ようこそ原作主人公抜きで頑張る教室へ 作:灰色の
期待を裏切るかもしれません。
正直あまり案が思い浮かばなかった…
高度育成高等学校に入学してからというもの、私の人生は何一つ上手くいっていなかった。
進学校としての退屈な日々に耐えかね、ほんの少しのスリルを味わうために手を染めた、コンビニでの万引き。その現場を、同じクラスの坂柳有栖という悪魔のような少女に目撃された瞬間から、私の自由は奪われた。弱みを完全に握られた私は、あの日からあの娘の手足として、従順に動かされるだけの毎日を過ごしている。
坂柳のサポート役、といえば聞こえはいい。だがその実態は、他クラスの動向を探るスパイ行為だったり、同じクラスの葛城康平の足を引っ張るための工作活動だったりと、どれもこれも嫌な仕事ばかりだった。それでも、歪んだ知性を持つ坂柳に振り回されている間だけは、少なくとも退屈することだけはなかった。
そんな奇妙な日常のパワーバランスが、先の無人島試験を境に大きく揺らぎ始めた。
戦果を上げたのは、無能だと見下していたはずの葛城だった。
噂によれば、わざと龍園たちのクラスと契約を結ぶフリをして油断させ、Cクラスを上手くコントロールして、龍園との契約を綺麗に踏み倒したらしい。生真面目で融通の利かないあの葛城に、そんな高度な立ち回りができるとは到底思えなかったが、結局真相は分からないままだった。
ともあれ、この一戦で葛城派は一気に勢力を拡大した。
逆に坂柳派は、私と、いま隣で怯えている山村、それにやたらと馴れ馴れしい橋本や、何を考えているのか分からない強面の鬼頭を含めて、わずか十二、三人程度にまで縮小してしまった。
クラス内での肩身は随分と狭くなったけれど、私自身はどうでもよかった。私はもともと一人でいる方が平気だし、むしろ坂柳という監視の目がいないこの豪華客船の旅を、羽を伸ばして楽しめるならそれでいいとさえ思っていた。
――こいつらに、捕まるまでは。
事の始まりは、今朝の朝食を終えた直後だった。
現Dクラスの男子生徒の一人から、妙に勿体ぶった態度で「クラス間のポイント取引について話がある」と持ちかけられた。
怪しいとは思ったし、何より面倒臭い。そう断ろうとしたのだが、相手があまりにしつこく食い下がってくるため、私は確実な証拠を残そうと考えた。最下層のフロアまで連れてこられたところで、坂柳に通話をつなぎ、会話をそのまま聞かせようとポケットから携帯を取り出した――その瞬間だった。
背後から伸びてきた乱暴な手に、携帯を力任せに奪い取られた。
驚く暇もなく、私と山村は屈強な男子生徒たちに羽交い締めにされ、抵抗の虚しくその場に組み伏せられてしまったのだ。
冷たいコンクリートの床に倒れ込み、自由を奪われた私を、龍園翔はゴミを見るような底冷えのする目で下卑た笑みを浮かべながら見下ろしていた。
「くはっ、良いおもちゃが釣れたじゃねえか。なぁ、葛城の野郎、どんな顔してここに駆けてくるか見ものだな」
龍園はそう吐き捨てると、すぐに自分の手駒であるDクラスのメンバーを使い、葛城をこの最下層へと呼び出させた。
縄が肌に食い込む鈍い痛みと、思い通りにいかない苛立ちの中で、私はただ、暗い天井を睨みつけることしかできなかった。
床に転がされたままの私の耳に、龍園が誰かと密談している声が届いていた。
高圧的な龍園の口調に対し、相手はどこか余裕を含んだ大人の女性の声。死角になっていて姿は見えないが、この船に乗っている大人の女といえば自ずと限られる。教師だ。龍園のやつ、よりによって学校の教師を買収でもしたのだろうか。もしそうだとしたら、この学校のルールはどうなっているんだか。
そんな戸惑いをかき消すように、今度は背後から鈍い金属音と激しい会話が聞こえてきた。駆けつけてきた葛城が、アルベルトに押さえつけられて苦悶の声を漏らしている。
「……まずは、この契約を締結してもらおうか」
龍園の邪悪な声。葛城の拒絶と、直後に訪れた短い沈黙。
見えなくても分かった。葛城は、あまりにも不平等で致命的な契約を結ばされたのだ。坂柳の妨害ばかりしていた私が、よりによってあの葛城の、ひいてはAクラス全体の足を引っ張る最大のお荷物になってしまった。猛烈な自己嫌悪が胸の奥からせり上がってくる。
「認めねえ、か。なら、この女たちの学園生活はここで終わりだな」
直後、頭皮に引きちぎれるような激痛が走った。
「……っくあ……!」
龍園の手によって乱暴に髪の毛を引っ張り上げられ、視界が強制的に上を向かされる。屈辱だった。こんな底辺の男に弄ばれ、痛みに悶える声を漏らしてしまう自分自身が、堪らなく惨めで、許せなかった。
龍園は、その痛みを葛城への脅迫材料に使い、さらに信じられない命令を下した。現Cクラスのリーダーである、凍影雪波をここに呼び出せと。
葛城の足音が遠ざかった後、私は痛む首を庇いながら、少しでも状況を把握しようと這いつくばるように身体をずらした。
視界に映ったのは、絶望的な光景だった。
巨体のアルベルトを筆頭に、龍園の息がかかったガラの悪い不良たちが退路を完全に塞いでいる。さらに、私をここに誘い出した数人の女子生徒までもが、冷酷な視線で私たちを取り囲んでいた。
(……無理。ここを突破するなんて、絶対に不可能……)
絶望が、頭の先から冷水のように染み渡っていく。
たとえ誰かが助けに来たとしても、この暴力の暴力の前に返り討ちに遭うだけだ。そして何より、私のせいでクラスのプライベートポイントが奪われる契約を結ばされた。これからの学校生活は、間違いなく地獄になる。Aクラスの全員から「クラスを破滅に導いたお荷物」として、冷たい白い目で見られ続けるのだ。
誰かに好かれたいなんて大それたことは思っていなかった。けれど、明確な憎悪を向けられて嫌われ続けるのは、想像するだけで息が詰まるほど辛かった。
ふと隣を見ると、同じように転がされている山村は、恐怖とプレッシャーに押しつぶされそうな、今にも泣き出しそうな顔をしていた。内気なあの娘にとって、この状況は私以上に過酷で、辛いはずだ。
その時、沈黙を破って、フロアの重い鉄扉が大きく開いた。
心臓が跳ね上がる。
きっと、戻ってきた葛城の後ろに、凍影という男が立っているのだろう。冷静に考えれば、他クラスの私たちのために、凍影がこんなリスクを背負ってやってくる必要なんてどこにもない。私たちがここでどうなろうが、見捨てて無視すれば済む話だ。なぜ来たのか。葛城のやつ、凍影に何も事情を説明せずに連れてきたのだろうか。
(可哀想に。凍影ってやつも、ここで龍園に徹底的にやられるのね……)
これから始まるであろう、さらなる暴力と理不尽の連鎖を予感して、私は目を閉じようとした。
けど、最下層のフロアに入ってきた凍影雪波の姿を見て、私は息を呑んだ。
以前に遠目から見かけたことはあったが、近くで見る彼は思わず見惚れてしまうほどの端正な美青年だった。しかし、その端正な顔立ちとは裏腹に、張り詰めた空気は一瞬で爆発する。
部屋に足を踏み入れた瞬間、待ち構えていたDクラスの不良たちが一斉に凍影を取り囲もうと群がった。
(……やっぱり。やられるんだ……)
私は絶望のあまり目を背けそうになった。他クラスの男を巻き込み、目の前で暴力に晒される。これ以上ない屈辱が胸を締め付けた。
けれど、次の瞬間に起きた光景を、私の脳は正しく理解できなかった。
――ドンッ、と爆発的な踏み込みの音が響く。凍影はその場で、人間の限界を超えたような圧倒的な跳躍を見せ、群がる男たちの頭上を鮮やかに飛び越えたのだ。
そこからは信じられないような攻防が続いた。Dクラスの連中が怒号を上げて凍影に掴みかかろうとするが、凍影は衣服の端さえ掠らせない。紙一重の体捌きで攻撃をすべていなし、誰一人として彼を捕まえることができないのだ。
そんな膠着する戦況に、龍園の顔から次第に余裕が消え、苛立ちの混じった狂暴な笑みを浮かべて凍影を睨みつけた。
「おいおい凍影ぇ! 何チョロチョロ逃げ回ってんだよ。大人しく捕まりやがれ!」
龍園はそう吐き捨てると、床に転がる私と山村をこれ見よがしに踏みつけるような仕草をして、凍影を傲然と見た。
「テメェがこれ以上無駄な抵抗を続けるって言うなら、まずこの女たちの顔面をクシャクシャに叩き潰してやる。それが嫌なら、今すぐあの無人島でのクソみたいな契約を解除しろ! ついでにお前のクラスの優待者が誰かも、今ここで大人しく吐き出しやがれ。それがテメェが助かる唯一の道だ、分かってんのかぁ?」
人質の命運を完全に握っているという絶対的な優位性から、龍園は上から目線で凍影に理不尽な要求を突きつける。
さらにその時、死角の暗がりから、今度はヒステリックに虚勢を張った大人の女性の声――誰だか分かってしまったが、星之宮先生の、いかにも教師面をした高圧的な声が響いてきた。
「そうよ凍影くん! いい加減にしなさい! 生徒の分際で教師をハメるような真似をして、タダで済むと思っているの!? お願いだから、あの動画を今すぐ消して! 消しなさいよ! あなた一人がここでどんなに足掻いたって、学校側が私の言うこととあなたの言うこと、どちらを信じるかくらい分かるでしょう? 自分の立場を弁えなさい!」
教師という「権力」と「大人の立場」を盾に、星之宮はヒステリックに凍影をねじ伏せようと捲し立てる。何かの動画を弱みとして握られているらしく、焦りから上から目線で必死に命令していた。
そんな2人の傲慢な脅しに対しても、凍影は表情一つ変えず、ただ冷徹に白を切り通す。
そのどこまでも自分たちを見下しているかのような態度に、龍園の頭に完全に血が上った。
「チッ……どこまでもスカしやがって……! だったらまずは、その余裕な面をへし折ってやる!」
勝負を一瞬で決めるため、龍園は狂暴な足取りでこちらへと向かって足を踏み出した。私を直接痛めつけ、人質としての価値を凍影に見せつけることで、その心を完璧にへし折るつもりだ。
危ない、そう思った次の瞬間だった。
凍影が、まるで重力を無視するように壁を蹴り、天井を這うような軌道で疾走した。そして重力に従って鮮やかに着地すると、一瞬にして龍園と私の間の空間に滑り込んできたのだ。
暗がりの中で、凍影の綺麗な銀髪が、一筋の閃光のように美しくきらめいた。
「この野郎がぁッ!」
遮られた龍園が、顔を般若のように歪めて凍影に殴りかかる。しかし凍影は避けない。背後にある私を守るため、その強烈な拳をあえて避けず、自身の背中でまともに受け止めた。
「オラァッ!」
さらに、横から割り込んできた巨漢のアルベルトが、丸太のような腕で凍影を激しく殴りつける。
2人の容赦ない暴力が、凍影一人の身体に集中していた。背後の私を一歩も動かさないため、凍影は完全に防戦一方の様子だった。鈍い打撃音が室内に響き渡るたび、私の心臓が恐怖で縮み上がる。
(もういいから! 逃げて、お願いだから逃げて……!)
声にならない悲鳴を上げるが、猿轡のせいでただのくぐもった音にしかならない。目の前で繰り広げられる暴力の光景は、それほどまでに強烈で、凄惨だった。
だが、どれだけ蹴りと拳を受けようとも、凍影の身体は、私の前を遮る強固な壁として微動だにしなかった。
やがて、ひとしきり攻撃を浴びせた龍園たちが息を荒くした瞬間、凍影が静かに、しかし冷徹な声で告げた。
「――正当防衛の証拠は、しっかり録った。おい龍園、あれを見ろ」
凍影が、感情の消えた瞳で頭上を指さす。釣られて私が上を見上げると、そこには信じられない光景があった。
天井の鉄骨の上、凍影と同じクラスの変人、高円寺六助が、優雅な笑みを浮かべながら携帯のカメラをこちらにしっかりと向けていたのだ。
「なっ……貴様、いつからそこに……ッ! アルベルト、あのバカを叩き落とせ!」
激昂した龍園とアルベルトが、証拠を隠滅すべく高円寺を捕らえようと動き出す。だが、それを凍影が許すはずもなかった。
「行かせるか」
凍影が2人の前に立ち塞がった。
そして、そこから先は、私には何が起きているのか全く理解できなかった。圧倒的な暴力の主だったはずの龍園とアルベルトの巨体が、まるでただの人形のように、何度も、何度もコンクリートの床に叩きつけられていく。凍影の動きは速すぎて、残像しか見えない。
それだけでは終わらなかった。凍影は、色めき立って向かってきた他のDクラスの不良たちをも、無駄のない最小限の動きであっさりと、文字通り一瞬で床に転がして見せたのだ。
静まり返るフロア。床に這いつくばる龍園たちを見て、残されたDクラスの生徒たちは完全に恐怖に支配され、ガタガタと震えながら一歩も動けなくなっていた。
信じられなかった。一人の男が、この絶望的な暴力を腕力だけで完全に蹂躙してしまったのだ。
荒い息一つ乱さず、圧倒的な強さでその場を支配した凍影が、ゆっくりとこちらを振り返った。
その綺麗な瞳が、床に転がる私を真っ直ぐに見つめていた。
葛城に導かれ、監視カメラの視線すら届かない最下層のフロアへと連れられた時は、正直に言って肝を冷やした。
エリアに足を踏み入れる少し前、いつの間にか背後から高円寺の気配が消えていた。あいつのことだ、おそらく俺がDクラスの雑魚どもを引きつけている間に、音もなく反対側の扉へと迂回して侵入したのだろう。常人離れした身のこなしには呆れるほかない。
周囲を見渡すと、先ほどまで龍園の背後でヒステリックに声を張り上げていた星之宮先生の姿は、いつの間にか消え失せていた。保身のためにいち早く逃げ出したらしい。
「……っ」
床に無残に転がされている女子生徒たちに視線を落とした瞬間、俺は内心で息を呑んだ。
こうして間近でちゃんと神室真澄を見るのは、これが初めてだった。原作の知識としては知っていたが、実物の彼女はどこか冷ややかで、それでいて強い存在感を放っている。もっとも、今はそんな初対面の感動に浸っている場合ではない。
俺は神室の元へ素早く歩み寄ると、体に深く食い込んでいた縄と、言葉を奪っていた猿轡を迅速に解いた。
「……あんた」
神室が驚いたように掠れた声を漏らす。俺はそれに答えず、すぐ隣で身を縮めているもう一人の少女へ手を伸ばした。山村美紀。彼女の拘束も同じように手早く解いていく。
「神室! 山村! 大丈夫か……っ!!」
自由になった2人の元へ、拘束から逃れた葛城が血相を変えて駆け寄ってきた。
山村は極限の恐怖から解放された安堵ゆえか、今にも泣き出しそうな顔で葛城を見上げ、神室はただ無言のまま、じっと俺の顔を見つめていた。
葛城が2人に怪我がないかを何度も確認し、無事であると分かると、その厳格な顔に怒りの炎が再び灯った。彼は床にのされて息も絶え絶えになっている龍園を見下ろし、低く重い声で言い放った。
「龍園。俺と結んだ先ほどの理不尽な契約を、今すぐ解除しろ。契約書をこちらに渡すんだ」
殴り倒され、口端から血を流しながらも、龍園は不敵な笑みを崩さずに歪んだ唇を釣り上げた。
「へっ……くはは、残念だったなぁ葛城。あの契約書なら、さっき一足先に星之宮の奴に渡しちまったぜ。もう俺の手元にはねえ。解消なんてできねえよ」
学校のルールを逆手に取った、龍園なりの悪あがきだろう。契約書が教師の手にある以上、生徒間での解決は不可能だと踏んでのブラフだ。俺はその会話に静かに割って入った。
「残念だが龍園、その言葉は通用しないぞ。俺は元から、星之宮先生をこの学園から完全に追い払うつもりで動いている。あの人が契約書を持っていようが、何の意味もない」
「……あぁ?」
龍園の細い目が、怪訝そうに俺を睨みつける。
「へっ、先のことなんか分からねえぜ。だがよ……条件がある。俺を学校側に訴えて退学に追い込んでも構わねえが、俺以外のクラスの奴らに罰を与えねえって約束するなら、あの契約は無かったことにしてやってもいい。Aクラスのポイントには、これ以上手を付けねえよ」
「自分一人を訴えても良い、ということか」
「好きにしやがれ。ただし、これ以上俺のクラスを巻き込むんじゃねえ」
求心力を失いながらも、最後にクラスの連中を守ろうとするような物言いは、この男なりの奇妙なプライドなのかもしれない。
「ふむ、実に見苦しく、そして美しい幕引きだねぇ!」
その時、天井の鉄骨から、高円寺が重力を感じさせない軽やかさでふわりとフロアに降り立ってきた。相変わらず一糸乱れぬ美しい動作で前髪をかき上げる。
「麗しいレディー達、無事かね? 安心したまえ、この私が全てを特等席で見届けていた。故に君達はもう、世界で一番安全な場所にいるのさ」
高円寺は神室たちに極上の笑みを向けた後、視線を俺へと移した。
「凍影ボーイ。悪くない立ち回りだったよ。最も、この私であれば傷一つ負わずに、よりエレガントに片付けて見せたがね? 咄嗟のやり口とは言え君はまだ、成長の余地を残した発展途上の少年だ」
「……そうみたいだな」
実際のところ、龍園たちの猛攻をまともに受けた身体は、すでに痛みを感じなくなっていた。前世の知識があっても、不測の事態は起きる。今回は本当に予想外の連続だったが、最悪の結果だけは免れた。
「戻ろう。クラスの奴らが心配している」
俺の言葉に、葛城が強く頷いた。
「ああ、そうだな……。動けるか、山村」
「へ、平気です……」
山村はまだ足元を震わせながらも、葛城の支えを借りてしっかりと立ち上がった。
俺たちは、床に倒れ伏したままの龍園たちをその場に放って置き、重苦しい最下層のエリアを後にした。
静まり返った一本道を歩いていると、不意に隣を歩く神室が、品定めをするような鋭い視線をこちらに投げかけてきた。
「ねえ、凍影。あんたと葛城って、一体どんな関係なの? 他クラスのあんたが、あいつのためにここまで命を張る理由が分からないんだけど」
神室の真っ直ぐな問いに対し、俺は前を向いたまま、少しだけ口元を緩めて短く答えた。
「――友達だよ」
その一言に、神室は意外そうな顔をしてそれ以上何も言ってこなかった。ただ、その瞳に宿る俺への警戒の色が、ほんの少しだけ和らいだような気がした。