東方精神崩壊【TOHO PSYCHO BREAK】   作:ランタンポップス

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どうも、紙脳さんです。二作品目です。当分は幻想入り作品で勘弁して下さい(泣)
現在執筆させて頂いております「東方金庫男」とは、全く繋がっておりません。ご了承下さい。
サイコブレイクの不気味な雰囲気が再現出来たらなぁ、と考えております。


ホーンテッドの夜【Night of the Haunted】1

 狂った世界は、作り出した創造者の死亡により跡形も残さず消失した。

 創造者が生み出した「住人達」も、運命を共にするように消えた。

 全てが終わった。電気を切るように、狂った世界は突然の終結を迎える。もう存在しない。消え去った。

 

……消え去ったはずだった。

 

 

 

 草木も眠る丑三つ時……をとうに過ぎ去った午前三時半。中年の男性が一人、深夜の町を徘徊していた。

 何か嫌な事でもあってやけ酒でもしたのか、それとも仲間と飲み明かしていたのか、視線も散乱するほど酷く酔っており足元もおぼつかない。

「ヒィッヒィ!さ~いこぉだぜぇ~」

 お酒の影響で男は非常に上機嫌。人一人通らない暗い路地裏を大股で歩いている。

 家に向かっているようだが、辿り着けるのか非常に不安だ。

 現に、彼は家とは間逆の方向に進んでいる。

「フンフンフーンフフーフーン♪」

 気持ち良さげに鼻歌を口ずさむ。更に調子に乗り出したのか、口を大きく開いて歌おうとする。

 

 その時、

「いーずのやま……おわぁっ!!??」

 足に何かが引っ掛かり、下を良く見ていなかった男は盛大にスッ転んび、地面とキスをする。

 頭を上げた男は顔を真っ赤にし、怒り心頭な様子だ。

「いってぇ……誰だ!!こんな所に物置いた奴はコラァッ!?」

 男の怒号が飛ぶ。誰も様子を見に家から出てこない辺り、近隣住民はみな、熟睡中なのだろう。

 怒号が通り過ぎると、鈴虫の鳴き声のみが聞こえてくる。ただそれだけの、実に静かな夜だ。

「たくっ、俺を舐めやがって……承知しねぇかんな」

 酒に酔い、気の大きくなっていた男は自分を転ばした物に近付く。

 暗がりで相当に目を凝らさないと良く見えないのだが、結構大きな物で、立てれば自分と同身長くらいの物が堂々と道を遮るように倒れていた。

「……ん?」

 男はその、大きな物の形を見て怪訝そうな声をあげる。

 

 最初、人かと目を疑った。が、自分を転ばした物は「等身大の人形」だった。

「んだこれ?」

 良く近付いて確認すると、女性を形取った裸の人形のようだ。だいぶ黄ばんでおり、薄汚れている。

 それは「マネキン」であった。

「……気味わりぃな……」

 酔っているとはいえ、こんな夜道の真ん中に倒れていたマネキンに対して、男はただならぬ不気味な何かを感じとっていた。

 男はマネキン自体を知らない。故に、今にも動き出しそうなその人形を純粋に不気味がった。

 さっさとここから去ろうかと思い始めた時、

 

「でも、転ばされたのは許せねぇ!」

 酒の勢いも手伝って、男は怒りを込めて思いっきりマネキンを蹴っ飛ばした。

 腕、頭、胴体と、体の各パーツをバラまかせながら宙を舞ったマネキンは、暗闇へと消えていった。

「ふん!人形が人間様さしおいて寝てんじゃねぇ!」

 男は命のないマネキンに対して吐き捨てる。

 綺麗に吹っ飛んだので良いストレス解消になったのか、男はスッキリしたような表情だ。

 今夜は良く眠れる。さて、家に帰ろう。男は進行方向に振り向いた。

 

「うおぉ!?」

 振り返ってみれば、今度は本物の人間が背中を向けて立っていた。

 自分から約一メートルの距離だろうか。年寄りのようで、パサパサとした白髪頭だ。背を少し曲げ、項垂れているようにも見える。

「お、脅かすな!誰だオメェ!?」

 今度はその人物に対して怒鳴りつけた。しかし、まるで意に返さないと言わんばかりに、無視をきわめている。

 振り向こうともしない。まさかこの距離で自分の存在に気付かない訳はないだろう。

 男はまたイライラとして来た。どうやら舐められていると認識したようだ。

 酔って善悪の判断がつかなくなっている男は、殴ってやろうかとも考えた。

「てんめぇ!人が話しかけてんだろが!?顔を見て……!」

 突っかかってやろうと近付いた時、男はその人物の後ろ姿にギョッとする。

 

 血に塗れた服、大きく裂かれたようにパックリ空いたうなじの傷。

 そして何よりもおぞましいのは、身体中にまとわり付くように巻かれた鉄線。所々に付いた棘が肉に食い込んでいるのも確認できる。

 そいつが出している気味の悪い音が耳に流れ、漂う腐臭が鼻を突く。男はすでに酔いから覚めていた。

 

「幽霊」だ。そう確信した時、真っ赤な顔は血を引いたようにみるみる青くなって行く。

「お……おい……」

 震えた声で人物を呼ぶ。「止めりゃ良かったのに」。そう、密かに後悔した。

 逃げ出したい。のに、足がガクついて言う事を聞かない。実の所、男は小心者だった。

 

「…………」

 人物はゆっくりと振り返る。とてもゆっくりだ。五秒をかけて人物の目は男を捉えた。

「……ぁぁ……」

 目からは青白い光を洩らし、口からはボトボト血を吐き、傷だらけの顔は理性を纏ってやいなかった。

 

「あああああああああああ!!!!????」

 裂けん限りに開いた口は絶叫を吐き出す。

 それを合図のように、両手を広げ「幽霊」は男に襲いかかった。

 

 しばらくして、絶叫を聞き付た住民達が様子を見に数名集まって来た。

 しかし、聞こえた辺りを探しても人はいないし夜も深い事だし、狐につつまれる感覚に陥りながらも住民達は早々に切り上げ寝床につく。

 誰一人として、ゴミ置き場の「マネキン」に気が付かなかった。

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