成り代わりセイアは未来が分からない 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
お茶会というのはそれぞれの親交を深めるために行われるものと、政治的な集まりとして行われるものがある。
ミカやナギサなどの見知った相手とのお茶会は大体が親交を深めるためのものだ。けれど、派閥の先輩方や各委員長などとのお茶会は政治的な意味を持つ。これらには絶対的な隔たりが存在する。
では、次期サンクトゥスのリーダーである私、次期正義実現委員会のNo.2である羽川ハスミ、次期救護騎士団の団長である蒼森ミネ。錚々たるメンバーが集まったこの状況は、果たしてどちらであるか。
もちろん、親交を深めるためである。
「ほぅ……茶葉特有の渋みがありますがそれはあくまでアクセントの一つとして主張しすぎず、口に含んだ瞬間豊かな香りが広がりますね。これは良いものです」
カチャリと持っていたティーカップをソーサーに置き、じっくりと味わうように瞳を閉じているミネが言う。その仕草は気品溢れるもので、それを見ていたハスミも追って同じ紅茶が入ったティーカップを口へと運ぶ。
「……なるほど、たしかに香り高いものですね。この微かな渋み、甘味との相性も良さそうです」
「そうですね、何かと共に嗜むのが最適かと。紅茶自体に香りがありますので、あまり味の主張が強くないものが合うでしょう」
ふむ、なるほどね。なるほど。そうね。そういう感じね。こうして紅茶に詳しい二人がいると新たな発見があって楽しいよ。私は雰囲気で紅茶を嗜んでいるからね。大体なんでも美味しいし。
「セイア様、この茶葉はどちらで?」
「さあ。申し訳ないが詳しくは知らないのだよ。今度ナギサに聞いておくとしよう」
「ナギサ様に?」
「君達二人と同様に彼女もお茶会や紅茶が好きでね。紅茶やお茶菓子など、なんでもかんでも良いものを見つけては私に送りつけてくるのさ。助かると言えば助かるが、とはいえ消費するのが大変であるというのも事実。だからこうしてお茶会の際に振る舞うことにしているよ」
もういいって言っても聞かないんだ。送られてくるものはどれも美味しいから強く拒否も出来ないし、どうしたものか。
「ああ、そういう……」
なんだその納得したような顔は。ミネよ、君はナギサをなんだと思ってるんだ。紅茶やお茶菓子を送り付けてくることに納得してるのは理解不能だぞ。まさかそういう経験でもあるのか?
「以前から話は聞いていましたし度々その様子は目撃していましたが……セイア様、かなりナギサ様に好かれていますよね」
「そうかい?」
確認の意味を込めてハスミの方にも視線をやると、ハスミも同様の意見なのか頷いていた。君もか。というかハスミの方側に多めに置いておいたお茶菓子の減りが早いな。少し私の分を分けておこう。
「他にもミカ様や派閥の方、ましてや他派閥の方からも一定数好意を集めていますし……」
「その中でもミカ様は顕著だと思いますが……」
「まあ、人に好かれて嫌な気はしないがね」
二人の言葉に対してそう言いながら紅茶でも飲もうかとティーカップに手を伸ばす。すると、視界の端で二人は微妙な表情をしながらこちらを見ていた。
「「……」」
「……なんだ、二人揃って」
思わずティーカップに手を伸ばした状態で固まる。本当になんなんだ。そんな目で見られる筋合いはないと思う。私が何をしたっていうんだ。人に好かれて嫌な人は居ないだろう?こんなの誰だってそうだ。
まさか、飲むなと?二人が紅茶を飲んだのだから私も飲んだっていいじゃないか。というか提供しているのはこちら側だぞ?いや、正確にはナギサのものだが。
私が胡乱げな視線を二人に送っていると、呆れたようなハスミがティーカップに手を伸ばした。そして紅茶を一口含み、ティーカップをソーサーに置いてから言い捨てる。
「いえ、セイア様は罪深い御方だなと思いまして」
なんだと!?
「それはどういうことだい?私は悪いことをした覚えがないのだが……」
「故意でしたらそれはそれで問題ですが、無自覚というのも考え物ですね」
「……ミネ、ハスミの言っていることを翻訳してくれ」
「自分で考えてください。他の方がかわいそうなので」
見捨てるなよ。おい、捨て台詞みたいに一言言って紅茶を飲むんじゃない。私はまだ楽しめてないんだぞ。こんな状況で紅茶の味なんて楽しめるか。
まったく、二人揃って失礼だな。私は次期サンクトゥスのリーダーだぞ?次期ティーパーティだぞ?正義実現委員会と救護騎士団の二人には然程関係ないかもしれないが、少しは気遣いというのをだね……。
だがしかし、私はムキにならないのさ。良くないと言われたことは修正していくべきだろう。それがこのトリニティで戦闘力の無い私が生き抜く術なのだ。これまでだってそうして生きてきた。それでここまで来れているのだから、私の生き方はかなり正解に近いはずなんだ。
「よく分からないが、それでも私は二人がそう言うだけの何かをやらかしてしまっていたのだろう。すまなかった」
「本当に思ってます?」
「ミネ、さっきから失礼すぎやしないかい?」
ミネからストレートに疑いをかけられているのはどうしてだ?謝罪を真っ先に疑われる経験とか久しく無いぞ。最近はこの二人から本当に遠慮という言葉が抜け落ちていってる気がする。最初の頃はもっとこう恭しい感じというか、こちらを立てるような振る舞いが多かったのに。
私との会話も慣れて来たということなのだろうか。確かに親密になればなるだけ適当な扱いをしてしまうものだしな。分かる。つまり二人と仲良くなれてきている証拠なのでは?そう考えると悪いことではないな。
「まあ君がそれだけ私相手に心を開いてくれているということかな。そもそも他ならぬ君達の言葉なのだから、私は真摯に受け止める所存だよ」
ミネもハスミも、どちらも冷静に物事を見ることができる人物だからな。この二人の意見ならば間違いはないだろう。来年は二人とも重要な役職に就くし、今のうちから親しくなれていることが幸運なんだ。
ミカやナギサ等の頻繁に顔を合わせるような人達とは違って言うほど接点が無いからな。この縁は大切にしなくては。
……ん?待てよ?別にまだティーパーティに所属しているわけではないのに、なぜミカやナギサと頻繁に顔を合わせているんだ?ふむ、お互い期待されている身分だからか?親近感というか、仲間意識のようなものがあるのかもしれない。
「まるで私達が特別みたいな言い方ですね」
「事実そうだろう?君達とはこれからも良好な関係を築いていきたいと考えているし、こうして君達を招待してお茶会を開いていることが何よりの証拠であると思うが」
私はナギサと違ってそこまでお茶会を開かないんだからな。準備やら諸々が面倒だし。そう考えるとナギサは本当にお茶会が趣味の一つなのだろうね。頻繁にお茶会を開くのは私には無理だ。
「隙あらば人を口説こうとするの、やめていただいてもよろしいでしょうか」
「口説いてなどいないが!?」
飛躍がすごい!話が一瞬でどっか別の場所にすっ飛んでいったぞ!私の謝罪は!?私の謝罪はどこにいった!?なぜ口説いていることになっている!?
「セイア様はそうやってすぐ人を口説こうとしますからね。この間なんてツルギ相手にもやっていましたし」
「やってないが!?いつだ!?いつの話だ!?あらぬ誤解を生むような発言は控えて欲しいのだが!?」
「誤解でしたら良かったのですが。あの時のツルギなんて、完全に乙女の顔になりかけてましたからね」
「セイア様、私の後輩達に手を出すのはやめてくださいね」
二人は私をなんだと思っているんだ。私に何か恨みでもあるのか?それともイジりの延長線上か?ふむ、そうだな。きっとそうだ。だって私は人を口説いたことなんて無いのだからそんなこと言われるハズがない。
それにツルギの根が乙女なのは知ってるが、流石に私相手にそうなるのは無いだろう。確かに少しでも縁を作っておくために色々と絡んだ記憶はあるが、私達相手の場合ツルギは結構冷静沈着だからな。ハスミのでまかせか。
なんだ、慌てて損した。
「「……はぁ」」
「……」
おい、今思いっきり溜め息吐かれたんだが。しかも私の顔を見て。やっぱり恨みでもあるのか?知らない間に二人に何かしたか?いったいどうして……これ、本当に良好な関係が築けているのか??
ミネ
かわいそうな被害者を増やさないためにセイアに注意しているが、本人が楽観的すぎてまともに響いていないので呆れている。
セイアのことをしょうがない人だと思っているし、一番理解しているのは自分だと思っている。
お茶会の招待が来ると必ず出席する。
ハスミ
セイアが無自覚なのでミネ程注意をするつもりはないが、ツルギ相手にもやりだしたので戦慄している。
セイアのことをしょうがない人だと思っているし、一番理解しているのは自分だと思っている。
お茶会の招待が来ると必ず出席する。
ツルギ
口説かれた結果危うく発狂しかけたが、鍛え上げられた表情筋で耐えきった。
セイアは恋愛漫画から出てきた人なのかと思った。
ミカ
本小説内で三回連続お茶会に誘われなかった人。
なんかニコニコしてる。