遂に学級裁判が始まった。早速俺たちはクロを見つけるための議論に入る。
「まずは各々の事件当夜のアリバイを確認しておいた方がいいのではないか?誰がどこで何をしていたのか。そっちの方が事件を整理しやすいだろう。」
「確かに辺古山さんの言う通りだね。ちなみに私は一晩中モーテルで寝てたよ。モーテルにいた他のみんなでそうじゃない人はいる?」
七海の問いかけに俺と辺古山以外は反応しなかった。これで田中と西園寺もモーテルで眠っていたことが周知の事実となった。
「俺は一晩中モーテルの外にいたんだ。なんだか眠れなくてな。そこで、俺は誰も夜に外出しなかったのを確認してるんだ。だから七海と田中と西園寺がモーテルで寝てたのは間違いないぞ。」
「私はライブハウスに一晩中いたな。アリバイを証明することはできない。」
「そもそもさあ一晩中ライブハウスにいたなんてどこからどう考えても怪しいじゃん。一体何してたのさ?それに左右田おにぃに至ってはずっと姿を見てないから、日向おにぃも含めるとアリバイがない人も結構いるよ。」
西園寺の指摘に左右田は俯き黙ったまま、辺古山は本人がさっき言った通り自分でアリバイを証明できない以上反論は難しいだろう。
しかしここで助け舟が入った。
「確かにそいつらにアリバイはねーが事件には関わりようがねえぞ。夜の病院には人数制限があってよ、一晩中俺は病院の外にいたんだ。でも、そいつらは病院に入って行かなかったぜ。そうだよなモノクマ?」
「はい、そのとーりでございます。あくまで病院というのは文字通り病を患った人の為の施設であって宿泊施設ではないので当然のルールです。」
「ってえことだ。だからそいつらは犯人じゃねーぞ。」
九頭龍のナイスアシストが光った。うまく病院の外にいた本当の理由は誤魔化しているが、強ち嘘とは言い切れない言い回しをしている。それに余計な不審な点を作って議論を混乱させるのは得策じゃない。
「なるほど。モノクマの証言によれば一晩中、九頭龍は病院に入ることができなかったということか。フフ、フハハハ、見えた、見えたぞ!つまり九頭龍自身も犯人にはなり得ないということだ!」
「あのぉ、それは当たり前だと思いますけどぉ...。私は午前1時頃以外は廊下にいた弐大さんに目撃されてると思いますぅ。ちなみにそのときは終里さんも狛枝さんも澪田さんも無事で何事も起こってませんでしたぁ。」
「ということは唯吹にもその午前1時頃のアリバイはあるってことっすね!」
「それにそれにそれに弐大さんに薬をとって来てもらって、早速それを使ってまずは終里さんの介抱をしたんですけど部屋を出るときに転んでしまって、し、しかもあんなはしたない格好で!」
罪木が転んではしたない格好..。記憶にないこともないけど今は忘れよう...。
「あ、ああだからワシは罪木を一旦会議室に運び、明け方まで休ませることにしたんじゃ。罪木自身も徹夜続きで疲れていたようだしの。」
「は、はいぃ、情けない限りですぅ。親切にしてくださったのにお見苦しい姿をお見せしてすみませぇぇん!」
「え?親切っていうけどあんた弐大おにぃに首絞められてたんじゃないの?」
「そ、そうでしたぁ!」
そ..それを忘れるとは...。
「だから何度言ったら分かる!ワシは首など絞めておらん!」
「しかし、私は実際にテレビ電話で一部始終を目撃したのだがあれは編集などで捏造されたものだとでもいうつもりか?」
「あの古より駆動する携帯電話にそのようなアビリティはついてはいないはずだ。それ故、辺古山が目撃しているのならばそれを信じるほかあるまい。」
「これは陰謀じゃ!誰かがワシを嵌めておるんじゃ!」
「でもよぉ、田中や辺古山が言うことも最もだぞ。それに実際罪木の首にはロープがかかってて、絞められた跡だってあったじゃねーか。てめーこそこれをどう説明するつもりだ?」
「どうもこうもそんなのワシは知らん!」
「不審な点もない以上、てめーが終里と狛枝を殺した後、死体を目撃した罪木を殺そうとした。そして念には念をおして澪田も殺ろうとしたんだろ。」
「それは違う!...と思うよ。」
「違うってのはどういうことだ?」
「不審な点ならいくつかあるじゃん。例えばテレビ電話だよ。テレビ電話ってもともと病院のエントランスにあったものだから終里さんの部屋に誰かが移動させたってことだよね。罪木さんを襲うにしてもなんでわざわざテレビ電話をセットして、その部屋で襲う必要があるの?そんなの自分を疑ってくれって言ってるようなものだよ。」
「それに罪木を殺すなら会議室に運んだ後、休憩している罪木を襲えばいいはずだ。罪木以外の誰かによる死体発見を恐れたのなら、むしろテレビ電話のある病室で襲うよりも確実に死体発見をされるリスクを減らせるし、そっちの方が抵抗されずに確実に殺せるしな。」
「それは弐大おにぃがゲロブタの死体発見を予測できなかっただけじゃなくて?」
「できなかったはずがない。なにせ休憩するよりも前にも罪木は三人の看病をしていた。見回りの時に罪木に死体を発見されることを予期するのは簡単だったはずだ。」
「確かに言われてみれば、私は今までテレビ電話で罪木が首を絞められている瞬間を目撃したのだと思っていたが、弐大の体に隠れて罪木が弐大に首を絞められているその瞬間は見ていなかった。」
「ああ、それこそが犯人の狙いだったんだ。辺古山のようにテレビ電話を見た人間に弐大が犯人であるかの様に誤認させる。それこそが犯人が行った偽装工作だったんだ。」
「これだけ弐大くんを疑う根拠が崩れて、逆に弐大くんが犯人とは思えない根拠が出てきた以上、彼は犯人じゃないんじゃないかな?」
「だから最初から言っておろう。ワシは犯人ではないと。」
「すみません弐大さん。私も後ろから急に首を絞められてその後の状況から弐大さんに首を絞められたと思ってたんですぅ。」
「もういいわい。疑いは既に晴れたしのう!これからは協力して犯人を突き止めようぞ、ガッハッハ!」
「は、はい!」
「疑いがはれたなら今度は弐大おにぃの証言を元にして考えてみようよ。前の事件で九頭龍から証言聞いたみたいにさ。何か気になることとかないの?」
「ワシが気になっておるのはやはり死因かのう。いつもモノクマファイルには何かしら記述があったと思うんじゃが今回は全くなかったのが気になってのう。結局死因はなんだったんじゃ?」
「気になると言えば死亡時刻もっすね。モノクマファイルは見せてもらったっすけどこれも確か書かれていなかったはずっす。」
「本当だー!モノクマほんとに真面目にやってるのー?」
「西園寺さん、なんて失礼な!ボクが手を抜いちゃうような大雑把なクマに見えるの?」
「あんたの言うことが信用できるわけないでちょ!」
「やだなぁ、むしろボクはサファリパークで真面目過ぎて煙たがられてたぐらい品行方正なクマだよ。」
「ほえ?あちしの知らないクマでちゅね。」
「モノクマさんとモノミさんのコントは置いておくとして、私が検死したところお二人とも絶望病によって亡くなっていました。さぞ苦しまれたことだと思います。」
「しかしその場合、犯人はいないと言うことではないか。まさかモノクマが殺人をでっち上げたというのか?」
「田中くんもー!?さっきから言ってるじゃん。ボクはそんなことはしないよ。だってそんなことをする意味もメリットもないしね。」
そう、モノクマはそんなことはしない。そんなことをしてもそれは唯の殺戮の様なものでモノクマの望むルールあるコロシアイとはほど遠い。最も俺は、モノミの管理者の立場を乗っ取っているモノクマが無差別な殺戮をやろうとしてもできないことを知っている。だからこそあいつはこのコロシアイをさせているんだ。
そしてこの死因の謎は既に分かっている。
「モノクマの言う通りだ。このコロシアイ修学旅行のルール上、俺たちがルール違反を犯さない限りモノクマが命を奪うことはない。つまり死因が絶望病なんてことはあり得ないんだ。」
「すっ、すみませぇぇん!検死結果まで間違えてしまいました!議論を混乱させてしまい本当に申し訳ありませぇぇん!」
「罪木は確かに随分疲労している様じゃった。その上二人も殺されてしまったというショックを受け、専門外ともなればミスも出てくるじゃろう。」
「看病してもらってた唯吹が言うことじゃないかもしれないけどしょうがないっすよ。今までむしろ頑張ってくれた方っす。」
「ふゆぅ、ありがとうございます、みなさん。これからはこんなことがない様に気をつけますぅ。」
「....」
「じゃあさ本当の死因ってなんだったの?モノクマファイルによれば外傷なんてなかったんでしょ?」
西園寺の言う通り重要なのはそこだ。それはこのモノクマファイルの記述、傷が残らない形の殺害方法、現場に残っていた証拠それらを考えれば一択しか考えられない。
「俺は薬の過剰摂取だと思うんだ。」
「薬の過剰摂取だと?」
「そうだ、辺古山。現場には空になった薬瓶と注射器が残っていた。恐らくあれを使ったんだと思う。この方法なら目立った傷を残さず殺害できるだろ?
絶対そうだと言えるほどの決定的な証拠はないけどこの方法が一番可能性が高いと思うんだ。」
平和に希望ヶ峰学園に通っていた頃の俺ならこんな方法思いつきもしなかっただろう。前周回の三回目のおしおき、オーバードーズいわゆる薬の過剰摂取。それと同じ方法をとったんじゃないかと思う。そして、もし俺の推理通りだとしたら不思議で不気味な因果だ。
「しかし、その薬瓶ワシが持ってきたものじゃぞ。ま、まさかまたワシを疑おうと?」
「いや、弐大が犯人と考えにくいのは変わらない。むしろお前は犯人に利用されたんだと思う。二人を殺害するための凶器を用意するためにな。」
「ワシが利用されたじゃと!?しかしワシが薬を取りに行ったのは頼まれたからであって...。まさか..お前さんが疑っておるのは...。」
そう。まさか再びこの時がやってくるなんて。再び仲間を二人手にかけたとは。動機を提示したモノクマが一番悪いのは分かっている。しかしそれでも...。
俺は静かな怒りを目に宿してその人物に向き直った。
「罪木、犯人はお前なんじゃないのか?」
「ふぇ!?」