緋弾のアリア〜リュパンの懐刀~※新規執筆版   作:高所作業

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言い忘れていましたが、この二次創作は原作知識があること前提で読んで頂いた方がいいです。見ているとお分かりになると思うのですが、色々省略していますので。


第二話『友人と戦姉妹』

 

 朝、自室で目が覚める。

 昨日は、理子に散々奢らされた後、家に帰ってから即行で寝たんだった。

 理子がベッドに侵入してくるから、「そんな気分じゃない」と追い出したが、寝巻きのシャツの襟に、薄いルージュが付いていた。

 当の本人は既にいないが、あの野郎、添い寝でもしたのか。

 念のため、下半身を確認してみるが、変な様子はない。

 さて、今日から、一日遅れた新学期だ。

 俺は、洗面所で一通りの支度をしてから、制服を着る。

 武偵高の制服は、ダークブラウンのジャケットにホワイトシャツと赤のネクタイ。

 俺はそれに、黒い帽子をかぶるもんだから、あまりセンスがよろしいとは言えない。

 普段の仕事着が黒のジャケットとスラックスだから、それに合わせているんだが……

 鏡に映った自分を見て、やはり、茶色の帽子を買おうか。等と思ってしまうのであった。

 

 †

 

 俺は、ずっと放置してあった防弾仕様の日産スカイラインGT-R34後期型の調子を見て、新しくガソリンを入れて、それで学校へと向かった。

 誰だったろうか、誰かが「悪い奴は大抵デカくて頑丈な車に乗る」と言っていたが。いや、そもそも善悪の尺度は人それぞれだ。考えないようにしよう。

 久々に走るメガフロートの道は、前に走った時からまた鋪装されたようで、随分滑らかだった。

 車輌科の駐車場に車を停めてから、教室へ向かう。

 確か、2-Aだったな。俺のクラスは。

 歩いている途中にも、何人か顔見知りの奴らに会った。

 皆それぞれ、一人一人違った挨拶をしてくる。

 こうしてみると、本当に久しぶりだな。

 そして、教室棟の2-A教室の扉を、無造作に開ける。

 まだ登校時間があるせいか、生徒は疎らだ。

 俺は、その中の一人――珍しく朝早くから来ている、一年からの友人の『武藤剛気』に声をかけた。

「よお、武藤、俺の席どこか知ってるか」

「ああ? 自分の席くらい把握しとけよ――って、英介じゃねぇか!!」

 武藤が声を上げたことで、俺の存在がクラス中に知れ渡る。

 今まで他のクラスメイトと話していた奴らも、俺のことに気づき始めたようだ。

 俺を知っている人間は駆け寄ってきて、知らない人間は「誰?」という風に聞いている。

「お前、いつ帰ってきたんだよ! 連絡くらいしろっての」

「いや、昨日帰ってきたんだが、理子に捕まってな。盛大に金を使わせられた」

「そ、そりゃ災難だったな。まあ、何にせよ、無事で何よりだぜ。帰還パーティーでもやるか!」

「おいおい、出張から帰ってきたようなもんだよ。そんな大袈裟じゃなくていいさ。それより、キンジと不知火は? まだ来てないのか」

「そういや、キンジはともかく、不知火が遅いのは変だな」

「お前がこれだけ早く来てるのにな」

「うっせ。――あ、お前にも、言っとかなきゃな」

「……? 何だよ」

「キンジにさ、兄貴がいたの、知ってるか」

「ああ、知ってる。遠山金一だろ。確か、ちょっと前に船舶事件で死亡したはずだ」

 まあ、死んでないんだけどな。

 実は生きていて、俺知ってるんだぜなんて言えない。

 本人からも、口止めされているし。

「なんだ、それも知ってたのか。キンジの奴すげえ落ち込んじゃってさぁ、今じゃやる気なくして探偵科に転科だよ」

「……まあ、俺がしてやれるのは普段通り接することくらいだな」

 というやりとりを少ししていると、

「あれ、英介君じゃない?」

 不知火亮が現れた。俺の友人その二だ。

「不知火、久しぶりだな」

「ほんと、随分久しぶりだよ。少し背が伸びたかい?」

「そうか? 実感無いな」

 そして、数分後。

 遅刻ギリギリで、キンジが根暗っ面下げて登校してきた。

 そして、その横に、神崎・H・アリアを確認した。

「よぉ、キンジ!」

「え――英介!」

 キンジは、俺を確認した途端、俺を確かめるように、至近距離まで近寄ってきた。

 それも、さも嬉しげに。

「お前、帰ってきてたのか! 電話くらい寄越せよな、心配させやがって」

「色々あったんだよ。……そいつは?」

 俺は、わざとアリアのことを尋ねた。

「こいつか、神崎・H・アリアといって、あー、どう説明すればいいのか……」

 すると、アリアが口を開く。

「こいつは、あたしのドレイよ!」

「……そういうプレイか」

「ちげーよ!」

「はははは、まあ、いいさ、神崎だったな。俺は、次元英介。よろしく」

「アリアでいいわ。あたしも英介って呼ぶから」

 アリアと握手をして、それから席に着く。

 キンジの横の席で、さらにアリアと挟まれる形になり座る。

 授業中、質問攻めにあってから、そして昼休み。

 俺の専攻科目は、強襲科なので、強襲科棟に向かう。

 強襲科は、俺が入学当初から在籍している学科だが、入学当初から俺が懸念していた問題を全く解決できていないようにも思える。 

 まず、薬莢がそこらに転がっている。

 ちょっと気をつけて歩けば済む話だが、部外者が転倒でもしたら一大事だ。

 さらに言えば、普通銃が使われるべきでない場所に薬莢が落ちているということは、そこで乱闘が起きた可能性が高い。

 よくよく見れば、壁には修復されていない弾痕がちらほら……

 前と全く変わっていない。それでいいのか、悪いのか。

 俺は、知り合いに適当に挨拶してから、丁度不知火がソーコムピストルを構えている横の射撃レーンに入り、銃を構える。

 俺の銃――S&WのM19コンバットマグナムだ。もうかれこれ五十年ほどは使われている骨董品で、ステンレスモデルではないものの、表面処理が剥がれて鈍い銀色に輝いている。

 俺と理子の命の次に大切な物だ。

 銃を持つ方の手を突っ張って、もう片方の手は引っ張るように。

 照星の頂点に照門の底辺が来るように調整。そこから少し上げる。

 力を入れるのは、あくまで掌から指にかけてまで。

 寒夜に霜が降るごとく、引き金を引く。

 マグナム特有の大きな炸裂音が響き、俺の腕はマズルジャンプで少し跳ね上がる。

 それを連続で六発打ち切る。

 弾丸の全ては、レーン中のマンシルエットの頭部に最初に開けた穴を貫通――

「こぉら! 何やっとるか!!」

「痛ぇ……」

 思い切り頭を殴られた。

 教官の蘭豹だ。

「ターゲットレティクルが見えんのかワレ! ええ!?」

 俺が頭部に命中させたことを言っているのだろう。

 ターゲットはあくまで、マンシルエットの肩の部分に設定されている。

 そもそも、武偵法9条という法律で、日本の武偵は殺人の罪に問われる。

「ま、まあまあ、先生、海外から帰ったばかりですから」

 と、隣のレーンから顔を出した不知火が助け舟を出す。

「ここは日本や、ボケ。……まあええわ」

 蘭豹は、そのまま去っていった。

 人間地中貫通爆弾(バンカーバスター)の異名を発揮されなくてよかった。

「……危なかったぜ」

「それにしても、相変わらずの制動力だね。流石Sランク」

「よせよ、これだけが取り柄なんだ」

「それがイカしてるんじゃないか」

「……? よくわからない奴だな」

「はは、そういえば、昨日入ってきたばかりの後輩に、強襲科のおさらいをしてたんだけど……」

「けど、何だよ」

 嫌な予感がする。

「君のことを話したら、何人か戦姉妹(アミカ)にして欲しいって人がね」

 戦姉妹。

 先輩と後輩でツーマンセルを組み、一年間先輩が指導する制度。という話だが、指導するというより、指導責任を負うってことじゃないのか。

 実際に、後輩の失敗を言及されている先輩もいるしな。

「いたと?」

「そう」

「――今日は帰る」

 単位はあるしな。

 後輩の面倒事に巻き込まれるのは、それこそ面倒ってもんだ。

 しかし、俺が早足で強襲科棟から出ようとした時――

「あ、もしかして、次元英介先輩ですか?」

 あーあ、出会っちまったか。

 俺に声をかけてきたのは、金髪の、長身の女。

 少し吊目で、勝気そうな印象を受ける。

 よく引き締まった体をしていて、いかにも強襲科って感じの女だ。

「……一年か」

「は、はい、あたし、『火野ライカ』っていって――」

「戦姉妹は無理だぞ」

「えっ!? じゃあ、もしかしてもう先約が……」

「いや、いないけどな。そういうの、苦手なんだよ」

「せめて『エンブレム』やってからだって、いいじゃないですか!」

 エンブレム。

 強襲科推奨の戦姉妹契約システム。

 お互いの合意があれば、戦姉妹として契約できるが、合意なき場合――まあ、大体先輩の方が渋るんだが――武偵高の校章が描かれたエンブレムを、三十分以内に先輩から後輩が奪い取ることによって、強制的に戦姉妹契約を果たせるというものだ。

 誰だこんな制度作ったのは、責任者出てこい――ああ、責任者って緑松校長じゃねぇか、勝てないな。

「お前、ランクは」

「Bですけど、今に上げてみせます!」

「……わかった、じゃあ、三十分だけ時間をやる。五分後くらいか、三時丁度に強襲科棟の地下演習場からスタートだ」

「ありがとうございます!」

 明るい顔になって、ライカは準備をし始めた。

 肘当てや膝当て、防弾のためかヘルメットまで持ち出してきた。

「おいおい、お前、何か勘違いしてるようだな」

「え、何がですか」

「一年生相手に銃なんか使うかよ。素手で相手してやる」

 すると、さっきの明るい顔から一転して、むすっとしたような顔になる。

「……もしかして、嘗められてます?」

「もしかしなくても、嘗めきってるよ」

「後悔しないでくださいよ」

「ハッ、こっちの台詞さ」

 二人でまで人がちらほら見える地下演習場まで行く。

 そして、午後三時丁度、俺は携帯電話のタイマーを三十分にセットして、おどけたようにライカを煽る。

「さて、どの程度か見極めさせてもらうぞ、ライカ嬢。因みに、エンブレムはさっき見せた通り、俺の胸ポケットだ。いいな」

「いいです――よッ!!」

 散々煽ったのを気にしているのか、その報復か、ライカは俺が視線を逸らした途端に、左脚で後ろ回し蹴りを放ってきた。

 せっかちな奴だな。

 そういえば、米海軍にいたとき、ホモはせっかちとかいう俗説を語っていた友人がいたな。いや、全く関係はないが。

 俺はそれを既のところで躱す。

 しかし、予想外だったのが、軸にした左足をそのままに、今度は遠心力で右手でフックを入れてくる。

 ……思っていたよりもやる奴だ。

 CQC訓練もよくやっているようだが、それ以前に対応力がある。

 脚の大技の隙をカバーするような流れで繰り出したのは、評価できる。

 さらに、彼女の目は、常に俺を見つめている。

 基本がしっかり出来ているんだ。こういう奴は、下手にトリッキーなタイプよりも手合いが悪い。

「シッ!」

 ライカは体制を立て直すと、俺に向かって軽いジャブを幾つか打つ。

 一応俺もストライキング・レンジ――お互いに同じ確率で攻撃をくらう範囲のこと――なんだけどな。打ち返すのも、気が引ける。

 というのも、ライカは中々端正な顔つきをしている。

 理子にも言われることがあるが、女に弱いな、俺。対ハニートラップ訓練は何度も受けたのに、純粋なものに対してはどうも免疫がなくていけない。

 一応、首をへし折られるのが怖いので、首を竦めてムエタイの基本的な構え、タンガードムエイで首をガードする。

 すると、ライカはやっと俺がやる気を見せたものと勘違いして、わざと隙の多い攻撃ばかりしてくるようになった。

 俺にも、何かしろということか。

 こういうの、男女の駆け引きに似ているような気がする。

 俺がどうしたものかと考えている内に、ライカは俺を容易に引き倒して、そのままマウントを取った。

「へへ、言ってる割には、大したことないですね」

 ライカが胸ポケットに伸ばしてくる手を、俺は左手で掴み、さらにそれを引き剥がそうとする彼女の左腕を、俺の右腕が掴む。

 単純な腕力で言えば、流石に俺の方があるな。

 余裕綽々といった様子のライカだったが、俺に腕力で押されているということを感じ、若干の焦りが顔に見えた。

「火野」

「ら、ライカでいいですよッ……!」

「じゃあ、ライカ。まず一つ、武偵は焦りを顔に出すべきじゃない」

「ッ……!」

「二つ目、俺が構えを取り始めてから、攻撃が大振りに偏ってきていた。俺のことを嘗め過ぎだ」

 ライカは、いつの間にか自分の胴体と平行になるまで押し戻されていた腕に、さらに表情を歪める。

「三つ目、お前、俺のこと調べずに挑んできただろう」

「それが、どうかしたんですか……!」

「俺はな、US海軍(ネイビー)なんだ。教えておいてやると、米兵っていうのは、大体の奴がマウント取られてからの復帰方法を学ぶ。こんな風にな――!」

「え――!?」

 俺は、ライカの腕を掴んだまま態勢を逆転させ、ちょっと考えたくなくなるような姿勢を取る。

 このまま俺がマウントポジションを取ってもいいが――

「終わりにするか?」

「ま、まだまだッ――!!」

 そう言うと、ライカは俺に向かって、なんと頭突きを繰り出してきた。

 キンジならともかく、俺はそう石頭じゃない。

 だから、頭を引いて、それを回避すると、ライカの額は俺の予想に反して、左肩に命中した。

「なっ!」

 そして、俺はその衝撃で、またマウントを取られる。

「~~!! ~~~~!!」

 ライカが何かを叫んでいる。 

 一体、どうしたんだ……?

 彼女の顔をよく見てみると、俺の胸ポケットに着けていたはずのエンブレムが、彼女の桜色の唇に咥えられていた。

 なるほど、それを口に咥えていたから、まともに発声できなかったわけか。

「はは、負けちまったな」

 俺が自身の負けを認めると、ライカは、ぱぁっと顔を明るくして、

「や、やったあー!!」

 子供のように手を上げて喜ぶのだった。

 その拍子に、ライカの口から離されたエンブレムが、俺の額に落ちる。

 薄く朱がかかったそれを、俺はライカの腕を離した右腕で、拾い上げ、蛍光灯に透かす。

「先輩! これで、あたしは戦姉妹決定ですよね! ね!?」

「ああ、そうだな。三日以内に私闘で負けなきゃな」

 まいったな、手を抜きすぎたか。

 いや、手を抜いたのも、俺の実力の内か。

「……でも、かなり手を抜かれちゃったなー」

「手を抜いてしまったのも俺の実力の内であるように、手を抜かせたのもお前の実力だ」

「そ、そうですか、はは――」

「んなわけないだろ。それと、早く俺の上から退け」

「え――ああ! す、すいません!」

 ライカは慌てて俺の上から退く。

「あー、しかし、やっちまったな。一年の知り合いでも嗾けてやろうか、この野郎」

「ちょ、やめてくださいよ! 折角勝ったのにー!」

「冗談だよ。というか、一年の知り合い自体お前が初めてさ」

「あ、そうだったんですか。じゃあ、今度あたしの友達紹介しますよ」

「よしてくれ、俺はそういうのは得意じゃないんだ」

「へー、やっぱり、不知火先輩が言っていた通り、ハードボイルドな人なんですね」

「……何だって?」

「え、ハードボイルド――」

「はは、わかってるじゃねぇか! よし、明日から訓練見てやるよ!」

「あ、ありがとうございます」

 そう、俺という人間は、ある人の影響でこの言葉に弱い。

 ハードボイルドに、な。

 




英介の実力は、グラフにすると凄く均等が取れている感じです。
その分、突出した力がありません。
サーヴァントで例えるなら、全パラメータAだけど、宝具を持っていない、みたいな?
伝わりにくいですかね。
わっかるかなー、わかんないだろうなー。それでは、また次回。
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