まあ、ぶっちゃけ戻していくスタイルなんですけど。夏休みはCAD弄る以外に遊ぶしかないので。
そして、Foo↑アリアAAのアニメ来ちゃったじゃんアゼルバイジャン。やりますねぇ。
で、本編二期はまだですか(半ギレ
シャーロック映像で見たい……見たくない?
作者は語録を結構オープンに使いますけど、嫌いな方は言って頂ければ使うのは感想への御返事のみに限定したいと思います。元ネタが元ネタだし、多少はね?
「俺が、ソルだ」
格好をつけて、奴はそう自己紹介した。
黒いジャケットがさっきまでの俺のようで、しかし、俺よりも似合っているようで気に食わなかった。
「それで? お客さんは一体何者なんだ」
「俺達は――」
「ああ! いいよ、当てて見せよう」
ソルが大ぶりなリアクションを取ると、セレーネは溜息をついて「お茶、淹れてくるわ」そう言い残して出ていった。
「うんうん、久しぶりにセレーネ以外の奴に会ったからな、すげぇ新鮮。まま、座りなよ」
「……」
お嬢はあからさまに警戒しているようだ。
「そうだなぁ……、まず、お嬢ちゃん。小学生? いや、高校生かな。黄色人種じゃないね。髪の色はスラブ系な感じがする。でも、どことなくアジア人の顔立ちに近いような……ん、そういうところかな」
ソルはお嬢を一頻りプロファイリングしたあと、今度は俺に目を向けた。
「君は、アジア人っぽいが、それだけじゃないな。両親のどちらかが――」
「母親は恐らくゲルマン人だ」
「ばらすなよ、つまらんだろ? 恐らく、ね。中々に込み入った事情がありそうでまあ、ついでに、二人とも帯銃か」
……気づいていたのか。
「で、だ。この情報を整理するとだよ。君らが兄妹とか、血の繋がった関係であるってのは確率低めだ。異兄妹? 二人とも帯銃してか。それもありえない。この国の法律を加味すれば、銃を持てるのは武偵か警察関係者、もしくは自衛官。さあ、レッツ、消去法!」
この野郎……
それにしても、聞いていればわかる。こいつは話すのが好きだ。そして、相手を小馬鹿にするのも好きだ。若干、俺に似ているところもある。
「茶番はここまでだ、ソル・グラーベ! 私はICPO、彼は武偵、あなたは犯罪者、これで十分だろう!」
とうとうお嬢がキレて、スカートの下からガバメントを抜いた。
「へー、令状は?」
自分に銃口が向いているにも関わらず、剛毅な態度を崩さないソル。多分だが、何か考えがあるのではないだろうか。
「貴様には殺害の許可が出てるんですよ……! 未成年者を五人もブッ殺した重犯罪者には、然るべき裁きを与えてあげます。感謝しろ、クズ野郎」
「おい、お嬢! 落ち着け。というか、その口調どうにかしてくれ。さっきまでとのギャップが激しすぎて、ついていけない」
「……何ですか、まさか、お兄ちゃんとか呼ばれて嬉しかったんですか? 変態ですね。とにかく、こいつはここで射殺します」
お嬢が本当に引き金を引きそうになると同時に、ソルは、一瞬だけ背もたれに寄りかかったかと思うと、あろうことかソファから飛び起き、お嬢のガバメントのスライドを右頬に擦り付けるような形で懐へと侵入した。
驚くべき速度だ。場慣れしているのがよくわかる。
「ッ!!」
「ほら、俺と敵対しても、いいことないだろ? まずはお話だけでも、いかがかなぁ」
彼女の耳元で囁くようにそう言ったソルは、しっかりと撃鉄を指で止めている。
「お嬢、クールダウンだ。殺されなかっただけマシだと思おうぜ」
俺も一旦静止を呼びかける。
それにしても、俺を全く気にしていなかったのは、俺が対応する気がないのを知ってか、それとも、俺などは眼中にないからか。
そこで、ソルが離れて、ドカっとソファに座って足を組む。
「くっ……、下劣な、犯罪者めッ……!!」
「俺が、犯罪者?」
「違うのか! 警察官のくせに、度し難い……!」
ソルは、俯いて逡巡した後に「ああ、そうだな」とだけ言って、欠伸をした。
そして、何かに気づいたように、俺達の後ろを見る。
「おい、セレーネ! 入ってこいよ」
すると、真後ろからドアノブの動作音が鳴り、盆にアイスティーなどを載せて持ってきたセレーネが、バツが悪そうに入ってきた。
「盗聴か? 趣味わるぅー」
「はぁ? あんたらが何か修羅場になってるっぽいから、入っていくのもどうかなって思っただけよ」
「やや、そこはさ、毅然とした態度でこう、なんつーか、お茶をお持ちしました的なノリで――」
面倒な奴らだな。
「痴話喧嘩は他所で頼むよ」
「ははー、言われてやんの!」
「いや、言われてんのあんたも同じだし……、てか、あたしらそういう関係じゃないから。注文ちゃんと取ってなかったけど、二人ともアイスティーでいいでしょ?」
「ああ。で、ソル、話ってのは一体何なんだい? ラストサパーのことなら、俺が奢ってやらなくもないぜ」
「そう、そりゃいい。じゃあ、フライドチキンとガレット、ボルシチ――ああ、あとライ麦のパンにおでんだ。ついでに一週間の猶予が欲しいね」
……何だか、凄い組み合わせだ。
そもそも、こいつ何人だよ。
「あ……、おでんとボルシチで汁系のものが被るな……」
「待った! 一週間の猶予ってのはどういうことだ」
「あ? 決まってんでしょ。俺があのクソガキブッ殺すまでの間、俺を生かしといてくださいお願いします何でもしますからー! ってことだよ」
「そんなことが容認されると?」
お嬢がまた殺気立ってきた。ソルはどうも、こういうことをわざとやっている節がある。無意識か有意識かは別にして。
「それを決めるのは、お前らのはずだ。予想だけど、大体のことは任されてるんだろう」
……何故かは知らないが、お見通しらしい。
「さて、どうだか」
「隠すなよ。俺は知ってる。公安の元同僚は、俺を自分達の手で殺すのが怖いのさ」
「怖い?」
「忌避的な感情だよ。俺はあいつら皆と仲良かったからな。友達を殺したいと思う奴なんて、そうそういないだろう?」
「……公安0課だぞ? あの、マーダーライセンスを持った――」
「しかし、人間だ。倫理観もある。例えば、そこにいる、セレーネ24歳――」
「歳言う必要ある!?」
「これまでに殺してきた数は三桁をゆうに超えるが、同僚が死んだ時にはとてもとても悲しんだりする。俺が死んだりしたら、きっと大泣きするだろうな」
「二人ともこれ本気にしないでね。こいつちょっと妄想癖があるから」
「ゲフン、ともあれだ、事を一任されているであろうお前たちに、一週間だけ猶予を、とね。一週間後にはちゃんと倒す機会くらいはやるからさ」
ソルは、セレーネが運んできたアイスティーを一口飲んでから、常備されていたスティックシュガーを五本も入れて、さらにもう一本を破いてから口の中に入れた。
「あっま!」
「……まあ、お嬢、俺は恐らくだけどこの二人には勝てない。恐らくお嬢も勝てない。だからこの条件を飲むってのはどうだろう。今、俺達が殺されて困るのは俺達だけじゃない」
ICPOから出向した刑事が殺られたとなれば、当然、公安も重い腰を上げざるを得ない。そうなれば、こいつらは今よりも危険な状態になるわけだ。
というのは建前で、ぶっちゃけ俺はまだ死にたくない。
「おっ、話わかるねぇ。――あ、名前聞いてなかったけか。本名でいいぞ」
「どういう肩書きを聞きたいんだ?」
「一番ビッグなやつ。大丈夫! 俺、こう見えて口硬いから」
「イ・ウー
この肩書きで名乗るのは久しぶりだ。そもそも、口にするのも憚られるようなものだからな。
「ははっ、そりゃあビッグネームだ」
「よせよ、イ・ウーつっても、俺は強いほうじゃない。……お嬢も、自己紹介したらどうだ?」
「…………ICPOの、銭形幸菜、警部です」
口ごもりながらも、素っ気無くそう答えた。
「若いな。課長にも言われたろ」
「ええ……」
「ん、俺は見た目で人を判断しない。二人とも、至って常識的な人間だ。そんな二人だから、頼もうってんじゃないか」
「……一応、何故あの少年を殺そうってのか、聞いていいか」
「一言で言えば――正義感、かな?」
「白々しい……」
お嬢が苦言を呈するが、俺は、むしろその先が聴きたくなった。
「続けろ」
「――俺の彼女が殺されたのは、知ってるだろ? いや、完全に偶然だったし、恨んでもいる。実際、私怨のせいでないとは言えないよ。……時間あるかな? 愚痴に付き合ってほしい」
ソルは時計を見たかと思うと、唐突にその提案をしてきた。
ことのあらましを聞けと言うのだろう。
「お嬢がよければ」
「――ハァ、わかりました」
「うん、決まりだな。じゃあ、まず、あいつらの話からしようか。うん、あの六人の話だ。ま、今じゃ一人だけになっちゃったんだけどさ! ハハッ!」
ソルは少し気をよくしたのか、テンション高めに話しだした。
「俺は、公安ではロメオの仕事をしていたんだ」
ロメオ、男版のハニートラップを使った諜報員のことだ。
「そこで偶然寝た女、それが彼女なんだが。本当に偶然、子供ができた。彼女自身、極普通の一般なピープルだったから? 俺も彼女を愛していたし、結婚しようとか考えていた矢先に、あの事件だ」
聞いてみたら、やはりというか、何というか、ハードな話だな。
「事件当時、中学生のあいつらは酒を飲んでいた。どうも、地元でも有名な悪ガキらしくてな。ここら界隈の言葉で言うとDQNってやつだな、うん。そいつらは、酔って家に押し入った」
「ソル……」
セレーネが、言葉を遮るように彼の名前を呼んだ。
それ以上、いけないということか? しかし、気にせず続けるようだ。
「加害者らは腹部を数回に渡って蹴り、その後――」
「ソル!」
ダンッ!!
ソルが長机を殴打した。飲みさしのカップが高い音を立てたのも同時に聞こえた。
「自前のナイフで腹部を裂き、胎児を――ッ!」
すると、彼は急に口を押さえて、外へ出ていった。
「あらら……、あいつこの話するとこうなっちゃうの、わかってるはずなんだけどな。衝動ってやつ? それで、あんたらどうするわけ?」
「一週間、だろ。俺達にそうする理由はない。例えば、今ここであんたから殺して戦力を減らすっていう手もあるしな」
「あー、そういうのパス。あたし即、逃げるから。前金で米ドルで五十万、きっちり頂いてるしね」
結構もらっていた、というか、パートナーではなかったのか。
「というかな、決定権は俺にはないよ。そうだろ? 警部」
「…………」
お嬢は、未だに口を閉ざしたままだ。
判断をしかねているというよりは、状況についていけてないというか……、いや、そうではない。何か思う所があるのは、間違いないようだが。
そうしている内に、ソルがよろけながら部屋に戻ってきた。
ちゃんと口を濯いできたらしく、異臭はしない。
「俺は、性善説を唱える気はない。生まれつきの悪人だっているはずだ。理解しろとは言わないが、あいつらは、生きてちゃいけない人間だった。そうだろ? 法は奴らを裁けない。なら、誰が裁く」
「それが、お前の正義か?」
「軽蔑してくれて構わない」
「いや……、悪くない。むしろ、いいよ」
素直にそう思った。目には目を、っていうのは、元軍人としてもかなりしっくりくるんだ。悲しいけどな。
「英介!?」
お嬢が俺を非難するように見つめてくる。
「お嬢、この報復は、最早理屈じゃない。俺はあくまでお前の指揮下だが。心情的にはこのニンジン頭に一票だ」
「……一週間後には、お縄につくと確約しますね」
「ソルはね。あたし、この金でアメリカに移住するから」
おおう。何という……、不二子おばさんか、こいつは。
「ああ。確約しよう」
「だとしても……」
お嬢は、まだ判断に困っている。
「それに、だ。俺は、英介お兄ちゃんのこと気に入ったぜ。弟子にとりたいくらいだ」
「おいおい、勘弁してくれ。お兄ちゃんはさ。な、どうだ? マイシスター。お前の毛嫌いする犯罪者がこの世から一人減って、さらにもう一人は豚箱の中だ。俺は賛成だぜ」
「そうだよ。差詰、お前らは善い警官と悪い警官ってとこだ。なあ兄妹!」
やっぱり、こいつと俺は似ている気がする。
喋り方、考え方、または、違うものか。多分、俺があのような立場だったら同じ選択をするのだろうな。
「ああ、もう! わかりました! 今日のところは帰ります」
「はーい! ありがとうございまーす! ではでは、ご主人様、お嬢様、ごきげんよう」
ソルは途端に上機嫌になって、俺達を部屋から追い出そうとした。
「っと、ご主人様の方は、明後日に飯とか、どうだい?」
「ああ? 何でまた」
「気に入ったんだよ。お前さんのこと。……つーかな、ちょっと言いたいこととか、あるわけよ」
「……? まあ、いいけど」
すると、お嬢がジト目で、
「犯罪者と食事の約束ですか。いいご身分ですね」
などと言うから、たまったものではない。実際、俺もアウトローみたいなものだし。
「観光でもしたら? ここもそうだけど、浅草とか、外人には人気でしょ。メイド喫茶とかも初めてみたいだったし。お嬢ちゃんは外人でしょ?」
「あなたまでお嬢ちゃん呼ばわりですか……」
「え、小学生じゃないの?」
「自称・高校生だ」
「嘘!?」
「……英介。出ますよ」
「あ、ああ、オーケー、行こうか。どうせ、秋葉原にいる限りは監視されてんだ。逃げようなんて考えんじゃねえぞ、ソル」
「サー! イエス、サー!」
「M14でも背負ってろ」
先に席を立ったお嬢の後ろについて、俺も部屋を去った。
実はセレーネがちゃっかり紅茶分の伝票を置いていたのだが、空気に合わせてそそくさと退席して、誤魔化してやった。ざまあみろ、だ。
というか、俺は口つけてないし、そもそも頼んですらいないし、大丈夫だ。問題はない。
平日の秋葉原は、車道が解放されてはいないので、あまり雑然とした雰囲気は感じなかった。それにしても、アニメの垂れ幕やポスターなどは目立つが。
「それで、一週間だ。一週間の猶予の間、何もしないわけじゃないよな?」
「当たり前です。…………アンジェリア、帰りますよ」
お嬢は帽子のツバの部分を人差し指と親指で摘み、それだけ呟いた。
この野郎、帽子に通信機を仕込んでいたな。用意のいい奴め。
「少し、待ちますよ。アンジェリアが車を回しますので」
「ああ……」
そして、何も話さないまま五分後。
お嬢は必要なこと以外は話さないから、こういう時に困る。
「……あれですね」
お嬢が指さした先には、こちらに走ってくる白いバンが一台。
二人乗りで、窓にはスモークがかかっている。――フルスモークだ。違法改造車じゃないか。
「いや、あれ、犯罪者御用達の……」
「以前、銀行の襲撃に使われたものですが。警察の備品として登録されていたので、借りてきました」
「あ、ああ……」
路肩に止められた車を改めて見て、やはりまずいな、と思った。
絶対警察に引き止められる。警察が警察に捕まるとか洒落にならない。
「警部、お待たせしました」
「ご苦労様。このまま公安までお願いします」
そう言って、お嬢はバンの助手席に乗った。
「……俺は?」
「ああ……、そうですね。私が、降りましょうか」
「それには及びませんよ。警部。荷台が空いてます」
「わーったよ! もう俺は知らないからな!」
警察の職権濫用。汚職をしない警官はいい警官だと、彼女は言っていたが、彼女自身が悪い警官だったというわけか。
俺は渋々と荷台に乗り込んだ。軍隊の移動車両に少し似ている気がする。
この光景……、見覚えがある。いつだろう。確か、イラクに行っていた頃のような。
そう、イラクに出兵していた時……、両脇にも何人か同じような格好をした兵士がいて、全員が年端もいかない奴ばかりで――
「英介? どうかしましたか。変な顔をして」
助手席からこちらを見ていたらしいお嬢が、俺の顔を見て何かを察したらしい。
「いや、少し、気になることがあって。――ああ、お前らとは関係ないから、気にしないでくれ」
「わかりました」
そういえば、夢で、見たような……
†
「は? テスト……?」
「そうよ、テスト」
翌日、学校に着いてからアリアにそう言い渡された。
昨日までお嬢警部に付き合っていたせいで、すっかり忘れて――いや、元から興味なかったから、単に知らなかっただけだな。
「午前中は通常テスト、午後からはスポーツテストよ」
「マジかよ。ばっくれるかな」
「英介、お前単位とか大丈夫なのかよ」
キンジが英単語帳を見ながら質問する。その顔には、はっきりと焦燥の色が見て取れた。
「俺はアメリカで取ったやつが互換が利くから、別に受ける必要ないんだよな」
少年兵時代に大学までの勉強は終えた。ほとんど寝ていたため、覚えていないが。
通常科目は前述のそれが、強襲科の単位については訓練したものが単位として認可されるらしい。ただ、出席日数の関係で、卒業は通常と同じだ。まあ、卒業する年までいるかどうかは、わからないが。
「ちぇ、単位に困ってるのは俺と武藤くらいか」
「喋ってる暇があったら勉強に勤しみたまえよ、キンジくん」
「言ってろ」
そうすると、キンジはまたブツブツと英単語を暗記しだした。
「英語を勉強しようって、気がしれないわね」
「俺らは母国語みたいなものだからな」
「……ところで、あんた理子とは――」
「察してくれ」
「そう、ね……」
俺と理子は現在、同じ教室内にいるものの、それぞれ別の相手に会話している。
一度廊下ですれ違ったりもしたが、無視したし、されもした。
「そういえば、一昨日あたし達のこと盗聴してたでしょ」
キンジがその言葉に少し反応するが、やはり何も言わない。
「残念、盗視もしてる。それで?」
「別に、咎めるわけじゃないけど、やっぱり、その――、こ、こういうのはどうかと思うわ」
「こういうの?」
「物事は元に戻ろうとするものよ。犯罪者が現場に戻るように、これから受けるテスト的に言えばバネに復元力がかかったり、船が真っ直ぐに浮かぼうとしたりとかね。別れたらヨリを戻したくなるって、そういうものでしょ?」
つまり、アリアは俺と理子に元の関係に戻れというのだ。関係の解釈と、下手な例えはともかくとして。
「恋愛なんてくだらない。お前の台詞だ。つーか、俺とあのクソビッチはそういう関係じゃない」
「そのうち、冷戦が始まるわ。昼にやってるドラマみたいなやつ。ドロドロしてて……」
「女の腐ったようなのだ」
「男女差別」
「慣用表現だ」
「ていうか、意味ちょっと違うわよ」
「ふぅん……」
アリアに日本語で負ける日が来るとは。情けないぜ。
そして俺は、午前中のテストを終えて、午後のスポーツテストに臨んでいた。
これは全学年が合同でやっているため、ライカ達一年生組ともかち合う。
俺を見つけるなりライカがこちらに駆け寄ってくるので、アリアの視線が痛い。
「ども」
「アリア先輩、こんにちは」
あからさまにアリアだけに声をかけてきた間宮あかり。なんだよ。そんなに俺のことが嫌いか? アンジェリアと同じ雰囲気を感じるぜ。
「丁度いいわ。ちょっと測定に行ってくるから、あかり、銃預かっててちょうだい」
「はーい」
「次元先輩は、いいんですか?」
「俺はもう終わってるから」
「そうですか……」
すると、ライカは俺の格好――ジャージに帽子だ――を見ながら、口を押さえて笑ってきた。
「ビハインド・エネミー・ラインのサシャだってジャージだったじゃないか」
「ええ、そ、そうでしたっけ? くくっ。いや、ほんと先輩服のセンスどうにかしたら、完璧なのに、あはははは!」
「言いやがったな。じゃあ、今日はスナイパーライフルの訓練に変更だ。レキ並みの精度を出すまで帰れないと思えよ」
「え……!?」
絶望感丸出しのライカの声が響く。
「あらあら、お姉様。薮蛇でしたわね」
相変わらずちっこいライカの妹分・島麒麟もいる。
「お前もやってみるかい?」
「そういうことはお姉様にお任せしておりますので」
「じゃ、お姉様は狙撃の嗜みくらいはないとって、思わないか?」
「まあ、そういうことでしたら、私もお手伝い致しますわ」
「え、マジ?」
「マジですの」
「ざまあないぜ。じゃあ、放課後に狙撃科の第九レーンだからな」
「へーい……」
そして、放課後。
ライカの教練のため、俺は狙撃科の地下にある第九レーンまで足を運んでいた。
レーンの長さは約1km。50m毎に動く的が設置してあるすぐれものだ。
今回ライカ用にチョイスしたのは、M40A1。ボルトアクション銃だ。狩猟用のM700を軍事転用したもので、陸軍、海兵隊、我らがSEALと幅広く使われている。最近は少し押されているが、まだまだ傑作の呼び声高い名銃だと思う。
ライカはボルトアクションのレバーを見ただけで嫌な顔をしていた。
そして、そんなライカに見せつけるように俺が持ってきたのは、以前ツァオツァオから安く譲ってもらったSR-25。こちらはセミオートマチックだ。M16を改修した銃で、セミオートながら中々の精度を誇る。因みに、正規の品ではない。
スコープは日本製の可変十三倍ものを調達した。
「よし、じゃ、今回の特別講師のレキ――は、どこ行った?」
丁度測定が終わったレキが運良く現れたので、誘っておいたのだ。案外、ノリのいいやつだと思う。
「……ちょっと待ってろ」
辺りを探してみると、先ほどの位置からは死角になる場所で、レキが伏射の姿勢を取っていた。しかし、ご自慢のドラグノフは持っていない。エア狙撃、そういうのもあるのか。
「そら、行くぞ、レキ先生」
「はい」
本当に、一体、何をしていたのか。レキは立ち上がり、ライカの下へと歩き出した。
俺も比較的暗い室内に注意しながら、たまに薬莢を踏みつけつつ歩く。
戻ってみると、ライカが銃を適当に弄っている。
「撃てそうか?」
「全然」
「じゃ、講師のレキだ。よろしく」
「よろしくお願いします」
レキは無表情でライカを一瞥すると、同じように「よろしくお願いします」とだけ言って、自身のドラグノフを持ち出した。
「しかし、私がいなくとも、英介さんだけで十分だと思いましたが」
「レキのスナイプを直に見せたかったのさ。これから、ゼロインするけど、お前もドラでやるか?」
ゼロイン。平たく言えば、銃の照準を調整する過程だな。
「いえ、一日に一度と決めているので」
「そうか」
狙撃手っていうのは、妙に拘るからな。今のように、特に無意味に思えたことでも、彼女にとっては重要なことなのだろう。それが験担ぎと言うやつもいれば、特に意味はないというやつもいる。正直、扱いづらい連中だ。
俺も軍属時代は狙撃手をやっていたが、どうにもあの人種は理解できなかった。俺は根っからの狙撃手ではないということなのだろう。
「では、ゼロインに関して――知ってるか?」
「少しは」
「じゃ、25mで取るか」
このあたりは武偵高の全てのレーンに共通していて、25m先には丁度ゼロイン用のターゲットがボタン一つで立てられるようになっている。丁度、7.62mmNATO弾の最初の交差距離がそのあたりだ。
「銃をバイポッドで固定して――そうだ。25m先にマス目がついた黒い点が見えるだろ」
ライカを射撃レーンに伏せさせて、目標を指示する。
「はい……」
「射撃用意」
「すぅーっ…………」
「撃て」
俺の声に半秒ほど遅れて、ライカのM40からマズルフラッシュと甲高い音が響いた。
「次弾装填」
ライフルからカチャ、という小気味のいい音とともに、薬莢が排出された。実はこれ、集めて購買に持っていくとちょっとした小遣いに変わる。素行優良者の特権みたいなものだ。
狙撃されたターゲットをポインティングスコープで確認してみると、左上に少しそれていた。まあ、こんなものか。
「残り全て撃ち尽くせ」
「了解」
ライカの撃った弾は計五発。ほとんどが左上にそれている。
「リロードして、レティクルを右下にニクリック」
彼女は言われた通りにスコープのツマミを回す。
すると、レキがこちらへ寄ってきて、ライカの足首を踏みつけた。
「!?」
ライカが驚いてこちらを振り返るが、俺は首レーンに向けてを動かして、さっさとしろと伝える。
俺も教官によくやられたよ。足から爪先までを、地面に密着させるようにしないといけないんだよな。ぶっちゃけなんでなのか知らないけど。
「狙撃手は常に一定の姿勢を保つ必要があります。地面に体を付けた状態を慣らします」
へえ、数年越しの真実だな。というか、容赦ないね。お前。
「わかるぜ。俺もイラクではずっと姿勢だったからな」
「うへぇ」
その後、今度は右下にずれたのでさらに修正し、きちんと中央に中るようになった。
「お姉様ー!」
ライカが三つ目のマグに挿し替えたあたりで、麒麟がこちらへ走ってきた。
抱えたタッパーの中には、輪切りにしたレモンが蜂蜜に漬けてある。所謂、レモンの蜂蜜漬けというやつだ。
「あれは、まさか、伝説の……」
「運動部の活動が一段落着いた段階で差し入れされる嗜好品と伝えられるものです」
レキ。お前やっぱり意外とノリいいな。
「いや、レモンの蜂蜜漬けでしょ?」
「我が弟子ながら、ノリが悪いぜ」
「そ、そうですか……」
「まあ、お姉様、後輩からこのような差し入れをされること自体、世の男子生徒の憧れですのよ?」
「……そうなんですか?」
「さあ」
「てか、あたし男じゃないんだけど」
「そう! お姉様は乙女ですの」
「いや、そういうわけでも――って、え、何ですかこれ。あたし弄られパターン?」
「じゃあ、十五分休憩だ。レキ、ちょっと遊ぼうぜ」
「わかりました」
俺はレキを連れて射撃レーンの前に二人で並ぶ。
「ターゲットは1kmから500m先の間にランダムで出現させる。左右に移動もする。先に撃ったほうが勝ちで、勝ち数で勝負だ」
「えー、それって、先輩に有利なんじゃないですか? SR-25とドラグノフじゃあ勝負になりませんよ」
「そんなこたないぜ。それに、これは遊びだからな。そうだろ、レキ?」
「はい」
「じゃあ、始めるぞ……」
二人して伏射姿勢をとった。眼前にスコープを据えると、既にいくつかの的が既に動いている。
「お先にどうぞ」
俺がそう言った瞬間にはレキは発砲していた。
どうやら、俺のスコープ外の的に当たったらしく、金属音が響いた。
負けじと適当な的に照準を絞って撃つが、レキの射撃レートの方がまだ高い。
極めつけはワンマグ使い切ってからのスペツナズ・クイック・リロード。ロシア系の小銃に見られるマガジンロックに新しいマグを引っ掛けて使用済みを弾き、そのまま固定するという赤い人々が生み出した脅威の技だ。
そもそも、西側規格の小銃が「挿れる」とかそういう感覚であるのに対して、東側では「引っ掛ける」という感じがある。あくまで、個人的な感想だが。
こうなったら……!
俺は、レキが狙いそうな的にアタリをつけて、耳を澄ます。
そして、彼女の呼吸の切れ目に合わせて――
「スゥッー――――」
少し斜めに弾丸を放つ。
そして、俺の放ったNATO弾は、見事にレキのラシアン弾に命中し、大きくその軌道を逸らした。
…………レキを始め、女性陣の視線を感じる。
勝てばよかろうなのだ、っていう名言を知らないのかよ。
「先輩……、せこいです」
「お姉様、むしろあてる技術を賞賛すべきでは?」
いいこと言うじゃないか。
俺達は、その後も順調に的を射抜いて、お互いに点数を数えていった。
†
「先輩、ズルして負けるとか……」
「格好がつきませんの」
「うるせーな、結局レキだって弾いてたじゃねぇか」
結局俺はレキに惨敗して、最高クラスの狙撃手の実力を思い知った。
ドラグノフであの精度はおかしい。人間業じゃない。
その後、今度はライカにまた的を狙わせようと思ったのだが、レキが「一朝一夕でできるものではありません」と言うので、まあ、最もな意見だったし、それ以前に憂さ晴らしのつもりだったから、今日は止めにした。
「俺はもう帰るよ。明日も色々あるしな」
そう、色々と……
「片付け、あたしがやっときますね」
「頼むよ」
俺はそれだけ言って、後輩に丸投げする形で帰った。
†
ライカと別れて家に帰って、銃をロッカーに入れる。
理子がいた頃は、雰囲気が悪いとか言われて置けなかったものだ。
晩飯、どうするかなぁ……
冷蔵庫にはまだまだ食材はある。料理は趣味じゃないが、腹が減ってはな。
空きっ腹には――酒だ。運がよければ、明日は酔いが残ってソルに会わずに済むかも……、というわけはないよな。
冷蔵庫には、ワインが一つ。ウォッカが一つ。後は、食材が諸々。
ワイン――キャンティ・クラシコ・リゼルヴァ・マキャヴェリ――を出した。
グラスは、どこだったか。
食器棚を探していると、質素なワイングラスが二つ出てきた。
丁度、二つ。嫌な感じだ。
一つを取って、濯いでからワインを注ぐ。
台所に立ったままグラスに口をつけた時。家のチャイムが鳴る。
「…………」
こんな時間に、一体誰だろう。
玄関で外を覗いてみると、M40を肩にかけたライカが所在なさげに立っている。
「どうした」
「銃を、忘れてましたよ?」
「ン、ああ、言い忘れてた。お前にやるよ」
「え!? いや、頂けませんよ。こんな高いの」
「いいって。つーか、わざわざ鳴らさなくても、どうせここの鍵持ってんだから、好きに入ればいいぜ。俺の個室以外な」
「男子寮にですか?」
それも、そうだな。男子寮に入り浸る一年女子……
「じゃあ、お邪魔しても?」
「理子はいないぜ。それでもよけりゃ、飯作ってやろうか」
「へへ、やりぃ」
ライカは、玄関に入ると、傘立てに銃を置いて靴を脱いだ。
リビングで待つように言って、俺はまた台所に立つ。
調理といっても、簡単なことしかできない。パスタを茹でたりとか、フライパンで焼いたりとか。
「先輩、料理するんですか?」
ライカが、リビングから聞いてきた。
「食いたいものがあったらな。正直、面倒臭いし、誰かがやってくれるに越したことはないよ」
「手伝いますよ」
ライカがソファを乗り越えて台所まで来る。
「何だ、できるのか」
「中学の家庭科レベルには」
「それできるって言うか?」
「成せばなりますって!」
「じゃあ、手伝ってくれ。俺は、えーっと、そうだな、パスタを茹でてるから、そっちの棚の中から好きなソース出して、レンジにかけといてくれ」
「へーい」
ライカは言われた通りに、棚からカルボナーラのパックを出して、レンジに入れた。
それから、手際よく皿を出している。
「そういえば、食器も色々ありますけど、全部二人分しかありませんよね」
「…………お前、中々目敏いね。まあ、気にするなよ。それより、リビングにワインが置いてあったろ? 取ってきてくれ」
ライカは訝しげな顔をしながらも、飲みさしのワインを取ってきた。
俺はそれを飲み干し、また注ぐ。
「お前も飲むか?」
「未成年の飲酒と、その扇動の罪が三倍になると、どれくらいになるんですかね。先輩が強引で断りきれませんけど」
「何だそりゃ」
俺はグラスをもう一つ引っ張り出して、ワインを注いでやった。
「ま、あたし酒の味わかんないんですけどね」
「俺もワインはわからんよ」
ライカは、少しだけ口をつけると、よくわからないといった顔をしてから、レンジから取り出したソースを茹で上がったパスタにかけていた。
……急に、マカロニチーズが食べたくなってきたぞ。何故だろう。
「先輩? 持ってきますよ」
ライカが料理を持って、俺は彼女と自分のグラスを持ってリビングまで行き、ソファに座る。彼女は俺と対面する形で座った。
「じゃ、いただきます」
「おう」
彼女が食べている様を少しだけ観察してみた。
食べ方は、まあ普通。間宮あかり達といる時はもっと豪快だった。スピードは速い。……量が足りなかったかもしれないな。まあ、足りなければ、それなりにするだろうが。
「先輩……? 何かついてますかね」
「いや、別に。そういえば、今日はお前のじゃなくてアリアの妹分にメンチ切られたよ」
「あかりですか。ああ、なるほど……」
「わかるのか?」
「あかりはアリア先輩リスペクトだから、嫉妬したんじゃないですかね」
「そりゃ、キンジに言うべきだ。キンジを知ってるか? 探偵科の雑魚」
「でも強襲科では先輩と並んでSランク。時々あかりが噛み付いてますよ」
狂犬だな……、首輪をつけてもらいたいものだが。
「はは、そうか……、ン、グラスが空いてるぜ。帰れなくならない程度にしてほしいが、まあ、飲めよ」
俺はワインとウォッカのボトルを持ってきて、ライカのグラスにワインを注いでやる。
「先輩、それ、そのまま飲むんですか?」
「そうだけど、それが?」
「いや、普通何かで割ったりとか、するんじゃないかなって」
「酔っ払えりゃいいんだよ」
「うわぁ……」
新しいグラスを用意するのは面倒なので、ウォッカをそのままワイングラスに注いで飲む。
喉が焼け付くような感じがするが、こういうのでいいんじゃないかな。
「先輩、酒強いんですね」
「そうでもないさ。案外、お前の方が強かったりな? 白人の血が入ってるだろ」
「わかるんですか?」
「親父さんはアメリカで一度見たことがあるぜ。ヒーローってのはかっこいいよな。まあ、あの人は日本人だけど」
彼女の父親はアメリカでヒーローをマジでやっている。実力もかなりのもの。
日本でヒーローと聞くと今一つ想像できないが、アメリカのように凶悪犯罪が蔓延していると、個人や法人の武偵が名を上げる機会も多い。
それが高じて、漫画のようなヒーローが日夜飛び回っているわけだ。
「パパは、そうですね。まだ、私なんて足元にも及びませんけど」
「憧れるかい?」
「あなたと同じくらいには」
「それは……、光栄だな」
冗談だと思うが、まあ、好意的に受け取っておこうか。
ライカは少し辛辣な表情になった気がする。
「どうかしたか?」
「いえ。――あ、あたしにも注いでくれますか?」
「多分、お前には不味いぞ」
「酔っ払えるんでしょ?」
……まあ、島に言えば迎えに来るか。
「じゃあ、まず携帯電話を提出しろ」
「へ?」
「島に電話するんだよ。お前が潰れたらあいつに任せる」
噛み付かれたら後日文句を言ってやろう。
素直に渡された携帯電話を使って、島麒麟に電話をかける。
3コール程の後、彼女は電話に出た。
『お姉様?』
「俺だ」
『きゃっ!』
耳元でクソ周波数の高い大声を出された。耳鳴りがしそうだ。
「今、俺の部屋でライカと飲んでんだよ。こいつ潰れたら車回してくれるか?」
『と、殿方の家で二人きりで!? 次元先輩! いいですの? お姉様に何かあれば、私、例え魂魄百万回生まれ変わろうとも、恨みはらしますわよ……!!』
「何かが起こらないためにお前に頼むんだろうが」
『…………信用しておりますのよ』
「大丈夫だ。面倒になったら連絡するから、まあ、その時は頼むわ」
『……お姉様にかわって頂けますか?』
「いいとも」
携帯電話を渡されたライカはげっそりした顔で通話に出ると、覚束ない返事を繰り返してから電話を切った。
「女房からのお許しは?」
「ま、まあ、オーケーみたいです」
これ以上は聞かないほうがよさそうだな。そっとしておこう。
「じゃあ、そら、酒飲みねえ」
ライカは、ウォッカの入ったグラスを傾ける。
一口目で既に顔を顰めていたが、その内に追撃の二口、三口で飲酒量は加速した。
というか、加速度的に増している。
「お、おい! 飲み過ぎるなよ!」
「へ? あ~、大丈夫っすよ。これくらい」
急にアルコール度数の高い酒を飲んだせいか、呂律が回らなくなってきている。
「ねぇ、せんぱぁい! 理子先輩とは、最近どーなんですか!?」
「ああ!? どうってお前――」
「好きなんですか!?」
ライカはソファから身を乗り出した挙句、体制を崩してこちらに倒れるようにして座った。
「待て待て、落ち着け」
「どうなんですか!?」
「…………好きじゃねーよ」
俺の頭に、疑問符が浮かんだ気がした。
ライカは、落胆したような諦観したような、それでいて嬉しそうな顔で言う。
「……そうですか」
「もう、いいだろ? あいつ、呼ぶぜ」
そう言うと、ライカは、赤い顔で「もう少し、いいじゃないですか」などと言って、腕にしがみついてくるので、俺は目を手のひらで覆って、参ったな、という表情になる。
「せんぱい」
子供のような声で呼ばれた。
「帰りたくないです……」
「そうか」
「ね、いいでしょ?」
猫撫で声で尋ねられた。
「帰れ、酔っ払い」
ライカは、それを聞くと、黙って俺の腕にしがみついたままになってしまった。
ううん、どうしたものか……
「よ、ライカ。酔ってない時なら考えてやるよ。だから、もう帰ろうぜ」
「……」
「ライカ……?」
「…………」
こいつ……、寝てるのか。この一瞬で。
「ハァ……、電話しよ」
携帯電話で島を呼び出すと、五分で着くと言って切られた。扱い悪くないか?
五分間、このままか……。腕にしがみつかれているから、色々当たってるんだよなぁ。役得ではあるけど、最近のことを考えると体に毒だぜ。
しばらくすると、島から電話がかかってきて、下りてくるように言われた。
俺はライカを両腕で支えて――理子的に言うと、お姫様抱っこの状態だ――下まで搬出する。
駐輪場の前あたりまで降りたところで、島がミニクーパーに乗っているのを発見した。
携帯電話を弄っているのを窓ガラスをノックして、こちらに向けさせた。
すると、彼女は車から出て、ボンネットに座った。
「随分と人相の悪い王子様ですこと」
「酔っ払いの相手は疲れるぜ。こいつ、思った以上に弱かったからさ」
「何か言ってましたの?」
「泊めてくれって、せがまれたよ」
島は怪訝な顔をして「断りましたの?」と聞いてきた。
「当たり前だろう」
「それでいいような、悪いような……、複雑な心境ですの」
「悪いのかよ」
「お姉様は、私なんて比較にならないくらいに乙女ですのよ」
「…………」
俺は、その言葉を聞き流しつつ、ライカを後部座席に詰め込んだ。
「では、次元英介先輩。姉の問題は妹の問題、非礼をお詫び致しまして、この場を失礼しますわ」
スカートの端を摘んで、可愛らしくお辞儀をしてから、車に乗り込んだ。
俺は、窓を開けているところから、彼女に少し聞いてみた。
「ライカは、悪い男に引っかかったかな?」
「全くです。お姉様は私のものだといいますのに。もし、頂かれる場合には事前にご一報下さいませ」
「ハッ、お前は悪い女だ」
「お互い様ですの。では」
そう言って、島は帰っていった。
俺は、帰ってから飲み直し、ソファで眠りこけた。
今回あんまり話が進んでないんですよね……最近また下手になったような気もしますし(いつもの
三巻分は少し長めになるかな、と思っているのですが、まあ、適当プロットの行き当たりばったりですので、生暖かい目で菩薩のような心を持って見ていただければと思います。