「2連続大正解!!今回のクロはソニアさんなのでした!」
モノクマの声が無情にも誰一人として望んではいない結果を告げる。
「ソニアさん、どうしてなんです?あなたみたいな人がなんで殺人なんて...」
左右田の震える声に対してソニアは落ち着き答える。
「小泉さんの命を奪ってしまった以上、私はみなさんに全て話さなければならない義務がありますね。少し長くはなりますが聞いて下さい。
前提としてここ最近の私は心に余裕がありませんでした。記憶が奪われていること、十神さんによる凶悪な事件、そして新たな動機、むしろ日に日に不安が大きくなっていき目の前がよく見えていなかったのかもしれません。とにかく一つ言えることはとても冷静とは言い難い精神状態でした。」
「あんたそんな言葉で小泉おねえを殺したことを正当化するつもり?」
「もちろん私が犯したのは決して許されない罪ですから正当化をするつもりはありません。しかし私の心を決定的にかき乱したのは西園寺さん、あなたから言われた言葉でした。」
「わ、私?」
「ええ。私がノヴォセリック王国に帰りたいのではないか。そして母国の人たちが心配なのではないか。日本に来たことを後悔しているのではないか。正直に言います、この言葉が私を刺しました。否定したくともできない、否定できる余裕もない、紛れもない図星だったのですから。」
「....」
「ともかく私は不安に押しつぶされそうで一人胸の内に留めておく留めてことが限界に達しそうでした。今にも吐き出してしまいたい気分だったのです。そんな時でした、私が小泉さんにビーチハウスでの相談を持ちかけたのは。
小泉さんは快く承諾して下さいました。今思えば小泉さんは私以上に辛い思いをされていたのに。」
「その言い方だとあなたは小泉さんの秘密を知っていたみたいだけど、あなたもトワイライトシンドローム殺人事件をプレイしたの?」
七海が優しくソニアに問いかけるとソニアは無言で縦に頷く。
「動機を放っておいて何か取り返しのつかないことになったらと思うとプレイをしないという選択肢は私にとってはあり得ませんでした。とにかく私は小泉さんに私の心中を吐露したのです。それに対して小泉さんは至極真っ当な答えを私に示してくださったのです。みなさんと協力していけばいつかここから脱出できる、心配なのは一緒だから私だけが思い詰める必要はないと。
しかし、この時の私は愚かにもこの小泉さんのおっしゃったことに対して無責任である、所詮気休めである、そう思ってしまったのです。」
ソニアには小泉の優しさや真っ直ぐさを受け止める余裕さえその時にはなかったということなのか。俺は前周回、ソニアと共に生き残りあいつの芯の強さをよく知っている。本来殺人なんて起きるはずのない組み合わせの二人でもみるみるうちに歯車は食い違い悲劇が起こってしまった。
そもそも全てはここまで小泉やソニアを追い詰めたモノクマのせいなんだ。そうして俺は再びソニアの語ることに耳を傾ける。
「その後は一瞬でした。心の中に怒りが湧き上がるのも一瞬、私が小泉さんを突き止ばすのも一瞬、そして小泉さんがバランスを崩し冷蔵庫の角に頭をぶつけるのも一瞬でした。ただ一つ言えることは突き飛ばした時でさえ本当に私は小泉さんを傷つけるつもりもましてや殺害するつもりもありませんでした。以上でこれが私のやったことの全てです。」
その話は本当なんだろうと思う。もし最初から小泉を殺そうと計画殺人を企てるのならば突き飛ばして冷蔵庫の角に頭をぶつけるというあまりにも成功確率の低い方法などとるわけがない。本当にただ突き飛ばしたときのソニアが不運にも幸運だったんだ。
「ソニアよぉ。てめーが俺に罪を着せようとしたことを今さらとやかく言うつもりはねえ。ただその後のお前の行動についても、ちっと教えてくれねえか?俺はともかく小泉を誰よりも慕ってたやつだっているんだ。全てを知らねえと前に進めねえだろう?」
「....そうですね、九頭龍さん。その後の偽装工作の件も同様、計画的なものではありませんでした。パニックになった私は何か偽装をしなければと思ったのですが、その時ポケットに入れていた七味を持ち歩いていたことを思い出しました。日向さんがおっしゃっていた通りこれは前回の事件の捜査の時、日向さんと十神さんが厨房から去った後に持ち出したものです。
あのときは何か持っていないと不安で仕方がなかったものでお二人に包丁などの護身用にできる武器を回収されてしまっている以上、仕方なく七味を手にとったのです。そしてそれを使ってビーチハウスにやってきた方に足跡を残させるトリックを実行致しました。」
「となると西園寺がビーチハウスにやって来たその時ソニアは恐らく暗幕でも取りに行っていたのだろう。」
「田中さんのおっしゃる通りです。一時的に私がビーチハウスを去ったのはスーパーで暗幕を調達するため。もちろんあの血文字も私の手によるものです。これでよろしいでしょうか、九頭龍さん。」
「ああ、悪りぃな。」
これで全て解明された。謎が解けた。しかしそれがなんだというのか。これから待ち受ける運命は決して変わらない。ソニアの処刑だ。
「あーーもう!ちょっと長すぎるよ!長すぎてクマも冬眠どころか永眠しちゃうよ!ということで今回も始めちゃいますか!オシオキタイムを!」
「お、おい、ちょっと待ってくれよ..。ソニアさんを連れてかないでくれよ。」
「みなさん本当に申し訳ありませんでした。これから私は死をもって小泉さんの命を奪ってしまった罰を受けます。もちろん許して欲しいなどとは思っておりません。
ただ一つだけ厚かましいのは承知の上でみなさんに最期のお願いをするならば、どうかこれ以上誰も犠牲者を出さずこの島から脱出して下さい。私に怒って、私を憎んでも構いません。その激情をこれからを生き抜くための力に変えて、どうか亡くなった花村さんや十神さんの分も笑い合える日常を掴み取って下さい。それが私のただ一つの願いです。」
そう言いながらもソニアの足も手も震えていた。その綺麗な目からは涙が抑えきれず溢れてきている。自分の身は置いておいて俺たちのことを心配してくれている。それでもこれからやって来る最期が怖いのだろう。
当然だ。死への恐怖に慄かない人間などそれこそ限られている。体が感じとる死への本能には抗えないのだ。
「ソニアさん!最期なんて言わないでください!俺は、俺はソニアさんがいなかったら」
座り込み叫ぶ左右田の前に歩み寄ると、ソニアは左右田と同じ目線に合わせるかのごとくしゃがんだ。
「左右田さん、私は国民や母国のことにしか目に映っていない視野の狭い人間でした。そんな王女失格の私を気にする必要はないですよ。」
「ソニアさんは素晴らしい王女です!母国の人達のことを考えれるソニアさんが王女失格な訳ないです。もしそんなことを言うやつがいたら俺がぶん殴ります!」
「いいえ、私は遠くのものばかりに気をとられ身近な人達の大切さや温かさに気づくことができませんでした。そして信頼を裏切り殺人を犯した私の処刑が決まってなお庇ってくれる貴方の信頼に気づくことができませんでした。これが私の犯したもう一つの罪です、本当にめんごですわ。そしてありがとうございます。」
「今そんなことを言われても嬉しくなんかないですよ...」
いつもはソニアの持ち味でもある一時代前のギャグを言いながらソニアは左右田に優しく微笑む。でもそれは誰がどう見ても作り笑い、無理矢理微笑んでいるものだと分かる。なにしろ涙が溢れ出る一方なのだから。
「もし再び巡り合うことがあったなら、私を迎えに来てくださいますか?...すみません、この期に及んで来世なんて夢みたいなことを。」
「もちろんです!ソニアさんに会うためならどこにだって行きます。」
左右田のその言葉を聞くとソニアは立ち上がり一礼をして歩き出す。
「超高校級の王女ソニア・ネヴァーマインドさんの為にスペシャルなオシオキを用意しました!」
「行かないで、ソニアさん!お願いします。行かないで下さい!」
ソニアは振り返らず俺たちから離れてゆく。
「ソニアさん!」
するとその時左右田がソニアの方へ走り出す。俺は前周回の2回目のオシオキを思い出し、咄嗟に声が出た。
「左右田!行くな!誰か止めてくれ!」
すぐに左右田は弍大によって羽交いじめにされた。そのまま手を前へ伸ばして泣き叫び続ける。
「ソニアさん!ソニアさん!」
「それでは張り切っていきましょう!オシオキターイム!」
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【ノヴォセリック革命】
ソニアはうつ伏せ、顔は前に向けた状態で拘束されている。ソニアがいるのは高い断頭台の上。下にはノヴォセリック王国の国民を模したものであろうモノクマの仮面を被った大勢の人が、首の上ではギロチンの歯が光っている。
そしてソニアの両隣りには恐らくソニアの両親を模したモノクマ仮面人間がうつ伏せになっている。
ソニアたち3人は全く動けないようギロチンに固定されているのだ。
そう思っている間にもソニアの母らしき人の上からギロチンの刃が降り、首を飛ばす。飛び散る血しぶきは隣にいるソニアにもふりかかる。
まるでどこかのヨーロッパの国で国民を虐げた王族が革命の後に公開処刑されるように。歴史の授業で聞き習うようなことが今まさに目の前で繰り広げられている。
さらにその血しぶきを見て歓声をあげる国民たち。他にはソニアに罵声を飛ばす者、苦痛から解放されると安堵する者など三者三様の反応を見せる群衆が見られる。まるでショーを楽しむかの様な悪辣さを見せつけられている。
そして次にソニアの父の首が飛ぶ。またもや血しぶきはソニアにふりかかり、ソニアの顔はもはや本人が大怪我をしたのかと言う程に真っ赤に染まっていた。
その鮮血とは対照的にソニアの顔は真っ青の一言に尽きる。ジワジワとしかし着実に迫り来る死の恐怖。既にコト切れた両親を模した人間。もはや涙を流すほどの悲しみも感じず、ただ恐怖している。ソニアが抱いている感情を俺は良く知っている、絶望だと。
ソニアの上からギロチンの刃が落ちる。遂にソニアは絶望した顔のまま動かなくなった。
最後に思ったのは自分自身か国民たちか両親か残された俺たちか自ら手にかけた者か、はたまた自らを最後まで信じてくれた者か。その心中は誰にも知られぬまま闇に葬られたのだった。
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「あああああああ」
学級裁判場に左右田の無念の叫びが響き渡る。俺だってそうだ。前周回で共に生き残った仲間が処刑されゆく瞬間を見るなんて耐えられるものではない。左右田が誰よりも狂乱になって泣き叫んでいるのを客観的に見てぎりぎり落ち着いていられる。
そんな中でもあいつのペースは揺るがない。
「左右田クン、いつまでソニアさんに拘ってるの?そりゃあボクだってこの世界から超高校級の才能が一つ消えてしまったんだ、悲しくてたまらないよ。でもさだからこそ前を向いて頑張らないと!そんなことじゃどんな絶望にも打ち勝つ絶対的な希望なんて生まれないよ!」
「うぷぷぷ。キミは本当に希望が大好きなんだね。けどさ今回だって君の大好きな希望によってコロシアイが起きたんだよ?希望だの超高校級だの言っても結局、人を殺す生き物には変わらないんだよ!」
「それはしょうがないよ。ソニアさんは超高校級の希望にはなれなかった。あの人の希望はその程度だったんだよ。」
「ソニアさん?ボクがいつソニアさんの話をしたの?ボクが言ってるのは西園寺さんのことだよ!」
「...私?」
西園寺は若干俯きながら目だけモノクマの方へ向ける。しかしその目からはいつもの強気な西園寺は確認できなかった。
「そうだよ。だって君がソニアさんが傷つくようなことを言わなければ、ソニアさんは小泉さんに相談なんかしなかっただろうからね。言い換えてみれば君が小泉さんを殺す引き金を引いたとも言えるよね。」
「私が...小泉おねえを...」
「そういうこと。全く、そんなことにもきづいていなかった癖に君はソニアさんを責めていたの?自分の悪事を自覚してる分、十神くんの方がまだマシだねー!ぶっひゃっひゃっ。」
「もうやめろ。全ては終わったことだ。これ以上騒ぐと言うなら私が許さないぞ。」
辺古山が静かにだが確実に怒りの伴ったオーラをモノクマに向けている。
「おおー、辺古山さんは怖いねぇ。壊されちゃたまんないからボクは退散するよ。まったねー!」
そう言うとモノクマは去っていった。
俺たちもすぐに裁判場を後にしてそのまま各々のコテージへと帰った。その夜、一晩中2つのコテージでは止めどなく人知れず涙が流されたがそれに誰も気づく者はいない。
一方、俺の方も落ち着かない夜を過ごす事となった。なにしろ別れ際に言われた狛枝の一言に覚悟を決めることを余儀なくされたからだ。
「日向クン。明日の夜、ボクのコテージに来てくれないかな?二人きりで話したいことがあるんだ。」
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【chapter2】
言刃と厄災
友と幼馴染
END