IS 復讐の弾丸   作:らんくらニキ

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夏季休暇(サマー・フェーリエン)編
第三十話 輝く月が消えぬ前に


「あのさぁ……………-どうしてこうなったんだぁぁ!!!!!」

 

一夏と箒を追いかけるラバーズに対して、ライディの嘆き叫ぶ声が響き渡る。

事の発端の数分前………

 

「暇だな……」

 

クーゲルとも一通り遊んだ俺はスリープモードに入ったクーゲルを机に置いて横になる。

 

スマホをボーっと眺めても何も涌き出るものはない。

 

(そういえばあの後クラリッサさんから連絡来たんだよな……夏休みに招集が入るとかなんとか。)

 

福音事件は完全秘匿でドイツと日本の間の出来事として処理された。

 

試しに今回の銀の福音事件をネットづてに調べてみても、当然ながら銀の福音というワードどころか、暴走したISという記述もない。

日本に至っては避難誘導すらなく。対岸の火事ですらない感じで。日本はいつも通りの平穏を満喫していたようだ。

 

ボーとしてるのも嫌になってきたので、おもむろに部屋を出ていく。何処に向かうこともなく歩いていると女子の楽しげな声が聞こえてくる。

 

どれもこれも。俺達が守れたものだと思うと。なんか嬉しく思える。

 

「あれ?ラウラ?」

 

旅館の縁側に座り込む人が一人。

客室用の浴衣に眼帯を着けた銀髪女子はこちらに気づくことなく月を見上げている。

つられて見上げると、それは見事な満月が。降り注ぐ白い光が、辺りを優しく照らしている。

 

「なんだライディ。こんな時にどうした」

「暇だから外に出たらこれだよ。それにラウラってノスタルジックな雰囲気出せたんだな」

「んだと失敬な」 

「隣いいか?」

「えっ…あぁ。」

 

ラウラの隣に座り、なんだか切ないように感じた。おかしいな……月っていつ見ても神秘的だよなー

 

「月が綺麗だな。ライディ」

「!?!?」

 

ら、ラウラが俺に告白の典型文を!?

 

「ら、ラウラ……!それって」

「あぁ。夏目漱石という小説家が言ってた奴だ。これをいつか一夏に言おうと思う」

「あいつ鈍感だから伝わらんだろ」

「一理あるな……」

 

なんやかんやで平和になったこの時間。俺はなんだかちょっと嬉しくなった

 

「てかラウラ、怪我の方は大丈夫なのか??」

「あぁ。なんだって私は身体の中に医療ナノマシンが入ってあるからな。

一応大丈夫だ」

「ラウラって一体なんなんだよ。ただのIS操縦者なのか?」

 

するとラウラはなんか静かに話してくれた。

 

「私は人工子宮から産み出されたアドヴァンスド・チルドレン。謂わば人造人間だ」

「えっ………」

「産まれてからの私の教育は人の殺し方。急所の突き方を教わった……戦う為の存在」

 

流石に驚いた。なんで俺はこんな戦う事しか知らない少女に八つ当たりしたり、反発してしまったんだろうと深く後悔した。

 

「産まれてこの方優秀だったがヴォーダン・オーシェの手術に失敗して失敗作の烙印を押されたが、織斑教官と出会い………今がある」

「………教えてくれてありがとな。こっちも今まですいませんでした」

「そう気にするな。 あーあ、早く嫁も振り向いてくれれば良いものの」

 

ふと突然あることを思い出した。

 

「てか一夏に救われたとか言われてたけど何したんだ?」

「そ、それは!い、言う訳ないだろ!」

「そこまで話したんだから言ってくださいよ」

 

しばし躊躇したのちにラウラは口を開いた。

 

「…………キスをした。」

「え?」

「い、一夏に口づけをしたと言うんだ!!」

「はああああ!?」

 

まさかの一夏の初キス相手だと判明した。その後嫁宣言したと聞いて俺は混乱した

 

「…………知りたくなかったぁ………」

「んだと貴様!!お前から知りたいから聞いたと言うのに!!」

「ごめんごめんって やべぇ傷開いたいてぇ……」

 

ちょっと暴れたせいで右腕が攣った。改善してもらわねぇとな…

 

「……傷が治ってないのにすまんな」

「いや、俺がいじったから悪い。聞いといてごめん」

「でもお前は良くやった。ライディ」

 

するとラウラは俺の頭を撫でた。え?はい??

 

「お前は怖かった筈だ。セカンドシフトしたってクーゲルから教わり、私やシャルロット、鈴、セシリアが立て続けに沈みながらもお前は箒と一緒に恐怖を押し込んで時間を稼ぎ、ドイツからのミサイルを当てるのに身体を張ってくれた。」

「ラウラ………」

「こればかりは黒うさぎ隊(シュヴァルツェ・ハーゼ)の隊長として褒めさせてもらう」

 

すると俺は今まで耐えてた恐怖から解放されたかのように泣き始めた。

なんだかラウラが隊長として、母親として優しさを感じたのだったが……

 

「一夏さんったら一体どこへ行きましたの?」

「しかも箒もいないしもしかして……」

「えぇシャルロット。あんたの言う通りよ!!」

 

一夏の奴まさかの嘘ついてました。いや、もしかしたらなんか訳があるもんな!

 

「………すまないライディ、この場を離れる おやすみ」

「………あぁ。おやすみ」

 

そのままセシリアのところへ向かったラウラ。俺も触らぬ神に祟りなしの様に寝ることにしたのだが……

 

「…………」

 

目を閉じると遠くから女子の話し声と波の音……に混じって、なんかドーンと何かが揺れるような音が海のほうから聞こえた

 

(ライディ!ライディ!!)

「まさか、いや嘘やろ?」

 

またドーンと聞こえた。

俺はおもむろにクーゲルを準起動、ホロウィンドウを開く。

 

「…………」

 

開くのを後悔した、今すぐ閉じてなにも見てないと言い聞かせたかった。

 

「………なぁクーゲル。なんかセシリア達のISが起動してんだけど」

(………間違ナイネ)

 

白式と紅椿の反応からして二人の距離は近いってことは…………

 

「マジか(マジカ)!!」

 

で、今この状況って訳だ。

 

 

ーー♢ーー

 

 

福音を倒した後、束は福音の状態を確認していた

 

「あちゃー……福音これだいぶやばい方向でぶち壊れてるよーはるくんやりすぎ…………っておろ?いっくんと箒ちゃんだ!!あれ!?これってもしかしてそれって…………キスするわけか!?」

 

束は一夏と箒のアオハルをウィンドウで確認。それを見た瞬間束は鼻血をだらだら流した

これがISを作った人ですよ?おかしいよね。

 

「うぉぉぉぉぉ!!!いけぇっ!!いけぇっ!!キスしろキス!!特にディープ…………………」

 

しかしこの世は無常、ヒロインズこと他の専用機持ちが邪魔をした事により束の鼻血はずるずると啜りながら戻り逆に目が流血した。

 

「はあああああ!?!?パクリ中国女に金髪ドリル女ああああ!!!いっくんと箒ちゃんを邪魔した罪は生きる事が背負いし罰なんだよごらああああああああああああ!!!!!!!!!」

 

その姿は鬼(オーガ)そのものであり,鳥肌必然である

 

「随伴してる二機の国も破滅させてやろうかぁ!!確実に仕留めてやる!! しょう!にん!!」

「やめろ馬鹿者、本当に笑えんぞ」

「あ、ちーちゃんだ」

 

無数のホロウィンドウをばらまいた束を止めたのは何時もの黒スーツ姿の織斑千冬だった。

コロリと表情を変えてホロを消した天才は柵の上で器用にクルリと回って見せた。

 

「てかちーちゃん、教師としてアレ止めなくて良いの?」

「問題ない、ストッパーに任せることにした」

「ストッパー……あぁ拳銃君か」

 

オペラグラスで喧騒の真っ只中を覗くとライディが間に立ち塞がって必死に説得を試みているのが見えた。

 

「…………白騎士事件の後,例のIS白騎士はどうなったかだ。」

「あぁあれね。あの後あるISに組み込ませましたーさて!一体何のISかな?」

「一夏のIS、白式だろ。 白式→しろしき→しろきし→白騎士

そうだろう?」

「正解!!お礼に束さんのキスを…………」

「するなよ、気持ち悪い」

 

相変わらずな関係だが千冬は心のどこかでは満更でもなかった

 

「んで? 珍しくちーちゃんから連絡を寄越して束さんに何のよう?」

「何故あんなことをした」

「ほえ?」

「銀の福音だ」

 

険しい顔で直球を投げつける千冬に対して束は変わらず張り付けたような笑顔で受け止めた。

 

「私がやったという根拠は?」

「妹の晴れ舞台のデビューを華々しく飾り立てるため。作戦会議の最中に必要以上に紅椿の有用性を示したのが何よりの証拠だ。ましてや、目にいれても痛くない可愛い妹の為とあればなおさらだ」

「成る程、筋は通ってるね。まあその通りなんどけど」

 

あっさりと認めたことに驚きもせず千冬は続ける。

 

「だがお前は馬鹿ではない。今の篠ノ之箒にあんなものを与えれば増長するのは目に見えてたはずだ」

「そうだね、箒ちゃんは力に飢えてた。こんなろくでなしに懇願するまでにね」

「結果。一夏は死にかけ、お前の妹も死ぬ一歩手前という結果だ。お前、あの二人が死んだりしたらどうするつもりだったんだ?」

「心配性だなちーちゃんは、本当にヤバかったら私が止めたよ。現に一回目は眼鏡君が、二回目はいっくんが間に合ったでしょ?」

「そんなのは結果論だろ。一夏と妹を何よりも大事にしているお前が何故あんなことをした? 私にはそれがわからない」

 

千冬の知る束は気に入らない人間などどうだって良いが、逆に気に入った人間に対してはある意味過剰すぎるぐらい愛でる。

そんな彼女が軍用ISを暴走して二人を殺しにかかるとは到底思えなかったのだ。

 

「私の目的は二つだよ。一つ目は箒ちゃんに紅椿をあげて、現実を見てもらうため」

「現実」

「そっ。箒ちゃんが暴走しちゃうのは容易く予想出来た。でもそんなの遅かれ早かれだし、どうせなら完膚なきまで叩き落とした方が手っ取り早い」

「実の妹に対して随分な荒療治だな」

「結果的に箒ちゃんは良い方向に向かったでしょ? その点に関しては、あの拳銃君にも感謝しとこうかな」

 

拳銃君、ライディを褒めたことに眉を潜める千冬。束は柵の上で踊りながら指を二本たてた。

 

「二つ目は、IS学園を守る為だよ」

「どういう意味だ? お前がIS学園に固執する理由などあるか?」

「だっていっくんと箒ちゃんの学舎だよ? そーれーにー、ちーちゃんの大事な物もアソコにあるでしょ?」

「……」

「まあいいや。とりあえずちーちゃんは私に感謝すべきだよ」

「馬鹿を言うな」

「ほんとほんと。ぶっちゃけ私があのISをハッキングしなかったらIS学園は危なかったんだぜ?」

「どういうことだ?」

「銀の福音の最初の攻撃目標がIS学園だったからさ」

「なんだとっ?」

 

束が何を言っているか千冬は理解出来なかった。

銀の福音の飛行ルートから算出した到達点はIS学園からは余りにも離れている。

 

「そもそも福音はおまえがハッキングしたから暴走したのではないのか?」

「惜しい。正確には、束さんがいじらなくても勝手に銀の福音は暴走するように出来ていたのさ」

「それをお前が上書きしたと?」

「ピンポン」

「ますます分からん。主導者は誰だ? 開発元のイスラエルとアメリカがIS学園に介入する利点がない」

「利点なんかいくらでもあるんじゃない?IS学園を掌握するためとか。日本なんかにIS学園の運営なんか任せてられナーイって。それかアメリカに恨みもった国の陰謀か」

「振り回されるこっちの身にもなれ」

「亡国機業だったりして」

「ますます笑えん」

 

ため息を溢す千冬とケラケラ笑う束。

対称的ながらも対等な二人、人類最強(ブリュンヒルデ)と人類最高(レニユリオン)の話し合いという国家がこぞって向かってきそうな場面でも、二人の間の空気は意外と引き締まってなかった。

主に篠ノ之束の存在故だろうが。

 

「もうひとつ聞いてみたいことがある」

「珍しい、今日のちーちゃん饒舌だ」

「嫌か?」

 

まっさかー、と束は柵に座り込んでプラプラと足を揺らしながら耳を傾ける。

 

「で? これ以上私に聞きたいことってなに?」

「ライディ・アストラスの事だ。」

「へぇー、ちーちゃん復讐者癖あったんだ」

「な訳あるか。 アストラスは私がドイツ空軍で臨時教官してた時の教え子となんだかんだで似てるからな」

 

教え子と聞いてあの銀髪を思い出した束だったがなんやかんやで結果を話した。

 

「で、どうなんだ?」

「ISの方には異常も差異もなかった。あのシュヴァルツェア・クーゲルってISは完全に眼鏡君を受け入れてるよ」

「何故動かせてるかは?」

「んーー正直まだ仮説の段階だよ。いっくんと同じではないことは確かだね」

「そうか」

 

今度はホッと息を吐いた千冬。近くの木に背中を預ける。

 

「それにしても待機形態が動くなんて拳銃君だけかもね。」 

「あぁ。そしてこの世界を変えてしまうかもな」

「なんで?」

「束がISを作った際で戦闘機とISの戦闘で父親を亡くしているからな。それと女尊男卑すら何かしそうで怖い」

「そこはちーちゃんの見せ所だよ」

「なんだそれは」

 

ちょっとした笑いが起きたが、束は改める

 

「よし、ちーちゃんももう行ったらどう?」

「それもそうか。なら回収に行ってやるか」

 

会話の場から立ち去る千冬。これからケツの青い子供に説教を、止めた二人に対してのねぎらいの言葉を考えながら束を背にして旅館に向かう。

 

「ねえ、ちーちゃん」

「ん?」

「今の世界、楽しい?」

 

束の問いかけに、千冬は振り替えることなく普通に答えた。

 

「そこそこな。お前はどうなんだ?」

 

 風が一際強く吹き上がる。

 波の音をかき消すほど強い風。

 

「私?そうだなぁ────

 

 

 

 

 

 

 

──あんまり楽しくないかなぁ」

 

 

 

吹き荒れる風のなかでも、確かに聞こえた。

篠ノ之束に似合わないような悲壮感に満ちた呟きに思わず千冬は振り返ったが。束の姿は忽然と消えていた。

 

「束。お前はまだ……」

 

その呟きも夜の闇に溶けて消える。

千冬は少しの間、束がいた場所を見つめていた。

その千冬の瞳が僅かに揺れていたことは誰も知らない。

知るとすれば、それは空で煌々と輝く満月だけだろう……

 

 

ーー◇ーー

 

 

「あーー、うーー」

 

俺の隣にはゾンビがおる

 

 翌朝、これはまた美味しい朝食を食べた後にISの運搬作業ののち、10時に帰りのバスに乗り込んだ俺たち。

 

昨日の騒動で皆の怒りをかい、無断外出をした一夏(と箒)は罰則を受け、運搬作業の大半を行ったせいでボドボド状態

「かゆ、うま」と言いそうなんだけど

 

「だ、誰か飲み物持ってないか」

 

「ツバでも飲んでろ」

「知りませんわ。」

「あるけどあげない」

「ぐふっ。ほ、箒」

「な、何を見ているか!」

「あだっ」

 

あわれ、というか不憫な。

ラバーズは昨日の件でまだご立腹、頼みの箒も顔を赤らめて照れ隠しチョップ。

鈴は二組なので別のバスだが、すれ違いざまにハンドサインで「地獄に落ちろ」を無情でしてきた。こっわマジで

 

「ら、ライディ………」

「はぁ………仕方ねぇな、ほら俺の予備のうっ…!」

 

予備のミネラルウォーターを渡そうとした瞬間、一夏ラバーズ全員に睨まれた為、ミネラルウォーターを引っ込める

 

「おい待て…!くれるんじゃなかったのか!?」

「…………つばでも飲んどけ」

「ふざけるなあああああ!!」

 

睨まれたからと言って引くわけにも行かないが、ラバーズの考えを優先してやった事をお忘れなく。

 

(うーん、ちょっと可哀想だったかな……?)

 

さっきはつい冷たく返したものの、シャルロットは一夏のぐったりとした様子にチクチクと良心の呵責を感じていた。

 

(まぁ、昨夜は何も無かったんだし、そろそろ許してあげようかなぁ)

 

荷物からペットボトルを取り出す。乗り込む前に自販機で買っておいたのが役に立ちそうだ。

 

(みんなは動かないみたいだし……よしっ!)

(さすがに冷たかったかしら……?)

 

セシリアは、一夏がガックリと肩を落としているのを見ながら、少しそわそわしていた。

せっかく優しくするチャンスだったのに、つい昨日の事を思い出すとあんな態度を撮ってしまった。

よくよく考えれば、他の女子が非好意的なのだから千載一遇のチャンスである。

 

(そうと決めればーー)

 

鞄の中から横になっているペットボトルに手を伸ばす。これは元々セシリア自信が自分用に用意していたのだが、思わぬ形で使えそうだった。

 

(善は急げですわね。……コホン)

(さっきは、何か別の言い方があったのではないか……?)

 

そんな自問自答を繰り返しているのは、今回のビーチで新しい1歩を踏み出したラウラだった。

昨夜のことが引っかかって真っ先に冷たい反応をしてしまった自分が恨めしい。あそこで笑顔を見せてこそいい女というものではないのだろうか。

そんなことを考えながら、どう巻き返すかと考えるラウラ。

 

(そう……だな。どうも喉が渇いているようだし、朝方買ったお茶が使えるか)

 

さっき取り出したペットボトルを弄びながら、どう渡したものかと考える。

せっかく他の女子が引っ込んでいる今こそチャンスだと見据えている。

 

(うむ。さりげなく行って渡すか。そ、それなら一夏も喜んでくれるだろう!)

「あああ、やってしまった……」

 

せっかく昨夜はいい雰囲気までいったのに……結局何かしらの結果を得ることが出来なかった。それどころか他の女子から逃げ回る一夏に内心ムッとしてしまって、ついさっきはあんなことをしてしまった。

 

(い、いかんな。私はすぐに手を出す癖がついているのではないか?)

 

正直、それはまずい。

先々月までならまだしも、今は同じクラスにシャルロットがいる。

あの強敵を前に暴力一辺倒では、おそらく後手に回る。

 

(よ、よし! 今こそ優しさをもって接するべきか!)

 

バス移動までの間に買ったペットボトルのお茶を握りしめて箒は立ち上がった。

 

「う〜……しんど……」

「「「「い、一夏っ!!」」」」

「はい?」

 

4人の声が同時に聞こえて俺は振り向く。それと同じタイミングで車内に見知らぬ女性が入ってきた。

 

「ねぇ? 織斑一夏くんっているかしら?」

「あ、はい。俺ですけど」

 

1番前の席に居たのが幸いした。一夏は呼ばれたまま素直に返事をする。

その女性はおそらく20歳くらい、少なくとも俺たちよりは確実に年上で鮮やかな金髪が夏の日差しで輝いて眩しい。

格好はブルーのサマースーツを着ている。千冬のようなビジネススーツではなく、おしゃれ全開のカジュアルスーツ。開いた胸元からは女性特有の整った膨らみが僅かに覗いている。

その胸の谷間に持っていたサングラスを預け、腰を折って一夏の顔を見つめてきた。

 

「へぇ。君がそうなんだ」

「あ、あの、あなたは……?」

「私はナターシャ・ファイルス。銀の福音(シルバリオ・ゴスペル)の操縦者よ」

「えっ……」

「ムッ……!」

 

予想外も予想外、つい数時間前に俺たちと死闘を繰り広げていた福音の中に居た人が今目の前にいるだと!? いやそんなことよりも何が目的……

 

チュッ

 

「なっ……!?」

「へっ……?」

「うそ………」

「なっ……なっ!」

「ああああああああ!?!!?!?!」

(………ワァオ)

 

困惑する俺達を前にナターシャは一夏の頬に唇が触れた。

そう、キスである。

 

「これはお礼。ありがとう、白いナイトさん」

「え、あ、う……?」

 

困惑し頭の上にはてなを浮かべている一夏……しかし時間が経つにつれ顔が赤くなっていく。

その満更でもない表情の一夏に先程声をかけていたメンバーが黙っているわけなく。

 

「浮気者め!」

「一夏ってモテるねぇ(パキパキ)」

「本当に行く先々で幸せいっぱいのようですわね(ニコ)」

「はっはっはっ……死ね」

 

なんか嫌な予感がすると思ったけど即座に的中した

4人は一夏の元へと歩き。

 

「「「「はい、どうぞ!」」」」

 

投げられるペットボトル×4。内容量500ミリリットルが一夏を襲う。

ボトルを一夏の顔面にシュゥゥゥーッ!!

 

「一夏ぁぁぁ!!!!」

 

超エキサイティン!!な一夏に悲鳴を上げていたらナターシャに話しかけられる

 

「貴方がライディ・アストラス君ね」

「えっ……はい」

「話に聞いたわよ。貴方の指揮で福音を止めてくれたのよね」

「まぁ……皆が助けてくれたお陰です。当然……うわっ!」

 

クーゲルが変形してナターシャさんの周りを飛ぶ。

 

「(ヨカッター!イキテター!)」

「あぁちょっと!……すいませんこんなこと巻き込んじゃって」

「ふふっ、貴方のISって随分と面白いわね。 これからも大切に扱ってね。」

 

そう言い残してナターシャさんは俺の頭を撫でてくれた。

 

(…………こう言うのも悪くねぇな。)

 

パシャリ

 

「ん?」

 

スマホのシャッター音が聞こえた為見てみると

 

「アストラス君の満面の笑み…………撮ってもらったよ!!」

「相川さぁぁぁぁん!?!?」

 

即座に飛びかかりスマホを取り上げる

 

「あっ!!返してよ!」

 

写真を削除し、スマホを返した。

 

「ふっふっふっ………」

「はぁ……はぁ……何がおかしい!!」

 

すると皆がスマホを見だした。

 

「アストラス君のレア表情ゲット!!!」

「待ち受けにしよーっ!!」

「アスちんこれ新聞部に流出させておくねー」

「うわああああああ!!こんなもんぜってぇ流出させるかああああ!!!」

 

のほほんさんもとんでもないことを言い出して大波乱

俺の必死の訴えもむなしく一組から1年へ、1年から学園中に拡散。

学園から帰って新聞部副部長に問いただされたり俺を見る女子の目がほんの少し変わったりした。

それが少しでも良い方向であればいいと。俺ことライディ・アストラスは思わずにいられなかった。

 

(ライディ、ドンマイ)

(うるせぇ!!)

 

 

ーーー◇ーーー

 

 

バスから降りたナターシャは目的の人物を見つけて手を振った。

 

「随分とご満悦じゃないか」

「思った以上に可愛い子でつい、ね」

「ついで騒動を起こすな、後始末が面倒……」

「うわああああああ!!こんなもんぜってぇ流出させるかああああ!!!」

 

バスから青少年の悲鳴が響き渡るが、主犯はニッコニコやった

 

「あ、そう言えば貴方の方の国家代表がアメリカにカチコミに来たわよ」

「聞いた、なんでも今回の騒動で活躍した若きIS乗りに労いの気持ちをこめて報酬に色をつけてくださいと伝えてください。と言ったそうだな」

「すんごい怒ってたわよ。」

「こっちも言っておく」

「あまり気にしなくて良いわよ。私も思ってたところだし」

 

ナターシャと都姫にも何か思うことがあったのだろうか。考えは一致していた。

でも千冬はもし合間見えないことを祈ったのだった

 

「身体のほうは大丈夫なのか。飲まず食わずで振り回されたろう」

「大丈夫、あの子が私を守ってくれたから」

 

ここでいうあの子というのは暴走を引き起こした銀の福音に他ならない。

 

「やはり、そうなのか?」

「ええ、あの子は暴走しながらも私を守ることを第一にしていた。強引なフォームシフトにコアネットワークの切断。あの子は侵略なんて一つも考えてなかった。周りを敵と認識され、それから私を守ったに過ぎなかったの」

 

話を進めるナターシャは胸に手をおいて握りしめる。

先程の陽気な風貌とはうって変わって明確な怒りと悲しみが宿っていた。

 

銀の福音のコアは無事だったが、再度暴走する危険性を考慮して凍結処分が下ったらしい。

 

「だからこそ許さない。あの子の判断力を奪い、翼をもぎ取った元凶を。私の命にかけても、報いを受けさせて見せる」

「あまり無茶をするなよ。この後査問委員会があるんだ。おとなしくしていろ」

「それは忠告? ブリュンヒルデ」

「そうとってもいい」

「わかった、今は大人しくするわ……今は、ね」

 

口には笑みを、眼には鋭さをかわしながら、二人の女傑は背中を向けた。

この騒動が序章に過ぎないのではと、何処かで思うのだった

 




みなさんどうもらんくらニキです。
臨海合宿編やっと終わりましたー!
長かったー!!!!!!。これから夏休み編の投稿していきますので応援よろしくお願いします

追記・この時期に夏休み編を書き終えたかったっすね(泣)
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