病弱なご令嬢に転生した俺。だけどチーレムの夢が諦めないので魔法の指輪で男に変身して無双します 作:明るいランプ
翌日の朝――。
今日は久々に体調が良かったので、数日ぶりにリリアナ・ローゼンベルクとして、エーデルシュタイン女学院へ登校していた。
「あっ!リリアナ様ですわ!」
「お久しぶりでございます、リリアナ様。お体の調子は大丈夫なのですか?」
すると早速、声をかけてきてくれたのは、この学院で特に中の良い、二人のご令嬢だった。
一人は、明るい茶髪と人懐っこい笑顔が印象的な伯爵令嬢:アンネ・メイベル。
そしてもう一人が、知的な碧眼と穏やかな雰囲気が印象的な侯爵令嬢:リーゼロッテ・アルテンブルク。
どちらも、この学院で仲良くなった、俺の数少ない友人なのであった。
「はい、今日は朝から何だか体の調子が良くて。いつも二人にはご心配をおかけしてしまい申し訳ございません」
「いえいえ!そのようなことを仰らないでくださいませ!大切な友人の心配をするのは当然のことですわよ!そうですわよね!リーゼロッテ様!」
「はい、もちろんでございますわリリアナさま」
「お二人とも……!!」
なんと!
こんな、頭の中では『チーレム無双をしたい!』などと、くだらないことばかりを考えている俺のことを心配してくれるだと!?
可愛い上に、性格も良いなんて!!
あぁ!!できることならこんな可愛い娘たちと、チーレム主人公としてキャッキャッウフフな生活を送りたいぜ!!
「そうだわ!折角、リリアナ様がいらっしゃったのですから、今日は久しぶりに三人で昼食を一緒にいたしましょう!」
「それが良いですわ。それに最近、王都で話題のタルトの限定味が食堂で提供されていることですし、リリアナ様にも是非とも召し上がっていただきたいですわ」
「えっ!?限定のタルトですか!?」
マジかよ!?
甘党な俺にとっては、聞き捨てならねぇ話なんですけど!?
「はい!そうですのよ!海外で採れた珍しく甘い果物を使っておりますので、甘党なリリアナ様のお口にも必ず合うかと!」
「なるほど!それは是非とも食べてみたいです!」
「リリアナ様ならそう仰ると思っておりましたわ。それでは昼食は三人で食堂へ向かうことといたしましょうか」
「そうしましょう!ねっ?リリアナ様!」
「はい!よろしくお願いします!」
こうして仲良く会話を続けながら、自身が所属する教室へ向けて、歩みを進める俺たち一行。
普段、家に籠りがちな俺にとって、彼女たちとの交流は、数少ない心の癒やしなのであった。
ふふっ……。
やっぱり可愛い女の子は最高だぜ……。
「そういえばお聞きしましたわよ!レオン様が王国騎士団の副団長へ昇格されたと!」
「私もお伺いしましたわ。改めましておめでとうございますリリアナ様」
「は、はい、ありがとうございますお二人とも」
二人の賛辞に対して、強張った笑顔でお礼を述べてしまった俺。
レオン、とは他でもない。
俺の兄であるレオン・ローゼンベルクのことであった。
「まったく!リリアナ様が本当に羨ましいですわ!あんなにも格好良くて強いレオン様がお兄様だなんて!」
「えぇ、本当にその通りですわ、リリアナ様」
「そ、そうなのですね」
勢いよく左右から羨望の眼差しを向けられて、少し後ずさりしてしまう。
確かに、2人に限らず、俺の兄の女性人気は凄い。
だって普通に超イケメンだし、その上で若くして名誉ある騎士団の副団長に選ばれるほどに強いのだ。
夢見るうら若き乙女たちからすれば、まるで物語に登場する騎士のように感じているのであろう。
でも当の俺は、そんな兄のことが少しばかり苦手なのであった。
だってあのお兄ちゃん、いつも可愛い女の子たちに囲まれていてずるいんだもん!
昔からそうだよ!
見かけるたびに複数の可愛い女の子たちを連れていてさ!
その上で強いなんて、まるで俺か憧れるチーレム主人公みたいではないか!
そんなのズルい!ズルすぎる!
そんな訳で、俺は兄のことが少しだけ苦手なのであった。
……けっ、決して、負け惜しみなんかじゃないからな!
「それに聞きましたか?この間の決闘では何と……」
「はい!聞きました!本当に凄いですよね!それに……」
(……はぁ)
こうして俺は、兄の話で盛り上がる乙女たちの後ろを、少し重たい足取りでついて行くのだった……。
◇◇◇
その日の夜――。
今日も今日とて、俺は変身の指輪でクロに姿を変えた後、街へ繰り出して悪い奴を成敗していた。
「よし、今日も一丁あがりだな」
目の前には、気絶したまま全身をローブでぐるぐる巻きにされた、黒ずくめの男たちが……。
コイツらはつい先刻、とある貴族の屋敷にコッソリと忍びこもうとしていたので捕まえてやったのだ。
「にしても全く、最近は何かと物騒だよな」
半年ほど前から今の活動を始めたのだが、ここ最近は全体的に犯罪者の数が増えた気がする。
詳しいことは分からないが、ともかくこの活動の手を緩めないほうが良いのは間違いないだろう。
「さてと、分からないことを考えるのはこの辺で終わりにして、取り敢えずコイツらをいつものように、騎士団の詰所の前にでも転がして……」
「ほう、それはありがたい話だな」
「へっ?」
突如として背後から聞こえてきた予期せぬ声に、俺の体がピクリと反応する。
……って、待てよ。
……この声はまさか……。
とある予感を胸に、ゆっくりと振り返る。
するとそこに居たのは、王国旗が刻まれた豪華な鎧を身に纏った、一人の青年だった。
整った顔立ちに、鎧の上からでも分かるほどの鍛え上げられた肉体。
そして何より印象的な、黄金の髪に蒼色の瞳。
見間違い得る筈がない――。
「どうやら毎晩、我々の詰所の前に『届け物』を置いてゆく、粋な配達人はお前のようだな」
(げっ、兄ちゃん……)
そこに居たのは俺の兄。
王国騎士団の副団長:レオン・ローゼンベルクだった……。