東方精神崩壊【TOHO PSYCHO BREAK】   作:ランタンポップス

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蘇ったラウラ【RE-Bone Laula 】1

「がぁっ!?」

 一瞬の内に、体の至るところにナイフを受け、背後にいた何者かは断末魔と共に前へ倒れ伏した。

 その何者かの前に立つのは霊夢と、ナイフを一本手に取っていたメイドであった。

「え、なに?うわっ、盛大にやるわね……」

「殺気を出していたから徹底的にしたまでよ」

 冷徹なメイドに少々引く霊夢。

 

 再起するのか、札を構えて待ってみるも、生命感が全く無くなっている。ぶよぶよとした、まるで脂肪の塊のような肥満体の醜男は動かず、ナイフの刺し口から赤黒い血をワインのようにトクトクと流れさせて息絶えている。右手には薪割りに使う小さな斧が握られていた。

 しかしどことなく人間臭さが伺える風貌だったので、もしかして人間では?と考えが過る。

「敵だからって、いきなり殺す事はないんじゃないの?取っ捕まえて吐かせれば良かったじゃない。この状況下じゃ存在するのが変なんだし、十中八九関係者でしょうに」

「……そうしようとしたけど……ほら、良く見てみなさい」

 メイドに促され、気持ち悪いと言う感情を抑えて再度、観察してみる。床に顔面を付けているので顔は確認出来ない。しかし死人のように色白い肌色が、血で汚れている上にぷぅんと腐臭が漂っている。あまりに気持ち悪さから溜め息と一緒に目線を外したのだが、メイドからの威圧を感じてまた目線を戻す。

 すると、てっきりナイフによる傷だと思っていたが、それにしては深すぎる重傷が体中あちらこちらに出来ているのを確認した。

「うわっ……これ、あんたがやったんじゃないわよね?」

「このナイフじゃ、こんなパックリ傷付けられないわよ。それにほら、もっと良く見なさい、特に傷口」

「誰が好き好んで人の傷口見なきゃならないのよ……」

 ブツブツとぼやきながらも、また死体を見る。背中がむず痒くなる感覚に耐えつつ、今度は傷口を重点的に観察してみた。

 

 

 なるほど、傷口が黒くドス汚れている。つまり、重傷レベルの大怪我をろくな手当てを施さずにそのまま放置していたばかりに、傷口に垢やら泥やら埃やらが付着してしまったと言う訳だ。

 勿論、そんな怪我を放置して平気でいられる人間なんて存在しない。その異常性かつ敵意を感じて、躊躇もない攻撃を繰り出したメイド……「十六夜 咲夜(いざよい さくや)」の行動は英断であったと、霊夢の考えは大幅に変更された。

 

「それに、傷口が化膿していないでしょ?化膿すると言う事は、白血球が活動している証拠になるの。つまり、自己治癒が機能している証拠にもなるの。でも、膿の痕跡すら見当たらないわ。まるで自己治癒機能がストップしているようね」

 冷静に分析する彼女に、死体に向けていた嫌気の混じった視線を咲夜へと移した。

「……あんた、人の傷口見るのが趣味だったりするの?」

「そんな趣味持つほどサディストじゃないわ。ただ分析しただけよ」

 サラリと言う彼女に対し、「それはどうだか」と怪訝な目に切り替わる霊夢。それに気が付いたのか、ギロリと睨まれ目線を斧の方へと向けた。

「えっと、この斧で攻撃しようとしたのかしら?」

 斧は既に血で染まっており、錆びが出ている。それでも刃の部分は鋭利で、ギラリと不気味に白刃が見えていた。これを使って彼女ら二人を殺そうとしていたのか。

「正気じゃないわね。風貌からして、まるで人間と言うより『ゾンビ』に見えない?」

「ゾンビ……」

 咲夜が死体を『ゾンビ』とした。

 確かにその見た目は、死体だ。これがつい三分前までは意思を持って動き、二人に殺意を向けていたのだ。そう考えると、もうこの存在に対し、目に向けずにはいられなくなった。また起き上がりはしないかと、不安になるからだ。

「郷の妖怪とか全員ゾンビみたいなもんだけど、ココまでガッツリなのは勘弁ね……」

 そう呟き、霊夢は咲夜へ目配りする。先へ行こうと催促したのだった。

 離れて行く時、ずっと注意を死体へと向けていたが、結局復活する事はなく廊下の闇に消えていった。

 

 

「ともあれ、敵が潜んでいるのを確認出来たわ」

「えぇ。もう別々に行動するのは止した方が良さそうね」

 前々から強めていた警戒心を、更に高めて周辺に神経を集中させる。相変わらず赤い廊下には扉も窓もなく、ただ延々と続き、血と臓物がそこかしこに散乱されている。たまに別れ道があるが、別行動で別れてみても結局は再会。これが続いて何時間が経過しただろうか、気が滅入りそうだ。

「もう、適当に壁ぶっ壊していい?」

 霊夢が札を取り出して壁へと向いた。

 しかし、この館のメイドである咲夜は彼女の暴挙を止めようとする気配はない。

「……あれ?あんた、最初は止めていたのに」

「これだけ長く続けば荒行だけど試してみるしかないでしょ……責任は取るからやって頂戴」

「まぁそうか」

 お許しが出たので、霊夢は札を構えて力を集中させる。次第に札は虹色に輝き出して来た、発射はすぐだ。

 

 

「あ、やっぱ待って霊夢!」

……と、いきなり許可したばかりの咲夜が制止に入った。霊夢はピタリと、力を消した。

「どうしたのよいきなり?ご主人に怒られるのが嫌になった訳?」

 嫌味を込めて聞いた霊夢だが、咲夜は反応せず、ピッと指を差した。

 

 

「あれ、見て」

「え?」

 人差し指の先には、いつの間にあったのか扉があった。

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