鬼畜陵辱エロゲの世界に転生したけど男女比がバグってるせいで竿役が俺しかいない 作:乳と地位が比例する世界
十六歳の誕生日。
宮廷へと旅立つ馬車の中、俺は唐突に思い出した。
――あ、ここ。エロゲ世界だ。
「さあ、そろそろ宮廷が見えてきますよ。
坊ちゃま」
隣の美人メイドが俺に向かって声を放つ。
その言葉は周回中、何百回も聞いた始まりの言葉。
ゲームスタートを知らせるものだった。
……マジか。
おいおい、まじかまじかまじか!!
え、俺、転生してるの?? あのエロゲ世界に?
――伝説の鬼畜陵辱エロゲのヘタレ主人公に!?
「嫌だぁっ!! 今すぐ家に帰してえっ!!
ヒロイン全員寝取られるっ、助けてぇっ!」
「坊ちゃまっ!?
お、落ち着いてくださいっ!!?」
必死に呼びかけるメイドの声も虚しく、ぶっ倒れた俺はしばらく馬車の中で叫び続けるのだった。
……どうか、夢あって欲しい、そんなことを願いながら。
『汚濁の宮廷を生きるキミ』
某社主催の美少女ゲーム総選挙、鬼畜エロゲ部門で十年連続一位を取り続けた伝説の極悪エロゲだ。
ヒロインは基本的に陵辱され、主人公の元からはさよならバイバイ。正しい選択肢を選び続けても結局強制死亡エンド待ったなし。寝取られあり、尊厳破壊あり、救いなしの地獄の鬱展開で構成されたとんでもエロゲである。
こんなゲームにもファンというものがいるんだから、ほんと世の中救えないよね、うんうん。
……例えば、俺とかさ。
俺はこのゲームを知っている。
というか実を言うと、結構なファンであった。
あ、ちょっと、引かないで。
違うから、人を陵辱好きの人畜扱いしないで。
その、最初は知人からの薦めだったんです。
大学の同期のど変態。研究室でエロゲをしてる馬鹿の家に遊びに行ったとき、俺は彼から言われたのだ。
「頼む、黙ってこのゲームをやってくれ。
そして、俺と同じ苦しみを味わってくれないか」
そのまま渡されたゲーム。
それこそが『汚濁の宮廷を生きるキミ』だった。
で、家に帰還した俺はさっそくゲームをプレイすることにした。
なんと言っても、俺にとって初めて18禁エロゲである。
今までポ○モンとど○森くらいしか触って来なかった俺にとって完全な刺激物だ。
そして、ゲームをプレイした俺が真っ先に気づいたもの。
――それは、ヒロインの可愛さだった。
氷の令嬢、純白の聖女、天才ロリ魔術師。
イラストはもちろん、ゲームの中で生き生きと過ごす彼女らに俺はどんどん惹かれていった。
大学があることを忘れるほど、俺は夜通し彼女たちの攻略に勤しんだ。
アレほどまでに何か没頭したのは生まれて始めただったと思う。
そして、ゲームが中盤に差し掛かった頃だった。
――大好きなヒロインたちは醜悪な男たちに犯されていた。
そこで、俺は初めて知ったのだ。
……このゲームが、救いなんて欠片もない鬼畜陵辱ゲーであることを。
まじ、寝込んだ。
ついでにど変態の馬鹿にキレた。
クソ笑ってた。ひとでなしがよぉ。
だけど、俺は諦めなかった。
1周目、陵辱の限りを尽かされたヒロインが全員死亡しても、俺の中にあった彼女たちへの気持ちは冷めることはなかったのだ。
むしろ、俺は彼女たちを救う方法はないのかと、何度もゲームをやり直した。
下手したら100周以上やったかもしれないな。
バッドエンドのたびに、ヒロインたちは悲惨な運命を辿っていく。
奴隷に堕ち、スラム街で自ら股を開く氷の令嬢。
信仰を捨て、汚れに身を捧げた純白の聖女。
憧れは死に、虚栄のために老人へ身体を差し出す天才ロリ魔術士。
俺はその全てを見てきた。
綺麗なところも汚いところも、全部。
――結局のところ、俺は彼女たちが大好きなのだ。
だから、諦めようとは思わなかった。
一人でも不幸の道を辿るヒロインがいたら、すぐにリセットして、プロローグへ戻る。
俺の手で、一人も残さず、少女たちを幸せにしたかったからだ。
けれど、どうやら。
……俺は彼女達の幸せを見る前に、この世界に来てしまったようだ。
「どうせなら、ハッピーエンド。目指したいよなぁ」
揺れる馬車の中、俺は考える。
ハッピーエンド。
本当にそんなものが存在するか怪しいが、この世界に来たからには、目指したい。
……あと、ヒロインたちとも仲良くなりたい。
あー、せめて、竿役に転生とかだったらなぁ。
ぐへへへっ、ヒロインちゃんよぉ、友達からでも良いからオイラと仲良くしてくれないかなぁ? 的な展開も狙えたんだけど。
ヘタレ主人公のアルス君じゃ、それすら厳しそうだ。百パー寝取られるし。
……はぁ、結局俺はこの世界でも彼女たちを救うことはできないのか。
――いや、待てよ。
そういや一つだけ、ヒロインたちが生き残るルートがあったな。
そう、アレは確か3周目に見たエンディングだ。
そのエンディングの到達条件は、何もしないこと。
主人公がひたすら自室のベッドに籠り、全ての選択肢を放棄した際に起こる、全ヒロイン妊娠エンドである。
――通常、このゲームのエンディングは一つに収束する。
それは王国を襲う厄災と呼ばれる、大量の魔族たちによる襲撃イベントだ。
これは、どう頑張っても避けることはできない。それまでどんなにヒロインを竿役から守りきろうとも、結局このイベントでヒロインは死んでしまう。
だけど、一つだけ例外がある。
先ほどの妊娠エンド。
そのルートでは唯一、竿役とヒロインたちの子どもが登場し、王国を襲う厄災を防ぐのだ。
プレイ当時は、クソエンドだと思って即リセしたけど、思えばアレが一番マシなエンディングだったな。
……クソッタレの竿役たちに彼女らを奪われるのは癪だ。
だけど、下手に行動しても彼女たちが危険に晒されるだけ、か。
「もうすぐ宮廷にお着きになりますが、ご準備はよろしいですか?」
「……ん、大丈夫」
まぁ、いい。
とりあえず今は行くしかない。
こうして、俺は『汚濁の宮廷を生きるキミ』の舞台。ルークシア宮廷へと足を踏み入れたのである。
ルークシア国王謁見イベント。
ゲームではプロローグに位置するイベントだ。
主人公はここで王様から宮廷の説明を受けることになる。俗に言うチュートリアルだな。
ということで、今の俺は王様のいる玉座目指して、前進中である。
隣にはメイドがたくさんだ。
主人公のアルスくん、一応中級貴族だしね、お付きの人もいっぱいいる。
「……んー、これからどうしよっかな」
結局、俺は見守ることしかできないのか。
せっかくこの世界に来たというのに、彼女らがあの悪辣な竿役たちに犯されるのを。
いや、ほんと勘弁してくださいよ。
そんなことを考えながら歩いていると、視界に大きなカーペットが入ってきた。
お、そろそろ、玉座か。
俺は背筋をピンと伸ばす。
流石に王様の前だしね、下手なことして打首とかは避けたい。まぁ、多分大丈夫だけど。
ルークシア国王は髭の生えた偉そうなイケおじである。
ゲームの登場人物としてはかなりまともな方に位置する人だ。少なくともいきなりヒロインを地下に監禁して陵辱とかはしない。
……まぁ、それは彼が男色だからなんだけど。
若干の警戒心を持ちながら、俺は謁見の間へと足を踏み入れる。
すると、声が聞こえた。
「――よくきてくれましたね。アルス」
その声は、まるで白鳥が鳴いたかのように上品で、透き通った声。
思わず、俺は声の方を振り向く。
そして、目に入ったのは。
「…………え、だれ?」
とんでもない乳を持ったドスケベ女であった。
「んっ、今そちらに行きますね、アルス」
透き通るような銀髪に、慈愛に溢れた青い目。
白を基調とした真っ白なドレスは、一瞬神話の女神でも現れたと思うほど、美しい。
……が。
そんなのより、一番に俺の目を引いたのは。
デッッッッッッッッカ
巨大なサイズにより、完全に丸出しになっている乳房であった。
むちむちどころの騒ぎではない。
デカい、デカすぎる!
なんだこれ、人間のサイズなのか!?
pi○ivの深層にいそうな乳のデカさしてんだけど。ほら、歩くのもすげえしんどそうだし。
「……ふぅ、こんな遠くまでよく来てくれましたね、アルス。
ふふっ、貴方のことは子どものときから気にかけていたんですよ」
息を切らしながら俺を見つめるスケベ女さん。
なんか若干顔も赤いし……大丈夫? この人。
いや、服装は明らかに大丈夫じゃないけど、はみ出るとかいうレベルじゃねぇぞこれ。
……というか、そもそも。
こんな奴、ゲームに出てたか?
俺はモゾモゾと足を動かしながら、彼女の顔を伺う。
が、次に放たれた言葉が聞こえた瞬間。
「宮廷、唯一の男子となる貴方には酷なことをしたと思います。ですが、私は貴方を蔑ろにする気はありません、むしろ……」
「――唯一?」
俺は、硬直した。
……待て、今なんて言ったこの人?
唯一の男子とか聞こえたんだけど。
「ちょっと待ってください。
唯一ってどういうことです」
慌てて彼女に声をぶつける。
……なんだ? 変な冗談でも言ってるのか?
「だって、ほら、ダリウス大臣とかいるじゃないですか。あの太っちょのおじさんですよ」
「……ダリウス氏は女性ですよ?
確かに彼女はふくよかな身体の持ち主ではありますが」
「……女性? いや、大臣ですよ??
肝心のエロシーンではケツがデカすぎてヒロインの身体が全然見えないで有名なあの大臣です」
「……お、お尻の話をしてますか?」
目の前の痴女は俺の言葉を聞いて、尻を抑えた。何やってんだこの人。
……てか、ほんと誰なの、この人??
「ちょっとストップ。
貴方、誰ですか?」
俺は彼女に尋ねる。
こんなイベント、原作にはなかった。
プロローグに登場するのは例のイケおじ国王だけのはずだ。
「……女王ですけども」
「へ?」
……ん? 女王?
何言ってるんだ、ゲームには女王なんていないだろ。
「ルークシア王国女王、ヴィルヘルム・ルークシア。むぅ、名前くらい、覚えてて欲しかったです」
「……ヴィルヘルム、って」
え、あのイケおじが……これ?
ルートによっては主人公との濃厚BLすら存在するイケおじが、これ??
……あ、ちょっとバグってるみたいです、俺の世界。すいません、返品お願いできますか?
「なんで!? まじでなんでなのっ!!? 俺のヴィルヘルムさんを返してよっ!! いや、これはこれでいいけどっ! すごくいいけどっ!!」
「あ、アルス?? どうしました?
急に大きな声を出して……」
「出すよっ! 出るに決まってんでしょ!
なんなら色々出そうだよっ! なんだそのスケベな格好はっ!! ほぼ乳丸出しじゃねぇかっ。
ありがとうございますっ!!」
「ありがとうなんですかっ!?」
こうして、俺は知った。
この世界に一つだけ、ゲームとは決定的に異なっているとこがあるということを。
「――どういうことだ、これ」
あの後、国王からは色んなことを聞いた。
けれどそのほとんどが頭に入らなかった。
半分くらいは服装のせいだが。
……ただ一つだけ、わかったことがあるとしたら。
この世界の宮廷には、男が俺しかいないようだ。
いや、正確にはこの世界自体、男が女に比べてかなり少ないらしい。男女比で言うと、だいたい1:30くらい。
おいおい、それなんてエロゲだよ。
エロゲだったわ。
……というか、待てよ。
王様を例を見るに、もともと男だった奴は女に変わってるんだよな。
「……つまり竿役のあいつらがいないってことか?」
まぁ、存在こそはしてるんだろうが、間違いなく、俺の知っている姿ではないだろう。女体化した大臣とか想像もしたくないけど。
「となれば、どうする?」
ヒロインたちが唯一生存する妊娠エンド。
あのエンディングに辿り着くためには竿役は必須だ。だって、ヒロインを妊娠させる必要があるんだから。
彼女らの子どもたちがいないと、いずれ王国は滅ぶ。そしてヒロイン達はみんな、魔族の悲惨な魔法によって殺される。
「――なら、仕方ないよな」
俺は立ち上がる。
俺だけじゃない、先ほどの謁見のおかげで俺の相棒もスタンドアップは完了していた。
……やるんだ、俺が。
前世で救えなかったヒロインたち。
彼女らを、俺自身の手で生存ルートへ導いてやる。
――竿役不在のこの世界でヒロインを救うため、俺は彼女らを攻略してみせるっ!
……唯一の竿役としてねっ!
とりあえず10話分ストックがあるので気合いの毎日投稿。