鬼畜陵辱エロゲの世界に転生したけど男女比がバグってるせいで竿役が俺しかいない   作:乳と地位が比例する世界

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3話 政略結婚

「じゃ、私は出ときますねー。

 邪魔しちゃ悪いでしょうし」

 

 少女を部屋へ招き入れた後、そんなこと呟きながらルルカが立ち上がる。

 その声は先ほどまでの猫撫で声とは打って変わり、芯のある強い声だ。

 

「……あ、そうそう、セレスお嬢様。

 例え、婚約者としても貴方と坊ちゃまにはまだ十分な信頼関係がありません」

 

 

「――なので、変な気は起こしちゃ駄目ですよ?」

 

 まるで、何かに釘を刺すかのように、彼女は目前の少女へと視線をぶつける。

 

「……当然よ。

 起こすはずがないでしょう、そんな気」

「なら良かったです。

 ですが、何かあったら呼んでくださいね、坊ちゃま」

 

 そう言ってルルカは部屋を抜けた。

 

 ……なんかちょっと不穏だったな、最後の方。

 

 やっぱ、重くないか。あのおっぱいメイド。

 大丈夫?

 出ていったけどドアに張り付いてたりしてない?

 

「……足音もない、優秀なメイドね」

「あ、そんな忍者みたいな能力もあったの?」

 

 ついでに隠密性能もあるらしい。

 ……あんまり嬉しくないな、むしろちょっと怖いくらい。

 ま、頼りにはなるのはいいんだけどね。

 

 というか、今はそんなことはどうでもいい。

 

 開きっぱなしだったドアは既にバタンと閉じられている。外の空気が遮断された部屋からは、風の一つも吹きやしない。

 

 自然と、俺の視線は目の前の少女の方へ集まることになる。

 

 冷たく光る碧眼に、雪の如く真っ白な肌。

 黒を基調としたドレスからはすらっとした細い足が伸びている。

 

 ――氷の令嬢。

 

 そんな異名に納得してしまうのは、この美しい容姿のおかげもあるのだろう。

 

 少女の名は、セレス・ルーファリア。

 

 俺が攻略すべき最初のヒロインだ。

 

 けれど。

 それよりも。

 

 今の俺の頭を支配している感情は一つだけだった。

 

 ――あかん、可愛すぎる。

 

 ……まじかっ!!

 完全にゲームから飛び出してきてるんですけどもっ!!? 可愛い、全てが可愛いすぎる!

 なんだその頭のハートのリボンは? ギャップ萌えでも狙ってるのか? うむ、大正解である!

 

 ……というかほんとにエグいな。

 なんか存在感が違う。

 今まで会ってきた奴は全員、対〇忍みたいな服装の奴だったのに対して、この子は完全に少女漫画の主人公だ。

 

 さすが、メインヒロインって言ったところか。

 

 まぁ、強いて彼女らに劣るところがあるとしたら。

 

 俺は彼女の胸部へと目を向ける。

 ふむ、ゲームと同じだな。

 

「……なにかしら?」

「盛られてなくてよかったなって」

「は?」

 

 確かに彼女の装甲は貧相かもしれない。

 女王様ら対魔○と比べたら、「ない」と言われても仕方ないだろう。

 

 けれど、これはこれでウェルカムである!

 そう、俺は大きいのも小さいのも大好きな紳士なのさっ!!

 

 

 なんか、胸の話しかしてねえな、俺。

 

 ……流石に正気に戻るか。

 

 きっと、乳袋たちの誘惑による後遺症が残ってのだろう。汚い、さすが忍者きたない。

 

 こんなこと話している暇はない。

 だって、俺には課せられた使命があるのだ。

 

 そう、俺は。

 

 ――この子を惚れさせる必要があるんだから。

 

 ……気合い入れろ。

 諦めんな、助けるって決めたんだろ、俺。

 このためにさっきまで練習してたんだ。

 

 やってやろうじゃないか。

 氷の令嬢セレス・ルーフォリア。

 ……その氷を溶かすのは、俺だ。

 

「あ、あのっ――」

 

 そうして、彼女へと声をかけた瞬間。

 

 ――被せるように声が聞こえた。

 

「分かってるわ。

 ただの政略結婚。そういうことにしましょう」

「……へ?」

 

 ……せいりゃく、けっこん?

 

「こんなの家同士の思惑でしかないわ。

 ……私も貴方にできるだけ関わらないようにする。今日はそれを伝えに来ただけよ」

 

 あ、まって、これ。

 

「それじゃあ、帰るわ。

 ……もう、会うことはないでしょうね」

 

 凄い勢いで、フラグへし折られてない?

 

 ……まずいまずいまずいまずいっ!

 

「いやいやいやいやっ!!? ストップっ、ストーップっ!! そんなの認めませんけどっ!!

 え、なんでっ!? 

 そんなにおっぱいに埋まってたのが駄目だった!?」

 

 いや、駄目だわ! そりゃ駄目だわ!

 よくよく考えたら好かれる要素とか欠片もなかったわっ!

 

 ……ちがう!! セレス、話を聞いてくれ。

 アレは卑劣な罠だったんだっ!

 

 弁明のため、俺は必死に彼女の元へ縋り付く。

 みっともないなんて言ってられない。

 ここで逃げられたら、終わる。

 

 一度間違えたルート分岐はもう、取り返しがつかないのだ。

 

「……ちょ、ちょっと、近いわよ。

 言われたでしょ、あのメイドに」

「いや! 離れない!

 逃げられたら終わるもんだってぇ!」

「わ、わかったから、一旦離れなさい。

 そんな近づかれると、こらっ、んっ」

 

 彼女の方を見る。

 滅茶苦茶汗かいてる。

 ……やばい、そんなに引かれてるのか、俺。

 なんか顔も真っ赤だし、声も上擦ってるし。

 

 ――ど、どうにか挽回しないとっ!

 

「確かに情けないところは見せたかもしれない。でも、俺の気持ちは君にしか向いてないんだ。

 セレス」

「い、いいからっ!

 一度、手を、離して。

 汗、かいちゃってるから」

 

 無意識のうちに取っていた彼女の手。

 俺はその言葉を聞いて、慌てて離す。

 

 沈黙が流れる。

 

 真っ赤に顔を腫らした彼女は下を向いて、こっちを見ようとしない。

 手は震えていて、胸の辺りを抑えている、長い髪は床まで垂れ、口からは激しく吐息が漏れていた。

 

 ……あぁ、まずい、まずい、まずいっ!

 どうにかしないとっ!

 

 刻々と時間は過ぎる。

 秒針の如く鳴り止まない心音は、どちらのものか分からないほど混ざり合っていた。

 

 頭が熱い。

 興奮と焦りのせいか、正常な思考ができている気がしなかった。

 

 こんな状態で、彼女にかける言葉なんて、思いつくわけない。

 

 あぁ、いったいどうすれば……

 

 

 ――いや、違う。

 

 

 考える必要なんて、ない。

 そうだ、俺は知っているじゃないか。

 

 自分が彼女を誰よりも愛してるということは。

 

 だから、大丈夫だ。そう。

 ただ、本当のことを言えばいいだけなのだ。

 

 俺はゆっくり息を吸う。

 そして。

 

「セレス。

 ――俺は、君のことが好きだ」

 

 彼女に向かって、声をぶつける。

 

 ……この言葉だけは疑いようのない真実だ。

 それは何百回もプレイした、あのゲームが証明してくれる。

 

 そうだ、一周目。

 

 醜悪な大臣に犯される彼女を見て、決めたじゃないか。 

 絶対、救ってみせるって。

 

「俺は、君を救いたい。

 力になりたいんだ。

 君のことが、大好きだから」

「……なにいってる、の?

 まだ、会ったばかりなのに」

 

 確かに、そうだ。

 彼女にとっては、俺は会ったばかりの他人にすぎない。言ってみれば、好感度はゼロだ。

 

 でも、仕方ないだろう。

 俺は彼女のことが、どうしようもなく好きになってしまってるのだから。

 

「会わないなんて言わないで欲しい。

 ……それだけでも、駄目かな、セレス」

 

 頭を下げて、頼み込む。

 ダサいのは分かっている。

 でも、俺にはこんなやり方しか思い付かない。

 

 

 ――俺は知っている。

 何度も何度も話して、知っている。

 

 氷の令嬢という異名。

 凛とした顔立ちと冷たい瞳。

 一見、冷酷で無慈悲に見える彼女だけど。

 

 でも、その本心は。

 

 ……人を思いやる温もりで出来ていることを。

 

「……わかったわ」

 

 返ってきた言葉は、冷たくなんかない。

 暖かさに満ちた言葉。

 

「私の部屋、ここの反対側にあるわ」

 

 彼女が呟く。

 それは、小さな、小さな声だったけど。

 確かに、聞こえた。

 

「外で話すのはよしなさい。

 厄介なことになるかもしれないから」

「――じゃあ、部屋の中なら」

「……好きにすればいいわ」

 

 彼女の言葉、その意味を理解するのは早かった。

 ……つまり、会ってくれるってことだよな。

 

 

 はぁーっ!!よかったあぁぁぁ!!

 一発目からバッドエンド直行するところだった危ねえぇっ!!

 

 ふふん、やはり最後に勝つのは愛なのだ。

 俺の彼女への深い愛情が、氷の心を溶かしたのだろう。うむ、間違いない。

 

 そう思って、顔を上げた時。

 

「ただし」

 

 目の前に、セレスがいた。

 

 その顔は、変わらず真っ赤に染まっていて。

 でもなぜだろうか。

 

 少し、黒いものを感じた。そうだ。

 さっき、ルルカも似たような顔をしていた。

 

「――変な気、起こされても知らないわよ」

「へ?」

 

 彼女の言葉の意味。

 それを聞き返そうと、俺は彼女の顔を見つめる。

 

 しかし。

 

「今日は帰るわ。

 あまり長居すると、変な憶測を呼びかねないから」

 

 プイッと顔をドアへ向けた彼女は、そのまま部屋から去っていくのであった。

 

 ……ん、どういう意味だったんだ? 結局?

 

 

 

「――なんとかなったか」

 

 セレスが帰った後、俺は小さく言葉をこぼす。

 

 どうにか、逆転には成功した。

 最後はよく分からなかったけど、少なくとも嫌われたということはないだろう。

 

 ……とはいえ、まだスタートラインだ。

 好感度でいうとほぼゼロ、むしろマイナスってくらいだろうしな。

 

 だから、本番はこれからだ。

 

 よーしっ、これから頑張るぞーっ!

 くくっ、彼女を攻略して、俺のモノにしてやるのだっ! そのために作戦を……

 

 ま、それは後で考えよう。

 今はいい、少し疲れたし。

 一旦仮眠でも取るか。

 

 ほな、お休みなさい。

 

 そのまま勢いでベッドにダイブした俺は、束の間の安息を満喫するため、眠りにつくのであった.

 

 

 

 

「好きって、言われた。

 アルス、に」

 

「……どう、しよう。

 好きにならないって、決めてたのに」

 

「――ママ、どうすればいいの?」

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