病弱なご令嬢に転生した俺。だけどチーレムの夢が諦めないので魔法の指輪で男に変身して無双します   作:明るいランプ

3 / 3
ありがたいことに感想をいただいておりました。とても嬉しいです。


第三話

 ローゼンベルク公爵家の長子であり、誇り高き王国騎士団の副団長であるレオン・ローゼンベルクは、月の光が静かに街を照らす夜、一人の人物と邂逅していた。

 

 漆黒の装束に、同じく漆黒の仮面。

 加えて、仮面の隙間から除き見える真紅の瞳。

 

 間違いない。

 目の前にいるこの黒装束こそが、ここ数ヶ月にわたり王国内の噂を独占していた正体不明の人物:クロだ。

 

「どうやら毎晩、我々の詰所の前に届け物を置いてゆく、粋な配達人はお前のようだな」

 

 できる限り声を低く、威圧的に語りかけながら、奴の足元に転がされた五人の人物へ目線を移す。

 

 ロープで縛られた、これまた黒装束の男たち。

 だが、クロと決定的に違うのは、奴らの肩の位置に、とある紋様が刻まれていることだ。

 

 蛇が絡み合ったような、禍々しい紋様。

 それは、王都の裏社会に巣食う犯罪組織――ネメシス教団の証だった。

 

 誘拐、人身売買、更には違法薬物の流通。

 最近、王都で急増している凶悪犯罪の裏には必ずと言っていいほど、このネメシス教団の影が見え隠れしていた。

 

 当然ながら、騎士団も幾度となく捜査を行っている。

 だが連中は簡単に尻尾を掴ませてくれない。

 

 何しろ奴らは、王国の最高戦力――レオンをもってしても、捉えることがやっとのほどの隠密行動のプロ。

 その上、折角捉えたとしても決して口を割ることはなく、挙句の果てには隙を見て、自決してしまうほどの徹底ぶりなのだ。

 

 故に、教団の全貌は未だ多くの謎に包まれている。

 それが、直近で騎士団を悩ませている最大の問題だったのだが……。

 

 目の前の男は、その教団員を五人まとめて生け捕りにしてみせたのだ。

 それも、器用に意識だけを刈り取った上で。

 

「お前は一体何者だ?」

 

 レオンが問う。

 だが……。

 

「別に何者でもないさ。俺はただの善良な市民だよ」

 

 肩を竦めながら、あっけらかんとして答えたクロ。

 

「そんな筈があるか。ただの一般人にコイツらは倒せる筈がない」

「なら運が良かったのかもな。何しろ今日は月が綺麗だからよ」

「……月だと?」

 

 クロの発言に、思わず眉をひそめるレオン。

 

「そうだ。良い夜というのは、時折り思いがけない出会いや出来事を運んでくれるものだからな。現にこうして貴殿とも出会えたであろう?」

「話をそらすな。質問に答えろ」

「ははっ、どうやら副団長殿は、噂通り随分とお硬い人らしいな」

 

 レオンの返答を受けて、愉快そうに肩を揺らしたクロ。

 

「だが嫌いではない。貴殿のような真面目な者がいるからこそ、この国はまだ何とか回っていると言っても過言ではないだろうからな」

「……戯れ言はもう良い」

 

 一歩――。

 

 腰に携えられた剣に手を翳しながら、レオンは歩みを進める。

 

「お前には聞きたいことが山ほどある。お前の目的、そして正体についてもな」

「ほう、まさかあの誇り高き王国騎士団の副団長殿に興味を持っていただけるとは、これまた随分と光栄なことで」

「ふざけやがって、ならばその光栄を噛み締めながら……」

 

 ダンッ!!

 

「獄中で後悔すると良い!」

 

 次の瞬間――。

 

 石畳を強く踏み込むと、一瞬でクロの懐へと入り込んだレオン。

 

 王国騎士団の副団長:レオン・ローゼンベルク。

 その実力は間違いなく、王国内でも五本の指に入る。

 

 故に、並の相手ならば、今の動きを視認することすらも困難な筈……。

 

 だったのだが――。

 

「おっと」

(っ!)

 

 いとも容易く、軽く体を傾けるだけで、その攻撃を躱したクロ。

 

「危ない、危ない。まさかいきなり攻撃とは。どうやら副団長殿は随分とせっかちでもあるらしいな」

(……クソっ!)

 

 余裕げに笑みを浮かべるクロ。

 その反応が気に食わなくて、レオンは更に踏み込む。

 

 一撃、二撃。

 人間離れした速度で繰り出される連続攻撃。

 

 だがそれも虚しく、その攻撃がクロの体を捉えることは一切なかった。

 

(くっ!)

 

 内心で舌打ちをかますレオン。

 

「いやはや、まさかこんなにも太刀が早いとはな。それにこの練度。流石は副団長殿といったところか」

「……クソったれ」

「こうなってくると本当はもう少し遊んでやりたいところだが、実は俺もあまり時間がなくてな。悪いがこの辺で終わりにせてもらうぞ」

 

 そう言うと……。

 おもむろに懐から謎の黒い物体を取り出したクロ。

 

(……っ!……あれはマズい!)

 

 今までの数々の戦闘で培ったノウハウなのか、直感的にそう判断して、即座に後退するレオン。

 

 すると次の瞬間――。

 

 パリンッ!

 

(くっ!?)

 

 ガラス細工が砕けたかのような音と同時に、瞬く間に周囲一帯を覆った、月明かりさえを飲み込むほどの濃密な闇。

 

(……クソッ……小細工を!)

 

 その事実を認識するのと同時に、レオンは即座に気配探知能力を発揮して、クロの位置を探るが……。

 

(……気配が消えた……だと!?)

 

 ほんの一瞬前まで、目の前にいた筈の男の気配が……。

 気づけば、まるでそこに最初から何もいなかったかの如く、綺麗に掻き消えていたのだった。

 

(……馬鹿な……)

 

 必死に焦りを抑えながら、引き続きクロの気配を探り続けるレオン。

 だが、その努力も虚しく数秒後――。

 

(……クソッ)

 

 件の霧が晴れて視界が戻る頃には、奴の姿は完全に消してしまっていたのだった……。

 

(……なんて逃げ足の早い奴なんだ……)

 

 悔しさを滲ませながら、奥歯を噛みしめるレオン。

 

 すると、視線を落とした先――つい先刻までクロがいた石畳の上に、謎の黒い塗料で文字が刻まれていることに気づくのだった……。

 

『次合う時は、もう少し穏やかに話せることを願っているよ』

 

「クソッ……次会った時は絶対に捕まえてやる……」

 

 

 ◇◇◇

 

 

 ――それから程なくして数刻後。

 

 ローゼンベルク公爵家の本邸――可愛いぬいぐるみや小物で埋められた一室では……。

 

(うわ〜!?なんであんな変な態度をとっちゃったんだろう!?あれじゃあ完全に怪しい奴みたいじゃんか!?)

 

 自身がとった行動を激しく後悔するリリアナがいたのであった……。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

読者層が似ている作品 総合 二次 オリ

適当極まりないおっさんでも、TS転生すれば少しはマシになるって本当ですか?(作者:ソナラ)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

適当に生きてきたおっさんは、気がつけば異世界で美少女のアシェットに転生していた。▼容姿は整っていて、よくあるチートも持っている。▼しかし中身は結局おっさん。適当に日々を何事もなく過ごせればそれでよかった。▼だけど少しはマシな生活をするために、アシェットは力を使うと決めた。▼これはただの”適当”なおっさんだったアシェットが、異世界で”適当”な生き方を見つけるお…


総合評価:2992/評価:8.81/連載:10話/更新日時:2026年01月23日(金) 12:05 小説情報

魔法少女の幼馴染(♂)、悪の魔法少女に改造されてしまう(作者:偽りの名つむぎん)(オリジナル現代/冒険・バトル)

 白銀アオイは魔法少女の幼馴染だ。ある日、魔族に襲われて死んだ白銀アオイは、卑弥呼という組織に悪の魔法少女として改造されてしまう。▼ 死んだし、大した目的もないから、悪の魔法少女ムーブしまくるか!!▼ そんな軽いノリで悪の魔法少女ムーブを始めたら、魔法少女は曇るわ、脳を焼かれるわ、おまけに物語の本筋まで変わっていくわ。▼ 自分が世界に大きな影響を与えていると…


総合評価:1694/評価:8.15/連載:11話/更新日時:2026年03月21日(土) 20:00 小説情報

最強の黒騎士の中身がTS少女だと気づかれてはいけない理由 (作者:でかそう)(オリジナルファンタジー/冒険・バトル)

辺境の地で現れる最強の黒騎士。▼街行く人々から畏怖される黒騎士の正体は、異世界から転生してしまった俺であった。▼更にひょんなことで女体化してしまった俺は、周りの目を盗んでは黒騎士に変身して日夜人々を守っているのだが、どうやっても黒騎士の評価が良くなる事は無い。▼それ所か益々周りの人間から嫌われてしまう黒騎士。▼何故ここまで嫌われているのか!?▼このままじゃ黒…


総合評価:1712/評価:6.85/連載:162話/更新日時:2026年06月20日(土) 20:26 小説情報

TS転生美少女が男友達ムーブして幼馴染の情緒を破壊する話(作者:寿司鮓)(オリジナル現代/恋愛)

男友達だと思ってた幼馴染が実は女の子で再開したら美少女になってたムーブを自然にしてたTS転生者ちゃんさぁ。


総合評価:2259/評価:8.44/連載:6話/更新日時:2026年03月13日(金) 07:16 小説情報

TS転生悪の組織の研究者VSど変態(魔法)少女(作者:こばみご)(オリジナル現代/コメディ)

魔法少女パワーをチューチューするために原石を誘拐したら、とんでもねえ変態だった。恐ろしい!


総合評価:2449/評価:8.81/連載:17話/更新日時:2026年06月19日(金) 00:00 小説情報


小説検索で他の候補を表示>>