chapter6-1
「これからの事とはどういう事じゃ?モノクマによれば卒業試験とやらをするんじゃろう?」
「卒業試験ってのはこの世界の事や俺たちの正体について解き明かす為の学級裁判の事だ。」
「だが私達は既に日向から全て聞いている。ここがプログラム世界である事、黒幕は江ノ島盾子という超高校級の絶望である事、そして罪木や江ノ島と同様私達自身も超高校級の絶望であったという事だ。」
「後はこの忌まわしきコロシアイが永遠の輪廻の中にあるその謎の答えを我が手中に収めるだけだ。」
「要するにコロシアイがループしてる理由を見つけるって事でしょ?でもさ学級裁判をするならそこで江ノ島をとっちめて吐かせればいいんじゃない?」
「それができるのが一番理想的なんだけど江ノ島が正直に言うとは限らないからな。第一、前周回であいつは、生き残った俺たちはプログラム世界の外に出るけどプログラム世界で死んだやつらはずっと眠ったままだって言ってたんだ。」
「しかし日向は2度目のコロシアイに挑み、前周回で死んだはずの私たちも五体満足で生きている。確かに江ノ島の言った事とは矛盾するな。」
「ループの理由は今考えても仕方がない。俺が言わなければならない事は違うんだ。それは罪木に捕まった事とも関係があるんだけど。」
「ああ、確か頭痛がして急に意識が遠のいたんだっけ。ただの心労とか体調不良じゃないの?」
「意識を失う前、俺はある過去の記憶を思い出してたんだ。今まではたまに夢で見るぐらいだったんだけど前周回最後の学級裁判以来、初めて夢以外で思い出した。」
「待て。貴様は夢想の世界と現実の世界の判別がついていないのか?」
「日向おにぃもあんたにだけは言われたくないと思うよ。」
「いや、あれは俺の過去の記憶で間違いない。なぜならカムクライズルっていうもう一人の俺だったやつの記憶なんだからな。」
「かむくらいずる?日向おにぃって二重人格だったの?」
「二重人格とは違うんだけど前に俺が予備学科だって事は話したよな?」
「ああ、じゃからワシらとは違ってこれといった才能はないとそういう話じゃったぞ。」
「以前の俺は才能がない事に劣等感を抱いていたから才能を得る為に開頭手術をして日向創の人格を消したんだ。その代わりに生まれたのが"超高校級の希望"カムクライズルの存在だ。」
「超高校級の希望とは狛枝が常々言っていた万能の天才の事か。だが才能を得るためにお前がそこまでの荒事に足を踏み入れるとは。正直、私はゾッとするぞ。」
「今ではバカな事をしたと思ってるよ。あの時は才能さえあれば不可能も可能になるって本気で思ってたからな。でもこのコロシアイを通してありのままの自分だからこそできる事だってある事に気づいたんだ。だからカムクラの犯した過去とも向き合って行こうと思う。
辺古山や西園寺も九頭龍の死と向き合って乗り越えようとしたからこそ俺もそう思えたんだ。」
「なるほどな。私達の姿がお前に良い影響を与える事ができたというなら嬉しい限りだが私の知っている日向創はお前だけだ。今までも、そしてこれからもそれが変わる事はない。」
「そうじゃな。もしカムクラとやらがコロシアイに参加していたらワシらが生きてここにいたかどうかも分からんからのお。」
「しかし俺様はカムクライズルが如何程に神にも近い存在か興味はあるがな。だがそれはそれとして才能なき赤子に慈愛を向けるもまた一興だ。」
「あんたディスってるみたいに聞こえるからそう言う事言わずに空気読んでよー。まあ、ぶっちゃけ私達も超高校級の絶望だったから人の事とやかく言えないしね。」
「だが、日向よ。お前は私達にも聞いておかなければならない事があると言っていたな。それはカムクライズルと何か関係があるのか?」
「いや、カムクラとは関係ないんだ。それはだな...。」
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【chapter6】
This is the reboot〜さよなら二度目のコロシアイ〜
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時は過ぎ、遂に始まった学級裁判。
俺たちは前周回と同様、プログラム世界や俺たちの正体について明かしモノクマを追い詰めた。ここまではむしろ前周回より時間はかからなかった。
理由は二つ。一つは俺が事前に答えを共有していたから。もう一つはモノクマが苗木誠の偽物を使って俺たちを心理的に揺さぶってこなかったからだ。
そして絶望の権化がその巨大な姿を表す...。
「どうもー!ムサい絶望連中も臭っさい希望連中も待たせたわねー!絶望的に美しい江ノ島盾子ちゃんの登場よー!」
「いくら何でもデカ過ぎない?限度ってもんがあるでしょ。」
「成長期なの!逆に西園寺先輩は小柄で羨ましいですぅ〜。」
「うっさい、死ね!この脳味噌絶望漬け女!」
「嫌われました...。再会16秒で嫌われました...。これって超絶望的に快感ですね...。」
「お前のノリに付き合ってる暇はないんだ。本題から話を逸らすのは止めろ。」
「あー、これは失敬したね。この度のご無礼、謹んでお詫び申し上げるよ。それで日向クン。ここは久しぶりと言うべきかな?」
「やっぱりお前がこのループの元凶なんだな?前周回の記憶があるんだな?」
「これは最初から説明しないとダメみたいだね。いいよ、特別に教えてあげるよ。」
「教えるじゃと?」
「いいですか?まずこのループを引き起こしたのは私です。皆さんの記憶を今一度奪ってコロシアイ修学旅行をもう一度行うようなプログラムをこの新世界プログラムに入った直後に設定しておいたのです。言うなれば、コロシアイ再生プログラムとでも言いましょうか。」
「しかし貴様は前周回で日向にこの悪しき世界から逃れる事ができると妄言を吐き散らしたようだが?」
「ええ、それはおっしゃる通り私の嘘です。前周回で襲い来る数々の絶望を乗り越えてあなた達の希望は極限まで膨れ上がりました。それはもうパンパンに膨らんだ風船の様に。そこで2度目のコロシアイという絶望の刺激を与えればどうなるでしょうか?」
「そうすることで貴様は日向達を絶望に陥れようとしたわけか。日向たちの決死の決断に意味などなかったと思わせることで。」
「そのとおおおおおり。まあ日向の記憶が残ってんのは想定外だったけどな。新鮮な絶望を永遠に味わう為に、オレが飽きない為に、せっかくオレ自身の記憶も消したってのによ!」
「私達だけではなくお前の記憶も消えていたのか!だがお前にも本来のコロシアイの目的があったはずだ。それを放棄したと言うのか?」
「貴方達をしもべにし、世界を江ノ島ランドの支配下に置くことね。しかし私様は欲張りなのです。このコロシアイの絶望を充分に味わい尽くした後でも遅くはないでしょう?」
「じゃあ俺が皆にコロシアイがループしている事を話すまでお前自身もループに気づいてなかったんだな。」
「まあねー。ほらアタシって人一倍、いや人万倍くらい飽きっぽいからこうでもしないと楽しめないかなーって。」
「そんな事の為だけに私達はコロシアイをさせられてたの?」
「この際、それはもういい。じゃが日向の記憶が残っておったのはどういう事じゃ?お前さんにも予期してなかった口ぶりじゃがのお。」
「ああ、おいらもビックリしたぜー!あくまで推測だけどよ、一応その答えは出てるぜ。」
「オマエラ、さっきボクが記憶を失わせたって言ったよね?でも所詮はプログラムだからさ臨機応変な対応は難しいんだよ。ボクは日向クンの記憶を消す様に設定はしたけどカムクライズルの記憶を消す様には設定してないからね。そういうことなんじゃないかな?」
「俺が前周回のラストでカムクラの力を呼び起こしたのはお前にとっても想定外だったから当然、新世界プログラム侵入時点でその事を考慮してコロシアイ再生プログラムを設定してるわけがないってことか。」
「そう言う事。あの時の君は日向創であると同時にカムクライズルでもあった。だからボクのプログラムがうまく作用しなかったんだと思うよ。全く世話をかけさせてくれるよね。うぷぷぷぷ。」
「なるほどな。それならば日向がカムクライズルの記憶を思い出していたのも納得だ。私達と違いそもそも外での記憶が失われていなかったんだからな。」
「でも残念だったね。確かに日向クンの記憶は失われていなかったけど他の皆さんはどうしようもない。一度、失われたものはもう元には戻らないんだからさ。」
「フッフフフフフフフフ、ハーッハッハッハッハッ!見破ったぞ!貴様の虚ろなる論理、その穴をな。」
「キャー、何何?超うるさいんだけどぉ〜。私って意外にガードが固いから私の穴は見せませーん。」
「一つ!もし俺様達の記憶が失われているのならなぜ貴様はプログラムに記憶消去の設定を施している?貴様の論理を是とするならば1周目のコロシアイが始まると同時に俺様達の記憶は失われている。2周目開始時に記憶を失わせる必要などないはずだ。つまりそれは記憶が完全に失われていない事を意味する。」
「やっだあ〜。そ、そんなわけないじゃん?すっごく勘違いしてるみたいだけど消えた記憶が簡単に戻るわけないんだよねー。」
「そこで二つだ!ここは現実世界ではない。虚空の理が支配する魔界、貴様の世界の言語ならばプログラム世界と言うべきか。それならば残っているのではないか?俺様達の記憶、そのデータがな。」
「くっ!」
「ていうかその記憶を消すプログラムってこの女にも仕掛けられてるんだよね?だったらデータが残ってるのは当然だよ!そうしないといざという時に自分の最初の目的とかも忘れちゃうもん!」
「くっ!くくくくくく!」
「じゃあワシらも記憶を取り戻せるかもしれん言う事か?」
「バレちゃいました...。あっさり虚しくバレちゃいました...そうなんです。皆さんの記憶はデータとして残ってます。私のデータも残ってます。以前のコロシアイのデータも残ってます。」
「当然と言えば当然か。私達の記憶はともかく江ノ島自身の記憶をバックアップも取らず完全に消してしまうのは奴にとってもデメリットが大きすぎるからな。」
「実際のところしようと思ってもできなかったんだけどねー。ほら私ってさウサミの立場を乗っ取ってるわけじゃん?この世界の時間を繰り返させる程度だったり一時的に記憶を失わせる程度だったらまだしもアンタたちの記憶を二度と戻らないくらい完全に奪う権限なんてあるわけないじゃん。アンタたちに直接危害を加えらないからこそコロシアイを仕向けたところもあるんだしさ。」
「それはそうか。ウサミにそこまでの権限を与えておったらやつが暴走した際にそれこそ歯止めが効かなくなるからのお。」
「オイオイオイ、記憶が戻るかもしれねーって喜んでるとこ悪いんだけどよ。それを判断するのはオレなんだよなあ。それに何か忘れてねーか?」
「最後の投票だな?」
「その通りです。流石は日向クンですね。泣きっ面に絶望ですがこれが学級裁判である以上あなた達には投票をしてもらいます。」
"投票"その言葉に全員が息を飲む。
「つまり貴方達に与えられた選択肢は二つよ。77期生の同級生と過ごした以前の記憶を取り戻せる可能性を捨てて現実世界に戻るかあるいは将来的に記憶を取り戻せる事を信じて永遠の修学旅行を過ごすか。どちらにしろ悪い話ではないでしょう?」
やはりこんな感じに揺さぶってくる事は既に分かっていた。分かっていたからこそ事前に皆に聞いておいたんだ。これからどうしたいかを。
「あ、言い忘れてたけどよ。外に出るんだったらオメーらは超高校級の絶望に逆戻りするかもしんねーし、日向は人格が消えるかもしんねえ。死んじまった他の奴らに至っては確実にオレのアルターエゴを埋め込ませてもらうからな。」
急に非日常に放り込まれ、本当に多くのものを失って、耐えて、また失って、それでも希望はまだあると前を向いて過酷な日々を送ってきた。今更、そんな脅しに屈する俺たちじゃない。
「ちなみに強制シャットダウンもあなた達には不可能です。前回は苗木クン達が駆けつけて来てくれたようですが、ループしているのはこの世界だけで現実世界ではループなどという物理法則を無視した現象は起こり得ません。もっとも、ゲームの世界と現実世界では時間の流れる早さも同じとは限りませんしね。それに現在、未来機関本部でも何かあったようですよ。何があったかまでは私の知るところではありませんが、現実世界からの私への監視が減りましたから。」
もとよりこっちはそのつもりだ。都合良くピンチになったら未来機関が助けてくれるなんて思っていない。俺たちは俺たち自身の足で前に進み、未来を切り開く。
「さあ私様に全身全霊をもって答えるがいいわ!究極の選択を迫られた貴方達の決断を!コロシアイを生き残った貴方達の意志を!」