成り代わりセイアは未来が分からない 作:ロリコンではない。好きな子がロリなんだ。
私は一人、ナギちゃんとセイアちゃんに秘密でアリウス自治区に向かってた。位置は大体分かるけど、でも正確な位置は分からないし途中でよく分かんない洞窟?地下?みたいなのに繋がる道しかなくなっちゃったし……。
この道を進んだ先にアリウスの学校があるのかも分からないからどうしよかなーって思って立ち止まっていると、その道の先からガスマスクをした女の子が銃を構えてこっちに近付いてきた。
「何者だ!」
「ん?私は聖園ミカだよ。ちょっとアリウスに用があって来たんだけど君ってアリウスの生徒かな?」
「聖園ミカ……!?トリニティのティーパーティか!?ふざけるな!なぜお前のようなヤツがここに!」
あれ?なんか怒ってる?怒らせるようなこと言っちゃったかな?
「あのね、アリウスのみんなと仲直りしたいなーって思って来たんだよ。ほら、みんなで美味しい紅茶でも飲んでお話しよ?みたいな」
「んなっ……!?おまっ……!!どこまで私達のことを苔にすればっ……!!」
あれれ?さっきよりも怒っちゃった?もしかして私、お話下手なのかな。でも伝えたいことはちゃんと伝えたし……。
うーんって頭を悩ませていると、その子はくるっと背を向けて今出てきた道に戻って行っちゃった。
「あっ、待ってよ。まだお話が……」
「そこで待っていろ!お前の言葉、一言一句伝えてやるからな!」
なんかよく分かんないけど、伝言してくれるってことでいいのかな。ということはあの子はアリウスの生徒ってことでいいんだよね?それにしても、あんな声を大きくして言わなくてもいいのにね。
大人しく地下へと繋がる道の前で待っていると、奥からさっきの子とは違いキャップを被った一人の女の子が出てきた。私よりも背が高くて、すらっとしてる感じ。
「あ、君がアリウスの偉い子なの?」
「……ああ。そう言うお前は聖園ミカだろう?」
「すごい!よく知ってるね!」
「報告ではお前の方から自己紹介してきたと聞いているが?」
「あ、そういえばそうだった。あなたのお名前は?」
「サオリ、錠前サオリだ」
なんだかちょっと冷たい感じだなぁ。こういう子をクールって言うんだっけ。あんまりトリニティにはいない感じの子だから新鮮かも。
「それで、アリウスと仲直りがしたいと聞いたが……本気か?」
「もちろん。じゃなきゃここまで一人で来てないよ」
「一人……トリニティは三つの派閥があると聞いている。他の派閥の奴らはどうした?」
「あ、あはは、実は私がここに来てるのは秘密なの。だから、私の独断かな?」
「……」
サオリちゃんは何かを探るような鋭い視線を向けてくるけど、もしかして私に何か裏があるかもって疑ってるのかな。
「安心して。別に何か企んでるってわけじゃないから」
「……そうか。分かった、一旦お前を信じよう。疑って悪かった」
「ううん、気にしないで。私も突然だったしね」
あれ?思ってた反応と違う。これ、案外カンタンに仲直りできちゃうんじゃない?ナギちゃんもセイアちゃんも心配性なんだから。やっぱりちゃんと話してみないと分からないことだってあるんだよ。資料だけじゃ分からないんだ。
二人にあんなたっぷり注意されちゃったから、こんな風に会話できるなんて思ってもみなかった。最悪攻撃されちゃうかもなんて、そんな心配は必要なかったみたい。
だって、こんなにも普通に会話ができてるんだもん。
「だが、なぜ突然アリウスと仲直りしようだなんて思い至った?トリニティとアリウスの過去を知らない訳では無いだろう?」
「うん、過去に何があったのかは大体知ってるよ。でも、だからってアリウスと仲が悪いままでいいなんて思えなかったんだもん。もし仲直りできたらそれ以上のことはないでしょ?」
「それ以上のことはない、か……そうだな、この話は持ち帰ってこちらで話し合うことにしよう」
「本当!?」
「ただ、どうなるかは分からない。何しろ突然のことだからな」
「うっ、だって連絡先とか分からなかったし……」
「一週間だ。丁度一週間後の同じ時間にここに来い。この話は流れる可能性だってあるんだ。下手な期待や不安を煽らないよう今日のことも一週間後のことも誰にも言わない方がいい」
「もちろん!」
そうして、私とサオリちゃんはその場で別れたの。一週間後にどうなるのかな、仲直りできたらいいな、なんて思いながら。
聖園ミカ。数週間前に単身アリウスへと繋がるカタコンベの前まで訪れ、何故かアリウスと仲直りがしたいと訴えてきた者。トリニティ総合学園の最高権力であるティーパーティに所属し、「パテル」と呼ばれる連合のトップらしい。
アリウスのことを表面上しか知らない彼女の行く末は既に決まっている。マダムの中ではもう都合のいい駒にしか見えていないのだろう。
私はサオリの推薦で聖園ミカとアリウスの橋渡しの役割を与えられた。聖園ミカを利用してトリニティ内部へ侵入し、アリウスがトリニティへ攻撃を仕掛ける際に私も内側から攻撃を開始して混乱を引き起こす。軽く情報収集もできれば尚良し。
それだけだ。
与えられた任務はそれだけ。
特別何かをする必要は無い。
利用されているとも知らず、呑気に理想を語る聖園ミカをどうにかする必要もない。
ただ時が来るのを待てばいい。
それだけでアリウスの恨みは、これまでの苦しみは、全て、全て解放される。
トリニティの壊滅という未来によって。
悲願なんだ。
救われない私達の。
募りに募った憎しみの歴史の。
サオリだってその気になっている。
その話を聞いた他のみんなも。
だから、何も考える必要なんてないんだ。
何も。
私はただ、任務を遂行すればそれで……
……本当に?
「……ミカ、なぜアリウスとの仲直りにそこまで拘る?それも、たった一人で」
「もー、最初の頃のサオリちゃんにも似たようなこと言われたよ。もしかして教えてもらってないの?」
既に何度か顔を合わせているミカは私相手にもフランクに接してくる。こちらの思惑なんて何も知らず、知ろうともせず馬鹿正直に考えていることまで曝け出して。
そんなミカを見ていると、心のどこかが揺らぐような気がしてくるんだ。それがどうしてか知りたくて、この感覚が何なのかを知りたくて、私は任務とは関係のない質問を繰り出していた。
「実際にミカの口から聞きたいんだ。なんで、今更……」
「今更って……まあ、過去を知ってたらそう思うのも分かるけどさ。でもね、私達にとっては今が一番早いんだよ。先延ばしにしてたらきっといつまで経っても仲直りなんてできないもん。その結果が今の状況でしょ?」
「……」
「それで、アリウスと仲直りしたい理由だっけ。仲直りしたかったからじゃダメかな?」
「……理由にすらなっていないが」
「仲直りに理由なんていらないよ。悪いことをしたら謝って、一緒に紅茶でも飲んでさ。みんなで仲良く暮らせたらいいじゃん」
「それは――」
夢物語だ。理想論だ。現実はそんな簡単じゃない。私達の心に巣食う憎悪がそんなもので無くなるはずがない。アリウスの皆が納得するはずがない。
甘やかされて育ったのだろう。こんな世間知らずに、ここまで考えが甘い人間に、私達の何が分かる。あの苦しかった日々を知らない人間に何が。
「だから、今度アズサちゃんがトリニティに来たときに紅茶をごちそうしてあげる!ナギちゃんお墨付きの美味しいやつなんだよ!」
「……そうか」
――だけど、ミカにあの日々を過ごさせたいとは思えなかった。
こんな屈託の無い笑顔を最後に見たのはいつだろうか。コレを歪ませるなんて、私には……。
あの苦しみを味わうのは私達だけで十分だ。
「これは誰にも言ってないけどさ、私以外のティーパーティの二人がね、ゲヘナとエデン条約を結ぶつもりなの。不可侵条約。言い換えれば平和条約を、あのゲヘナとだよ?」
「……ああ、トリニティとゲヘナは犬猿の仲だと聞いている」
「そうなの、私も最初聞いたときは信じられなかった。でもナギちゃんとセイアちゃんがやるって決めたの。だから、私は何も言わなかった」
意外だった。この思ったことをすぐ口に出しそうなミカが黙って見過ごすなんて。
「それでよかったのか?」
「うん。あの二人には多分私には見えていない何かが見えてるんだと思うから。……私ね、政治とかニガテなの。いつも二人に頼ってばかりで、何も力になれてない。同じティーパーティなのにね」
「得意不得意は誰だってあるだろう」
「あはは、そうかもね。でも、本当に二人はスゴイんだよ。まだ確定じゃないけどさ、あのゲヘナとエデン条約の話が進んでるんだって。私は絶対無理だと思ってたのにさ。いったいどんな魔法を使ったんだろうって思ったの」
「魔法……」
この世界はそんなファンタジーな世界ではない。血と汗と泥に塗れて、見えない所で誰かが傷つき苦しんでいる。でも、もし魔法なんてものがあればアリウスは、私達はこんなことにはならなかったのかもしれない。
分かってる。そんな都合のいい魔法なんて存在しない。あるのは痛く苦しい現実だけ。全てが虚しい、現実。
……本当に、そうなのだろうか。
「それでね、二人は無理だって言ってたけどアリウスとの仲直りも出来るんじゃないかって思ったんだ。難しいかもしれないけど、可能性はゼロじゃないって。二人を見てそう思ったの」
本当に、この現実は痛みと苦しみしかないのか?誰かを憎むことしかできないのか?何の意味もない虚しい世界なのか?そんな救いのない世界で私達は生きてきたのか?
「だからダメ元でこっそりアリウスに行くことにしたんだ。バレたら怒られちゃうから、こっそりね?そうしたらさ、本当に可能性はゼロじゃなかったんだよ!サオリちゃんもアズサちゃんも、仲直りを望んでる子達がいるんだって分かったの!嬉しかったなぁ……」
それなら、目の前にいるミカはなんなんだ。痛みも苦しみも憎しみも虚しさも、なにも抱えず私達に手を伸ばすミカ。そんなミカもこの現実を生きている。私達と同じ現実を。
なら、それなら……。
「ナギちゃんとセイアちゃんがゲヘナと仲良くして、私がアリウスと仲良くすればさ、そうすればもうカンペキだよね!争いとかもなくて、平和で……きっと、みんなすっごい幸せだと思うんだ!」
それならきっと、私の知ってる現実の方が間違っている。
「……そうだな、もしそうなれば――――
「アズサ、マダムからの命令だ。トリニティに潜入したらティーパーティのホスト、百合園セイアのヘイローを破壊しろ」
虚しいだけの現実はいつまでも私に付き纏う。私の周囲を、見える世界全てを薄暗くおどろおどろしいものへと変貌させてしまう。そうして生きる気力を奪い、考える力を奪い、誰かを憎まないとやっていけなくさせるんだ。
そんな現実を生き抜いたとして、その先には何がある?例え憎しみの対象を自らの手で殺めることができたとしても、これまでの人生から解放されたとしても、その手には何も残らない。残らないんだ。
でも、私は知ってしまった。
眩しいくらいに明るい現実を。想像したこともなかった現実を。
だから……
「ミカ、話がある」
ミカ
あのゲヘナと平和条約とか無理じゃんね、とか思ってたら話が進んでるらしく仰天。
改めてナギサとセイアへの尊敬度合いが高まるとともに、アリウスのことを思いだした。
二人に注意されていたため本当にちょびっとだけ確認してみる気持ちで行ったらどっかの赤い人が裏で諸手を挙げて喜び、仲直りできそうな雰囲気が作られる。
アズサ
元からの善性故にアリウスの目的や手段に揺らいでいたところ、光属性超特化型のミカを前に完全に傾いた。
サオリ
ミカに対してなんだ、この馬鹿は……と思っている。
どっかの赤い人
ウキウキ。
今にも歌い出しそう。
主人公が全然出てこないなぁ、と思う今日この頃。物語上の立場を考えたらそらそうなんですけどね。アイツの全盛期は二年生編かもしれない。
感想や高評価、お待ちしてますよ。いっぱいくれるといっぱい書くよ。多分。知らんけど。保証できひんけど。
おまけ 最近出てこないクソボケFOXをたまにはね
「そんなところで立ち止まってどうかしたのかい?」どしたん話聞こか?
「私を待っていた?ああ、何やら業務で気になるところがあったらしいナギサに呼ばれてね」あーそれはナギサが悪いわ
「ん?もちろん二人でだが……なんだ、何か良くないことでもあったのかい?不機嫌そうだが」私ならそんな思いさせへんのに
「分かった。分かったから抱き着いてくるんじゃない。今度お茶会を開けばいいんだろう?」また今度飲み行こ
「まったく、君も年頃の少女なのだからむやみやたらにボディタッチをするべきではないと思うが」いやお前は妹みたいなもんやし手出すわけないやん守ってあげたいし
「はぁ、馬鹿なこと言ってないで離れてくれ」後輩にそんなことするわけないやん笑
「私は帰るが……ハナコ、君もそう遅くならないうちに帰るといい」じゃ、帰るで……
「君も帰るのかい?ああ、いいとも。一緒に帰ろうか」