「ら、ラウラ!やはり…………」
「あぁ………おそらく
「そんな、馬鹿な……」
ラウラの言葉に今すぐ反論を唱えたかった。
セカンドシフトとはパイロットとインフィニット・ストラトスの経験とシンクロ率の上昇から起きる極稀な超常現象。
といっても乗り続ければ必ずシフトアップするわけではない。現に8年も同じISを乗り続けた古参もシフトアップを行っていないという事例がある。
ISは姿を操縦者とISに適した姿に変化させる。いや、これの場合進化という言葉が正しい。
しかし目の前で光の翼を広げる銀の福音はどうか?
本格起動してから直ぐに暴走し、パイロットは意識不明。試験期間を入れても一月もたっていないのにシフトアップなどあるわけがない。ありえない。
しかし目の前の光景がありえないを現実とする。
本当にセカンドシフトしたかは置いとくにしても。福音は前より進化した。
俺達を葬り去るために。
『……………疑似形態移行完了。銀の鐘パージ、武装更新、【
福音の不気味な機械音声が告げた途端ラウラに急接近してきた
「ラウラ!!!」
ライディがそう叫ぶと同時に福音はケモノの咆哮のような声を発し、ラウラへと襲いかかる。
「なにっ!?」
急接近した福音の動きにかろうじて反応し回避しようとしたが脚を掴まれてしまう。
そして破壊された翼の根元から神々しい光を纏った翼がゆっくりと生成されていく。それはまるで蝶が蛹から孵るかのようにエネルギーの翼がそこにはあった。
「な、なんだ……これは……!?」
ラウラは目の前の福音が自分の脚を掴み、そして破壊された箇所からエネルギーの翼を生やしていくのを見て、これから自分が何をされるのかを悟り体に悪寒がを走った。
そんな中ラウラと福音に接近するISがいた。シャルロットだ。
「ラウラを離せぇっ!」
シャルロットは持っていた武装を換装し近接ブレードを展開して突撃を敢行する。
しかし福音は空いているもう一方の手で受け止められてしまった。
「くっ!」
「よせ!逃げろ! こいつはーーー」
ラウラの言葉が最後まで続かず、ラウラは福音から生えた眩いほどの輝きと美しいさを併せ持ったエネルギーの翼に抱かれた。
その刹那、あのエネルギー弾の雨を0距離で食らいラウラは全身をズタボロにされて海へと堕ちようとしたところ、福音はレーゲンの脚を掴みラウラは空中で逆さまにぶら下がる形になっていた。
「うっ…………」
「ラウラ! よくもっ…………!」
シャルロットは持っていたブレードを捨ててショットガンを呼び出すコール。そして福音の顔面に銃口を向けて引き金を引き、音が響いた……
しかしその音はショットガンのものではなかった。
福音が握っていたラウラをシャルロットに向けて思いっきりぶん投げた。そして手を離すとシャルロットはラウラと一緒に吹き飛んでいった。福音はそこに身体中のヒビから小型のエネルギー翼を生やして、それによるエネルギー弾を放ちシャルロットは気絶しているラウラを庇う形で背中からエネルギー弾を食らう。
「うわあああああ!!」
通信越しに響く声は痛々しく。一際輝いた光翼の中でシャルロットは苦し紛れにシールドを全方向に展開したが焼け石に水でしかなく。
シャルロットは黒煙を上げなから海に落ちていった。
「シャルロット!!よくもやってくれたなぁぁぁぁ!!!!!!」
ライディは怒りのあまり、レールガンを再度標準を合わせ、速射したがそのエネルギー弾は銀の祝福でかき消され、レールガンの砲身が爆破する。
「嘘だろおい!!」
流石に焦った俺はルミナスで防御しながら残った脚部ブースターを吹かせてヴィダールて穿つ為突撃する
「わたくし達も!」
「よくも二人をやってくれたわね!」
ライディの脚部ブースターから放たれるミサイルポットより目眩ししようとしたが,銀の鐘の時より倍増した銀の祝福による弾幕で打ち消されるも止まらずに一矢報いようとした。
が、突然福音は大きく翼を広げて俺を包み込もうとした
「ぐぅっ!!」
「り、鈴!!」
だが鈴が俺を吹き飛ばし、鈴は翼に包み込まれて海へと落ちていった
「鈴さぁぁん!!!」
「鈴!!!」
そのまま小岩に落ちてしまい、脚部ブースターは使い物にならなくなった。
「くそがっ………」
「ライディ!!」
「大丈夫ですの!?」
「悪りぃ二人とも………ちょっとブースターの分離作業入るわ………っ!!」
しかし俺はセシリアの後ろから福音が迫ってることに気づいた
「逃げろセシリア!!!次はあんただ!!」
「くっ……!!」
今度はセシリアがストライク・ガンナーで逃げようとするものの福音はそのまま追いつきて来た。
「あぁもう!近接戦闘は苦手ですのに!!」
「セシリア!これ使え!!」
「ありがとてよ!」
セシリアはブルー・ティアーズの近接用武器《インターセプター》を呼び寄せたの同時にライディが投げたヴィダールを受け取り、二刀流で突き出そうとした。
「これでもくらいなさいっ!!」
(せめて一矢報いるぐらい………!!)
爆発音が響いた。
ナイフとサーベルによる衝突音ではなく爆発音。気付くとセシリアは福音から離れていた。
「な、にが……?」
福音を見やると胸部装甲がひび割れ、蛹から蝶が羽化するように、小さな光翼が生えていた、
福音は決死の覚悟で迫ったセシリアを嘲笑うかのように胸部から生えた銀の祝福をショットガンの要領で放ったのだ。
「なんでも、ありですのね………」
そう言いセシリアも海に落ちた。
「嘘だろ………」
「ライディ………」
このまま俺は死ぬと察したが、反骨精神が死んだ訳はなかった
「このまま負けたら一夏に顔向けできねぇ!! 箒!まだ行けるか!」
「言われなくても!!!!」
俺と箒は自分を奮い立たせて皆を堕とした福音に再び向かったのだった……
ーー♢ーー
花月荘近くの少し離れた無人島付近にてモルとノイマン、その他の整備班の技術官が乗ったドイツの軍船が待機していた
「本部からによると,俺達はどうやら待機らしい」
「待機って……もしかしてライ、アストラス中尉の言った事で?」
「ライディから聞かされたと思うがボーデヴィッヒ少佐が軍事衛星で暴走した銀の福音を見つけたとの事で今IS学園の生徒達が対処に当たってると」
IS学園特記事項第21条のIS学園の生徒はその在学中ありとあらゆる国家・組織・団体に帰属しない。
つまり軍の力すら借りられない状態にある事だ
「このままだとライディの奴は……死ぬな。」
「え!?何とかならないんですか!!」
八方塞がりの中、通信音が鳴ったので通信機によるとホルツドルフ基地からの通信だった
「こちらシャルナール・ノイマン中尉! 何かありましたか!」
『ノイマン中尉!ライディ・アストラス中尉のIS反応から座標を割り出せるか!』
「何をするんですか?」
『今からホルツドルフ基地から遠隔操作型弾道ミサイルを放ちます!!』
基地の通信からいきなりとんでもない事を言い出したかと思ったが実は裏があった。
ーー♢ーー
数分前………ホルツドルフ基地にてエイブラハム・ブリッツ司令が90年代のシャンソンを流しながら書類に目を通していたときだった。
「ヴェナユザ大尉です!」
「いきなりどうした!用件を言え!」
司令室にタイガス・ヴェナユザが入って来た。彼の様子から見るに何かあったのだろう
「IS学園より通信が!」
「何だと!?すぐ行く!」
ヴェナユザに案内されたブリッツは通信を受け取ると出たのはかつて臨時教官を務めた千冬だった
『お久しぶりです、エイブラハム・ブリッツ司令。』
「織斑教官!?なぜこの基地に連絡を!?」
千冬が何故知ってるのかというと千冬が退役する際に回線番号をクラリッサがブリッツから了承済みの回線の番号を渡しており、この時はヴェナユザが出たお陰でこうなったのだ
『ブリッツ司令。今から話す事は完全極秘事項です。他国に漏洩したらまずいと思って私からの頼み事をお願いできますか』
「……………わかった。聞こう!」
数分後………
ホルツドルフ基地にいる戦闘機パイロット達をミーティングルームへ集められた。
その中には
「それではこれより、太平洋付近にむけて遠隔操作型弾道ミサイルを発射する!!」
「「「えええええ!?!?!?!」」」
流石に皆が驚く羽目になる。深夜に呼び出しといてこれである。
「詳細を詳しくお願いします。」
フォーツ427大隊の隊長、アルフレッド・ヴァーゲンは詳細を求めようとする。
「詳細を話す前にこの際話す情報は他国への漏洩を固く禁ずる。いいな!」
「「「「はい!!!!」」」」
「よし、ならまずこの情報を見てほしい。」
そうブリッツが言った瞬間、あるISとの戦闘映像だった
「これは……!?」
「前日からアメリカとイスラエルが共同開発していた軍用IS、
「もしかしてアストラス中尉とボーデヴィッヒ少佐含めた各国の専用機持ちを助けると……」
「あぁ。だがここから日本まで向かうには時間がかかり過ぎる。そこで、これを使う事にした。」
スクリーンにて大型ミサイルがお出しされた。
「し、司令!これは……!!」
「ハルフォーフ大尉……君が驚くのも無理はないさ。今回使うのは遠隔操作型弾道ミサイル【シャルフシュッツェ】を使う!!」
シャルフシュッツェ………ドイツ語で狙撃手を表すこのミサイルは操縦式のミサイルであり最大飛行射程が一万を誇る弾道ミサイル。
ISが開発される前に起きたドイツの国内戦争においてこの兵器が作られた途端東ドイツと西ドイツは萎縮してドイツ連邦共和国になったと言う記録がある。
しかしISの存在が明らかになった途端、ミサイルの優位性が廃れてしまい、残り一発のこれだけがホルツドルフ基地に残されているのだった
「これを使って福音にダメージとは言わないが学園側に突破口を開ける。そこでクラリッサ・ハルフォーフ大尉と………リオン・クルーゼ少尉にこの作戦を任命する!!」
「はっ!!」
「…………俺が………ですか……!?」
「辞退すると言うならしてもいいぞ。リオン。」
「ヴァーゲン少佐………」
突然指名されたリオンは戸惑ってしまったがすぐに覚悟を決めた
「(ライディが日本で頑張ってんだ!! なのに見て見ぬ振りをした俺は……あいつに顔向けができない!!!)行きます!!成し遂げます!!」
「よし!!これより
ミーティングが終わり,皆がそれぞれ持ち場へと向かっていった。
数十分後………
滑走路にて一つのテントと操縦桿付きのパイプ机とパイプ椅子、そこから離れた先にシャルフシュッツェが戦闘機に偽装されていた。
(俺がこいつを操縦するのか………)
20代から30代までのパイロットで構成されたベテラン大隊フォーツ427大隊の中で17歳のリオンは手に汗握りながらも作戦に挑もうとしていた
「緊張してんじゃ無いの〜?リオンちゃん」
「姉………シャーレイ大尉」
「今は姉御でいいよ。それに肩の力抜いときな、この作戦はクラリッサとアンタにかかってんだから」
フォーツ427大隊の女性パイロットのハンナ・シャーレイから話しかけられた事で何とか緊張がほぐれる。
そして作戦決行の時間になった。
「ではこれより作戦コード【ディ・フェルンベツィーウンク】を開始する!発射スタンバイ!!」
しかしここで通信が入る
「織斑千冬から緊急伝令!」
「なんだ!」
「早くして欲しいと申してました!」
発射するのに時間がかかるのはわかっていた。そこでヴェナユザはアレをやることを決意した
「ハルフォーフ大尉! 君がシャルフシュッツェをぶん投げて欲しい!」
「は、はぁ!? そんなの無理に決まってる!!」
「ノイマン中尉から送られた座標とアストラス中尉とボーデヴィッヒ少佐のIS反応から計算して方角は……南!!」
「………分かりました」
クラリッサは外にいたネーナ、マチルダ、ファルケ、イオに作戦開始前の行ってきますをする
「お前達。作戦は失敗しない事を条件に、隊長とライディを助ける。」
「副隊長……!!」
「私達を思ってくださり感謝です〜!」
「が、頑張ってください!!」
「………負けるなぁ……」
そしてリオンの所にも向かう
「ハルフォーフ大尉! 作戦に選ばれたからには頑張ります!」
「そうか。 空母提督の孫として期待してるぞ」
「はい!!」
クラリッサは眼帯を外して
自身の専用IS、シュヴァルツェア・ツヴァイクを起動し、シャルフシュッツェを持ち上げる
「はぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!」
指定された座標の方角に目掛けて投擲。シャルフシュッツェはある程度距離が開いた途端ブースターが点火してそのまま一直線に飛行したのだった
「成功しました!!」
それにより見守っていた隊員達はは大いに盛り上がり。あとはリオンの操縦にかかってるのだった
ーー♢ーー
「箒………まだ行けるか……?」
「………あぁ。……」
場所は戻って海上戦。残ったのは俺と箒だが流石に限界間近だった。
一応ブースターが分離してどっかの岩場に置いてきた。
「ヴィダールの本数は?」
「ごめんけど全部使い切ったぞ」
「そうか。もう一本あれば……」
「いや大丈夫だ箒。オルトロスがあればなんとかなるからそう自信を落とすな」
箒のメンタルケアも行いながらも福音をどうするか考える
(ヴィダールも使い切ったし、オルトロスの高エネルギー弾も当てになるか分かんねぇ………)
すると緊急通信でプライベート・チャットが開かれた
「もしもし!?」
『繋がった!』
「ノイマン中尉!?」
『ライディよく聞け! 今からドイツから遠隔操作型弾道ミサイル【シャルフシュッツェ】を福音に撃ち込む!』
「はぁ!?」
『ブースターを増設したから残り4、5分で着く! その間持ちこたえるか!!』
「無茶言ってくれるな………分かりました!耐えてみせます!」
『ご武運を!』
弾道ミサイルを保有していた事にちょっとびっくりしていたけどそこでもう一回通信が来た。
『聞こえるかライディ。』
「ハルフォーフ大尉!?」
『連絡があったと思うが現在ドイツからシャルフシュッツェを射出した。これを福音にぶつける為なんとか惹きつけろ。 お前の友人の為にな』
友人………もしかしてリオンか!?!
「分かりました! 想いを無駄にはしません!」
『幸運を祈る』
そう言い残して通信が切られた。おそらくはラウラにも伝わってるかもしれない
「箒!活路が見えた!」
「ど、どういう事だ…?」
「今ドイツから弾道ミサイルが放たれた。到着までの4.5分耐えるぞ良いな?」
「………あぁ分かった!!」
その夜限りのタッグを組んで再び福音へ攻撃を仕掛ける俺たちだった
ーー♢ーー
ミサイルはたった今日本海を抜けたところだった
「日本海を通過! スピード安定!」
オペレーターからの情報により皆が再び安堵、数秒でまた滋賀県を乗り越えた
「ええい!まだ着かんのか!」
「落ち着けハルフォーフ大尉! クルーゼ少尉に負担が掛かる!」
「ですが!…………隊長から通信が入ったと思いきや海の音がした……たょっと冷静が欠けてました。」
「いや、こちらも訳を知らなかった……すまない」
落ち込んだクラリッサの元に四人娘が駆け寄る
「副隊長……なんだかららしくない!」
「そうですよ! ライディと隊長のを身を案じてくださいよ〜!」
「隊長があんなんでやられる訳ないですか!」
「……………らしくない」
部下にも指摘されたことでクラリッサは自身の頬をぶっ叩き活を取り戻した
「すまないみんな。副隊長でありこの中で年上の私が揺らいでどうかしてた! 二人を信じるぞ!!」
「「「「はい!!副隊長!!」」」」
イオだけは痛そうと思いながらも再び情報が来た
「福音のレーダー探知範囲にミサイルが到着!!」
「クルーゼ少尉!」
「分かってます!!」
リオンは操縦桿を握り、机に設置されたミサイル視点の映像を見ながら操縦した
何故そこまで命を賭けれるか、失敗したら戦犯扱いは免れないのにこの作戦に立案したのには訳があった。
リオンの祖父はミッドナイト海戦において多大なる戦績を残したリヴォール・クルーゼ提督。
その為期待を寄せられたり恨まれる事もあったので正直言ってウンザリだった。
だけど士官学校を卒業しホルツドルフ基地に配属された後、同年代でISに復讐する為に虎視眈々と狙ってる奴がいると。
どうせ女性に冤罪をかけられたからとかだろうと思ってた。
けど実際は
俺と違って家族を尊敬してる奴だ。そこで死なせるわけにはいかない!!
ミサイルが福音の範囲に入った時、花月荘の指令室が反応をキャッチ
「織斑先生!何処からかミサイルが!!撃墜させますか?!」
「いやいい山田。 これは私が頼んだ事だ」
「それって………」
「このことは誰にも言わないこと。良いですね??」
「はい…………」
シャルフシュッツェは俺達にも見えた。
「ミサイルを守るぞ!」
「あぁ!!」
福音はシャルフシュッツェの存在を確認、再び銀の祝福による弾幕を放とうとするが箒が空裂による斬撃を飛ばして光弾を打ち消す。
しかし仕留め損ねた弾幕がシャルフシュッツェに当たりそうになるがシャルフシュッツェは急旋回し、弾幕を避けるかのように振り切る
リオンのやつやけに操縦上手いな………流石戦闘機操縦のスコアが5位なだけある。
「こっちだクソ
シャルフシュッツェを堕とさせない様にオルトロスで福音の気を逸らす
しかしなかなかシャルフシュッツェが福音に近づけない。埒があかないと思った俺は箒に作戦を伝える
「箒、接近戦を仕掛けろ。」
「何するつもりだ?」
「遠距離攻撃を俺が防いで箒は近距離攻撃を潰せ。それでミサイルを当てる」
「………やってみる!」
一か八かのチャンス。俺はオルトロスの自動追尾弾で福音にダメージを与える。箒も雨月の刺突レーザーで邪魔している
「抑えたっ! ハァァッ!!」
箒は福音を抑えることに成功し、シャルフシュッツェの方向へ向けて蹴り飛ばす
(当たる!!!!)
が、次の瞬間福音は回避してしまう
「あぁもうじれってぇ!!!」
俺は
「堕ちろッ!!!!!!!」
そしてそれを福音にぶっ叩きつけ、爆散した
暗闇の夜の海面に大きめの明かりが灯されたのだった………
『着弾成功しました!!』
ホルツドルフ基地では大歓喜が起こりリオンは唖然としていたがアルフレッドが皆の前に連れ出した事で現実を受け入れ、胴上げが行われた
が、現場はと言うと………
「ライディーーー!!!」
至近距離で弾道ミサイルであるシャルフシュッツェの爆発を受けた為一夏の様に大ダメージを負った………訳はなかった
「はぁ………はぁ………」
「ライディ!!」
箒は小岩に落ちた俺に近づいた
「いってぇ………AICが無ければ俺ごと木っ端微塵だぞおい」
「だ、大丈夫なのか……!?」
「まぁな……それより箒。福音は…………っ!!」
着弾し、爆散したはずの福音はメキキ……と音を立てながらも再生していた。セカンド・シフトとはいえここまでとは思わなかった
しかし両刀を福音に向けて戦闘態勢に入る紅椿。装甲の隙間から見える赤の光が箒の戦意を表していく。
「逃げろ箒……!俺は動けない、お前だけでも」
「(ソウダソウダ!)」
「断る。たとえ現場指揮官のお前の頼みでもだ。お前はそこで休んでろ。福音は、私が斬る!!」
「………すまない。休ませてもらう」
箒の力強い言葉、そこには慢心や油断などない。勝てるかどうかではなく、ここで逃げるか逃げないかという選択の中、箒は立ち向かう選択肢を取った。
そして福音の元へ行くのを見届けた。
(箒ヲシンジルノ?)
「まぁな………」
そして俺は自動回復モードに切り替えてクーゲルの修復作業に移ったのだった
ーー♢ーー
紅椿の背部展開装甲だけを開いて準高機動モードで発動する。
元々燃費が悪い紅椿、無駄使いは出来ないし出来れば使わずに行きたいが、そう贅沢も言える状況ではない。
何故エネルギーが少し回復したのかは分からない、それでも箒の心のうちにあるのはただ一つ。
「一夏の為に、一夏に誇れる自分であるためにも!行くぞ福音!!」
急加速する紅椿に銀の祝福が降り注ぐ。
常時フルバーストともとれる広範囲。箒は眼下のライディに当たらないように上方に位置を取った。
図らずとも密漁船乱入時と同じ状況に箒は自嘲気味に笑った後、これまで以上に鋭い眼光を宿した。
「もう同じ過ちは、しない!!」
咆哮に答えるように紅椿は輝く、深紅の軌跡を描きながら銀の祝福の羽を掻い潜る。
一発、また一発と紅椿に羽が刺さる。
だが紅椿は展開装甲のシールドモードを発動しない、それに裂くエネルギーなどありはしない。
向かうは短期決戦、肉を切らせて骨を断つ!!
眼前に光翼を広げる福音、紅椿の剣の射程圏内に、入った。
「ここだっ!!」
展開装甲全展開。
紅蓮の華と化した紅椿が福音に斬りかかる。
銀の福音は強化された機動力で斬撃をかわして距離を取りながら羽をばら蒔く。
「逃が、さん!」
空裂の遠距離斬撃で無理やり道を作り出し、腕部展開装甲のビットを射出。
ビットに気を取られた福音に瞬時加速で一気に肉薄する。
「お構いなしに……斬り進む!!」
斬撃の乱舞、赤熱した雨月と空裂の二刀が福音のSEを斬り刻んでいく。
苦し紛れに飛ぶ銀の祝福が当たるのを気にせずにとにかく斬りまくった。
(この程度、一夏が受けた痛みに比べれば!!)
とにかく離れない、福音が度々両手両足からブーストして逃れようとするも展開装甲を全開にした紅椿にはかろうじて叶わなかった。
「ま、だぁぁぁぁ!!」
鬼気迫る表情で刀を振るう。流儀もなにもあったものではなく、それでいて心の入った確かな斬撃はとうとう福音の絶対防御に触れた。
「届く、届かせる!とどめを刺せ!紅椿!!」
雨月と背部展開装甲以外のエネルギー供給を停止、残るエネルギーを右手の空裂に回し、濃密な紅の輝きを放つ刀を振り下ろし。前回は当たることが叶わなかった渾身の一振りが福音に届いた。
SEを突き破り、絶対防御に触れた紅の一閃。肩に食い込む空裂が福音のシールドを奪い去っていく。
威勢とは対照的に体に刺さる羽の痛みに身体が悲鳴をあげながらも刀を押し当て続けた。
パキキと音がした。
視線を下に戻すと友達をほふった、胸部装甲を割っての銀の鐘だった。
認識するのと同時に発射。箒は構わずに斬り続けようとした、が。
福音と紅椿の間で爆発が起こる。ノックバックで吹き飛ばされた福音の装甲はひび割れていた。
元々規定にはないエネルギーの過剰誘導による攻撃、当然連発出来る設計ではなく。もう福音はその捨て身の戦法を発動することはあたわないだろう。
対する紅椿は無傷。前面の展開装甲をシールドモードにすることで事なきを得ていた。
だが箒は今の状況に愕然としていた。
「守って、しまっただと………」
紅椿の展開装甲は当初は自動防御によりシールドを展開していた。それではエネルギーを攻撃に回すには燃費が心配されたため、自動防御機能をオミットし操縦者の意思で展開出来るよう設定していた。
福音の攻撃に耐えながらも斬り続け、相討ち覚悟で倒そうとしていた。
だが福音の不意打ちに対する箒の防衛本能を汲み取った高性能操縦者補助機能が展開装甲のシールドを発生させてしまった。
紅椿の輝きが消える。エネルギーが切れた証拠。今の紅椿は他より少し高性能なISでしかなかった。
「だからなんだ!たとえエネルギーがなくても私と紅椿はまだ戦える! 戦わなくては………ならんのだ!!」
福音に突進。込められるだけの力を手に鈍色の刀を福音に走らせる。
「うおぉぉぉぉぉーーーっ!!!」
しかし箒の熱き激情を福音の翼が容易く吹き飛ばす。
暴力的なまでに視界を埋め尽くす銀の祝福が、箒の紅椿をたやすく飲み込んだ。
(一夏………)
ーー◇ーー
「ん?」
誰かが一夏を呼ぶ声が聞こえた。後ろを向いても誰もいない。
「どうしたの?」
「………誰かに、呼ばれたような?」
「行かなくていいの?」
呟いた少女の声に横を向いてみると少女の姿は既になく、先程から耳に残っていた歌はなく。遠くから聞こえる波の音だけが鼓膜を震わす。
「あれ、あの子どこに行ったんだ?うぉっ!?」
一夏の体重を支えていた流木が突如として消えて一夏は尻餅をついた。
バシャッと尻に感じる水の感触に慌てて立ち上がって尻をさするもズボンは水に濡れてなく乾いていて、気付くと少女が最初に座っていた木もなくなっており、また見渡す限りの鏡面湖が広がっていた。
(いったいなんだってんだよ………)
「力を欲しますか……?」
「え……」
後ろの声を聞き急いで振り向くと湖から浮いている女性が立っていた。
その姿は白く輝く甲冑を身に纏った騎士さながらの格好。大きな剣を自らの前に立てて、その上に両手を預けている。
その顔は目を覆うガードで隠されて下半分しか見えない。
いつの間にか周りの青空から夕焼け空に変わっていた。
「力を欲しますか……? 何のために……」
「ん? ん〜……難しいことを訊くなぁ」
波音だけが俺と女性の間にある。
「……そうだな。友達を……いや、仲間を守るためにかな」
「仲間を……」
「仲間をな。なんていうか世の中って結構色々戦わないといけないだろ? 単純な腕力だけじゃなくて、色んなことでさ」
一夏は今、いまいち自分の中でまとまってないことなのに妙に饒舌に喋っていた。
(あぁ、俺ってそう思っていたのか)
自分に驚きつつ言葉を続けていく。
「そういう時に、ほら、不条理なことってあるだろ。道理のない暴力って結構多いぜ? そういうのから、できるだけ仲間を助けたいと思う。この世界で一緒に戦う……仲間を」
ISが生まれたせいで人生を狂わされた少女がいた。
幼いながらも親の残したものを守るために戦った少女がいた。
父親と離れ離れになっても前を向き続けた少女がいた。
企業の道具として、望まぬ立ち位置を強要された少女がいた
国の利益のために、戦うだけの存在として産み出された少女がいた。
ISに父親を殺されて復讐に駆られた少年がいた。
だからこそ、支えてやらなくちいけないんだ。
「そう……」
女性は静かに答えて頷いた。
「だったら……行かなきゃね」
「えっ?」
また後ろから声をかけられる。
振り向くと白いワンピースの女の子か立っていた。
そして同時に頭の中の靄が一気に晴れた。
見えるはずのない景色、白く輝く翼を広げた福音、それと戦う皆と、福音の攻撃追い詰められた紅椿と箒。
「箒! みんな!」
その光景に手を伸ばすと、さっきよりも眩く輝く光が、周りの景色をかき消した。
人懐っこい笑み。無邪気そうな顔で、じぃっと俺を見つめている。
「ほら、ね?」
手を取られて、にこりと微笑みかけられる。
一夏は酷く照れくさい気持ちになりながら「あぁ」と頷いた。
すると、いきなり変化が訪れた。
「な、なんだ?」
空が、世界が、眩い程の輝きを放ち始める。
その真っ白な光に抱かれて目の前の光景が徐々に遠くぼやけていく。
夢の終わり、そんな言葉が不意に浮かんだ。
「行け、織斑一夏。お前の選んだ苦難の道に、幸があらんことを」
背中に当たった荘厳な女騎士の声。その声に一夏は誰かに似ていると既視感を感じながら、その世界から立ち去った。
「あぁ、そういえば……」
あの女性は誰かに似ていた。
白い……騎士の女性。
お待たせしましたわ!