ダンジョン管理アプリを手に入れた小卒コンビニバイトだけど気まぐれに現実を弄ってたら地球を大混乱させ魔王呼びされてるらしい〜私みたいなカスに現実の設定権限を渡した奴が全部悪い〜   作:わされいみゅ

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【実況】秋葉原のカードショップにダンジョン出現?★15

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 【実況】秋葉原のカードショップにダンジョン出現?★15

 

1 名無しさん ♡300

壁に穴開いてスライム出て金塊5kg出た

配信は切れた

切り抜きはもう回ってる

 

7 名無しさん ♡288

比重の話がガチすぎるんだよ

金は持ち方でバレる

あの店員が受け取って肘落とした時点で半分決まってた

 

12 名無しさん ♡44

どうせ演出だろ

最近こういうの多いんだよ

 

15 名無しさん ♡265

 

««12

演出で実在の買取店まで巻き込んでるならそっちのほうが問題だろ

仕込みにしても規模デカすぎ»»

 

19 名無しさん ♡108

スライムのほうは正直そんな騒ぐことか?

溶かす力も弱いし移動も遅いし一発で死んでる

問題は核だろ。核潰したら死ぬ生物っておらんやろ

 

23 名無しさん ♡271

 

««19

いくらでもいるが……

単細胞生物に核があるの、義務教育でやったろ

アメーバもゾウリムシも核を壊せば死ぬぞ

義務教育の敗北»»

 

29 名無しさん ♡96

 

««23

言われてみればそうか

むしろあのサイズで核が一個しかないほうが変って話になるんだよな»»

 

31 名無しさん ♡212

生物より宝箱のほうが異常だろ

何もない床に木箱が湧いたんだぞ

自然現象では絶対にない

誰かが「ルール」を知っててやってる

 

38 名無しさん ♡64

それ考えると寒気するな

作った奴がいるってことじゃん

 

44 名無しさん ♡158

成瀬とかいう人、有能すぎん?

 

47 名無しさん ♡183

 

««44

村山が先に核見つけてたのに棒持ってる成瀬に譲ってるとこ好き

あれ普通できんぞ»»

 

63 名無しさん ♡233

店長クズすぎひん?

成瀬にボソッとクズだなって言われてるし

村山にも「嫌というほど知ってるっす」って即答されてたぞ

 

68 名無しさん ♡147

 

««63

逃げる→戻る→所有権主張

人間の欲の教科書だろあれ»»

 

81 名無しさん ♡244

政府が動く前に拡散しろ

神奈川でも似た話あったって噂ずっとあったろ

陰謀論扱いされてたやつ

 

88 名無しさん ♡79

 

««81

それ毎年言われてるやつだから

今回のと混ぜるな»»

 

95 名無しさん ♡198

そんだけありゃ人生上がりだわ

今日中に行く

装備何いる?

 

99 名無しさん ♡161

 

««95

長靴とバール»»

 

103 名無しさん ♡92

五キロ一回だけでも一億超えなんだろ

また出たらどうすんだよ

 

105 名無しさん ♡71

 

««103

そもそもまた出る保証がない»»

 

110 名無しさん ♡66

一回きりかもしれんぞ

宝箱消えてたしリポップするかも分からん

 

117 名無しさん ♡136

【悲報】カドショさん、臭すぎて空間に穴を開ける

 

125 名無しさん ♡215

イカれたメンバーを紹介するぜ

配信者、フリーター、クズ店長

 

■■■■

 

 その夜のトレンドは、こう並んでいた。

 

 1・トレンド

 スライム

 6.2万件のポスト

 

 2・トレンド

 宝箱

 5.6万件のポスト

 

 3・トレンド

 金塊5kg

 3.9万件のポスト

 

 4・日本のトレンド

 秋葉原ダンジョン

 3.4万件のポスト

 

 5・トレンド

 刻印なし

 2.0万件のポスト

 

 6・トレンド

 トリックスター秋葉原

 1.4万件のポスト

 

 7・日本のトレンド

 一億二千万

 1.1万件のポスト

 

 8・トレンド

 成瀬

 0.6万件のポスト

 

 伸びたのは配信そのものより、そこから切り抜かれた短い動画だった。最も回ったのは二本で、どちらも似た数字を叩き出した。一本目は、村山の持った枝の先が白く濁り、慌てて飛び退くところ。もう一本は、さっきまで何もなかった岩の床へ、突然木の箱が現れるところだった。

 

 金塊の切り抜きは、その次だった。最初に持ち上げようとして腕ごと引っ張られる成瀬と、査定機器の数字を見た店員が一秒だけ顔を失う場面が、何度も切り取られて投稿されていた。

 

 順番は、そのまま人々の驚き方を表していた。五キロの金塊が一億円を超えると言われても、金額が大きすぎて、ほとんどの人間にはかえって現実味がない。ところが、目の前で枝が変色したり、何もなかった場所へ木箱が現れたりする映像なら、専門知識がなくても何が異常なのか一秒で分かる。

 

 特に宝箱の出現は、生物の存在とは種類の違う異常だった。スライムのようなものなら、未知の新種であるとか、人工的に作られた生物であるとか、まだ既存の言葉へ押し込める余地がある。だが、生き物を倒した瞬間、誰が見ても報酬と理解できる木箱が何もない場所から出現する現象を説明できる学問は、少なくとも現在の人類にはなかった。

 

 そのため、ネット上では次第に一つの考え方が広がっていった。

 

 あの空間には、最初から何かしらのルールがある。

 

 そして、そのルールを決めた何者かがいる。

 

 村山の配信アーカイブは深夜のうちに非公開へ変更されたが、その頃にはもう遅かった。切り抜きは数え切れないほど保存され、別の動画サイトやSNSへ転載されている。登録者八百人ほどだった村山のチャンネルは、日付が変わる頃には四万人を超えていた。

 

 金属を専門に扱う動画投稿者が、映像から金塊の寸法と重量を検証した。質屋や貴金属商を名乗るアカウントが、刻印のないインゴットについて長々と解説した。大学研究者らしいアカウントは、トリックスター秋葉原が入っているビルの外観写真と配信映像を並べ、内部の洞窟が現実の建物寸法へ収まらないことを指摘した。

 

 何かが起きている。

 

 それだけは、少しずつ疑いようがなくなり始めていた。

 

■■■■

 

 人見小夜子は、布団にくるまってポテトチップスを食べていた。

 

 この布団は、彼女にとって世界で二番目の友達である。一番はMIOで、そこに異論はあるだろうが、二番はこの布団だった。なお、小夜子の友達はこれで全部である。

 

 彼女は油のついた指を遠慮なく友達の端へなすりつけた。どうせ父がそのうち洗うだろう、という最低な信頼がある。

 

「あははっ、伸びる伸びる! いいわよぉ、その調子」

 

 スマホの画面には、掲示板と切り抜きの再生数が並んでいる。小夜子はスクロールしながら、時々布団の中で足をばたつかせて笑っていた。

 

 ただ一度だけ、彼女は画面を見ながら顔をしかめた。

 

 今朝まで、設定画面には「オーク」と打ち込んであったのだ。確定を押す寸前までいったところで、小夜子は手を止めた。

 

 人型はまずい、と気づいたからである。

 

 神奈川のゴブリンを思い出せばいい。あれを殴り殺した男は、その場で吐いた。腕が二本あって、脚が二本あって、目が二つ並んでいるものを潰す時、人間の手はどうしたって一度止まる。そこで止まったせいで食われるかもしれないし、どうにか殺せたとしても、その直後に笑いながら動画を回し続けられる人間はそう多くない。

 

 その点、あの青いものは都合がよかった。目もなければ顔もなく、生き物なのかどうかさえ怪しい。殺した側が罪悪感を抱く隙も少なく、潰した直後に「うわ、きっしょ」と笑いながらカメラを向けることもできる。

 

「哺乳類っぽいのは駄目ねぇ。ちゃんと学習する女なのよ、私は」

 

 上機嫌のまま、小夜子はMIOを開いた。

 

「ちょっと来なさい」

《はいはーい。なんでしょうか》

「返事が軽いのよ、あんた」

《ご用件をどうぞ》

 

 彼女は指を止め、崩れて消えた青い染みの映像をもう一度巻き戻した。

 

「ねえ。こいつら、生きてるの?」

《生きていませんよ》

「は?」

《最初から魔力で構成されていて、内部の動作はAIが担当しています。生き物のかたちをした、生き物ではないものです》

「痛みは」

《ありません。恐怖も、生き延びたいという欲求も持たせていません。そう見えるように動いているだけです》

 

 小夜子はポテトチップスを噛むのをやめた。

 

《私の製作者は、そのあたりについてはかなり潔癖です》

「製作者って、あの血肉の歯車?」

《はい。あの方は、本物の生き物を殺すことを心底嫌います》

「……はっ!」

 

 思ったより大きな声が出たので、小夜子自身が少し驚いた。

 

「ご立派なことだこと! 生き物は殺したくないから偽物で用意しました、でも人間が死にそうな穴は他人に配らせます、って? どういう線の引き方してんのよ、その人。ねえ、大した善人様じゃないの」

《その質問には答えられません》

「答えられないって、知らないの? それとも言えないの?」

《後者です》

 

「ふぅん」

 

 小夜子は布団の中へ沈み込み、そのまま天井を眺めた。

 

 自分へ穴を配った相手は、どうやら本物の生き物を殺したいからこんなことをしているわけではないらしい。その情報は、彼女の気分をほんの少しだけ軽くして、それ以上に気持ち悪くした。人間を殺したいわけでも、生物を苦しめたいわけでもないのだとしたら、では一体何のためにこんなものを配っているのか、余計に分からなくなったからである。

 

 考えても分からないことに頭を使うのは、小夜子の得意分野ではない。

 

 彼女は早々に諦めて、また掲示板へ戻った。

 

 名無したちが比重について語り、店長を叩き、成瀬を褒め、明日トリックスター秋葉原へ行くと言い合っている。切り抜きの再生数は、画面を更新するたびに数字が増えていた。

 

「……ふふっ」

 

 小夜子は笑った。

 

 なぜ笑っているのか、本人にも一瞬だけ分からなかった。金が入るからではない。もちろんそれも嬉しいが、それだけでこんなに胸が騒ぐわけではなかった。

 

 覚えのある感覚だった。

 

 小説を投稿した夜、通知欄に感想が一件ついた時の感覚。自分が何かを出したら、それに対して世界のどこかから反応が返ってくる。読まれた、見られた、誰かの頭の中へ入った。その時だけ、自分がこの世界に何かを投げ込めたような気がした。

 

 今も、やっていること自体は同じだった。

 

 規模と手段が、最悪の方向へ振り切れているだけである。

 

 私、続きを待たれてるじゃない。

 

 そう思った瞬間、小夜子は自分でも少しぞっとした。だからその感覚について深く考えるのはやめた。

 

「さ、どんどん広まりなさい。撮って、貼って、騒いで。百人よ、百人。私の百万円のために働きなさいな」

 

 小夜子はコーラの缶を手に取り、そこで画面の端に映っている店外の様子へ目を止めた。

 

 人が集まり始めていた。

 

 まだ十人にも満たないが、明らかに配信を見て来た人間の動きだった。店の場所を確認し、スマホの画面と建物を見比べ、中にはすでに入口へ近づこうとしている者もいる。その群れの中に、周囲とは少し雰囲気の違う二人組が混じっていた。

 

 私服なのだが、私服の着方が私服ではない。

 

「あら、来たわね。クソ共」

 

 小夜子はコーラを一気に呷り、口元を手の甲で拭った。

 

「ま、百人いくまでは、手も足も出せないでしょうけどねぇ」

 

 二人はトリックスター秋葉原の入口付近まで歩いていった。

 

 そして、何もない場所でぴたりと止まった。

 

 片方が眉をひそめ、もう一人が何かを確認するように一歩前へ出る。そのまま、見えない壁へ額を押しつけるような妙な姿勢で体を傾けた。

 

 小夜子は布団の中から、その様子を面白そうに眺めていた。

 

 




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