緋弾のアリア〜リュパンの懐刀~※新規執筆版   作:高所作業

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陳☆謝
不定期更新の割にいっつも金曜に投稿してると思いました?ザンネック、やっぱり不定期でした!
……何と言いますか、色々な方面で使いすぎてもう謝罪の言葉のボキャブラリーがスッカラカンなんです。許して下さいお願いしま(ryとかもう十数回くらい使いました。
もう完全に(謝罪の)ネタ切れです……(ネタをはさまないと死んじゃう病)


第七話『魔剣、お節介な奴……』

 

 

「全治一ヶ月ってところだな」

「ふざけんなよ、もっと早く治せるだろ、ヤブ医者」

「お前ね、自然治癒って言葉を知らんのか」

 俺は、救護科の知り合いの医師、『間黒郎』に、骨折した箇所や擦過傷などの治療をしてもらっている。彼とは、軍属時代からの仲だ。

 元々はイ・ウーの専属医師だったのを、束縛嫌いという理由だけで抜けた気まぐれな奴でもある。

 あの事件から、二日経った。

 警察の事情聴取と、防衛省のお偉方に金をいくらか握らされたが、まあいつものことだ。

 アリアは、結局キンジとパートナーの契約をし、これからも共に行動するらしい。

 何だ、俺がパートナーがいなくなって気が滅入ってるっていうのに。

「チッ、クソみてぇだな。クソファ○ク」

「意味被ってるぞ」

「知ってるよ!」

 キンジの奴、帰る寸前のアリアに「俺がBGMくらいにはなってやる」なんて言いやがって、面白い奴だよ。

 俺はさっき病室から抜け出して買ってきた、ペルメル・キングサイズに火を点ける。

「ここがどこだか忘れているようだな……」

「ちょっとくらい大目に見ろよ」

「お前さん――確か、禁煙をしていただろう。峰理子が嫌いだから。……ははあ、さては、フられたか。そうか、そうなんだな?」

「あんな女、こっちから願い下げさ」

「ハハハハ!!」

「ちぇ、もういいよ先生。俺ぁ病室に戻る」

「煙消してけよ!」

 

 †

 

 病室に戻った俺は、何だかやるせなくなって、帽子を顔に被せて不貞寝しようとした。

 個室だから、他人に気を使うことはないし、寝ながら煙草でも吹かしてやろうか。

 しかし、そんな俺の意に反して、来客が訪れる。

「先輩、いますか?」

 ライカだ。

「もう、お姉様、私のことを放っておいて殿方に会いに行くなんて、失礼ですわ!」

 もう一人、何だか子供のような声が聞こえる。

 そのまま、帰ってくれないだろうか。

 あくまで、俺は寝てますよ的なことを演出するために、帽子は乗せたまま、何も言わずにそのままだ。

「あれ、寝てる」

「まあ! お姉様にお見舞いに来て頂いているというのに、もう帰りましょう。時間の無駄ですわ」

「そう言うなよ、あたしの先輩なんだぞ」

「麒麟だって、お姉様の後輩ですのよ?」

「ぐ、それはなぁ……」

「おい、英介! 医務室に煙草置きっ放しじゃないか。――うん、何だ。こんな綺麗どころに囲まれて、狸寝入りしていることもないだろう」

「……黒郎、余計なこと言ってんじゃねぇよ」

「起きてたんですか!?」

「ほら、煙草だ。吸うなよ、いいか、絶対だぞ。絶対に吸うなよ」

「フリなのか」

「フリじゃない」

「そうか」

 黒郎はそれだけ言って、病室から去っていった。

「それで、ライカ、そのちっこいのは?」

「ちっこいの!?」

「こいつは、島麒麟っていって、あたしが最近戦姉妹契約した、中三です」

「お、お姉様! こんな人に関わるのはお止めあそばせ!」

「まあまあ」

「それで、何か用か。……? お前、怪我してるのか。誰にやられた」

「えっ? ああ、これは、昨日ちょっとあって」

「私達は昨日、夾竹桃っていう、ものすっごい強敵に勝利してきたんですのよ。妹のピンチに駆けつけもしないあなたとは、雲泥の差ですわ」

「ばっ、お前、警察に口止めされてるだろうが!!」

「ああ、いいぞ、夾竹桃は知り合いだ」

 そもそも、イ・ウーの同期なんだよ。

 まあ、あいつは男嫌いでかつ同性愛者だから、俺はかなり避けられていたがな。

「……全員がライカ相当の実力だとしても、夾竹桃の腕も錆び付いたもんだ」

「やったのは、あかりですよ」

「間宮あかり。公儀隠密・間宮一族の人間だったな」

「……失礼ですが、あなた、何者ですの? そういえば、お名前も拝見していませんでしたわ」

「俺は、次元英介だ。強襲科二年」

「ランクは、Sですわね」

「知ってるじゃねぇか」

「と、とにかく! 今日は、お見舞いに来たんですよ。ほら」

 ライカは、お見舞いの品をベッド横の場所に置く。

 俺は、その中から、問答無用で蒲萄取り出して、皮ごと口に放る。

「剥きましょうか?」

「いや、いい」

 皮ごと食べるのは、先代の次元の影響だ。

 俺は、彼の影響を少なからず受けた行動を取ることが多い。

 いや、行動だけじゃなく、服装とか、銃の撃ち方とか、数えだしたらキリがない。

「先輩は、どうしてこんな怪我したんですか?」

「一昨日に、飛行機の不時着事件があっただろう。あれの関係でな。遠山キンジと神崎・H・アリアも一緒だったよ」

「へー、そうなんですか。理子先輩は?」

「……ライカ。お前に一つ頼みがあるんだが」

「? はい」

「この腕が治るまで、あいつの話はするな」

 ライカは、一瞬何故なのか問い質そうとするが、俺の雰囲気で察したらしく、

「はい」

 それ以上は続けなかった。

 

 †

 

 翌日。

 片腕が使えないというのは、存外不便なもので、まず、飯を食うときに苦労する。 

 俺は手は両利きだが、片手で箸を持つと、もう片方の手で茶碗が持てない。

 暇潰しにしても、片手では本を読むのにも一苦労だ。

 そう思っていたら、そうだ、ゲームボーイアドバンスのポケモンなら、片手操作ができるんじゃないか?

 そう思ってもみたが、病室からわざわざ寮まで行くのも面倒だ。

 昨日、黒郎に頼んでいくつか本を持ってきてもらったが、英語はともかく、完全にドイツ語の古い学術書なんか読めるわけがない。

 中でもこれ。Quantum mechanics? 量子論は専門外なんだ、頭が痛くなってきた。

 唯一楽しめるのが太宰治の人間失格とはな……

 恥の多い生涯を送ってきました、ね。

 人間なんて恥だらけじゃないか。

 例えば、もし俺やキンジが主人公だったら、恥の多いというより、恥だらけの生涯だな。

「……何か、失礼なこと考えてないか、お前」

 キンジと、アリアだ。

「そう思うか?」

「……何となくな」

「あんた、しけた面してるわねぇ」

「うっせぇ。見舞いの品置いたらとっとと帰れ」

「随分やさぐれてるじゃない。ま、それはいいとして、あんたのことを色々聞かなきゃいけないのよ。場合によっては、逮捕もありえるわ」

「逮捕だあ? お前にできるのかよ」

「実力的にも、法的にもね。どうせあんたなら司法取引の一つや二つわけないでしょうけど」

「ハッ、上等じゃねぇか。腕一本で相手してやんよ」

「や、止めろよ二人共! 折角助かった命じゃないか」

「……オーケー、クールにいこう。アリア」

「そうね。じゃあ、話してもらえるかしら? あんたの立場ってやつを」

「ああ、いいぞ――」

 俺は、二人に、自分のことを大方説明する。

 所属は、イ・ウー。

 武偵殺し事件とはほぼ無関係。

 理子とは、数年前から組んで仕事をしている。

 大方のことだからな。これくらいで、いいだろう。

「ふぅん、まあ、そんなところでしょうね」

「俺は、未だにイ・ウーっていうの、よくわからないんだけどな」

「気にするな。つーか、気にしないほうがいいぞ。それはそうと、アリア、あの契約の件なんだが……」

「ああ、あれね。契約履行は二日のみだから、それだけの支払いでいいでしょ?」

「結構だ。ほら、明細あるから。持ってけ」

 俺は、あらかじめ用意しておいた書類をアリアに渡す。

 アリアはそれをパラパラと捲りながら、項目を確認していく。

「弾薬代、ちょっと高くない?」

「俺のは半自作なんだ。技術料だよ」

「そう、なら、あとで振り込んでおくから」

「了解。それで、どうするんだ。イ・ウーの俺を逮捕するか」

「……やめとく。あんたは、今回の事件の功労者だし。犯罪幇助は帳消しにしとくわ。司法的にね」

「わかった。ああ、これで、契約満了だ。柵が一つ消えたよ。今度銃を持つときは、敵になっているかもな」

「それは、マジで御免だ」

「はは、そうだな。――あー、キンジ君、席を外しなさい。アリアとちょっとヤバい話するから」

「……俺は、聞いちゃいけないのか」

「いつかは知ることになるだろうが、命を粗末にするべきじゃない。そうだろ、アリア」

 まだ話の内容も言っていない俺のフリに、アリアは察したようで。

「そうね、キンジ、あんたはあたしのパートナーなんだから、リスクコントロールも仕事のうちよ」

「へいへい」

 キンジが部屋から出ていくと、俺は煙草を取り出し、口に咥える。

 患者用の服のポケットをまさぐるが、しまった、看護婦――今は看護師っていうのか?――のお姉さんに、ライター取られちまったんだ。

「アリア、火」

「あるわけないでしょ。っていうか、あんた喫煙者だったの?」

「不良とか言うなよ? 実際不良なんだ。ここ一年吸ってなかったんだけどな」

 俺は、煙草を箱の中へ戻し、代わりにガムを口に放り込む。

「ふうん、まあ、戦争と煙草は、昔からセットよね」

「アリアも一服、どうだ。咥え煙草の女ってのも、かなりセクシーだと思うがね」

 そして、ライターを買ってきてくれ。

「遠慮しとく。妹がパイプ――まあ、チェリーの精油と綿なんだけど、それを吸っててね、あんまりいい印象はないわ」

「へぇ、チェリーの精油か。そりゃ洒落てるな」

 今度、夾竹桃にでも作ってやろう。少しは関係改善が見込めそうだ。

「それで、世間話はいいとして、あたしに用があるんでしょう。忙しいってわけでもないけど、重要な話じゃなかったら……」

「わかってるよ。話――ああ、まず、俺の当面の目標から話そうか」

 アリアは、部屋の隅から椅子を一つ持ってきて、俺のベッドの横にかけた。

「『無限罪のブラド』を知っているな」

「……!」

 アリアの表情が、硬くなる。

 ブラドは、神崎かなえにどれくらいかの罪を着せている。

 アリアにとっては、喉から手が出るほどの案件だろう。

 それに、俺と理子に、並々ならぬ因縁がある。

「俺は、何というか、あいつとは因縁浅からぬ関係でな。長い目で見ても今年中には、あいつを柩に入れたいと考えてる」

「じゃあ、あいつがどこにいるのか、知ってるのね」

「いや、知らない」

「じゃあ、どうするのよ」

「ブラドを誘き出すのに、絶好の餌がある。だから、考えるのは、倒す方法だ。ブラドに関する情報で、何か知っていることは?」

「……知らないわ。神出鬼没で、凄く強いってこと以外」

「なら、俺が知っていることを、全て話す。だから、奴を殺すのに協力しろ」

「待って、あたしの目的は、ブラドの逮捕よ。第一、武偵法九条に悖るわ」

「よし、ここで、カミングアウトその一だ。ブラドは人間じゃない」

「え……!? それって、超能力者とかそういう意味じゃないわよね?」

「そうだ。人間とはまた別の生物にあたる。俺の予測が正しければ、吸血鬼だ」

「吸血鬼!? そう、なら、法化銀弾を用意したほうがいいわね」

「無駄だ。ブラドは既に銀は克服しているし、大蒜、十字架、太陽、全て効かない」

「何よそれ、チートじゃない」

「チートだから恐れられてるんだろ」

「それで、どうやって倒せばいいの?」

「ブラドの体には、四つの魔臓と呼ばれる吸血鬼特有の器官が存在する。奴の超回復力や怪力の元になっているものだ」

「つまり、それを潰せば……」

「その時点で、勝ったも同然。昼なら紫外線で即、焼け死ぬだろうな」

「ふん、いいじゃない? でも、肝心の魔臓っていうのが、どこにあるか知ってるわけ」

「昔、バチカンの超偵が魔臓のある位置に印を付けていったらしくてな。それを狙えばいい。まあ、四つ目はどこにあるのやらって感じだが」

「そう、つまり、決め手がないわけね」

「……まあ、な。俺と、アリア、あと一人いれば、銃の数は足りるだろう。俺が二挺拳銃をやってもいいけどな」

「慣れないことはやめなさい。実際、できない人間にとって二挺拳銃なんて全く合理的じゃないんだから。それにしても、よくそんな情報を集められたわね。イ・ウーのおかげかしら」

「いや、俺は――あまり、言いたくないんだが――ブラドの手下として働いていた時期があって、その時にちょっとな。ああ、これ、絶対に理子には言わないでくれ」

 ブラド――詳細は多く語らないが、どれだけ強くてもあいつの体は一つしかない。どうしても都合が悪い時が出てくる。

 それを補うのが、俺の昔の仕事だった。

「……いいけど、あんた本当に何者なの? ブラドの手下で、米軍の試験部隊の少年兵で、イ・ウーの高校生なんて、わけがわからなすぎるわ」

「へぇ、驚いた、よく調べが付いてる。情報元はMI6かMI5? それとも、ロンドン武偵局はそんなに情報収集能力が高いのか」

「これは、私の独自捜査の結果よ。元・水兵っていうこと自体、隠匿されているそうじゃない。全てが謎に包まれた男ってわけね」

 俺は、米軍が試験的にSeal'sに設置した少年兵部隊の出の一人だ。

 訓練は少し軽いものの、実際に彼らと同じ環境で行われ、弱冠十数歳といっても、全員が並の特殊部隊を遥かに凌駕する実力を身につけている。

 だって、米軍が公的に少年兵を起用するなんて、できるわけないだろう。

「はは、そいつは、俺じゃなく自分に使うべきだ。知らないかい、女は秘密を着飾って美しくなる(A secret a makes woman woman)。秘密の無い女は、つまらないと思わないか?」

「そうかしら、あたしは、何でもペラペラ喋ってくれる人の方が好きよ。やりやすいじゃない」

「そりゃ敵に回した場合――ああ、そうか、お前そういう経験無いから……」

 キンジとは結構いい感じなのにな。

「う、うるさいうるさいっ!! とにかく、ブラドを倒すのには協力してあげるわ。いつでも呼びなさい」

 アリアは、それだけ言い残して、病室を去っていった。

 

 †

 

 そして、事件発生から一週間。

 黒郎はSSRの生徒を呼んで、超能力療法みたいな得体の知れないものをしてくれたらしいが、おかげで、かなり調子がいい。

 ギプスも付けているが、予定より一週間は早く取れるということで。「これからの医療は超能力学が牽引していくのかね」なんて奴は言っていたが、それはどうなんだろうな。

 家に帰ってみれば、さて、理子の私物はそのまま。ベランダから見える景色には、解体されかけのANA600便。おまけにゴミも溜まっているだろう。

 ……しょうがない。ゴミ出しからしよう。

 そう思い立って、台所行くと――

「……?」

 妙だ。

 台所が、すっかり片付いている。

 食器類、シンク、調理器具、全てが綺麗に整えられている。

 綺麗というより字面的には『奇麗』だな。奇妙なほどに、麗しい。整然としすぎている。俺の家であるなら、もっと散らかっていた方がいい。

 誰かがやったんだ。

 容疑者に挙げるとするなら――

 キンジか。いや、奴にそんな家事スキルは無い。

 アリアか。いや、お貴族様にできるとは思えない。

 理子――は現在逃走中。

 俺の頭の中で色々な人間が連想される。

 武藤、不知火、黒郎、ライカ……

 ん、ライカ……?

 あいつは見るからにガサツそうだが、どうなんだろう。人の家に勝手に上がり込むような奴じゃないか。

 空き巣が家事をするわけでもないしな。

 そう思いつつ、冷蔵庫を開けると、食材まで揃っているじゃないか。

 俺は食品管理は結構徹底してやっているんだが、ちゃんと賞味期限切れのものは捨ててあるみたいだな。

 ? また、妙だな。

 冷蔵庫の横に下げてあった食品の賞味期限管理表と照らし合わせても、足りないものがいくつかある。

 ……いや、足りないものは、期限切れの他に、一つだけ――蒟蒻だけ、まだ食えるのに捨ててある。

 人の家に上がり込んで、家事をして、そして帰っていく不審な人物。どうしようか、本当に見当がつかない。

 ……これは、迷宮入りさせよう。そうしよう。

 だって、実質的な被害が無いじゃないか。それなのに、探偵科とかに案件を持ち込んでみろ、突っぱねられてしまう。

 だから、この件は、これ以上の追求は止めておこう。

 

 †

 

 校内を歩いていると、急に、後ろに殺気を感じて振り返る。

「ッ!!」

 パシッ!

 俺が振り返った瞬間振り下ろされたのは、鋭利な日本刀。

 それを、既のところで白羽取りした。

 そして、そのまま刃ごと刀を横に捻り、襲撃者の手から取り上げる。

 やけに背の低い奴だな、と思っていたら――

「なっ!? てめ――アリア……、何の冗談だ」

 まさか、学内で武偵を襲う輩がいるとは、と思ったが……

「ほら、見なさいキンジ! これが模範解答よ」

「これ模範じゃねぇから!!」

「……何の話だ」

「キンジに真剣白刃取り(エッジ・キャッチング)教えてたのよ」

「それで、模範演技か」

「あんたはやっぱり戦闘経験が豊富なだけあるわ。それに比べて、キンジときたら」

「俺は一般人なんだ。お前らみたいなビックリ人間コンテスト上位入賞者と一緒にしないでくれ」

「帯銃してる時点で一般人の定義から逸脱しているに一票」

「あたしも一票」

「う、うるせーな! ったく、やればいいんだろ、真剣白刃取り。やってやるよ!」

「よっ!」

 ガスッ!!

「いってぇ!」

 キンジの頭に、アリアの刀の鞘が直撃した。

 ああ、あれ絶対痛いぜ。俺だったら、死んでもくらいたくないね。……ん、死んでも……?

「なあ、アリア、どうして俺の時だけ抜き身の刀だったんだ」

「どうしてって、あんたなら取れるでしょ?」

「たまにお前がクソイカレポンチに見えるわ……」

Huh(あ゛あ゛)?」

「お?」

 何だか、アリアが自然に啖呵を切ってくるようになったような……

「ふ、二人共落ち着けよ。英介、いつも言ってるだろ、クールにいこうぜ。な?」

「いや、別に俺はあれくらいどうってことねーし。むしろ朝飯前っていうか……、ああ、わかった。オーケー、アリア、いつも通りクールにいこう。俺は至って紳士的だ」

「……そうね。あたしもちょっとやりすぎたわ」

「英介もさ、ほ、ほら、あれだろ? 理子――」

「あいつの話はするな……」

「わ、悪ぃ」

「そうだ、ちょうどいいわ。これから要塞を作るの。あんたも手伝いなさい」

 要塞……? 比喩表現だろうが、一体何をする気なんだ。

「やだよ、面倒――、あ、いや、やっぱり協力する。好きに使え」

 最近、理子のことで落ち込んでばかりだ。たまには、こいつらとつるんで、楽しむのもいいだろう。

「うん、言うことをきく英介は良い英介よ」

 良い俺って……、じゃあ、普段の俺は良くないってのか。

「……俺、帰っていいか」

「キンジは力仕事よ。さあ、フォロー、ミー!」

「「ウーラー……」」

 

 †

 

 俺は、アリアに引き連れられて、第三男子寮のキンジの部屋に来ていた。

「あ、キンちゃん! と、英介くん! お久しぶりです」

「うん? 白雪、何で男子寮に――ああ、キンジの部屋漁りに来たのか」

 星伽白雪。

 黒髪ロングの巫女さんで、俺達と同じ、二年生。

 SSRの生徒だから、一応超能力者的扱いになる。占いしているところしか見たことないけどな。

「ち、違うよー。今度、キンちゃんに護衛をしてもらうことになったから、キンちゃんと同じお部屋に住むの」

「護衛? へぇ一体――」

「英介! 地雷を仕掛けるわよ!」

「……強襲バカが何か言ってら。地雷を仕掛けんだとよ。誰か、NPO法人を呼んできてくれ」

「地雷っていっても、爆発するタイプじゃないわ。ほら、これ」

 アリアが俺に差し出したのは、クレイモア地雷風の赤外線警報器だった。……敵の警戒心を煽るためだろうが、流石にこれはないだろう。

「それと、この普通の赤外線アラームも隠すわ。さらに、ベランダには圧力で作動するタイプのアラームも仕掛けるから」

「要塞化するわけか。なら、玄関にも仕掛けよう。あと、盗聴防止の探知機を通信科から借りてこよう」

「うんうん、それでこそよ」

 アリアは、満足げに頷いた後、俺やキンジと、何故か来ていた武藤に新しく搬入した白雪の家具の設置などを指示する。

 自分も働け、と思ったが、ああ、そうか、小学生のアリアちゃんは筋力的にも背丈的にも足りないもんな。と、自分の中で納得させた。

 一段落して、ベランダの様子を見ていると、アリアが隣に並んだ。

 キンジと白雪が室内で仲睦まじそうに話しているのが、気に食わないらしい。

 二人は幼馴染だ。そのくらいは、別に不自然ではないのだが、彼女にとっては、重要な問題なのだろう。

「……そういえば、今回の件、何なんだ? 白雪の護衛って、一体誰から狙われているんだ」

魔剣(デュランダル)

「あいつか……」

「知ってるのね?」

「ああ。『ジェーン(jeanne)』っつてな、頭のいい奴だったよ。直接会って話したのは、二、三回だけど、あいつとは気が合いそうだ」

「容姿とか、特徴を教えて」

「アリア。俺はお前の質問に答えることができるが、それは、恐らく明確な答えにはならない」

「……? 何故なの」

「俺の元・パートナーを覚えているな。変装が得意だった。ハイジャックの時も、そうやって俺達を騙していただろう。魔剣は、そのスキルを理子から習っていて、俺は彼女の本当の顔を見たことがないんだ」

「彼女、ってことは、女性なのね」

「確証はない。ただ、女性的な体のラインなどは、隠そうとしてもしきれないもんさ。お前にはわからな――wait,wait(待て待て)! 銃向けんじゃないよ」

「……キンジは、魔剣なんていないって言うわ」

「誰だって、自分の見たことがないものは信じられないもんさ。特に、自分に不都合なものはな」

「……あ、待って。あんた、今回は魔剣との関わりは無いわけ?」

「ああ、無いぜ。というか、ここ数ヶ月会ってすらないからな」

「そう、なら、先に唾をつけさせて。魔剣が接触してきても、絶対に首を縦に振らないでね。いい?」

「おいおい、勝手なことを言う奴だな。俺に利益があるかい? それ」

「あんたのことだから、金を積めば動くんでしょ?」

「……まあ、な。でも、それじゃあ面白くないな。――そうだ、そのガバ――」

「駄目よ。これは大事なものなの」

「この前の件で、銃をどっかにやっちまったんだ。代わりをすぐにでも用意したいが……」

 俺は、自分の気に入る銃じゃないと、持ちたくない。

 あのコンバットマグナムは、特別なんだ。

 次元大介から譲り受けた、大切な一挺さ。かなり年季は入っているが、使い心地抜群の、お気に入りだったのに。

「じゃあ、新しい銃を手に入れてあげるわ。どんなのがいいの? リボルバーがいいかしら」

「フェイファー・ツェリザカ」

「死になさい」

「冗談だよ。あんなもん、実戦で使える奴――ああ、いるにはいるけど、常人には無理だ。銃はいい。専属の調達係がいるんでな」

「そう、じゃあ、やっぱり金ね」

「それで妥協しよう」

 それにしても、銃をどうするかだ。

 ナイフくらいは常備しているが、さて……

 

 †

 

 その日の夜。

 俺は、ダークスーツに着替えて、気晴らしに渋谷あたりを歩いていた。

 街の喧騒っていうのはいい。色々な雑念が溶け込んでいるから、俺もそれに合わせるような感覚になれる。

 それにしても、この街で俺みたいな服装の人間は、少し目立つな。というか、場違いだ。風俗街の呼び込みでもやっていた方がまだ自然だね。

「次元英介」

 すると、突然呼び止められる。

 振り返ると、若い今風の服装をした女が、こちらを見つめていた。

 表情は少し硬い。

「お前さん、武偵高の生徒じゃないな」

「私と、その、一緒に遊ばないか?」

 何だよ、逆ナンか? いや、それにしては、どうも相手方の表情や仕草が硬い。

「いいぜ。――その前に、素性を明かしてもらおうか」

「と、通りすがりの女子高生だ」

「普通の?」

「うむ」

「そうか。じゃあ、さよならだ」

 俺が踵を返して歩いて行こうとすると――

「ま、待て、英介! 私だ!」

 その女は、俺に顔を近づけて、耳打ちしてきた。

「ジェーンだ。同期の桜だろう。少しくらい付き合え」

 ジェーン。魔剣だ。

 こんなに早く接触があるとはな。

 というか、やはり前に会った時とも顔が違う。流石に背は誤魔化せないようだが。

「何だよ。初めからそう言えってんだ。人が悪いんじゃないか?」

「ああ、すまなかった。私が奢るから、機嫌を直せ」

「へへ、いいのかい?」

「女に二言はない」

「じゃあ、適当にフランス料理の店にでも行くか」

 すると、ジェーンは唇を尖らせて言う。

「何故日本に来てまで自国の料理を食べる必要がある。日本食がいいぞ、私は」

「日本食……? 外人が好きそうなものつったら、スシ、ソバ、テンプーラ、はっ、そんなもんか」

「ラーメンがいい」

「一応、中華料理だぜ、それ」

「いや、私の調べではラーメンは日本で作られたものらしい」

「へぇ、まあ、いいけどさ。じゃあ新宿まで行くか」

「新宿?」

「激戦区なんだ。ラーメン屋だけで数十軒ある」

「何と、それは凄いな。Follow me。英介」

 ジェーンはフランス人だ。

 フォロー、ミーと言っても、ハ行の発音が上手くできないので、英語慣れした俺には、オロー、ミーくらいに聞こえてしまう。

「へいへい」

 うん? ついてこいって、昼間にも聞いたな……

 

 †

 

「それで、一体どうしたんだ?」

「どうした、とは?」

 ジャンヌは、俺が頼んだチャーシューメンと同じように注文して、ラーメン屋にしては珍しい個室で食事をしていた。

 俺がずるずると面を啜ると、ジェーンは顔を顰めて言う。

「音を立てるな。マナーがなってないぞ、英介」

「マナー? ああ、そういうことか。ジェーン、ヨーロッパじゃ食事中に音を立てるのは確かに良くないが、日本人はこうやって麺類を食べるのさ。動詞で、啜るっていうんだぜ」

「ススル……? では、日本人はパスタもそのように食べるのか。音を立てて」

「別に、でかい音を立てて食うわけじゃねえ。箸を使って一定の動作で食う以上、ある程度音がするのは許容範囲内って話さ。ああ、因みにパスタはフォークで食うから、イタリア人っぽいけどな」

「そういうものか」

「そういうもんだよ」

「そうか……」

 ジェーンはそれでも、極力音を立てないようにラーメンを食べている。いいんじゃないか、マナー的にはな。俺は気にしないけど。

「味は気に入っているのだがな」

 理子もそうだが、フランス人は甘辛い味付けが好きだ。

 牛丼屋とか、初めて連れて行った時はかなり気に入った様子だったよ。

「英介」

「何だよ」

「理子のことを考えていただろう」

「……何故、そんなことがわかる」

「顔に出ているからだ」

 俺は、自分の顔が今、一体どうなっているのか、鏡もないので手で触って確認するが、別に異常はない。

 それを見て、ジェーンはクスクスと笑う。

「と、とにかく、だ――白雪を狙っているらしいな。何故、そんなことを」

「何故、か、太陽は何故――」

「待った待った! その問は聞き飽きたぜ。太陽は地球の自転のせいで昇っているように見えるし、月は太陽光を反射して夜空に輝くのさ。これが答えだ。なあ、そうだろ」

「そう、つまりは、意味のない問だ。わかるだろう」

「ああ、なるほどな、言う気はないって、そういうことな。ったく、『教授(プロフェシオン)』は何を考えているのやら」

 教授。

 イ・ウーの一番お偉い人。最高責任者というか、最高顧問というか、纏め役というか、イ・ウーの全権代表だ。

 基本的には、俺達には不干渉を貫いているが、少ない頻度で頼みごとをしてくる。

 見た目は、二十代から三十代くらいの白人男性だ。

「その教授が、近々お前に会いに来るとか言っていたぞ」

「マジかよ。面倒だな」

「それと、理子がイ・ウーをクビになった」

「……自業自得さ」

「酷い男だ」

「おいおい、あいつとは他人だぜ」

 すると、ジェーンは悲しそうにこちらから目を逸らして言う。

「理子は、ああ見えて気丈な女だが、それでも、世間一般では高校生をしている歳だ。留年してまだ中学生かもしれないし、努力家の彼女は飛び級して大学生かもしれない」

 ジェーンは、机に身を乗り出して俺に詰め寄る。

「私は彼女の親友だ。彼女がどう思っているかは知らないが、私自身それを自称している。だから――」

 だから、何だよ。

 俺に何をしろって言うんだ。

 そういう感情を湛えた俺の眼光に晒されたジェーンは、一瞬言葉を詰まらせるが、意を決して、

「私はもう、理子の泣いているところを見たくない! お願いだ、次元英介。彼女ともう一度――」

 俺は、そこまで言ったジェーンの口元に掌を広げ、それ以上は言うなと凄む。

「よお、ジェーン、理子の奴がどうとか、俺にはもう関係のない話さ。ガキじゃねぇ、俺はあいつの親か、兄か、それとも恋人か何かかい? 分別をつけなよ」

「貴様は……本当に薄情な男だ! 女の一人さえ慰められないとはな!」

「確かに、あいつにもっとかまってやれば、それでお互い満足も行くし、合理的だろうよ。しかしな、智に働けば角が立つ。情に棹せば流される。なら意地を通すしかねぇだろうさ。これ以上言うなら、お前の苗字にドゥが付くぞ」

 夏目漱石の言葉を捩った俺に、ジェーンは苛立ちを込めて言う。

「そういう意味ではない! 男と女について、仲間について、もっと……その、何だ、お前達は夜を共にする程の関係だったのだろう!? じ、情動的にも考えられるんじゃないか、というか……」

「……Huh? お前、何か勘違いしていないか。俺と理子について」

「か、かか、勘違い!? 私がか! 貴様と理子は――し、淑女にこれ以上を言わせるのならば、切り伏せるぞ!!」

 ジェーンは懐から護身用のナイフを取り出して、俺に突きつける。

「おいおい、何だってお前らそんなに血の気が多いんだよ。流石の俺でも、もう動揺しないぜ。それとも何だ、淑女は人にナイフを向けるのが嗜みなのか」

「そ、そのようなことはないが、な。私とて――このような身形をしていなければそう認識されることさえ難しいが――何と形容したらいいのか……」

「女? 淑女か」

「そう、そうではある。だが、ニュアンスとしてはもう少し、何か足りない」

「足りない……? あー、つまり、そうだな、乙女、なんてどうだい。お前、意外と少女趣味だろう」

「乙女……! そうだな、それがぴったりだ。……それにしても、英介、意外と、というのは余計だった」

「ああ、すまない。気分を害したなら、謝る」

「いや、いい。理子にも言われたことがある。だが、彼女はそんな私を許容し、助長してくれたのだ。それに報いたい」

「だから、俺達のことにも口を出すと」

「部外者であることは承知している。ただ、仲裁役というのは、外交交渉でもよくある話だ」

「……オーケー、ジェーンの熱意には俺もお手上げだ。然るべき後、その役を頼むぜ」

「そうか! いや、話のわかる人間でよかった」

「調子のいい奴だな」

「フフ、それで、その然るべき後とは」

「俺が、ブラドを倒してからだよ」

 俺がそう言うと、ジェーンは顔を顰めて、何か考える動作をする。

「ブラドを……? しかし、それはあまりにも……」

「無謀か?」

「蛮勇としか」

「それでいいさ。蛮勇でも、成せば英雄だぜ」

「なら、私も直接は無理だが、協力しよう」

「ありがとよ」

 俺が水の入ったコップを持って、飲もうとすると、

「二人の仲に」

 とジェーンが自身のコップを差し出してくる。

 俺は、そう言うのは早計に思えて、

「ジェーンと理子の友情に」

 と、返した。

 彼女は、それを好意的に受け取ったらしいが、俺としては、若干の皮肉のつもりだったんだがな……

 




最近、閃光のハサウェイ(上)を読みました。富野節は面白いですが、かなり読みにくいです。あと、富野作品であんな萌えキャラ(ギギ)が見れるとは思いませんでした。
マフティー・ナビーユ・エリンってもう名前自体がかっこいいですよね。
クスィーかっこいいし、ギギ可愛いし、最近読んだ中では一番面白いですね。
あと、ローラ・ローラは俺の嫁。決してロランと呼んではいけない(戒め)
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