「ふ〜、さっぱりした〜」
「いや〜いい湯だったな!」
「全くだ。しかし海を一望できる露天風呂を2人で独占できるとは贅沢だよなぁ」
「俺は露天風呂は初めだけど良いもんだな」
食後に温泉。なんと言う贅沢か。
俺達は上機嫌で部屋に戻ってきた。
「おや?織斑先生居ないな」
「温泉にでも行ってるんじゃない?」
まぁ部屋にいないんだからそうなんだろう。おっどうやら帰ってきたみたいだな。
「ん?なんだ、女の1人や2人連れ込まないとはつまらない奴らだ」
「だから……はぁ、もういいよ。それは」
「さすがに教員の部屋に連れ込んだらアウトですよ」
「(ムリムリ。)」
第1この部屋は俺と一夏の部屋でもあるけど『織斑先生』の部屋な訳で、いかがわしいことなんてやったら後でどんな目に遭わされるかわかったもんじゃない。
ちなみに、織斑先生も温泉に行っていたみたいで、髪はしっとりと濡れている。艶のかかった黒髪は織斑先生の美貌と相まって色っぽさまで加味している。
すると俺のカバンがなんか震えていた。何これ武者震い?
「アストラス、お前のカバンからだぞ」
「誰だろう?俺の友達?」
俺はバックからスマホを取り出して画面を見るとそこには
「………母さん?」
ドイツ本国にいる母親からの着信だ。何かあったんだろうか?
「すいません、ちょっと電話してきます」
「あぁ。」
俺は部屋を出て廊下を歩いて適当な所で腰を降ろして通話ボタンを押した。
「…………久しぶり。母さん」
『あら?結構連絡してるのにその態度?』
「ごめん……」
俺の母、アデラ・アストラス。年齢は35歳
母さんはIS企業ブレーメル社の技術顧問で俺がISを起動したと聞いた途端ドイツ軍と速攻で契約を結んだ経緯がある。
『ライディ……あなたがISを動かしたって聞いてびっくりしたわ。それにIS学園にいるんでしょ? 大丈夫?お父さんの仇ーって言ってない? モルドレッド君から聞いたんだけど貴方彼女と海行くとかなんとか……』
「母さんそれ信じたらあかんやつ。学校行事だから。」
『あらそう?』
モルのやつ後でしばいてやる。
「でも何で俺に連絡したんだ?」
『実は シュヴァルツェア・クーゲルに使われる高機動パッケージの件で遅れそうなのよ』
「な、何で!?」
合宿2日目はISの各種装備の試験運用とデータ取りが行われる。それが遅れるとなるとデータを取れなくなる本国にとっても痛手だ。
『本当に申し訳ないと思ってるの他の装備は何とかなりそうなんだけどね』
「何があったの」
『大型高機動ブースターのエンジントラブルでスケジュールが圧迫しちゃって武装が遅れちゃったからホルツドルフ航空基地の整備班とうちの技術者を日本に呼び寄せるわ』
「なるほど。仕方がないって訳か」
『ごめんなさいね』
「あまり背負い込まないでよ母さん」
母さんは昔から背負い込む社畜みたいな性格してるから此処でフォローは欠かせない
『ありがとねライディ。』
「それと一度夏休み帰るから」
『本当に?』
「うん」
『なら余計に頑張れるわ。 ライディも頑張ってね』
「はーい」
そう言い母さんは電話を切った。
もしかしてモルが臨海合宿前に言ってた事ってまさか…………
そう考えながらも俺はスマホの電源を切って部屋に戻る為に廊下を歩きだした。
その頃セシリアが居る部屋では、一夏の部屋に行けない女子達が嘆いていた。
「あーあ、せっかく織斑君とアストラス君と一緒に遊ぼうと思って色々持ってきたのに……」
「織斑先生の部屋じゃねぇ」
「「「はぁ……」」」
3人のため息を他所にセシリアはというと食事の後に風呂を1回、シャワーを1回浴びたセシリアが鼻歌を歌いながら上機嫌で着替えていた。
「〜〜~♪」
身に纏うのは旅館の浴衣だが、素肌に着けているのはさっきまでとは違う下着。
結構本気ですね
(あぁっ、もしかしたら……もしかしたらと思い用意しておいた甲斐がありましたわ)
その妙にウキウキとした様子から不思議に思ったクラスメイトの1人、のほほんさんが腰を低くして近づいて来ているが、それにセシリアは気づかずに鼻歌交じりにコロンを吹いていた。
「あ〜〜〜~。せっしーがえっちぃ下着つけてる〜」
いつもは半開きの目をしている彼女だが、なぜか観察力と洞察力に長けているのほほんさんがそう告げると、その言葉を聞いて、さすがのセシリアもギクリとしてしまった。なぜなら……黒のレースつきだもんね。
「なにっ!?脱がせ脱がせぇ〜!」
「剥け〜。身ぐるみ置いてけ〜!」
「きゃあああっ!? やっ、やめっ……引っ張らないで〜!」
女3人集まれば姦しいとはよく言ったもので、とすれば9人部屋のここは姦しい×3である。
特に目当ての一夏とライディと遊べない分、エネルギーと暇も持て余している。そういう女子はちょっとのことで暴走するのをセシリアは我が身と同じくわかっていた。
「わ。本当にエロい下着つけてる……」
「えろ〜、えろ〜」
「なになに、勝負下着?織斑君の所に行けないのにそんなの着ちゃって」
「まぁまぁ〜。セシリアったらおませさん☆」
口々に好きなことを言いながら、最後に声を揃える女子一同。
「「「セシリアはエロいなぁ」」」
「え、エロくありません!こ、これは、その、身だしなみ……そう、身だしなみですわ!」
ノブレス・オブリージュを心掛けてるセシリアはもみくちゃにされて乱れた浴衣を直しながら真っ赤になって反論すると同時に自分だけ一夏の部屋に誘われていることがバレませんようにと心の中で密かに祈っていた。
「そういえばなんか念入りに体を洗ってたよね?」
「っ!!」
「その後シャワーも浴びてたし、今もなんでかメイクしてるし?」
「……………!!!」
セシリアは心臓がバクバクに鳴っていた。もしバレたら………
「なんか、怪しい?」
「あ、あ、怪しくなどありませんわ! これは女として当然の身だしなみ。わたくし用がありますのでこれで失礼します!」
ちょっと気分を害した風に言って立ち上がる。このまま部屋を出てしまえば『わたくしの勝利ですわ!』と考えるセシリアだったが……。
現実は残酷だった。
「う〜ん? くんくん。せっしーがいつも使ってる香水じゃないよね。えぇと、この匂いはレリエルのナンバーシックス?わ〜高級品だ〜!」
のほほんさんの言葉に女子ズの顔がこわばる。
しまった!と思うが時すでに遅し。女子の執拗なまでの追求が始まった。
「レリエルのナンバーシックス!?一振10万円って言われてる、あの!?」
「しかも毎年100個しか生産されないシリアルナンバー入りよ、あれ!」
「実物持ってるの!?ちょっと見せて!」
「え、えぇ見ても構いませんから、わたくしはこれで……」
「「「ダメ!!」」」
えぇ〜……と心の中でツッコミ&落胆するセシリアだったが、女子ズはその腕をがっちりキープ。しっかりと掴んですぐには離さない。
「これ、どこで手に入れたの!?お金出してもそうそう買えないって話じゃない」
「実家の方がレリエル社と懇意にしてまして……」
「うわ!そういえばセシリアって超がつくほどお金持ちなんだった!」
「いえ、わたくしというか、わたくしの実家がですけれど……」
「匂い嗅がせて!」
「あ、あの、それでしたらコロンを使っても構いませんから、わたくしはこれで……」
「「「ダメ!!」」」
容赦ないっすね(呆れ)
「もったいないじゃん!」
「セシリアがつけているんなら、それかげばOK!」
「かぐ〜かぐ〜」
両手を広げてにじり寄って来る女子ズ。嫌な予感がしてセシリアは後ずさるが、すぐに壁に行き当たった。
「ふっふっふっ。逃がしはしないわよ」
「さぁ大人しく嗅がれなさい!」
「よいではないか〜よいではないか〜」
じりじり。寄ってくる女子ズの目は怪しく光り輝いている。
「い、い、いやあああああ〜っ!!」
「な……何が起きてんだ……?!」
「(ライディ! ココハイッタンヒクゾ! ナンカアブナイ!)」
「っあぁそうだな!」
酷い目に遭いたくなかった俺は即座に織斑先生の部屋に行ったのだった
ーー♢ーー
「はぁ………酷い目に遭いましたわ………」
セシリアは女子達に揉みくちゃにされて満身創痍だったがあまりダメージは気にしてなかった
(でも、これでやっとーー!)
一夏の部屋に行ける!そう思うと、今までの疲れもダメージも吹き飛んだ。乱れた服装も、わずか10数秒で元に戻る。
(の、喉の調子も整えておきませんと。ん、んっ)
浮かれているのが歩調にも表れている。今にもスキップをしそうな足取りは、だんだんと早足になって目的の場所へと向かった。
………が!!
「………………」
「………………」
部屋の前、その入り口に張り付いている女子が2人。
「鈴さん? それに箒さんまで。一体そこで何をーー」
「シッ!!」
そう言うなり鈴はセシリアの口を塞ぐ。
状況がわからずにもがいていると、ふとドアの向こうから声が聞こえた。
『千冬姉、久しぶりだからちょっと緊張してる?』
『そんな訳あるか。馬鹿者。……んっ!す、少しは加減をしろ……』
『はいはい。んじゃあ、ここは……と』
『くあっ! そ、そこは……やめっ、つぅっ!!』
『すぐに良くなるって。だいぶ溜まってるみたいだし、ね』
『あぁぁっ!』
………………。
「こ、こ、これは、一体何ですの……?」
ひくひくと口元を震わせ、引きつった笑みを浮かべながらそう尋ねるセシリア。しかし返ってきたのはただただ沈黙だけだった。
『そうだ、ライディもやるか?』
デデドン(迫真)
まさかの一夏はライディを誘ったのだ
『え、でも痛そうだし辞めとくわ』
『痛いのは最初なだけだから。』
『あぁそう? ならお願いしよっかな』
(おおおお願いしちゃいますの!?)
セシリアは即座にラウラとシャルロットに連絡を取った
織斑先生の喘ぐ声を聞いてセシリアはいけないものを妄想してしまった
『ぐぁぁぁぁ!!これ良いぞマジで!!』
『そうか!ここが良いのか!』
『ぉぉぉぉっ!!す、凄いぃぃぃぃぃぃぃ!』
あの軍人のライディがありえない声を出してて三名はドン引き、その間に二人は到着した
「セシリア!一夏が織斑教官となんかしてるのは本当か!!」
「はい!このままでバッチリと!」
ラウラは織斑先生とライディと一夏がいけない関係になってると絶望する
「あぅ………」
「ラウラしっかり!!」
しかし彼達は止まんなかった
『そろそろ締めといくか、結構強めにいくぞ?』
『これ以上があるのか!? よぉぉし男は度胸だドンと来やがれ!!!』
「ぬわああああ!!辞めてくれぇぇぇ!!」
「辞めてくださいましぃぃぃ!!!!」
ラウラとセシリアが勢いよく襖を開けると一夏ラバーズがなだれ込んできた
しかし彼女達が目に映ったのは………
「いだだだだだだ!!!一夏!死ぬ!死ぬ!!死ぬってこれ!!」
「流石に死なないって。ほら行くぞ」
「ふんがぁぁぁぁ!!!!!」
「(高◯みゆき?)」
繰り広げられていたのはライディの背中にまたがった一夏が彼の肩らへんを指で押していた。押されているライディはこの世のものとは思えない声をこれまた凄い表情で発している。
「んがぁ……いってぇ………あれ?ラウラにシャルロット?」
「えと、その………」
「おっ?箒とセシリアと鈴も揃ってどうしたんだ?」
「いや、お前こそ何をしているんだ一夏?」
箒が唖然としながら言葉を紡いでいく。
「何ってマッサージだけど」
「「「「マッサージー?」」」」
初めて聞いた風に五人揃って面白いように首をかしげる。
「おー!肩が軽いわ。一夏ってこんな事も出来たのかよ、ISよりこっち方面で商売した方が儲かるし売れそうだぞ。イケメン整体師が貴女のコリをほぐしますって感じで」
「いやそれはないって。てかなんだよイケメンって」
「発言に気をつけろ。さもないと遠心力で殴る」
「あかんあかんそれはやめて!」
そう言い立ち上がりながらも腕をぐるぐる回したりするライディだったが、五人のあっけらかんとした表情を見て呆れた
因みにクーゲルはいつのまにかネックレスに戻ってた。
「お前達いくら一夏が年上好きでなくても流石にしねぇよ」
「誰が年上好きだ!」
「YOU♪」
「俺かよ!」
なんか自由型のいい子は好き放題って聞こえそうなフレーズでツッコミを入れるが織斑先生も茶々を入れる
「そうあんまいじるなアストラス。皆が困ってるし今時の女子はどれもこれもいっちょ前に妄想が激しいものだ」
「お、織斑先生!別に私達はそんな」
「それって経験則か千冬姉?」
「一夏それ一歩間違えたらセクハラだぞ?」
「私の場合はそんな暇などなかったよ。あと織斑先生と呼べ」
とまぁ別案でホッとしたけど一夏はセシリアを見て思い出した
「でも来てくれたしセシリア、さっさと始めようぜ」
ぽんぽんとベッドを叩いてセシリアを呼ぶ一夏。
それに対して、セシリアはあまりにもストレートな誘いにボッと真っ赤になった。
「え、あの、織斑先生とライディさんもいらっしゃいますし、その……」
「? 別に良いじゃないか。俺も体が温まってるし、早く始めよう」
「い、いえ、でも、こういうのは、その、雰囲気が……」
「…………?」
いまいちセシリアの言葉の意図が掴めない一夏は不思議そうな顔をするだけで、またベッドをぽんぽんと叩いて開始を促す。
どうにも困ったセシリアがちらりと織斑先生を見ると、向こうは向こうで『私に構わず始めろ』と無言で告げてきた。
ライディはなんか笑いを堪えていた
(か、構わないなんて出来るわけないでしょうに……!)
箒達もみてる中何が起こるか分からないハラハラな状況にセシリアは四面楚歌となる。
(ううっ……! お、女は度胸、ですわ……!)
そう心で叫び、半ばヤケクソ気味にベッドに横たわる。
ドクッドクッと高鳴る胸は今にも張り裂けそうで、セシリアは期待と不安とに踊らされたままぎゅっと目を閉じた。
「……………………」
けれど何も始まらない。
あれ…………?と思ってセシリアは右目を半分だけ開けると、一夏が口を開いた。
「セシリア、うつ伏せじゃないとできないぞ」
「え?え?う、うつ伏せで……しますの?」
「うん」
「そ、そうですか…………」
「ぷ……くく……く……」
そのセシリアの反応に俺は笑いを堪えるしかなかった。
「じゃあ、始めるぞ!」
「は、はいっ!」
思わず裏返ってしまった声を恥じらうような余裕はもうない。直ぐに訪れるであろう手の感触を待って、セシリアの心臓はいよいよ破裂寸前にまで暴れ始めた。
そしてーーー
「ん、しょっ……」
ギュゥゥゥ〜〜~〜〜~ッ。
セシリアの腰に一点集中で痛みが走る!
「!? いたたたっ、いたっ! い、い、いいっ、一夏さん!? な、な、何をしてーーあううぅっ!」
「何って、指圧」
「し…………あつ…………?」
「そう、腰の」
「腰…………」
きょとんとしたセシリアは、一夏の言葉をオウム返しにする。
「え、ええと、一夏さん。部屋に誘ったのは、もしかしてこの……」
「おう。マッサージをサービスしようと思ってな。セシリアって班部屋だろ?それじゃ落ち着かないだろうから、この部屋に呼んだんだ」
…………………チーン
閑古鳥が鳴いたと同時、セシリアは心の中で泣いた、
「セシリア。」
「…………ライディさん……?」
「あんたに限った話じゃないんだけどさ。これだけは言わせて」
「…………何ですの」
「自意識過剰。」
そう言った途端ライディは今まで堪えていた感情が止まらずに爆笑してしまった
「あっははははははwwwwwwあーっ………あーっ………あっ……ダアッハハハハハハハハwwwwwwwww」
「アストラス……笑うな……ぷっ……オルコットが可哀想……だろwwwwwwwwwww」
そう言う織斑先生も肩を震わせている。
「ぶ、無様です……わたくし……」
「うん? ど、どうした。そんなに痛かったか?」
「えぇとても……致命的なまでに……」
「そ、そりゃ悪かった。すまん、優しくする」
「もうなんでもいいです……」
深い深い闇より深いため息を漏らしたセシリア。それと一緒に魂まで抜けてしまっているかのような、疲労と絶望と諦観と自嘲が綯い交ぜになった表情をする。
しかし、マッサージを始めるとその心地良さと一夏との会話もあって、自然と気分が回復し高揚していった。
「これくらいだったら大丈夫か?」
「えぇ……。気持ちいいです……」
ぐっ、ぐっ、と親指で背骨の付け根、その左右両端を指圧する。
「それにしても、腰のコリが酷いな。セシリアって何かやってるのか?」
「んっ。えぇ、たしなむ程度にバイオリンを。そ、そこは、ちょっと苦しいです…………」
「おぉ、悪い。じゃあここは指圧じゃないと方が良いな」
親指を離し、手のひらの下部で静かに圧力をかけていく。
さっきまでの点での指圧ではなく面でのマッサージは心地よい負荷で体をほぐす。その感触が穏やかな快感へと変わるのはすぐで、セシリアの口から思わず暖色のため息が漏れた。
「はぁぁ……。一夏さんって上手ですのね…………」
「まぁ、昔から千冬姉にしてたしなマッサージは」
「……それと、女の扱いも……」
わずかに批難を含めている声は、けれど一夏聞こえないように小さく響く。
実際マッサージは上手い為ライディは茶々を入れなかった。ガチで良かったからだ
「じゃあ、このまま背筋を上に行くからな」
「はい……。お任せしますわ……」
セシリアは夢心地でぼんやりと答える。
「重点的にしてほしいところとかあるか?」
「それもお任せします……」
「ほいよ。じゃあしっかり看させてもらおうかな」
(ん…………。本当に眠く……なって……)
ぼーっとした頭で考えながら、次第にその思考も緩やかになっていく。
ふと、自分が横たわっているベッドに男の匂いーーつまり一夏の匂いを感じて、心臓がどきっと静かに跳ねた。
(いい匂い…………)
もう半分眠りに落ちてしまっているセシリアは、残りの半分も匂いと共に眠りの森へと沈めようとしていた時に。
ムニュッ!!
「!?!?!?」
いきなりお尻を鷲掴みにされたセシリアは完全に眠りかけた意識が一瞬で覚醒する。
(い、い、い、一夏さん? ま、マッサージとはいえ、そんな、大胆な……!)
ドキンッドキンッと高鳴る胸を右手で押さえ、恐る恐る振り向くとーー
「おーマセガキめ」
そこには千冬が遠慮なくセシリアのお尻を握っていた。しかもその顔はイタズラが成功した顔で、けれどタチが悪い事に子供っぽさの欠片もない。ニヤリ、と豹の笑み。
「しかし、歳相応の下着だな。そのうえ黒か」
「え…………きゃあああ!?」
千冬がセシリアのお尻を下からすくい上げるように掴んでいたせいで、まぐれ上がった浴衣の裾からふくよかなヒップがあらわになっていた。もちろん、そこに着けている下着も丸見えになっていた。
豪奢なレースを編み込んだ、面積の少ない『特別な下着』。両サイドを紐で縛ってある。それは脱がされることを前提にしたものだった。
「………………」
一夏は顔を赤くして顔を逸らしていた。その様子にははっきりと『見られた!』ことを意識したセシリアは恥ずかしいを通り越してもう隠れてしまいたかった。尻は隠れていないが。
「せ、先生! 離してください!」
真っ赤になったセシリアがそう叫ぶと、思いの外あっさりと千冬は手を退けた。
「やれやれ。教師の前で淫行を期待するなよ15歳」
「い、い、い、インコっ……!?」
「おいアストラス。他の奴らも連れてこい」
「は……はぃwwwwwぶふぉっwwww」
「無茶苦茶笑ってないで早く」
「はい。」
俺は織斑先生に言われた通りにドアを開けると、そこに居たのは箒に鈴にシャルロットにラウラ。全員が浴衣姿で立っていた。
「一夏、マッサージはもう良いだろう。ほれ、全員好きなところに座れ」
ちょいちょいと手招きをされて、4人はおずおずと部屋に入る。そして言われた通り各人が好きな場所に座った。
「おい一夏、お前はもう一度風呂に入ってこい。部屋を汗臭くされてはかなわん」
「ん。そうする」
「ついでにアストラスお前も行ってこい」
「分かりました。行くぞワンサマー」
「わ、ワンサマー?」
「一夏って英語でワンサマーだからな。」
いきなりどうした、マッサージで壊れたのか?って思いながらも一夏とライディはバスセットを用意して部屋を出た。一夏は部屋にいるヒロインズに『くつろいでいってくれ。って難しいかもしれないけど』と言い残した。
俺も部屋を出る前にみんなに目線をやってから親指をグッと挙げて『頑張れ!』と言ってから出ていった。
「………………」
そして言葉通り、どうしていいかわからない女子が、5人、言われたまま座ったところで止まってしまった。
「おいおい葬式か通夜か? いつものバカ騒ぎはどうした?」
「い、いえ、その……」
「お、織斑先生とこうして話すのは、ええと……」
「は、初めてですし……」
「全く、しょうがない奴らだ。私が飲み物を奢ってやる。篠ノ之、何がいい?」
いきなり名前を呼ばれて、箒はビクッと肩をすくませる。言葉がすぐに出てこずに困ってしまった。
そうこうしているうちに千冬は旅館の備え付けの冷蔵庫を開けて中から清涼飲料水を5人分取り出していく。
「ほれ。ラムネとオレンジジュースとスポーツドリンクにコーヒーそれと紅茶だ。それぞれ他のが良いやつは各人で交換しろ」
そう言われたものの順番に箒、シャルロット、鈴、ラウラ、セシリアと受け取った全員が渡されたもので満足していたので交換会は開かれなかった。
「い、いただきます」
全員が同じ言葉を口にし、次に飲み物を口にする。
女子達の喉がごくりと動いたのを確認した千冬の口には笑みがニヤリと笑っていた。
「飲んだな?」
「は、はい?」
「そりゃ飲みましたけど……」
「な、何か入っていましたの!?」
「失礼な事を言うなバカめ、なに、ちょっとした口封じだ」
そう言うと千冬は冷蔵庫を開けて取り出したのは星のマークが入った缶ビールだった。
(’ω')アサヒィ↓スゥパァ↑ドゥルァァァァイ↓wwwwwである。
プシュッ! と景気のいい音を立てて飛沫と泡が飛び出す。それを唇で受け取って、そのまま千冬はゴクゴクと喉を鳴らした。
「………………」
全員が唖然としている中、千冬は上機嫌でベッドに腰かける。
「ぷはー、本来なら一夏に1作品作らせる所だが……まぁ我慢しよう」
いつも規律と規則に正しく全面厳戒態勢のあの『織斑先生』と目の前の人物が一致せず、全員がまたもやポカーンとしていた。特にラウラなんてさっきから瞬きを繰り返していて目の前の光景が信じられないといった表情をしていた。
「おかしな顔をするな、私だって人間だ。酒だって飲むさ、それとも何か私は作業オイルでも飲む機械生命体に見えたのか?」
「い、いえ!」
「そうでは無いのですが……」
「でも今は……」
「仕事中なんじゃ……」
「………………」
ラウラの開いた口からは何も言葉が出なかった。代わりに貰ったコーヒー缶をごくりと嚥下した。
「硬いこと言うな。それに口止め料は払っただろ?」
そう言う千冬はニヤリと笑い、全員は手元の飲料を流し目で見た、そこでやっと貰った飲み物の意味に気づいて『あっ!』と声を漏らした。
「さて、前座はこの辺で良いだろ。そろそろ肝心の話をするか。おいボーデヴィッヒおかわりを持ってこい」
ラウラに2本目のビールを持ってくるように言って取らせて、また景気のいい音を響かせて千冬が話を続ける。
「お前ら、あいつのどこが良いんだ?」
あいつ、と言ってはいるが全員が誰を指しているかわかっていた。
一夏しかいない。
「わ、私は別に……以前より剣の腕が落ちているのが腹立たしいだけですので」
そう言いラムネを傾けながら箒。
「あたしは、腐れ縁なだけだし……」
スポーツドリンクのフチをなぞりながら、もごもごと言う鈴。
「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけです」
さっきの行動の反発か、ツンとした態度で答えるセシリア。
「ふむ、そうか。では一夏に伝えておこう」
「「「言わなくていいです!」」」
しれっとそんなことを言う千冬に3人はギョッとしてから一斉に詰め寄り、その様子を『はっはっはっ』と笑い声で一蹴してから千冬は缶ビールを傾ける。
「僕は……あの、私は……優しいところ、です……」
ぽつりとそう言ったのはシャルロットで声の小ささとは裏腹にそこには真摯な響があった。
「ほう。しかしなぁ、あいつは誰にでも優しいぞ」
「そ、そうですね……そこがちょっと悔しい……かなぁ」
あははと照れ笑いをしながら、熱くなった頬をぱたぱたと扇ぐシャルロット。その様子が羨ましいのか悔しいのか前述3人はじーっと押し黙ってシャルロットを見つめていた。
「で、お前は?」
さっきから一言も発してないラウラに千冬は話を振る。どうもそれ自体は警戒していないようでラウラはビクッと身をすくませながらも言葉を紡ぎ始めた。
「つ、強いところが、でしょうか……」
「いや弱いだろ」
なんでもない事のように言う千冬に珍しくラウラは食ってかかった。
「つ、強いです。少なくとも私よりも」
そうかねぇ……と言う千冬は2本目のビールを空ける。
「まあ強いか弱いかはさておき、あいつは存外役に立つぞ。家事も料理も中々だし、マッサージだって上手い。まあお前達女子が言うみたいに顔もいいのか? そこはよく分からんが」
一拍おいて織斑先生が立ち上がって一夏ラバーズに向けて挑戦的、かつイタズラめいた眼差しを向けてこう言った。
「というわけで、付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」
「くれるんですか!!?」
まさかの申し出にラバーズの目が俗にいうシイタケ目ばりに輝いた。光量を計ったら何デシベルになるだろう。
「やるかバカ」
「うぇ~~」
しかしそこは織斑千冬、釣り上げた餌をぶんどって即座にキャッチ&リリース。
ラウラですら思わず情けない顔と声をあげてしまった、ラバーズのテンション急降下。
「じゃあお前達に質問を変える。アストラスについてどう思う」
「ライディ………ですか」
なんかライディの話になると皆に緊張が走る。
「アストラスは同年代のお前達と違って復讐心が芽生えている。そこについて皆はどう思う。」
「私は彼の話を聞いた限りだと概ね理解してます」
「わたくしも両親がいませんので分かります」
「あたしもパパ…お父さんと別れてるし……」
「僕は母が死んで父に呼び出されたのでライディが羨ましいと言うか…」
「そもそも親がいません」
ラウラ以外は親の居ない気持ちを理解していた
「そうか。ならお前、もしアストラスが復讐心で暴走しそうになったら止めてくれ。いいな?」
『はい』
幼少期に父親を亡くして高校生にして復讐心を背負ってしまった男を自分達で支えなければいけない
「だがボーデヴィッヒはアストラスの事どう思っているんだ?織斑を嫁宣言しといていざ私の前でアストラスにお膳立てされた時は嬉しそうにしてたな」
「あっ……あれは……そのー……」
さっきの雰囲気とは対照的に緊張が解けてしまう
「そ、それは彼が私の部下だからで…………」
「それを言い訳にできると思うなよ?」
「でも彼と戦ったからもありますし信用ができたからです!」
「そうか。そう言うふうにしてやる」
そうして3本目のビールを口にする千冬の顔は実に楽しそうな表情でそう言った。
ーー♢ーー
湯上りの男子2人が廊下を歩いていた。
「いや〜いい湯だった」
「2回目だけどやっぱり温泉はいいな」
2人の髪はまだ湿り気が残っており女子がこれを見たら倒れるような感じになっている。
一夏の姿はマジで映える。でも俺はどうなんだろ。普通かな?
「ヘックシュン!!」
「湯冷めか?」
「ズズ………いや違う、絶対ラウラがなんか言ったかもしれない」
「なんで分かるんだよ」
「以心伝心?」
「そうなの?」
きっとあの女性空間で俺の悪口とか鬱憤たか言ってるに違いない。
「しかし置いてきたみんな大丈夫かな?」
「出る時みんな震えてたもんな、まるで借りてきた猫だぞ」
「千冬姉って厳しいし怖いけど、ああ見えて話してみると案外普通だし、プライベートじゃだらしいなぜ」
「え、マジで意外。
姉がだらしないは共通認識なの嫌やなぁ
「そういえば、さっき部屋を出た時の電話はなんだったんだ?」
すると一夏は疑問に思い質問してきた。
「あぁ、本国にいる母さんから明日行うはずだった俺のISのパッケージ装備が遅れるって連絡だった」
「へぇーそれは大変だな」
「まぁ大型ブースターのエンジントラブルでまじぴえん。でも一夏の白式にはそう言うのないんよな」
「あぁ、バススロットを雪片弐型で埋まってるらしくてな後付装備が出来ないんだよ」
「武器がしょぼくてバススロット多いクーゲルと武器が強くてバススロット少ない白式」
「変わってくんね?」
「射撃で吹っ飛ぶけどいいか?」
「なら嫌だわww」
「わかるwwww」
そうこうしている間に俺たちは部屋に着くと同時に部屋から女子ズが出てきた。
「あっ」
「おう」
「みんなどうしたよ? 疲れた顔して」
みんな疲れたような顔している。まぁ無理か、だってあの織斑千冬と面向かって喋るなんて色んな意味で疲れるよな。
「ライディ」
「な、なんだ?」
「困ったら私達に相談しろよ」
「クラスメイトの悩みは受け付けますわ」
「友達だもんね」
なんだなんだ箒達がなんか俺を励ましてる。織斑先生何を吹き込んだんだ??
「あ、あとラウラがなんか言いたそうにしてたわよ」
「え?」
な……なんだ?もう謝ったしまだなんかある?
「べ、別にお前は恋愛としてみてないからな!私は一夏一筋だぁぁ!!!」
そう言い残して俺たちの前から爆速で去っていった
「…………ライディどんまい」
「そのまま慰めてくれんか……?」
「いいぜ。ドリンクもあるし」
今の俺に一夏は必要だ。そのまま受け入れよう
こうして長かった合宿初日が終わりを告げた。明日はどうなることやら。
「(ジカイヘツヅク!)」
お前がオチを務めんの?!