「くそぉ、二人も仲間を殺しやがって...。」
「これってまた犯人が私たちの中にいるんだよね?」
「うぷぷ、そういうこと。オマエラが見つけないといけないのはこの連続殺人を起こしたたった一人のクロだよ!それじゃモノクマファイルあげるから捜査頑張ってね〜。」
二人の仲間が殺されたこと、その中にはあの狛枝も含まれていたこと、各々がそれぞれの理由で戸惑うばかりだが捜査は始まった。
『死亡したのは超高校級の体操部 終里赤音、及び超高校級の幸運 狛枝凪斗。二人ともに目立った外傷は見られない。』
は?情報がいつもより少なすぎないか?さてはモノクマが意図的に情報を隠しているんだろうな。
でもそれは逆に普段はここに書かれていて今回書かれていないことは事件に深く関わっていることを意味する。捜査の参考にはなるだろう。
「日向くん?良かったら私と一緒に捜査しようよ。」
「七海?」
「今回の殺人は二人も殺されてて事件も複雑そうでしょ?だから一人よりも二人で捜査した方がはかどるかなと思って。」
「ああ、いいぞ。俺の方からも頼むよ。」
「うん。それじゃあ頑張ろう!」
思わぬパートナーを得て捜査に取り掛かることにした。
まずはこの終里の病室からだ。何か気になるものなんかが落ちてないかな..。
「日向くん、ちょっと来て。」
「早いな、七海。もう何か見つけたのか?」
「これだよ。」
七海のいるところを見ると携帯電話が棚の上に立てかけられていた。しかもテレビ電話が起動している。
「何か不自然だよね?この携帯電話って病院のロビーとライブハウスで定期連絡するためのものだから誰かがここに持ってきたのかな?」
「確かにそう考えて良さそうだな。」
「お前たち、テレビ電話の話をしているのであればちょうどいい。これも伝えておくべきだろう。」
そう話しかけてきたのは辺古山だった。そういえばこっちにも辺古山に聞きたいことはある。
「なあ、辺古山。その前になんで弍大をさっきまで押さえつけてたのか教えてくれないか?」
「私が言おうとしていたのもそれに関係する話だ。午前5時55分のことだ。私がライブハウスに居るとふと携帯電話の着信が入っていることに気づいたのだ。定期連絡の時間には早いため不思議には思ったのだが、起動してみるとテレビ電話越しに映ったのは終里の病室だった。
ちょうど今、あの携帯電話が立てかけられているアングルで間違いない。」
「辺古山さんがここに来たってことはそこで何か見たの?」
「ああ、七海の言う通りだ。そこには弍大と弍大の影に隠れる何者かがいた。様子がおかしいと思った私は九頭龍と合流しこの病室に突入したのだ。
そこで初めて分かったのだが、弍大の影に隠れていたのは首にロープのかかった状態で倒れている罪木だったんだ。状況は一目瞭然、弍大が罪木を襲ったのは明らかだった。そこで私は瞬時に弍大を取り押さえたというわけだ。」
「だからそれは誤解じゃ。ワシはただこの病室に駆けつけただけじゃ!」
俺たちの会話に割り込んできたのは弍大だった。
「ワシはいつでも罪木に手を貸せるよう廊下に一晩中立っておったんじゃ。明け方になって終里の病室に入った罪木が悲鳴をあげたんでな、ワシも何かあったと思い、向かったんじゃがそこにはロープで首を絞められた罪木が倒れていたというわけじゃな。」
「しかし罪木ははっきりと言っているぞ。お前によって首を絞められたとな。それにあの状況でお前以外に犯人は考えられない。」
「くぅ、た、確かに辺古山の言う通りじゃがワシは断じて犯人などではない!
ああ、そうじゃ。午前1時頃に一度廊下から離れたな。」
「うん?何かあったのか?」
「いや、罪木に頼まれて看病のための薬を取りに行っただけじゃ。中身も満タン、ラベルも確認したから間違いないぞ。」
「そういうことなら実際に罪木さんからも詳しく話を聞いた方が良さそうだね。」
そう言った七海と共に俺は検死をしている途中の罪木のもとに歩みよった。
罪木の首にはほんのりと赤い後が首を一周するように残っている。身体的にも精神的にも辛いだろうに検死をしてくれているんだ。
「大丈夫か、罪木?まだ体調が優れないのに無理させて。」
「あわわわ、日向さん。確かに首がまだ痛みますけど皆さんが助けてくれたので大丈夫です。だからその分働いてお返ししますから嫌いにならないで下さぁい。」
「嫌いにはならないけど罪木さん、もう一度確認の為に聞くけど本当に弍大くんに首を絞められたんだよね?そしてもう一つ。弍大くんに薬を取ってきてもらうよう頼んだのは本当?」
「は、はい、間違いないです。私がこの終里さんの病室に入って終里さんの異変に気づいて悲鳴をあげちゃったんです。そのすぐ後に後ろからロープで首を絞められて...そ..そこには弍大さんがいて...。あと私が午前1時頃は全ての病室を見回っていた最中だったので弍大さんに薬を取ってきて貰ったのも本当ですぅ。その時には皆さんまだベッドの上で息もあったんですが..。」
「薬の入れ物はたぶんここに置いてある容器がそうじゃないかな?」
七海の言う通りベッドのそばには空になった薬瓶が置かれていた。中身は水滴が付着していたから液状の薬が入っていたのだろう。そして隣りには使用済みであろう注射器も並べて置かれている。
「そうか。首を絞められたところ以外は弍大と証言が一致してるな。ところで検死の方はあとどれくらいかかりそうだ?」
「一応、一通り二人とも検死は終わりました。」
思ったより早かったな。まあそれにこしたことはないけど。
「じゃあそれについて教えてくれるか?」
「はい。一言で言うと終里さんと狛枝さんどちらも絶望病が死因となって亡くなっていました。私の力不足で上がり続ける熱や身体の異常に手を打つことができなくてお二人を死なせてしまって。
あと澪田さんの容態も見てきたんですけど私よりも強く首を絞められたみたいで今はベッドで安静にしてもらっています。一命は取り留めたんですけどもしかしたら今後の喉を使った音楽活動にも影響が出てしまうくらい酷いものでした。」
余りにも酷い仕打ちだとそう思った。終里と狛枝は長い苦しみの中で命を落とし、澪田はあいつの命とも言える喉を傷つけられた。特に今回の犯人は許せない。
「わ、私がもっとしっかりしていればお二人は、澪田さんは助かったと思うんです。私の知識も腕も足りなかったから...。全て私の責任です。ひっく。あの人たちに合わせる顔がありませぇん。」
「罪木...」
再び泣き出してしまう罪木をなだめた後、俺たちは他の二つの病室に行ってみることにした。
澪田の病室に入ると澪田はベッドに横になって安静にしていた。
その首には赤くくっきりと絞められた跡が残っていて罪木の言っていたことを物語っていた。その跡は罪木のものよりも明らかにはっきりとしており強く絞められたことを物語っている。話では聞いていたけど実際にこの目で見るとあまりの痛々しさに目を背けたくなる。
「創ちゃん、千秋ちゃん来てくれたんすね。せっかく来てくれたのに悪いんすけど学級裁判まで少し休ませてもらうっす。蜜柑ちゃんに怒られちゃうし。」
澪田の声に暗さは感じられなかったがいつもより格段に声が小さかった。あまり大きな声を出すことができないのだろう。
「大丈夫だよ、捜査は私たちに任せて。ほら、協力プレイってやつだよ。」
「ははっ、千秋ちゃんは優しいっすね。でも唯吹は絶望病にさっきまでかかってたせいで記憶が少しあやふやだから証言できることもないんすよね。熱も凄い出てたっすから意識も朦朧としてて。凪斗ちゃんと赤音ちゃんが殺された事も全然気がつかなかったっす。」
「別に澪田が気にすることなんてないと思うぞ。何にしても澪田まで死んでしまわなくて良かった。」
「...唯吹はまた軽音できるんすかね?大勢の人の前でライトを浴びながらノリに乗って歌う。この前のライブはもちろん久しぶりで楽しかったっす。
でもやっぱり本音を言うとここから出て皆には心の底から音楽を楽しんで欲しいし、唯吹も皆と一緒に楽しみたいんす。今、唯吹は喉を痛めてるっすけど絶対またステージに戻って来て今まで以上に最高のライブを届けるっすから、次のライブを楽しみにしてて欲しいっす!ゲホッゲホッ。」
「おいおい大丈夫か?でも普通なら前も見えないほどの絶望的な状況に置かれても前を向き続けることができるっていうのは澪田の強いところだし、お前らしいよ。」
「創ちゃんも優しいっすー!」
「じゃあ日向くん、そろそろ行こうか?」
「ああ、じゃあ澪田。ちゃんと安静にしておくんだぞ。」
「了解っす!」
狛枝の病室には九頭龍が一人で立って狛枝を見つめていた。何か考え込んでいるんだろうか?
「九頭龍?何か見つけたのか?」
「いや、全然。そういやてめーらに夜の間のことを話してなかったな。」
「うん、聞かせて。」
「俺は一晩中病院を見張ってたんだが午前1時頃に弍大が一度病院から出てきて何処かに行ってたな。15分もしたら帰ってきたんだが、帰ってきた時に薬を持っていやがったから罪木にでも頼まれたんだろうな。
それと午前5時30分あたりに罪木が出てきたな。ちょうど俺を起こしに行く途中だったみてーだから呼び止めて話をしてたんだ。罪木が犯人かもしれねえってことを聞いてたからよ、尻尾を掴めるかと思ったんだがいつもの罪木と変わんなかったな。で、6時前に罪木がまた病院に入っていったな。
後は辺古山からテレビ電話の話を聞いて駆けつけたって訳だ。」
「ふむふむ。一つだけ気になるところがあるんだけどいいかな?」
「ああん?何だ、気になるところって?」
「なんで九頭龍くんは病院を一晩中見張ってたの?」
あ、まあ気づいても仕方ないよな、そりゃあ。明らかに不自然だもんな。なんにせよ頼んだぞ、九頭龍!
「あ、いやーそれはだな。俺も罪木を手伝おうかと思ってよ。でも病院の中にはこれ以上居座られねーから外にいた訳だ。」
「でも、見張る必要はないよね?」
「いや、あるだろ!男と女が一晩中一つの屋根の下にいるんだぞ!何かあったらどうすんだ!」
「....。あー、私はそこまでは思いつかなかったな。ごめんね九頭龍くん。」
「....。(何か俺が誤解されてるような気がする。)」
七海は本気で言っているのか九頭龍をからかっているのか分からないが勝負は決したみたいだ。とりあえずすまない、九頭龍..。
「と、ところで九頭龍。俺たちが部屋に入ったとき何か物思いにふけってたみたいだけどどうしたんだ?」
すると九頭龍は真面目な表情、口調で狛枝を再び見ながらこう呟いた。
「こいつがよく言ってやがった絶対的な希望をこいつは見ることができたんだろうかと思ってよ。」
「どういうことだ?」
「こいつは俺たちを危険に晒す様なマネをしやがったイかれた野郎だ。だけどよそれでもモノクマに打ち勝つ、絶望を乗り越えようとしていたことは俺たちと何も変わらねえ。いやむしろ誰よりも強くコロシアイにも屈さず明るい未来を見ていたかもしんねえ。
それだけにこうやって一言も発さなくなったこいつを見て絶対的な希望は見れたのか、最後に少しくらい救いはあったんだろうかって思っちまった。何回も言うがイかれた最低野郎なのによ。」
「狛枝がこうなってしまった以上真相は分からない。けどもし狛枝が絶対的な希望を見ることができなかったなら、俺たちが絶対的な希望になればいいだけだろ。少なくとも俺はそれが狛枝への慰めになると思うから。」
「ああ、そうだな。日向おめーもたまにはいい事言うじゃねえか!」
「何だよ。たまにはって。」
「俺は神や仏は信じねーけどよ。もしそいつらが本当にいやがるんだったら絶対性格わりーぞ。超高校級の幸運の才能を与えた狛枝にこんな惨めな死を与えたんだからよ。こんな趣味のわりい皮肉はねえ。何が幸運だってんだ。」
確かに一見そう思えても仕方ないんだろうけど、どこかひっかかるんだよな。ありとあらゆる幸運に見舞われる狛枝がいくら病気とはいえこんなにあっさり...。こいつの幸運は自分に向けられた殺意さえも受け流すことは前周回そして今周回の第一の事件でよく分かっている。
それだけに納得できない。
ピンポンパンポーン
「さあさあさあやってきたよー!お楽しみの学級裁判!みんなも楽しみだったよね?うんうんそうだよね。
そういうことだから早くモノクマロックに集合だよー!」
モノクマから捜査終了が告げられた。
モノクマに引きずられてきた生気がまるで削がれたような左右田も加えて俺たちは学級裁判場に立ち入る。
恐怖する者、覚悟を決める者、落ち着かない者、反応は様々であるが俺はこの連続殺人を行った恐るべき犯人を探し出すと心の中に再び刻む。
しかしこのときの俺の認識は甘かったと言わざるを得ない。
なぜならこの運命の学級裁判は俺の予想だにしない結末を迎えることになることを俺はまだ知らなかったからだ。