そんな...」
「はい!ここでお時間を拝借!そろそろ結果が出たみたいなのでお待ちかねの投票タイムに入りまーす!」
その場に絶望したように崩れる左右田と小泉を手にかけてた事が暴かれてもある種の穏やかさを纏っている王女。まるで二人の本来の立場が逆であるかのような振る舞いをみせる。
そして学級裁判は閉幕したのだった。