まさかの300円!!
福音討伐の報告を受けたノイマン中尉やモルが乗る整備班の船はライディから聞いた小岩に放置された黒の爆風の残骸の回収を任された
「整備長!アストラス中尉はどうなりました!?」
「あぁ、どうやら成功したらしい」
「やったあああ!!」
女子整備員達が喜んでるのを見てモルも一安心。ドイツにいるリオンも一安心したところだが………
「おそらく、少佐と中尉には夏に本国に呼び戻されるだろうな」
「まおISのダメージレベルの数値がこれでは……査問委員会案件になりそうですね……」
「そこは司令がどうにかしてくれるさ」
他力本願なこと華々しいが実際一介の軍人が口を挟めるような状況ではない。自分たちにも箝口令が敷かれる以上は藪をつつくような真似はしない。
「ノイマン中尉!!回収地点付近にISの反応が!!」
「なんだと!?」
一難去ってまた一難、だいぶ気難しい展開になって来た
ーー♢ーー
ネイビーブルーとブラックで染められた一機のISが光学ステルスモードで浮遊していた。
そのISの名は【ラプター】
アメリカのインダストリー社が開発した、第二世代IS量産シェア第一位【ラプター】
主に軍事基地に優先配備されており、打鉄以下ラファール以上の装甲。そして最高速度と機動力は二機を上回る、バランスの取れたIS
操縦者の技量次第では第三世代にも決して劣らない確かな性能が軍事基地に採用される大きな要因となっている。
今の時代、ISはスポーツと軍事利用の二部に分かれている。ストライカーが量産シェア一位を獲得したのも、それが理由となっている。
静かに、ただ静かに。銀の福音との戦闘地点に現れた。
「………こちらネームレス1。銀の福音は完全に機能を停止した模様。追加で、織斑一夏のセカンドシフトのデータも入手」
アメリカ特殊工作部隊【
彼女に名前はない。飾り気も、部隊章も、武勲も、彼女達には必要ない。
それどころか、アンネイムドという部隊名もこの世界には存在していないことになっている。
便宜上呼ばれている隊長、ネームレス1にもかつて名前があった、家族もあった。
だが今は何もない、過酷な訓練、色々な要因が部隊の兵から消え去った。
ステルス装備と超望遠レンズを装備したラプターを纏うネームレス1の任務は『暴走した銀の福音の動向を監視、並びにIS学園側の勢力の把握、分析』
そこには銀の福音を止めろとも、学園と協力して対処しろとは書かれていない。
例え銀の福音が日本を火の海に変えたとしても、彼女の任務は、監視のみ。
彼女の胸にあるのはただ一つ。称えることすら許されない、愛すべき祖国、アメリカの為。今日も隊長は名無しとして任務につく。
「フィクサーからネームレス1。直ちに帰投せよ」
「了解、現中域から離脱する」
超望遠レンズをリコール。光学ステルスのみを解除し、ストライカーの特徴である戦闘機に似た加速用ノズルブースターに火を入れる。
これで任務完了、後はただ指定された場所に戻るだけ………
「そこまでだ。」
「………!!」
ネームレス1の首元に刀が当てられていることに気づく。久方ぶりの動揺を隠せなかった
「そこで何をしていた? ここは日本だぞ」
「………」
「わざわざステルスパッケージを着てきて助かった。お前みたいな輩を仕留めるのに最適だからだ」
ステルスパッケージを脱いであらわになったのは第三世代の技術を集結させた新たなる打鉄の先行量産タイプ、【打鉄・
海と同じ青色の長髪をサイドテールアップしたその姿は美しさと恐怖をもたらした。
「貴様……今この場でやり合うってのか?」
「その心配はいらん。何故なら………」
ネームレス1のラプターに搭載されていたステルスパッケージがいつのまにか切断されており、ネイビーカラーの機体が明らかになる
「お前…………一体何者だ!?」
「有名人だと思ったのだがな……私は現ISの日本代表、風羽都姫だ。」
彼女は引退した織斑千冬に変わった新たな日本代表である。
「それにしても暴走したISは止まったらしいが学生達に面倒ごとを背負わせてしまったな……」
「てめぇ……」
「因みに聞きたいことがあるのだがな……ここ、日本の領空権内ですけど。許可取ってるのか?」
「………」
取っている訳がない。どこの世界にアポを出す世間から抹消されている部隊があるのか。
「アメリカ、イスラエルが保有しているラプターは全機空母に待機中、そもそもネイビーブルーのストライカーなどありません。イーリス・コーリング代表に聞いたので間違いありません。つまり貴様は日本に不法入国してることに違いないな?」
「…………」
「今はステルスパッケージを切り壊した所だが………………叩っ斬ってもいいか?」
もうここまで来ると殺意に押されそうになったが、風羽はまた変な事を言い出した
「それにもう一人ステルスがいるな? お前もこいつと一緒……な訳ないな」
バグった映像みたいなところからISが出てきたが、また消えた。
どうやら見透かされてそのまま逃げたようだ。
「逃げられると思っているのか?間違いなく貴様の命はないと思う。だがこちらの条件を飲むのであれば話は別ですが」
バレていましたねぇ
「な、なんだ」
「保有しているデータを譲渡しろ」
「なっ」
それはすなわち、任務の放棄。アンネイムドとして、あってはならないことだ。
「選択肢、あると思えませんけど? 私はどちらでも構いませんよ? 国に土足で入った以上斬るだけだ。」
「………しばし待て」
「分かった。」
隊長が本部に秘匿通信を繋ぐ。任務完了以外で通信するなど本来あってはならない。
「………データはそちらに渡す」
「そうか。」
本部の決断はデータよりもアンネイムドの存続、捉えられてアンネイムドに繋がる証拠をさらすよりも良いと、本部は判断した。
有視界通信でデータの移動が行われる。もの数十秒でラプターから都姫にデータが移動した。
「感謝する。」
「用はすんだな、約束通り」
「最後にもう一つ………お前たちに警告する」
刹那、隊長は全身が斬りつけられたような錯覚に陥った。
先程の狂的な戦意とは別の研ぎ澄まされた刀のような殺気、圧。
「日本をぬるま湯に浸かった日和日の島国と努々考えるな。何処の回し者か知らないが、我ら日本と矛を交えて無事で済むと到底思わないように」
「くっ、うっ………」
「さっさと逃げろ。私の気が変わらないうちにな」
隊長は瞬時加速やオーバーブーストなど使わずに一目散に都姫から離れた。
少しでも遠くに、ひたすら遠くに、出なければ、命はないと。自分に言い聞かせながら。
「…………任務完了しました。これより帰投します ………一応聞きますけど千冬のところへ寄っていいですか え?駄目?………そんなぁ」
ーー♢ーー
「色々なアクシデントはあったが作戦完了だ。諸君のおかげで日本は危機を脱した。日本政府並びにIS学園を代表して礼を言う」
「はい!」
俺達は戻って直ぐに教師、織斑千冬と山田真耶とのデブリーフィングを行うことになった。
他の教師たちはせっせと後片付けをしていて忙しそうだった。
「さて、お前たちには休息を与えたいが……織斑、お前は無断出撃の件がある。学園に帰ったら反省文と私直々にトレーニングをしてやる。覚悟しておけよ」
「……はい。すみません……」
一応聞くけど弟だよな?なのにこの扱いはひでぇなオイ
そのせいか一夏は正座していた。
更に箒も今回の一件での責任があるのか同じく正座をしている。そして他のメンバーも対抗意識なのか全員正座をしていた。
「あのー織斑先生。俺も正座するんですか??」
「しらん」
そう言われたけど俺も一応正座した。
すると数秒も経たないうちに箒以外のラバーズはなんだか悶え苦しんでいた
箒の澄まし顔を見てたらなんか腹たってきた(闇ライディ)
「では、これにてデブリーフィングを終了する。山田先生、後は頼みます」
「じゃあ、一度休憩してからメンタルチェックと健康診断を行います。ちゃんと服を脱いで全身見せてくださいね。あっ! 勿論男女別ですよ! わ、分かってますか、織斑君?」
「わかってますよ! てかなんで俺だけなんですか?」
「あっ!すいませんアストラス君のこと忘れてました!」
「どうせ俺は影が薄いんで良いですよ………………てことは女子達と診断してもらえるんですよね???」
「そそそそんなの困ります!」
「現実見ろアストラス。さっさと従え」
容赦ねぇなおい…………まぁ仕方ないか。
山田先生から手渡されたスポーツドリンクを喉に流し込む。
少し甘くてほんの少し苦い。苦手と言う人もいるが、俺は嫌いじゃなかった。
正座から解放された面々が足をダラッと伸ばしながらくつろぐ………なんてことはなく。姿勢を崩すだけで皆ある方向をチラチラ見ながらチビチビ飲んでいる。
「あの、なんでしょうか織斑先生」
まあ……ある方向っていうのは織斑先生なんだけど。何故かこっちをジッと見ていて、正直居心地が悪い一夏達。
織斑先生は目線をそらしたり頭に手を置いたりと忙しい。
鬼教師(一夏談)であり、ドイツの鬼軍曹(ラウラ談)の織斑先生らしくないソワソワした様子。後ろにいる山田先生は何故か笑顔だ。
「………その、なんだ………皆、よくやった。よく無事に帰ってくれた」
『え?』
照れくさそうに頬に薄く朱を指した織斑先生が言った。
あの素直に褒めるということはしない織斑先生が俺達を褒めてくれた。そんな今まであり得ないような光景に皆一様に目を丸くした。
「………だから言ったんだ山田先生、私には似合わないと」
「えー、最初に褒め言葉の一つでも言ってやろうと言ったのは織斑先生の方じゃないですかー」
「山田先生、帰ったら近接格闘の訓練でもしましょうか、みっちりと」
「ええ良いですよ。私も最近身体が鈍ってきてしまって、お手柔らかにお願いしますね」
「………ぬぅ」
織斑先生の牽制を笑顔で返した山田先生。これには織斑先生も形無しだ。
「………とにかくだ。これからどのようなトラブルが起こるか分からない。今回の結果に慢心せず精進するように。解散!」
「はいっ!」
照れ隠しかばつが悪かったのか、緩んだ空気を一気に引き締めた織斑先生にこれ以上ないくらい元気な声で答える生徒一同。
そのあと検査を終えた男二人は部屋に戻るなりバタンと布団に崩れた。
吸い寄せられるような眠気に目蓋が自動的にシャッターをおろしていく。
「なぁライディ」
「どした?」
「俺、みんなを守れたんだよな?」
「…………あぁ、お前はよくやってくれたよ一夏。ありがとうな」
「そっか……」
そんな一夏の顔は満足気に笑っていた。
ーー♢ーー
「ねぇねぇ、結局何だったの? 教えてよ〜」
「ダメ。機密だから」
その日の夜、何時ものように大宴会場での食事をしている中、旅館での待機を命じられていた生徒たちが食ってかかって専用機持ち組に今回の顛末を聞きに来ていた。
そのターゲットになったのが、1番取っつきやすいシャルロットだったのだが、その目論見は甘かった。シャルロットは専用機持ちの中でも一番の責任感を持っているため頑なに口を開かない。
「私たちずっと部屋で待機してたから聞きたいの〜」
「教えてクレメンス!」
「ダメ。絶対にダメ!」
「ぶぅー、でゅってぃのいけず」
シャルロットはダメとわかるといなやターゲットを変える面々。
「セシリ……」
「ダメですわ」
「まだ何も言ってないけど!?」
「秘密事項ですので」
あっけなく門前払いを食らう。
次にターゲットにしたのは
「ボー……」
「断る」
「早いよ!?」
圧倒的速さでの断りを入れらる。まぁ軍人であるラウラに聞くのは無謀だよな。
「てかあたしは!?誰も聞きに来ようとしないんだけど!」
「落ち着け鈴、私もだぞ。それに聞かれないのはいいことだろう?」
「まぁそうだけど………」
幼馴染組はまぁ不満に思っていた所だったけどライディが動く
「そんなに聞きたいの?」
「聞きたい聞きたい!」
「おいライディ!」
「まぁまぁ任せとけ……」
俺の言葉にクラス中の女子たちが一斉に耳を傾け始める。
「話しても良いけど、覚悟はあるんだろうな?」
「へっ?」
「覚悟?」
全員が頭ハテナ状態になっている。
「そりゃ機密事項喋るんだから、国家直属の監視が付く覚悟だよ」
監視がつく。この言葉を聞いた女子たちの顔が引きつった。
「確か最低でも2年。まぁ最低ってことは最高もあるわけだし、そりゃもう保護観察期間の囚人みたいに発信機は付けられるし四六時中監視員が目を光らせてるだろうし、まぁ花の女子高生にとっての2年は大事だよねぇ。その人生を失う覚悟があるなら耳をかっぽじって聞いてもらおうかな」
「うっ……」
「それは……やだなぁ」
大半の女子が白旗を上げ始める。だがそんなことお構いなしに俺は言葉を続ける。
「さて、そこまで言ったんだから覚悟しろよ?まずは……」
「やめて! 聞きたくない!」
「私たちが悪かったから話さないで!」
全員が耳を塞いで懇願してくる。
「分かったなら良いんだよ分かったなら…………………はぁ」
「お前から話したんだからな!?」
またクラスメイトに引かれたのでは無いかと落ち込んだライディをラウラがツッコんだとさ
ーー♢ーー
食事を終えて部屋に戻り、織斑姉弟と軽く雑談した後織斑先生が一時的に出ていった後、部屋でゴロゴロしていたら一夏が立ち上がった。
「なぁライディ。俺ちょっと外出してくるわ。」
「え?どこ行くんだ?」
「風呂だよ。風呂」
「あーね。じゃ行ってら」
部屋に出た一夏は何やら困惑していた。
「ったく箒のやつ……何か話す事があるって言ってるから何だろうな……」
何やら夕飯を済ました後、一人でいた時に箒に時間はあるかと持ちかけてきた。
数分前……
「な、なぁ一夏。時間はあるか?」
「なんだよ箒、時間なら今あるじゃん」
「あぁもうそう言う意味じゃない!!この馬鹿!」
「そこまで!?」
「…………兎に角二人っきりで話をしたい。勿論水着でだ。」
「…………」
旅館を無断で抜け出す。それは明らかに違反行為。幾ら鬼の織斑先生が旅館にいないとはいえ、もし見つかれば地獄を見る。
だが一夏が一番驚いたのは普段生真面目な箒がそれを提案してきたことだ。
「や、やっぱり駄目か?」
「いや、箒からそんな誘いが来ると思わなくてビックリしてる」
「それだけ必死なのだ………すまん、忘れてくれ」
「待ってくれ」
離れようとする箒を一夏が引き止めた。
「い、一夏?」
「行く、今からでいいか?」
「良いのか?」
「箒が自分の信条曲げてまで言ってくれたんだ。それに、今回箒のおかげで勝てたからな。お礼ってことで」
「そんなこと気にしなくても………いや、わかった。聞いてくれて………ありがとう」
「おう」
此処なら一夏は何故?何故?って某次郎みたいに言うはずだが、ライディに自身の察しの悪さを指摘されてきてるので箒の感情を優先した。
「わかった。じゃあ海辺で待ってるよ」
「ありがとう。」
と言う事があったのだ。
「ふぁぁ…………っていうか寒いな……一応上着は着とくか。」
今は夜中、時間帯的にも寒い。夏でも寒い。
一夏は岩場に座りながら箒を待っていた。
「い、一夏」
「お。遅かったじゃないかほう、き?」
名前を呼ばれて振り向くとそこには
「あ、あんまり見ないでほしい。恥ずかしいから」
「す、すまん」
「いややっぱり見てくれっ」
「お、おう」
「………やっぱり見るな!」
「どっちなんだよ」
はっきりと見えた箒の水着姿はあまりにも鮮烈で、脳裏に焼き付いてしまった。
白い水着、それも箒なら絶対に着なさそうなビキニタイプ。縁の方に黒いラインが入ったそれは、かなり露出面積が高く。他と比べても豊満な胸囲も相まって、セクシーという表現が一夏の頭に浮かんだ。
箒が一メートルほど離れたところに座る。
(や、ヤバい。これはかなり気恥ずかしい)
なんとか話題出そうと試みるも、普段と全然違うしおらしくも色気のあるファースト幼馴染みに一夏の胸がドキドキと高鳴ってしまう。
「えと、ここに来て見せたいものというのは」
「こ、これだ」
「ど、どれ?」
「み、水着だ。一夏に見せる為に勢いで買ったのだが恥ずかしくなって、そのまま」
(ああ、だからライディの上着貸してもらってたのか)
平然と話そうと試みるも何処か声が震える。
「えと、そのだな。似合ってると思うぞ?」
「そうか………ドキッとしたか?」
「した、ドキッとした」
「そうか、勇気を出した甲斐があったな」
朗らかに笑う箒にまたも一夏はドキッと胸が弾んだ。
言い様のない自分の様と普段肌の露出を出さない彼女の姿に一夏は年相応の高校生らしくドギマギしていた。
それは箒にも充分当てはまるわけで。
「………………………」
そのあと会話がしばらく途絶えた。
「い、一夏」
「は、はいっ!?」
沈黙に耐えかねたのか、箒は俺に声をかけた。たったそれだけなのに俺は少し飛び上がりかけた。
「その、リボン。ありがとう」
「お、おう。改めて、誕生日おめでとう」
「う、うむ。もう1日過ぎたけどな」
「そ、そうだな」
互いにしどろもどろになりながら言葉を捻り出す。
高鳴っていた鼓動もほんの少しだけ収まってきた。
「その、だな。お、お前、大丈夫なのか? あれほどの怪我。傷とか、残っちゃうのか」
「あ、あれか……あー、なんか、治ってた」
「な、なに!?」
「ほら」
一夏は箒によく見えるように上着を脱いで背中を月明かりに照らした。
「えーと、目が覚めてISを起動して、気がついてたら治ってたぞ。あれかな? IS操縦者保護機能」
「あれは、保護するだけで傷が治るなど聞いたことないぞ」
「でもまあ、治ったから良いんじゃないか」
「よ、良くない!! 私のせいで、一夏が怪我をしたというのに………」
箒は頭を垂れた。心なしか肩が小刻みに震えているように見える。
「もしかしたら死んでしまうかもしれなかったんだぞ。私が愚かだったばかりにこんなことになったのだ! だ、だから、こんなふうに簡単に許されたら、困るのだ………」
(ああ、そうか)
作戦を終えても元気がないというか、いつもの覇気が足りないと思ったらそう言うことか、と一夏は唐突に理解した。
箒は一夏が負傷したことに責任を感じて自分を責めているのだ。
傷が消えたからと言って御咎め無しと許されるのがイヤなようだ。
自分にも相応の罰が必要だと、自分を戒めているのだ。
「良しわかった、じゃあ箒、今から罰をやるから目をつぶってくれ」
「う、うむ」
箒はぎゅうっと目を閉じて罰を待った。
(しょうがないなぁ、こいつは)
一夏はその額にビシリと指で弾く。
結構弱めに
「あたっ。い、一夏?」
「はい、終わり。これで貸し借り無しということで」
「な、な。ば、馬鹿にしているのか!? あんなデコピンぐらいで!」
「ていっても。俺怪我ないし」
「結果的にだろう!? 一夏にならなんだってしてやるぞ!?」
「そんじゃ、これライディの分な」
「いだぁっ!?なにをする!!」
困惑から一転して、真っ赤になって一夏に詰め寄った。結構とんでもないことを口走っているが双方それどころじゃなかった。
「ちょっ、箒」
「あ、あんな仕打ちでお前の怪我と釣り合うと思っているのか!?」
「お、落ち着けって箒っ」
「だ、黙れ! 私は、私は!」
箒は更に体を押し付けてる。
「た、頼むから一回離れてくれ。あ、当たってるから!」
「え? ………んんっっ!!」
胸が、箒の驚異的な胸囲がさっきからぐいぐいと一夏の胸に当たっているのだ。
かなり密着していた箒が胸を腕で隠しながらババっと離れる。
「お、お前は! 人が真面目に話しているというのに!」
「し、仕方ないだろ、男なら誰でも意識しちまうって!」
男に生まれて申し訳ないと箒に心のなかで謝った一夏は思わず口元を手で隠した。顔が熱い
「……その、なんだ。意識するのか?」
「は、はい?」
「だから! 私のことを! 女として、異性として意識するのか、聞いているのだ……」
「う、ん……当たり前だろ、そんなの……」
さっきまでの威勢の良さとは打って変わった箒、赤かった顔が耳まで真っ赤になっている。
「男女と呼ばれた私だが………わ、私は一夏から見て可愛い女か? 綺麗な女か?」
「それは、その………箒は普通に、普段男らしいということを差し引かなくても、可愛いし、美人だと、思う………です」
「そ、そうか。………そう、なのだな」
咀嚼するように何度も言葉を噛み砕いて飲み込む箒。
一夏に至っては今自分が何を言ったのかよくわからないでいる。
「な、なら私も」
「へ?」
距離をとっていた箒がぐいっとこちらに近づく、近づいた拍子にぶつかった膝にまた心臓が跳ねた。
そして至近距離で目が合う。
ヤバい、と、一夏も思わず見惚れてしまった。
「………ん」
「え、えええ?」
箒が目を閉じ、やや上向きに唇を突き出した。
彼女の意図が全く理解できず、キャパオーバーな一夏はオーバーヒート寸前だ。
少しずつ、ほんとうに少しずつ顔をこちらに近づく箒に、一夏の鼓動は限界まで鳴り響いていた。
その表情が、余りにも魅力的に見えて。
(やばい、これは、引き込まれる!!)
近くに遠くに聞こえる海の音。満月の夜、目の前にはセクシーな水着姿の幼なじみ。
世間的にロマンチックなシチュエーションと呼ばれるこの雰囲気に、流石の一夏もぐらりと来てしまっていたようで………
お互いの肩が触れて一瞬止まるも、箒は改めてこちらに近づいてくる。
(やばい……本当にこれは)
ドゴボォォォン!!
なんやなんやと思い顔を上げるとスターライトmkⅢを構えたセシリア達だった!!
「ほう……」
「ーーよし、殺そう」
「一夏、何をしているのかな……?」
「抹殺…………でしてよ??」
一夏は即座に自分が今死ぬような危機に陥っている事を理解した
「お、おい!!逃げるぞ箒!!」
「えっ 一夏!?」
行きなり抱き抱えられて悲鳴を漏らす箒だが、そんなの構ってる余裕などない。
だが愚かにも、女の子をお姫様だっこで逃げるという行為が、彼女達の最終ラインをぶちきった。
『まぁてええええええ!!』
二人の足を止めようと各々の射撃兵装が二人に降り注ぐ。
当てる気があるのかないのか定かではないが。とうの二人、というより一夏にはそんなの知ったことではなく
(死ぬ! 確実に死ぬ!!)
容赦のない砲撃に走馬灯が見えかけた。
何だか白髪のおじさんがなんか白いユニコーンみたいなロボットと一緒に手を振ってるんだけど(声優ネタ)
抱き抱えられている箒も顔を引き攣らせてる………と思ったが。
「ふふっ」
「今笑う状況じゃないだろ箒!!」
「いや、なんだか。おとぎ話のお姫様と王子様って感じがしてな」
「そんなこと言ってる場合かぁぁ!?」
そして恐ろしくも、箒の言葉を彼女たちのハイパーセンサーが見逃すはずもなかった。
『一夏っ!! 箒っ!!』
「うわぁぁあああ!!!」
「あっはははは!」
一夏は上機嫌な箒を抱えて死の鬼ごっこへと興じたのだった。