成り代わりセイアは未来が分からない 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
あなたが認めてくれたから
なぜ、なぜ、なぜ……。
分からない。なぜこうなってしまったのか分からない。今私が何をすればいいのかも分からない。有事の際に何もできないなんて、私はこんなにも弱く情けない存在だったのですか?
何か、現状を打開はできなくともこれ以上の悪化は防ぐことができる何か、それを考えなければならないのに。
その一点が私の思考を鈍らせる。想定もしていなかった事態、完全な緊急事態を前に私はただ尻込みしていることしかできない。これまで私が如何にセイアさんに頼り切っていたのか、それを強く実感させられる。
最初はただ休んでいるだけかと思いました。体調でも優れなかったのかと、用事でもあったのかと、何も気にせず日々を過ごして。けれど、あのセイアさんが一切の連絡も無しに連続で休むことなんて考えられなくて。
2日、3日、4日と続けて姿を見せないセイアさんに違和感が強くなり、ジワジワと湧き上がる疑念はいつしか確信に至るのです。私は完全に出遅れたのだと。気付いたときには既に手遅れ。
三つのティーパーティの席は一つの空席が生まれていて、もう埋まることは無いのかもしれません。なにがあったのか、どこに行ってしまったのかを知る由もないなんて。
セイアさんの活動範囲はこのトリニティ内で完結していました。これはつまり、セイアさんが失踪したのは、姿を現さなくなった原因は、全てこのトリニティ内で……それなのに、一切の目撃情報や証拠が無いのです。
相当の訓練を積んだ者達による計画的な犯行なのか……それとも、まさか、犯人は勝手知ったる我々トリニティの一員なのか……。
そう思い至った瞬間身の毛のよだつような恐ろしさを覚え、それと同時にやるせない気持ちでいっぱいになりました。
いったい誰が?なんのために?なぜセイアさんを狙って?
私はついに答えに辿り着くことはなく、グルグルと出口のない思考の渦に飲み込まれていくのです。
……やはり、私には無理でした。私なんかがセイアさんのようにできる訳が無かったのです。あなたの判断は間違いでした。あなたの期待に私は応えられなかった。
脳裏をよぎるのは平和だったあの頃。取り戻すことのできない、何気ない日常。
『私がホストねぇ。いくら順番とはいえ、面倒くさいな』
『め、面倒なのですか?』
『ああ。私は別にここまで来たくて来た訳ではないからね。熱意や姿勢、人の上に立つ素質という点で考えた場合、少し抱え込みがちなところはあるが君の方が適しているだろう』
『私よりもセイアさんの方が皆さんから慕われていると思うのですが……』
『なに、慕われているかどうかだけで上に立つ者が決まる訳では無いよ。それに、慕われすぎるというのも良くはないのさ。君がもっと周囲を頼ることができたのなら、私なんかよりも君の方が十分上手くやっていける。私はそう思っているよ』
『そう、ですか。もっと周囲を……』
『君は優しすぎるんだ。それこそ周囲への配慮からか一人でなんでもやろうとしてしまう。もっとも、君のそんな性格は美点であり、私も好ましいと思っているがね』
『……っ』
『おや、照れているのかい?』
『……照れてません』
『ふふ、そういうことにしておこうか』
……違います。いえ、
たしかに私は常日頃からティーパーティとしての立ち振る舞いを、人の上に立つ者としての立ち振る舞いを意識してきました。業務も手を抜かず、できる限りのことを尽くして来たつもりです。
だからこそ、セイアさんにそう言っていただけた際はその努力が報われたのだと、認めてもらえたのだと嬉しくなりました。
けれど、今の私にはそんなもの欠片も無くて。
連絡のつかないセイアさんの安否で頭が埋め尽くされて、この異常事態を察し始めた一部の方々からの問い合わせが相次いでいます。何も知らない私やミカさんではロクな返答もできず、雰囲気の悪化は免れない事態となっていました。
得てして悪い空気というのは伝播するもので、今ではトリニティ全体で不穏な空気が流れています。それに対して何か対応することもできず、秘密裏に捜索を続けていますが未だに情報は得られていません。
私は、いったいどうしたら……。
「な、ナギちゃん……」
「……ミカさん、どうかしましたか?」
「……」
ミカさんの前ではもう疲労も心労も隠すことができない領域にまで入っていました。そんな情けない私を前にミカさんは痛々しいものを見るように顔を歪め、言葉を選んでいるのか口を僅かに開いては閉じてを繰り返しています。
ええ、分かっています。私がどれだけミカさんに気を遣わせているのか。普段は明るく元気な彼女が私の顔色を伺うようになっているという現状がどれだけ異常か。
セイアさんの失踪に私の不調、トリニティ内の不穏な空気、彼女から笑顔を奪うにはあまりに十分過ぎたのです。
「あ、あのさ……わ、私……」
私が、何とかしなくては。セイアさんが狙われた理由は未だ判明していませんが、けれどホストのセイアさんを狙ったということは次は私達のはずです。
考えただけでも恐ろしい。けれど、私もティーパーティのうちの一人です。私がやらなくては。セイアさんから認めてもらったのです。このまま何もできず、ただ震えているだけなんて許されません。何より私が私を許せません。
せめて、ミカさんだけでも……。
「……ミカさん?」
「う、ううん、なんでもない。ごめんね」
「いえ、大丈夫ですよ。いつか必ずセイアさんも見つかりますから。今は現状をどうにかする方法を考えましょう」
「……うん、そうだね」
まずはセイアさんの不在をなんとか誤魔化さなくては。セイアさんとコンタクトが取れたことにして、セイアさん側の都合で長期的に学園を休むことになったと発表するべきですね。
その間のホストは私が代行しましょう。セイアさんの言葉が本当なら、私にもいくらか能力が備わっているはずです。最低限現状維持程度はできるでしょう。これで少しはマシになると思いたいですね。
けれど、問題はセイアさんと個人的に仲の良かった方達。彼女達にそんな嘘は通じません。セイアさんとの連絡手段がある彼女達には私の嘘はすぐに嘘だとバレるでしょう。
ならばどう伝えるべきか。正直に話してみますか?協力を仰げば、彼女達なら……。
そこまで考えて、ピタリと体が止まる。
誰にもバレない状況を作り出しセイアさんを襲うことが可能な人物というのは、セイアさんと仲の良かった人達なのでは……?
「……っ」
「ナギちゃん?」
「い、いえ、気にしないでください」
とんでもない思考です。ありえない。ありえてはならない。まさか、そんなことあるはずが……。
けれど、マンモス校であり周囲の街も賑わっているこのトリニティ自治区で誰にもバレないようにするには二人きりの状況を作り出す他無い。
それに加え、朝早くや夜遅くに出歩くこともなく普段から周囲に人が集まりやすいセイアさん相手に一人の瞬間を狙い撃つのは至難の業。ならば、ならばっ、それを可能にするのはやはりっ……!
ですが、それは誰が?それこそ何のために?個人的な恨み?妬みや嫉み?もしくは最初からトリニティを裏切るつもりで?
分からない、何も……。
セイアさんと仲の良かった方達は私だって顔を合わせたことがあります。その中にこんなことをする人がいるかもしれないなんて考えると恐ろしくて、けれどそんなことをしそうな人なんて考えられなくて。
誰が信頼できて、誰が信頼できないのか。そんな判断をしなくてはならないことそれ自体に躊躇いが生まれてしまう。
もし、「彼女は大丈夫そうだ」なんて考えで懐に入れた相手が私達に刃を向けたら?それでもし私が、ミカさんが次に被害を受けたら?
…………。
……。
己の無能さに反吐が出る。結局、何も変わらない。こんなにも時間をかけて頭を回転させようが解決策も何も提示することができない。現状は何も変わらない。ただ「もしも」を考えて怯えているだけの愚か者。そうして時間だけが過ぎていく。
――ここにセイアさんがいれば。
狙われたのがセイアさんではなく私であれば、ここまで事態は酷くならなかった。冷静に次なる一手を考えて行動していた。けれど、そうはならなかった。ならなかったのです。
セイアさんはおらず、私はそんなセイアさんの幻影を追いかけ、縋っているだけに過ぎない。
一人で、一人でやるしかない。私がやる他ない。セイアさんの代わりを、私が。
近付いているエデン条約も、セイアさんの捜索も、セイアさんを襲った犯人探しも、全て。私がやらなくては他に誰がやるのですか?この負担をミカさんに押し付けるつもりですか?
まさか。
私が彼女を守らなくては。トリニティのどこかに潜んでいる魔の手から、必ず。
そのためなら、心を鬼にしてでも――
ナギサ
セイアへの憧れや尊敬、親愛などのそれら全ての感情がセイアの失踪という形で行き場を失い、ぽっかりと穴が空いたような喪失感と恐怖を感じている。
セイアへの圧倒的な信頼が「ここに私ではなくセイアさんがいればなんとかなったはず」という己を卑下する方向へ舵を切った。
おいたわしい。
ミカ
……。
セイア
攫われたお前が悪い。
原作が始まる都合上ここから筆が遅くなること間違いなしなのです。先のことなんて考えていない行き当たりばったりなのでね。これも人間らしくていいな(?)。
感想や高評価をくれるとモチベが高まるゥ……溢れるゥ……ので感想や高評価お待ちしています。嬉しいんだよっ!!